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ケストラー著『ホロン革命』を読んだ。 (JRF 1291)

JRF 2014年10月27日 (月)

精神科医にアーサー・ケストラーの存在を教えられ、彼の著書の中では『機械の中の幽霊』が気になったので買おうとしたが、現在、入手困難だった。いかにも「トンデモ本」くさい題名の『ホロン革命』の Amazon 評に>『機械の中の幽霊 (The Ghost in the Machine)』と重なる部分が多い<とあったので、こちらを手に入れてみた。

JRF2014/10/272092

読んでみると「トンデモ本」とは一線を隔するような思想書であった。

『ホロン革命』(アーサー・ケストラー 著, 田中 三彦 & 吉岡佳子 訳, 工作舎, 1983年)
http://www.amazon.co.jp/dp/4875020910
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1100368078 (絶版重版未定)

JRF2014/10/270064

……。

題にある「ホロン」とは過度の還元主義の戒めに立った概念で、あくまでもそういう観方をするという提唱である。

>絶対的な意味での「部分」や「全体」は生物の領域にも、社会組織にも、あるいは宇宙全体にも、まったく存在しない。<(p.55)

>何年か前わたしはある用語を提案し、「下から」見るか「上から」見るかで全体とも部分とも表現しうるヒエラルキー中間レベルにあるヤヌス的実在を言い表した〈ホロン(holon)〉がそれである。<(p.64)

JRF2014/10/273107

>(…)すべてのホロンがふたつの正反対の傾向(またはポテンシャル)をもつことを意味している。ひとつは大きな全体の一ぶとして機能する〈統合傾向〉、もうひとつは独自の自律性を維持しようとする〈自己主張傾向〉である。(…)どんな社会的ホロンにも、その組織の個体性[アイデンティティ]を警護し、維持しようとする内発的な傾向がある。(…)にもかかわらずホロンは従属的でああり、それを含む大きなシステムの統合的部分としても機能する。この〈統合的〉、〈自己超越的〉傾向はホロンの部分性に由来している。<(p.98--99)

JRF2014/10/272559

……。

脳の欠陥を補うための、精神薬を使った人類の制御という話も出てきた。

>人類史上初の原子爆弾が広島上空で太陽をしのぐ閃光を放って以来、人類は「種としての絶滅」を予感しながら生きていかねばならなくなった。<(p.16)

>ヒト科の(…脳の…)新皮質は、過去50万年に、進化史上例を見ない爆発的スピードで発達をとげた。(…)古い構造の中脳と新皮質をつなぐ神経径路は、どうみても不十分だ。<(p.29)

>(…)人類の苦悩はその過剰な〈攻撃性〉にあるのではなく、そのなみはずれた狂信的〈献身〉にある<。(p.35)

JRF2014/10/276128

>(…)医学によってある種の酵素化合物が発見され、それを使えば新皮質が古い脳の愚行に対し拒否権をもつようになり、進化のひどい過ちが修正され、情緒は理性と和解し、狂人はみごとに人間になる。そんな考えも、もはやユートピア的ではあるまい。(…)それが間一髪人類を救済してくれるかもしれない。<(p.44)

それを食べ物や飲料水に混ぜてもよいし、皆が好んでそれを選択するかもしれない。それは、>人工的に惹起された適応性突然変異<(p.168)すなわち進化の袋小路にはまった人類に残された人工的進化の「希望」である。…ということらしい。

JRF2014/10/279920

私も生命科学でアブナイ話をいくつかしている。

はてなブックマーク - 《幻影随想: Genome Era ―ゲノム情報の時代― 》
http://blackshadow.seesaa.net/article/25356518.html
jrf:>ちょっと話ズレるけど遺伝子情報は分散管理、必要に応じてそれぞれの機関が query を共有・記録って形とかにしてかないとそろそろ危険なのでは?< 2006/10/13

JRF2014/10/276471

そうしないと遺伝子スクリーニングで、特定の遺伝子を持つものを「虐殺」とかされちゃわないか…という話。病院を使った確率兵器みたいな感じ?最近のニュースの↓は、アブナイ方向に行ってるのにあまり問題になってないね…しかたないからかな。

《患者拒否でも血液強制採取可能に エボラや新型インフル 改正案提出-北海道新聞》
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/568526.html

JRF2014/10/276507

あとは…。

はてなブックマーク - 《有人宇宙飛行ができるのは火星まで? | スラッシュドット・ジャパン サイエンス》
http://science.slashdot.jp/story/12/08/30/0320211/
jrf:> 「脳が宇宙」より卵子と精子を月とか金星とかで人工受精させてサンプルリターン後着床、「受精地主義」で「宇宙人類誕生!」とかのほうがインパクトはあるかな?領土問題を不妊治療の発展に繋げる奇策とかいって。< 2012/08/31

JRF2014/10/277811

……。

ケストラーは進化論では、ネオ・ダーウィニズムを批判し、地層時間単位での獲得形質の遺伝=ラマルキズムを認めている。訳者はインテリジェント・デザイン論に傾斜してるように読めるが、ケストラーはデザイナーの存在までは仮定しない。むしろ ESP に近いものを考えているようだ。

私も以前、進化に関する自分の考え方を告白したことがある。

《イメージによる進化》
http://jrf.cocolog-nifty.com/religion/2006/06/post.html

JRF2014/10/271521

あと、以前、[aboutme:100545] に書いたのに似た実例があった。

はてなブックマーク - 《同じようなことを言うID支持者ID.COM.AUと、若い地球の創造論者Carl Wieland: 忘却からの帰還》
http://transact.seesaa.net/article/77892125.html
jrf:>より盲目になり易い個体の方が生まれているはず。「形質重畳」の「逆」例としての先祖回帰だから、一度交「雑」したあと世代を経るにしたがい逆例が起きにくくなることが観測できる?それの逆過程の早さは「健常<回帰」の存在を示す? 2008/01/17

JRF2014/10/271438

>純系統の眼なしバエを交雑させた場合、その系統全体が「眼なし」遺伝子のみをもつことになる……それにもかかわらず、何世代かのうちに「眼なし」系統内の同系交配から、まったく正常な眼をもつハエが現れる。<(p.306)

JRF2014/10/277092

……。

ケストラーは、ESP (extrasensory perception:超感覚的知覚)を肯定し、量子論は ESP を許すかのような理論展開になっていると書いている。

>インテリ階級(…)はその合理的な物の見方を誇り、「自然の法則」に反するような ESP 的現象の存在は否定されねばならぬと考えている。だがじつは、過去50年間、物理学者は神聖な「自然の法則」を無慈悲にも捨て去り、それを三次元空間では表現できない不明瞭な精神の構築物で置きかえてきた。その専門用語と数式には、いわば神秘主義的意味さえ潜んでいる。<(p.417)

JRF2014/10/270160

次のあたりは STAP 細胞の騒ぎを思い出させる…。

>ユングの論文『同時性[シンクロニシティ]』は1952年に出版されたものだが、それは部分的に1919年に出版されたポール・カメラーの『連続性の法則』をよりどころにしている。カメラーはウィーンのすぐれた実験生物学者で、ラマルク信奉者だったが、実験結果を捏造したと非難され、1926年、45歳のとき自ら命を絶った。<(p.422)

JRF2014/10/273537

keyword: シンクロニシティ

私は統合失調症を経ているから、シンクロニシティみたいなものの実在を信じているというか感じた(感じる)ことがある。[cocolog:73267390] で書いたように「理性的」な解釈もできるけど…。

JRF2014/10/278322

[cocolog:73267390]
>そう感じるのはシンクロニシティ(共時性)的で、合理的には同じソースから違う者がほぼ同時に同じ結論を導き出してることで、「違う者」の間でありえないスピードで伝わったように見えるとかいうことで、[aboutme:123928] で書いた「方向感のなさがすなわち臨界の特徴」に重なるところだが、実感として説明しきれない「奇跡」が起きている「確信」が私にはある。<

JRF2014/10/270393

この本の最後にも少しシンクロニシティを感じる。

>1937年、わたしは死刑執行に怯えながらスパイ容疑者としてセヴィルにあるナショナリストの刑務所で数ヶ月を過した。その間、独房のなかで、わたしはある種の体験をした。それは神秘主義者の言う「大洋の感覚」に近いものであった。

(…)わたしは、このたとえをあれこれいじりまわすのが好きだった。船長がポケットに封印された航海指令書を入れて海に出る。(…)封を開けてみると、そこには目に見えない指令文しか入っていない。(…)が、時折単語が見えるようになったり、子午線を示す数字が見えたりする。しかし、また消えてしまう。<(p.462--464)

JRF2014/10/272287

私はここで私が作ったファミコン版『手旗信号』を思い出していた。

《JRF Flag Semaphore for NES Emulators》
http://jrf.cocolog-nifty.com/archive/nes_semaphore/jrf_semaphore.html

JRF2014/10/278218

typo 「一線を隔する」→「一線を画する」。
typo 「言い表した」→「言い表した。」。
typo 「一ぶ」→「一部」。

JRF2014/10/282745

……。

追記。

↓を読んだ。『ホロン革命』は「トンデモ本とは一線を画するような思想書」ではあっても「科学」の書ではないと諭[さと]されたような気がした。

『思想史のなかの科学』(伊東 俊太郎 & 広重 徹 & 村上 陽一郎 著, 平凡社ライブラリー, 2002年)
http://www.amazon.co.jp/dp/4582764304
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1101856860

JRF2014/10/300785

本の大部分は 1975年時点での内容。11章「新しい物理学」の熱放射の問題が確率的に解かれるところからシュレディンガー方程式が出てくるというストーリーは、私の中で腑に落ちなかったところを救ってくれた。

JRF2014/10/305685

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