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2006年4月 1日 (土)

ISP による Winny 規制が良くない理由

まずはじめに、私は ISP による規制はかまわないと思っている。すでに日本は、開発者の逮補という大きな一歩を踏み出しており、他の世界と歩みを異にしてもコンピュータの技術よりも行政の法解釈技術で P2P を規制をする方向に進んでいる。

私は技術の発展において多様性があることが何よりも重要だと考える人間である。たとえ世界が「ネットの中立性」を最大限確保しようとしていても私は日本の自己犠牲的な独持路線を支持する。

ただ、今回はそれはそれとしてなぜ ISP による規制を問題とすべきかを考えてみた。
消費者契約における身分法的禁反言


消費者と大企業の間の契約について完全に自由なものにすると、大企業がかなり有利な条件で消費者に契約条件を呑ませることができる。

そこで、消費者契約法などに見られるように、契約の自由を一部制限し、以って消費者が通常期待しうる責任を企業に負わせても良いとする考え方がある。


ISP は消費者に契約させるために、これまで回線容量を大きな宣伝の柱としてきた。

しかし、現在では大きな回線容量を使うようなサービスはあまりなく、そのメリットを享受できる大きなものは P2P ファイル共有ぐらいしかない。

そのため、消費者が「大きな回線容量」を「P2P ファイル共有を使えること」と等価とみなすことには合理性がある。

「大きな回線容量」を宣伝することは、「P2P ファイル共有を使えること」を宣伝するのと等価であり、少なくとも消費者はその契約において仮にそれを保証しない旨が契約書に書かれていたとしても「P2P ファイル共有を使えること」を通常期待しうる

よって、ISP がその期待を裏切ることは「契約違反」に相当する。


ただし、例えばその ISP が「大きな回線容量」を有用に使うための他のサービスを提供しようと努力していたり、他の ISP よりも回線品質を落とすことで著しく安く提供するなどし、そのような期待が生じにくい合理的な理由がある場合は、免責されるべきだろう。

とはいえ、日本では肉体への実害が生じていない「裏切り」に消費者に有利な判断がなされることは通常期待できない


参入規制がある産業の肥大化と硬直化


インフラとなる技術を使わないようにする規制をかければ、その分の負荷が軽減され、他であれば必要な投資が必要とされなくなる可能性がある。

余剰な利益が発生するわけだが、個々の企業としては利益の源泉となった物を強化するよう行動するのは多くの場合、合理的な判断となる。例えば、シェアを増やすことで利益を得られるようになったのなら価格を下げて提供しシェアを広げる努力をするのが合理的となる。

今回の場合は、規制により利益を得たので、より規制を強化し維持する方向に投資を行うのが合理的となり得る。

ただし、そのような判断が合理的になるのは、あくまで規制をかけないことで成功しその方向を合理的に推し進めるような者がいないことが条件である。


参入に何がしかの規制があり、規制を管理できるものと交渉しなければならない状況においては、特定の者が突出してシェアを広げることは管理者の他の被管理者に対する「責任感」に基づき許容できるものではない。

いろいろ理由付けができるが、以下などが考えられる。

技術の革新性の価値は従来基準に基づく管理者からは判断できない。
過去の「業界の失敗」という政府の失敗の責任を業界内で処理する必要がある。
新規参入者が過去に業界全体で築いてきたインフラにタダ乗りしている。
新規参入者の構成員が若いために社会保障の負担が少なくて済むことだけが有利な理由とならないように世代的な均質性を求めたい。


このような参入規制がある場合、たとえ、規制を強化した側がシェアを失うことがあったとしても、被害は少ない。一方、規制をかけないことで管理者との関係悪化が生じていた場合は、シェアを失っても被害は回復できない。

よって、規制へ投資するほうが、どちらかといえばうまみのある選択肢になる。


消費者にとっては著しく不利益となるわけだが、規制をしたあとそれがさらなる規制につながらないようにするには、「企業の構成員も家に帰れば消費者である」というところからモラルを求めるという(ある種の人々から見れば)感情論的解決しか期待できない。

ただし、以上は、国の明白な規制でなくてもよく、寡占企業が公開しないルール(プロトコルの仕様など)を課している場合も同じことが起きるので、日本に限らずこれを問題にできるような国はないだろう。


ネットの中立性


何らかの目的を持ってフィルタリングすることを許すと、それが蟻の一穴となって、ネットの中立性がどんどん崩されかねない。

ネットの中立性が崩れると、サービスや価格ではなく、企業の資本関係で使えるサービスの負荷が決まるようになり、独占禁止法が禁止する抱き合わせ商法に相当する行為が脱法的にまかり通ることで、結果的に消費者の利益が損われることが考えられる。

一時的には、ある特定のサービスの負荷が、他の消費者の帯域を著しく圧迫する場合などは、そのようなサービスの負荷を制限することが消費者の利益になることもあるだろう。ただ、本来ならこれは回線容量を増加させる方向へ行くのが望ましいと思われる。

しかし、許容できない場合ばかりではないだろう。

現在の CATV がインターネットのサービスも提供していることの発展形として、特定のサービスが主で、そのオマケとしてネットのサービスを提供している場合、いって見れば、ネットのサービスについてはプロキシのような役割しか採らないような場合に、消費者がオマケ部分についてあまり権利を主張できないことはありえるだろう。

そのような方向に行くことで、「インターネット」が持っていた可能性が損なわれる結果となり、他の国よりも技術の発展が遅れる不安があるかもしれない。独占企業が ISDN を推し進めた結果、世界的な ASDL の流れに乗り遅れたようなことがまた起こるかもしれないのだ。

しかし、そのおかげで、逆説的に光回線の素早い普及ができたことも思い出していただきたい。「ネットの中立性」を求める流れに乗らないことが、発展を促すことがあるかもしれないのだ。(まぁ、それも韓国との競争がなければどうなっていたかはわからないけど。)



以上、ISP が Winny を規制するのは良くないが、問題はないという理由を考察した。

なお、投稿日はエイプリルフールだということをお忘れなく。;-)


初公開: 2006年04月01日 19:55:43
最新版: 2006年04月01日 20:02:35

2006-04-01 19:57:44 (JST) in 情報工学・コンピュータ科学, 時事 | | コメント (0) | トラックバック (1)

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