「ごくろうさまでした」は逆尊敬語?
「ごくろうさまでした」とか「おつかれさまでした」という言葉は、目上の人が下の者に対して使う言葉で、逆の立場で使うのは失礼にあたる……という説を見たことがある。
日本語には尊敬語もあれば謙譲語もあり、一部の身分の人だけが自らに使う特殊な尊敬語というのも古語にはある。
しかし、「ごくろうさまでした」は、「さま」が敬称の「様」ではなく「様子」の意だったとしても、「ご」も付けば「でした」も付く。自分が「苦労した」というのは文法的に謙譲語でもないのに、それを目上の者に使ったからと言って失礼になる「逆尊敬語」になるというのは文法的にはおかしな話だと思う。
ただし、シチュエーションを考えてみると確かに目上の人がムッときそうな場面はある。例えば、上司が雑用を終えたときに、部下がご苦労様でしたと言えば、その部下は上司が雑用をしている間は何をやっていたんだ、本来なら手伝うべきだろう……ってことになる。
上の「逆尊敬語説」というのは、そういうシチュエーションが実際にあったときに、よく考えてくれよ、という注意が、そのような「伝説」として残ったというのが経緯ではないだろうか?
もちろん、そのようなシチュエーションばかりではない。上司にしかできない仕事だってあるし、そのようなときは上司の体を慮ってよいだろう。郵便配達員は別に目下の者じゃないけど、「ごくろうさま」って声をかけても失礼にはならないだろう。
「上司は常に完全無欠で部下はその疲れを想像することすらできない」ってどこの独裁国家だよってことになる。上司が疲れることもあれば、一緒に笑うこともある、そういう雅びな文化のほうがいいと私は思うんだけどなぁ。
更新: | 06/01/30 |
初公開: | 2006年01月30日 12:50:51 |
2006-01-30 12:50:51 (JST) in 日本語論 | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)
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