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権丈善一『医療年金問題の考え方』を読んだ。この本は、最近の読書と違い、よくわかった。というより、わかった気にさせてくれる本だったと考えるのが正しいのだろう。 (JRF 0927)

JRF 2015年1月28日 (水)

>わかったと思わせる方法の伝播ってのは恐い、そして根強い。(…)この納得要求ってのは、飯食いたいっていう欲求よりも強いんじゃないかと、あっしは常々思っているわけだよ。<(p.274)

…と書く著者なので、わざとそうしているのだろう。

JRF2015/1/284457

『医療年金問題の考え方 -- 再分配政策の政治経済学 3』(権丈 善一 著, 慶応義塾大学出版会, 2006年)
http://www.amazon.co.jp/dp/4766411994
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1102328495

JRF2015/1/288567

……。

医療は新古典派経済学が教えるような需給で均衡点が決まるものではない。「入院」という商品を例に出して違和感を教えた上で…

JRF2015/1/283009

>たとえばわれわれは、みかん買いたいと思って果物屋にでかけ、そこで店主が、「あなたの欲しいものはみかんではなくメロンです」と言われたとき、「メロンですか。てっきりみかんだと思っていました。ありがとうございます」というような反応を示すであろうか。医療では、風邪だと思って病院を訪れ、そこで医師から「風邪ではなく肺炎です」と言われれば、思わず「肺炎ですか。てっきり風邪だと思っていました。おかげさまで助かりました」という状況になりかねない。(…)こうした状況が起こり得ることは、医療経済の世界では医師誘発需要理論という考え方で説明することができる。<(p.50)

JRF2015/1/282805

>ところで、現在、アメリカを除く先進国では、医療における需給者間のバーゲニング・ポジションの不均衡を緩和する策として、「医療供給者に対する支払い交渉の窓口を集合化している。この集合化された消費独占体」は取得される医療の種類や価格設定を、市場ではなく政治の場で、供給者の代表からなる供給独占体と相対することにより集権的に行っている。<(p.343)

JRF2015/1/289779

そして、混合診療を批判する。保険会社が狙っているといったり、>効きもしない民間療法を法外な価格で提給したりする金儲けに走ったらどうなる<といったり。一方で、教育界、研究者の世界などと同じく、専門家集団の倫理を重視すべきだとの主張をする。

JRF2015/1/284844

そして集合化された消費独占体は、国の健康保険があるがゆえに可能になっている。


公的医療保険は、給付反対給付均等原則を満たす保険的再分配に加えて、他に2つの再分配を行っていることになり、合計3つの再分配がなされていることになる。

●(疾病リスクが等しい者の間での)保険的再分配
●(高所得者から低所得者への)垂直的再分配
●(健康な一般国民から病弱者への異なる)リスク集団間再分配

(…)
市場における任意保険にあっては、給付反対給付均等原則に則った保険的再分配しか行うことはできない。
<(p.30--31)

JRF2015/1/286043

その民営化はうまくいかず、スウェーデンとアメリカを比較し、アメリカは福祉サービスを結局同じぐらい(非効率に)買わねばならなくなっていると説いていた。

JRF2015/1/287541

……。

医療が特別であるように、政治も特別だと考えるのかと思うとそうではないのが、この著者。

>国民が利己的かつ合理的に行動すれば、公共政策に詳しくなるために時間を費やすなど割に合うはずもなく、彼らはどうしても公共政策について無知となる。これを専門用語では、〈投票者の合理的無知〉と呼ぶのであるが、この考え方は相当に妥当であると思える。<(p.223)

JRF2015/1/289105

政治の力学に沿うような政策提案の構図をどう作るかに論が割[さ]かれる。小選挙区比例代表並立制がガンであるという考えもありそうで、批判をしていた。

JRF2015/1/280730

……。

年金については、2004年当時に大きな話題となった年金目的消費税について…

>(…)道路特定財源は、政治家にとってうまみがあるために、これを死守しようとする力がはたらき、この財源は硬直化すると考えられる。ところが、年金目的消費税は、これを死守しようとする政治家が生まれるほどのうまみをもつ税なのだろうか(…)。(…)いずれは、この目的消費税からなんら便益を得ることのない中高所得層の不満が募り、最低保障年金の給付水準を引き下げようとするかなり強い圧力が生まれてくると、わたくしはみている。<(p.141)

JRF2015/1/287275

一方で、未納未加入を誘うような報道やキャンペーンを鋭く批判していた。

>公的年金に加入した労働者が加入しないでいるよりも得をしているように生活レベルで受け止められた本質的部分は、事業主負担 -- 日本の国民年金のような場合は国庫負担(…もある…) -- の存在からきているのである。ネズミ講のように後世代ほど加入者が増加することにより、前世代が儲ける仕組みを前提としているから、加入者のお得感が生まれるのではない。<(p.145)

JRF2015/1/285110

18世紀のイギリスで、>パンの価格と世帯規模に応じた最低生計費の不足分を、救貧区=教区が補うという、善意と誠意に満ちた制度が生まれた。<(p.532)これをスピーナムランド制度、救貧法という。

それが裏切られ、新救貧法となり、[google:ミーンズ・テスト スティグマ]のある生活保護制度へとつながる。そうして生活保護もこの先きっと厳しくなる一方だから、年金未納未加入は、自分が苦しくなるだけで、やめたほうが良いと教えてくれる。

JRF2015/1/287815

……。

著者は、基本的に年金一元化を支持する方向のようだが、細かいところでは「パート主婦」の問題について、それが外食産業等の反対があって適正化できていないと、経済用語解説を親切にしつつ、嘆いていた。

>経済学のなかで、なかなか切れ味のするどい概念でありながら、学生たちが理解しづらいものとして、機会費用、比較優位、埋没費用、そして帰属計算があると、わたくしは思っている。このうち、帰属計算の話をするときに、(…年金の…)第三号被保険者の例を出したりする。<(p.159)

JRF2015/1/286869

>もっとも、専業主婦による家計内生産物の帰属計算(…は難しい。…)しかしながら所得がよくわからないときの年金保険料の負担は、国民年金の定額負担というふうにこの国では決まっているのであるから、(…それを払え…)という論理も成立する。<(p.162)

JRF2015/1/288670

……。

本書に収められた大部分は、権丈善一ゼミのホームページから読むことができるようだ。
《Kenjoh Seminar Home Page》
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/seminar/

JRF2015/1/282396

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