cocolog:72819965
ギレリス(pf)『グリーグ:抒情小曲集 (抜粋)』。白瑠璃の美。天然のものより良い物の製法もすでに知られ商業的に活かされるほどとなっても、その小さな石塊は、人が思いを込めるには十分なもの。「大量生産」の CD や DVD が今、この音楽を伝えるのとどこか似ている。 (JRF 7019)
JRF 2012年5月26日 (土)
以前 [aboutme:109307] で「グリーグのペールギュントは持ってたけど…」と書いたが、実は持ってなくて、あわてて安かったブロムシュテット指揮のものを買った。私が持っていたのは上のギレリスの抒情小曲集で、すっかり忘れていたのだった。
JRF 2012年5月26日 3378
アニソンもそうだと言っていいと思うけど、流行曲は時代を表して、それを自分の所有とするのは、後にノスタルジーに浸るため…みたいになる。でも、クラシックは分野そのものがノスタルジーというか社会が持つノスタルジーみたいに見えて、逆に普遍性みたいなものを持っていて、とにかく所有しておいた曲が、ある年齢のときに突然「わかる」ようになるといったことが、わりと頻繁に起こる。感動の先物買い?
JRF 2012年5月26日 0477
「流行曲」でも別の良さに気づくとか、時代ベストを買って別の曲の良さに気付くとかあるかもしれないけど、クラシックという分野は、それがもうシステマティックに組み込まれている感じ。そうやったから「音楽」は一つのアートとなったということですらあるのではないか。
JRF 2012年5月26日 9950
[cocolog:72734124] で「静かな曲、ゆっくりした曲」を求めていると書いたが、その流れで封を切ったのがブロムシュテット指揮のペールギュントだった。その簡素なオーケストレーションに何か違うと思いながら、でも、求めていたことに近いと思って、思い出したのがギレリスの抒情小曲集だった。
JRF 2012年5月26日 3237
ああ、これを求めていたんだな。…と思う。
リスト、ショパンからドビュッシーへという「流行曲」の流れはあるのだと思う。ペールギュントのライナーノートにグリーグは「バッハやベートーヴェンのような大伽藍を建てるわけでないが、人が幸せに過ごせる住まいのような曲は作りたい」と言ったとあるが、その時代にしてみれば抒情小曲集は「誰にでも作れそうな曲」だったのかもしれないとは思う。
JRF 2012年5月26日 5845
そしてグリーグの曲は「国民音楽派」として残ったのであって、そこを時代を表すような立派な構築物に持っていこうとしたのがシベリウスなどであって…と考えたのかもしれない。上と同じ [aboutme:109307] にチラと書いたが高校時代の私はシベリウスのオーケストラ曲は好きだった。しかし、いくらテクニックがすごいといっても一つの楽器を使うだけのピアノ曲、しかもグリーグの抒情小曲集「程度」のものなんて、真剣に聴くに値しない…みたいに扱ってた。
JRF 2012年5月26日 5101
ああ、違うんだな。こんなものでいい。オレはもうこれが好きでいいんだよ。アニメや映画のサントラとかで「静かな曲、ゆっくりした曲」はあるし、アファナシエフのモーツァルトみたいに実際ゆっくり弾いた演奏みたいなものはある。でも、私の手元に残った曲はこれだったし、別に音楽家の誰かが私の要求に応えるようなことを期待したわけでもなかった。
JRF 2012年5月26日 2793
若い頃は自分の「オリジナル」なメロディーが頭に浮かんで、それを譜面に書きたいとも思ったものだった。クラシックの名曲もどこか違って、具体的には CM と違う演奏もいやなくらいだから、もっといい曲を書ける気がしていた。
書かないまま、このトシになって、感情というものは、どこかに置き場を探すような付き合いをするものとなって、かつて音楽が流れていたと知って安心するほうを望むようになった。
JRF 2012年5月26日 1936
小学校の音楽の授業で、感想文を書かされて、技巧やテクニックを褒めるテクニカルな文をがんばって書いても、私のクラシック愛は理解されなかったが、どうでもよくなって、「女子みたいに」物語り風の感想を書いたら、なぜかいい点をもらった。
三つ子の魂百までというか、それを今も動機の中に埋もれさせて、こんな感想を書いてるのかな…とか思う。私は私が望んだような大人にはならなかったな。そうならないでおこうと思ったほうに近い。さらにそこに近づかないよう生きたい、生きるべきなんだよ >> オレ。
JRF 2012年5月26日 3371
ギレリス(pf)『グリーグ:抒情小曲集 (抜粋)』
http://www.amazon.co.jp/dp/B002GKRT38 (正規日本盤)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/932591 (海外盤)
私が持ってるのは高校時代に買った「海賊盤」。今も、500円くらいでワゴン売りのやつあるじゃん。ああいうので昔は、アナログ盤から CD にしたやつを、法の間隙をぬってるのか、無視してるのか知らないが、売っていた。「日本著作権協会」みたいなシールは貼った「海賊盤」もあったから、ネットのない時代にも著作権法界隈はいろいろやりあってたんだろうと思う。
JRF 2012年5月26日 8695
下はペールギュントの CD もリンクして置こう。CM とかで有名な曲でその部分のために買ったと思ったのだが…、確かにベストクラシック100とかの形で持ってたりはするが。
ブロムシュテット指揮『グリーグ:ペール・ギュント組曲集』(発売: DECCA 2011年, 録音: 1989年)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4216051 (海外盤)
JRF 2012年5月26日 1305
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かつての金銀の装飾はすでに鋳潰[いつぶ]され、子供のおもちゃの宝石箱に「トンボ玉」として残ったもの。それが数世代を経たものだとしたら、何かファンタジックでステキなことじゃない?…でも、あなたはきっと捨ててしまったんだろうな。だから大の男の私が女々しくこの曲を聴いているのだろう。(キモくてすまん。)
JRF 2012年5月26日 4397