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D. カーネギー著『人を動かす』『道は開ける』をとうとう読んだ。 (JRF 1880)

JRF 2012年12月 8日 (土)

私は「ビジネスマインデッド」の権化たる自己啓発本一般を疎んじ、軽く見、話半分ぐらいのつもりで読んできた。これら二冊はその「名著」古典として書店に君臨するもので、古書店でだいぶ前に手に入れてはいたが、変に惹き込まれないか警戒して、なかなか手が出せずにいた。

JRF2012年12月8日5069

ここ一年ばかり、ゲームやプログラミングで読書が疎かになっていた。思わずゲームに時間を使い過ぎたことから少し反省して、プログラミングで忙しいと言い訳して見過ごしてきたのを見直そうと、読書に時間をかけることにした。

読書は、簡単なもの(『かいけつゾロリ』!)からはじめて、いくつかの新書や固めのエッセイも読んで調子を取り戻してきたところで、まだ時間をかけないけど、ある程度、骨のあるものを読みたいと考えていたときに、目に止まったのが、この二冊だった。

JRF2012年12月8日7601

……。

『人を動かす』(D. カーネギー 著, 山口 博 訳, 創元社, 1936年原著初版, 1999年日本語新装版)
http://www.amazon.co.jp/dp/4422100513
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1101607874

JRF2012年12月8日4721

『道は開ける』(D. カーネギー 著, 香山 晶 訳, 創元社, 1944年原著初版, 1999年日本語新装版)
http://www.amazon.co.jp/dp/4422100521
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1101618526

JRF2012年12月8日8915

keyword: 自己啓発

([cocolog:74725109]と[cocolog:74918572]でこれらの本を読んでる途中と言及している。)

JRF2012年12月8日3844

……。

読みとおしてみて、書き方はとても誠実で、「ビジネスマインデッド」は確かにあるが、しかし作者自身が手を抜いているわけではなく、よくある焼き直しで根源を探ろうともしない無理解が目立つようなものでもなく、むしろ、ある種の創作として心理の混沌を意思をもって封じ込めた魔術的魅力すらあるもののように思った。

ただニートな私にとっては位[くらい]負けというか、敬して遠ざけたい部分、わからないままでいいなぁという部分もままあり、この本が薦める「何度も繰り返して読む」ことはちょっと勘弁願いたい。

以下は、メモ的にザッと書く。

まずは『人を動かす』の部分から。

JRF2012年12月8日8867

……。


怒りをこらえ人をほめるのは立派だ。ただ、抑圧し過ぎて「怒り」が最初からない(あるように感じない)のは問題だろう…。

JRF2012年12月8日2243

……。

マクドナルドの店員があなたに渡すスマイルは0円だ。そして、あなたも店員に0円でスマイルを渡せる。安いサービスの裏には様々な仕組みがある。食べられることへの感謝を忘れてはならない。

JRF2012年12月8日9001

……。

謝ることの大事さを唱えるこの本からは、自分から謝ることへの抵抗感の強さを逆に感じる。たぶん、アメリカでは本来「議論する」ということ自体がスポーツマンシップの一部なのだと思う。

JRF2012年12月8日0904

[cocolog:74725109] に書いたことも引用する。

自分の名誉はいくら折れて譲るのを良しとしても、他者の名誉を自分が折るわけにはいかない。ここは絶対線だというのが言外にはあるように思う。逆にそういうところを利用して譲らない部分を作っていくのが労働組織などの試みなのではないか。そして、組織を大きくすればするほど、「他者」ではなく「自分達」となって譲れる部分が増える。(逆に、それを「個人化」して切り崩そうとしていると見える側面を、この本に読み込むこともできよう。)

JRF2012年12月8日2614

この本は、この本の通りにやるような人物を排除するために書かれたのではないか?なんというか、造った微笑を結局は誠意がないと否定できるように残していたり、「誠実さ」の核は別のところで見つける…それが実は著者の近くにあると示唆するようなカルト的構図も描ける。

JRF2012年12月8日4225

相手の立場に立って何かを言ったとしても、その想定を間違うことがある。どういう人物にはどう想定するということをほのめかし、暗に差別や格差を助長するテクニックを、この本に読み込むこともできる。実際、1940年代から1960年代の当時の背景には、差別等を利用していたビジネスが、風当たりが強くなって、その代わりが求められていたということがあるかもしれない。

JRF2012年12月8日1791

……。

この本の「戦略」…要は…、自己を自分で抑圧させることで欲求不満を起こさせ、無私に相手を立てることで自己の重要性への欲求を特に増勢する。そして、自己の重要性は、他者に促された自らの語りによって満たされる。…というのが『人を動かす』の構成と言えると思う。

JRF2012年12月8日1084

ただ、その目的、どういう方向へ誘導しているかというのは、(私が登場人物の名前を覚えないせいもあるかもしれないが、とにかく)私ごときに分析できるような感じじゃなかった。

…わかる部分を少しだけ分析を試みると…。

JRF2012年12月8日5653

無私に相手を立てるところは、Yes を言わせる訓練と合わせて、相手を立てるという以上に、他者に投影した「自分の中の他者」を立てているということになるのだろう。そして、自らの語りの創造性は、自分の中に構築された他者像の協力に寄って成る…とすると、少しカルト的宗教性がある。ただ、そういう精神的な魔術が目的だというなら健全な部類で、だからこそ本書が売れているということかもしれないが…私は意地が悪いからか、どうも、まだ読めてない大きな裏がありそうな気がする。

JRF2012年12月8日6792

ジョークというかギャグというか、Part 4. 3章で、姪に「経験を積んではじめて…」とかいうのは口説きをしたのをギャグにしてたり、ゴーストライターのために業と綴り間違いしていた可能性を匂わせたり、続く4章で、学生が創造性を発揮して困らせる話とかは、まさに話術のおもしろさを教えていた名残りみたいな面もある。その一方で、政治的に利用した形跡も残し、「しゃべらせる」と題した章の付近で、わざと大袈裟な嘘まで誘導できるか実際に試してみせ、誘導そのものより、その嘘が出るまでの間に人々がどう抵抗するかを実験記録したかのような部分もある。

JRF2012年12月8日2776

たまたま、『人を動かす』を読み終った日、テレビで、生活保護申請時に母子家庭で子供が大学に行かせようとすると、それが認められないという証言を見た。付録2章のディズレーリの話をこういうときにすれば、母娘に「財産目当て」的な結婚(のほう)が幸せを導くことがあると諭すような効果を持つだろう。

JRF2012年12月8日3038

実力があれば、分析して深い読みをすることで本書をさらに楽しむことができそうだが…。まぁ、今は、サラッと読むという心づもりでやってることもあるし、私にはそういう実力もないしで、通り過ぎた。

JRF2012年12月8日8998

……。

ここから『道は開ける』に関して。

JRF2012年12月8日4058

……。

『道は開ける』の冒頭の「決まり」は、統合失調症のころを、書物を魔術的に読もうとしたことを思い出させる。悩む人間の中には、そういった症状を呈するものもいるはずで、そういったものを著者の「カルト」に導こうとしているのかという疑いを持った。ただ、自己啓発セミナーみたいなのを誰かがしかけたとき、あまりにもおかしなところに行かないよう、そういった「時間」を引き受けようとしている面ももしかすればあるかもしれない。それは、もう少し読んで判断したいが、つまり、「そういうこと」をすでに経験した私はどちらかと言えば反感を持ってこの書を読み進めたことになる。

JRF2012年12月8日6560

……。

過去に誰がいったか、先行者がいたのではないかというのを「今日を考える」というところで強制する形になっているのが、「カルト」的手口として気になる。聖書資料 Q のようなものは Q として呈示すべきで、このような書籍にまとめるのは反則ではないか?ただ、そういった書の中でまともなもの、精神医学のお墨付きをもらったようなものも必要かもしれないとは思う。(これがそうだというわけではないが。)

JRF2012年12月8日1542

「今日やるべき」は自分の本として何かを売り出すこととなる者もいよう。そういう者が過去をかえりみないのを是とすれば、まず、この本をパクった自己啓発本という形になるのかもしれない。ある意味、印刷が一般に開かれた時代の新しい伝道の形と言えるのかもしれないが…。

JRF2012年12月8日0961

……。

Part 2. は「結果主義」=「結果が出なければ何もやっていないに等しい。」([aboutme:99119])と「やってみるほうが早いことがある」という私の信念に相当するのだろう。

JRF2012年12月8日2487

「やってみるほうが早いことがある」については、特にプログラミングから学んだ。学生時代、プログラムでやりたいことがあるとき、そのアルゴリズム等の解説や、プログラムを探し、さらにその理解の手間をかけるより、自分で作ってみたほうが早いということが常だった。

ただ、それもインターネット検索によって、探すほうが早い場合も出てきて、あの頃のままでは通じなくなってる。今なら、この信念を抱き続けるには、探したプログラムよりも、自分で書くことで得る経験が、回り道でも急がば回れで、あとあとのコーディングスピードを増すことになる…といった要素を前に出す必要もあろう。

JRF2012年12月8日3583

……。

この本には知的活動は疲れを知らないそうだが、どうも、集中力が途切れたらしく、ゲームをする生活に戻って、これ以降はザッと目を通すだけの感じになった。知的エネルギーに疲れはなくとも、それは千々「外乱」つまりより楽しいものに誘われるもので、そこを無理に定めることには疲れはあるということだろう。

JRF2012年12月8日6106

…でも、おそらくそれだけじゃない。この「ひとこと」の最初のほうに書いたが「心理的混沌」を封じ込めるようなやり口へのイラツキみたいなのが、出てきたように思う。この本は、人を救おうという在り方で著者が書くように心理学者の見解も踏まえて書かれている。ただ、これが書かれた時代には戦争がありドラッグがあり女性問題もあり、そういった表層以外の部分での解決も、表層的力学を使って実はこの本の中のセカイには押し込められてることを伺わせる。

JRF2012年12月8日9183

読み込み過ぎかもしれないし、感覚的なものだけで悪印象を広めるようで心苦しいが、鬱的状態を問題にしても躁的状態の最後らしきものを描いてもそこに歯止めをかけてない分、想像力を使うような読み方(つまり情緒的・感情的な読み方ということなんだろうね)には知的活動でも神経疲労を招きがちなように思う。(ここ2週間の私はどうもやたらと他人のせいにしたがる…。ただのトシのせいで、この本のせいにしてるのも他人のせいにしている一貫なのかもしれないが。)

JRF2012年12月8日2896

これはやって見ての感想ではないので、予想でしかないが、繰り返し読む方は、絵を描くなり音楽なり何か別の趣味を保ちながら、自分の想像力が削られていってないか確かめながらのほうが良いのではないかと思う。もう繰り返し読んだ方は、きっとそれが杞憂だとご存知のことと念[おも]うけど、ニートな私の身の周りには続けて読んだ人は見つからないから…。

JRF2012年12月8日8415

修正 「この本には知的活動」→「この本によると知的活動」。

JRF2012年12月8日5661

修正 「というところで強制する形に」→「というところで忘却を強制する形に」。

JRF2012年12月16日6164

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