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バックハウス&クナッパーツブッシュ『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番&交響曲第8番』。音色の作り方が懐かしい。中音・低音の弦の響きがグッと腹に来る。 (JRF 8138)

JRF 2011年9月17日 (土)

私が、クナッパーツブッシュの『ブルックナー:交響曲 第8番』をずっと聴いてきたからだろうか。ピアノの音色も残響が印象的で、バックハウスのギコチナサ(ディナーミクとアゴーギクを駆使したとでもいうべきなのだろう…)が素朴な華やかさを生んでいる。

バックハウス(pf)&クナッパーツブッシュ指揮バイエルン歌劇場国立管弦楽団『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」&交響曲第8番』
http://www.amazon.co.jp/dp/B0000268GK
http://www.hmv.co.jp/product/detail/908960

JRF 2011年9月17日 6771

まずはピアノ協奏曲第5番について。

HMV 評では「皇帝」が息が合ってないとの評があるが、以前バラバラと感じた「皇帝」とは違い、私はむしろ意志の力、その疎通を感じた。

特筆すべきは、私がこの曲に内心感じていた不自然さを「不自然なもの」として表現してくれていること。これも上述の愛聴盤の影響かもしれないが…。美しさだけをよしとすることへの不信感(というより不審感といったほうがより適切か)なども表されている。

JRF 2011年9月17日 3549

「皇帝」は、ナポレオン皇帝らしいのだが、この演奏ではむしろドイツ帝国…というよりは「プロイセン皇国」の皇帝を描いているのではないかと思わせる。オケたる臣民が華やかさでピアノの皇帝のすべてを正統化してしまうわけでなく、お互いにおかしいと思うところがありながらも、「天命」を生きていく。

私は、演奏を聴きながら、クナッパーツブッシュは第二次世界大戦後「ドイツ共和国」ではなく(「ドイツ第三帝国」ではもちろんなく)「プロイセン皇国」を願ったのではないかと想った。第2楽章は彼が信じた皇室の家族生活を描いているのだろうか。

JRF 2011年9月17日 2262

第2楽章から第3楽章に移るところ、戴冠式だろうか、そこで彼は異議を唱える。現実には「ウィーン風」の皇族に対し、パルシファルに描かれるような自然性さもなくば工業者的実直性を彼は求めようとする。だがそのような皇国はそのままの形では歴史的にも存在して来なかった。実直さ地道さの中で「現実的」と言っても、それも結局のところは、(「理想主義」とはまた違った)想像上のものでしかないということかもしれない。

JRF 2011年9月17日 6030

交響曲第8番について。

私はこの曲はトスカニーニの演奏を愛聴しているが、[aboutme:87073]に書いたように旧市街のカフェでダンスでもしながら「独りであることも受けいれた老いた紳士が楽しむようだ。」という印象を持っている。

しかし、クナッパーツブッシュのは何と重いのだろう。「ドイツ音楽の重厚」を知りたければ、ぜひトスカニーニとこの両盤を聴き比べて欲しい。こちらは決して軽妙な「ダンス」ではない。まるで肉体を城壁となした神聖ローマ帝国の「十字軍」が祝祭のマスゲームとして何かを演じているかのよう。ある意味、能に近いかもしれない。

JRF 2011年9月17日 5923

そこは、現代の中国のように生産の中心で、しかし戦争の中心でもある。労働の堅実さの上にこそ精神の自由がある。現代の世界史では「遅れた地域」と見られがちだが、実はフランス革命こそドイツ「自由民」の伝統のカリカチュアだったのではないか?第3楽章を聴きながら、「冒険」がちな男子の母親はどう堅実さを保っていたのだろう。第4楽章を聴きながら、その子供達は機械工業の肥大化に何を感じていたのだろう。…と想った。

クナッパーツブッシュは戦後もまだ夢に生きていたのかもしれない。夢を信じ続ける責務を担っていたのかもしれない。

JRF 2011年9月17日 5111

……。

いちおう言及した盤もリンク。

クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィル『ブルックナー:交響曲 第8番』
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005GT8L

トスカニーニ指揮NBC響『ベートーヴェン:交響曲全集』
http://www.amazon.co.jp/dp/B0000CNTLU
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1940870

JRF 2011年9月17日 1490

typo 「ドイツ音楽の重厚」→「ドイツ音楽の重厚さ」。

JRF 2011年9月18日 1733

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