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2006年2月 3日 (金)

フィギュアの写真の著作権に対する見解

まず、サイト全体からすれば、写真は従ですが、一つのページの中ではフィギュアが主となるわけで、決して「引用」とはなりません。しかし、なぜ、「引用」に出典の記載が必要かという点は留意します。

本来、Web ページへの画像の使用は「私的使用」にあたりません。しかし、ここではあえて、二つの意味において「私的使用」にあたると主張します。

フィギュアに背景を与えることで、何らかのイメージを付与することから、翻案権の侵害にあたる可能性もあります。本件程度ではそれを否定することもできるでしょう。しかし、あえて、それを否定せず、公共の福祉の著作権に対する優越から翻案権の一部停止を主張します。
「私的使用」としての 2.5 次的著作物


まず、ここでのフィギュア写真は、フィギュアと CG の一次著作物を組み合わせてできる二次的な著作物です。著作権法独特の言葉遣いで、「二次的著作物」は翻訳や映画化などを想定し、パロディについては「翻案」としてそこに含めるか、「引用」や「インスパイア」としてそこに含めないか、判断がわかれることがあります。そこで、わかりやすくするために、このような意味で二次的な著作物をここでは 2.5 次的著作物と呼びます。

CG やマンガ、ムービーなどの一次著作物を Web 上で公開することが、私的使用にあたらないという点については、私も議論するつもりもありません。なぜなら、それらを Web 上に載せるということは、一次著作物そのものを「公共的所有物」とし、実質的に排除性も競合性もなくしてしまうからです。

しかし、2.5 次的著作物の場合、一次的著作物をそこから再生することは難しく、一次著作物の使用利益については排除性も競合性も保ったまま、私的なものに届まります。ゆえに、これは「私的使用」といえなくもないです。

ただし、この要件のみではすべてのパロディが「私的使用」の枠内に納まることになるため、次の要件を重ねて主張します。


「私的使用」は本来「非営利・無損害の提供」を意図している。


著作権法の「使用」関して営利・非営利の区別はどこにも書かれていません。しかし、「上演」に関しては非営利の利用が可能であり、実際には Web 上での非営利の利用については、特に著作権料を求めないという慣行ができつつあります。

それは著作者に言わせれば、「私的使用」に対し著作権料を求めないという理由付けではなく、その「公共的利益」に鑑み、そのような判断をしているということなのかもしれません。

しかし、そもそも立法者が「私的使用」を認めたのは「公共的利益」を考慮したからであり、「私的使用」の中から私的に経済的利益を得ることにつながる行為を排除しています。

もちろん、「私的使用」は経済的利益を得る行為だけではなく、選挙活動において著作物を利用するようなことも念頭に置き、さらには、不正コピーによって著作者が利益を得る機会を奪うような行為も排除しようとしています。

立法者が「私的」という言葉を使ったのは、それを「非営利」と置きかえた場合に、「利」が経済的なものに限られ、さらに「非営利」を通り越して、著作者へ損害を与えることについて無意味になるのを避けたかったからではないでしょうか?

ただし、法にもなった「引用」の慣行を考慮すると、たとえ、それが「非営利」の意図に留まる、当選などの実物的な利に満たない「名声」や「同好の志との親交」という「利」であったとしても、それを得ているならば、その「利」の一部を同じ「名声」などによって還元するという意味で、参照先を示すことが求められるかもしれません。

そこで本ブログでは非営利な利用に留めながらも、参照先の明示はしていくつもりです。


アフィリエイトは著作権侵害が問えるほど「営利」と言えるか?


私は少なくとも当分、何らかの判決や法令が出ない限り、アフィリエイトは導入しないつもりです。

しかし、アフィリエイト程度の「営利」は「公正な利用」として認められるべきだと考えます。

著作権法 第一条
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。


先の「私的使用」の中には、例えば、ある著作物を使って同好の士を集め、そこで友となったものの間で、グッズの交換をするという程度のことは含まれているでしょう。

一方、ある著作物を広告として使ってグッズを販売することについては明白に黒になります。

もちろん、アフィリエイトを厳密に解釈すれば「広告」となるわけですが、それを商用サイトにおける企業の広告活動と同列に論じるのもやや無理があると思います。

私の希望としては、かりにアフィリエイトにより商品が売れたとしても、その取り分が極めて少なく、そのような形での商品の売買を業務(の一部)としないならば、かなり広い意味で認められるべきだと思います。

いわゆる無料ホームページで強制的に広告を載せられるところから、このココログにあるようなアフィリエイトプログラムまでなら、セーフ。
ほとんど大手のリンク集だけになっている場合はアウト。
商品の批評サイトなどのアフィリエイトについては公共性などともあわせて、ケースバイケース。
オークションサイトでの商品写真とたまたま写っている物は原則セーフ。ただし、宣伝効果を上げるため、その商品以外の著作物を使ったら、その著作物に関してはアウト。オークションサイト以外のページをオークションのために使った場合、または、たまたま写ったものが、たまたま宣伝効果を持った場合は、ケースバイケース。(オークションサイト以外がグレーなのは著作者側の検索のしやすさを考慮。)


そういった「公正な利用」の慣行が築かれたらなぁ、と願っています。


「不断の努力」がなされず「翻案権乱用」がなされている。


文章はいかに文字が劣化しようと、その「本質」とされるのは文字の形状ではなく、記号列という今でいう「デジタルデータ」でした。著作権法が確立する以前から、文章というデジタルデータは、比較的かんたんにコピーされ、流通することができました。

一方、図像については、長らく、その「本質」とされるものは決してデジタルデータとみなせるものではなく、かんたんに劣化し、満足のいくコピーを得るためには、ある程度の資本が必要ということで、その侵害を監視する対象も少なくて済むと同時に、必要資本が参入障壁となって、コピーする側も利益をある程度みこめるものでした。

しかし、インターネットの時代となり、図像もまたデジタルデータとなって、かんたんにコピーされ流通するようになりました。これは印刷所が各家庭にやってきただけに留まりません。GIMP のようなレタッチツールが使えることから、まさに文章と同じぐらいの加工しやすさも得ているのです。

「図像を引用する」という言葉が、図像そのものの引用から、上でいうところの 2.5 次的著作物に近い意味での「引用」にかわってきています。

ところで、著作権法には「引用」から一次著作者を守るために、同一性保持権と翻案権が定められています。

著作権法 第二十条
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
著作権法 第二十七条
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
著作権法 第三十二条
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。


同一性保持権には題号の同一性も含まれますから、両者には重なりがあります。外伝など著作者が認めるパロディについては、同一性保持権で守れます。翻案権こそが、本来パロディに対するものであり、2.5 次著作者側には表現の自由が認められることから、著者が認めないようなパロディについても出版が許されるべきで、その禁止はできず、そこの部分は、市場に開かれているべきだと考えます。

したがって、翻案にも専有が許されるのは、収益の還元を受ける権利に留まり、今の段階でも、不当に高い収益が要求されることに対抗するため、「引用」や「私的使用」などの法理を用いてサボタージュする道を事実上認めたり、判例のように「翻案」の範囲を小さくして、「インスパイア」を広く認めるようになったりしたと考えます。


現代はキャラクタービジネスが盛んになり、技術を持つものならば、パロディを流通させることは簡単にできますし、著作権法の縛りさえなければ販売することも安価にできます。イーバンクなどのように決済コストをゼロにできる手段もあります。ここでは、設備資本はそれほどいらないけれど、労動コストと無視されがちな技術教育の資本が必要なだけです。

ただでさえ、設備資本が少なくてすむのに、不況があり、主にお金で買えない時間をかけた技術教育への資本蓄積がなされ、2.5 次的著作物への参入障壁は下がる一方です。一次著作者側は、インターネットでは検索技術の発達で、監視対象が広がった割に監視にかかるコストの上昇は抑えられているはずです。


一次著作者は、Web を使ったり、ネットオークションを使えば、契約条件を柔軟にできるはずですが、そのような努力はなされていません。2.5 次著作者は、著作者へ連絡すれば、逆に法外な値段をふっかけられ、せっかくの努力が水の泡とならないか怯えています。

創作活動においてそういうプレッシャーが創作に悪影響を与えることは、少なくとも著作権にうるさくなった時代に若者であった創作者ならば知っているでしょう。

本来の製造費用、流通費用に比し、取引費用が不自然なほど大きくなっているのです。

デリバティブの取引にみられるように、支出の可能性を一定額に抑えることには、強い需要があります。現状のようないくら使用料を払えばいいかまったくわからない状況は、著作者側の少しの努力であっという間に改善するはずです。


そこで、「表現の自由」論者にとってしばしば敵となる「公共の福祉」という概念を逆に味方につけたいと思います。

日本國憲法 第十二條
この憲法が國民に保障する自由及び權利は、國民の不斷の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。


著作権法の保護権益は、一次著作者や使用者だけのものではなく、文化の流通を担う 2.5 次著作者のものでもあるはずです。一次著作者の努力不足で、2.5 次著作者が割を食うのは、この条項に抵触すると考えます。本来、自力救済は認められませんが、新しい状況に対応するにはスト権などの拡大解釈もやむを得ません。


私は、著作者らが取引費用を現実的な額まで下げる努力をしない以上、我々は著作者に機会逸失以上の損害を与えない限りにおいて、翻案権に基づき支払うべき額は、適正な使用料から「我々の巨大な取引費用の総計を「彼らが実際に請求活動を行なったと証明できる人数」で割った額」を控除した額を限度とするべきだと主張します。

実際には取引費用を算定することはできず、現実的な金額は呈示できません。しかし、少くとも、取引費用を下げる何の努力もしていなければ全額控除となり「支払うべき額はゼロ」になるはずです。逆に、ほんの少しの努力で劇的に取引費用を下げることができるというのが私の見解のわけですから、その努力さえすれば、今度は取引費用は無視できるほど小さくなり「全額支払うべき」となるわけです。

つまり、「不断の努力」がないことを理由として、事実上、翻案権の停止を主張するわけです。


「図像の引用」ができるような時代には、文章の引用がはたしてきた役割をどのようにになわせるかを創っていかなければならない段階にきています。何のための罪刑法定主義かが問われている時代です。

一次著作物から得られる利益を守るためは法的保護の強化によってではなく、市場の拡大によって実現するべきだと私は考えます。


参考文献


しゅんしゅんの著作権講座 (http://www.geocities.jp/shun_disney7/lib.html)

著作権のひろば (http://cozylaw.com/copy.html)

知的財産権判例集』 (大渕哲也 他 編, 2005 年 3 月, 有斐閣)
更新: 06/01/23,06/01/31,06/02/03
初公開: 2006年01月31日 17:15:22

2006-02-03 18:55:50 (JST) in フィギュア写真 | | コメント (0) | トラックバック (1)

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