cocolog:81722226
ウィーナー『サイバネティックス』を読んだ。いつものごとく数学は飛ばしながらだけど…われながら情けない。orz (JRF 5629)
JRF 2015年2月 2日 (月)
"Cybernetics" はウィーナーの造語と Wikipedia にも書いているが、訳注によると電気学のアンペールが>科学の分類に関する哲学的研究に "Cyberne'tique" という語を人間を操縦する意味で使っている。<(p.373)日本語に無理に訳せば「航人術」「航人学」あたりだろうか。読みとしては「ッ」抜きの「サイバネティクス」で私は覚えてた。
JRF2015/2/27489
大事なところを「引用」しておくにも、訳者あとがきにある>"ウィーナーの著書には新しいことが驚くほど少ない"<(p.393)という反語的印象が的を得ていて、どこも大事だし、かと言って驚くような哲学的示唆は特に今の時代となると少ないように思う。
ただ、計算機の初期のころ、Eniac とかの運用に携[たずさ]わった経験などからくる記述…例えば、真空管が焼き切れるのを探知するための方法とか書かれてたりするの…が、コンピュータマニア心をくすぐる。
今回は、大事なところ、印象的なところ…というわけではあまりないが、本の雰囲気を伝えるところをややランダムに抜き出そうかと思う。
JRF2015/2/25333
ちなみに、本の文は ",." を句読点にしているが、引用では "、。" になおしている。
JRF2015/2/29522
……。
先に最後のほうに付いてる訳者あとがきの部分から。
>
統計的な考えは気象学・動態社会学・生物統計学・(…)脳波の研究にも適用されている。これらを取扱う数学は偶然性を考慮に入れた物理現象を統計的に表現するものであって、ウィーナーはこの観点からの科学を"準精密科学"と名付けている。もともと、この統計的な考えはマクスウェル、ボルツマンをへて、ギブズが20世紀の初めに樹立したものであったが、ウィーナーはルベーグ積分論を用いてギブズの物理学概念に数学的基礎を与えたのである。
JRF2015/2/28233
(…)
彼は(…)必然的な原因と偶然的事象とが、この世界で果す役割の相対的関係を検討することの必然性を力説し、今後の研究がニュートン以来の精密科学の全様相に大きな影響を与えることと信じている。
<(p.395,396)
以上が本書の大枠の関心ということになるかと思う。
JRF2015/2/23897
数学部分はよくわからないが、次のようなことを示していたらしい。
>オートマトン(訳:自動機械)の概念が社会の現実の関心事となったことを指摘し、フィードバックその他の研究が、かんたんな線型の問題から出発して、いまでは非線型の重要な概念に進展していることを強調している。そのための数学的方法としては、古典的な三角函数の代りに、著者が 40 年にわたって興味をもっている確率函数を用いることが適当であることを説明している。<(p.397)
JRF2015/2/20902
計算機科学への貢献については…
>
計算機械の本質は一種の通信装置であることをウィーナーは認め、しかも、情報を指令として遂行させるものであることから、自動制御機械の理論全体を通信の領域に含ませることができることを示した。
(…)
オートメーションは、高速度計算機による指令伝達機構であることを自覚して、その影響の深刻さを労使双方に早くから警告し、産業革命の到来を認識させた功は大きいといわなければならない。
<(p. 395)
JRF2015/2/26103
……。
本書は、文庫本になったのが 2011年、原発震災の年にあたる。巻末に足された解説で大澤真幸が次のように書いていた。
JRF2015/2/22468
>
構造-機能分析は、20世紀の中盤から後半にかけて -- 1970年代までは -- 社会学理論の支配的枠組みであった。
(…)
(構造-機能分析への)理論的な観点で、とくに重要な批判は、私の考えでは二つある。
JRF2015/2/25046
(…)
第二の批判は、複数の機能的要件の間の集計・総合に関する批判である。(…)複数の機能的要件を総合して、社会構造や社会状態を決定するという問題が、構造-機能分析に課されることになる。
一つの機能的要件を有するということは、その機能的要件を基準にして、社会構造や社会状態に好ましさの順序を付けることを意味する。(…)たとえば、「原子力発電所をもつ社会」は、経済に関する機能的要件にとっては非常に好ましいが、文化的な統合に関する機能的要件にとってはよくない状態かもしれない。
JRF2015/2/22218
(…)
第二に、理性の狡知は、サイバネティックスが説明を与えようとした「制御システム」の理論が、逆説的に、転倒した形で復活する可能性を示唆している。(…)サイバネティックスは、未だに死んではいない。それは新しいシステムの理論の中で、むしろ蘇生するのである。否定されたカエサルが「皇帝」として復活したように、サイバネティックスも復活する。
<(p.407-415)
JRF2015/2/27995
ちょっと感情的と言えるような文章に思うが、原発震災ゆえにロボットに注目が集まっている面があり、また、未だ進行中の事故の「終息」へ向けての制御が試されている。そういったあたりを述べているのかなと思う。
JRF2015/2/20567
……。
最初に戻って、ウィーナーの文から引用していこうと思う。
「第1章 ニュートンの時間とベルグソンの時間」から、
>一月経つか経たぬかのうちに、いわゆる制御機構とかサーボ機構とかについて次々と新しい本が出ており、また19世紀が蒸気機関の時代であり、18世紀が時計の時代であったように、現代はまさしくサーボ機構の時代といってもよい。<(p.101)
そういう自動制御の本がたくさんある講座に所属していたことがあるが、ついぞ読まなかった。私はコンピュータばかりをいじってた。インターネットの黎明期だった。
JRF2015/2/29875
……。
「第2章 群と統計力学」で、
>エルゴード理論は、直線の上の平行移動の群と同型な変換群よりも、もっと一般的な変換群にも適用することができる。<(p.123)
エルゴード理論は測度論の一種のようだが、フラクタル次元に適用するとどうなるのだろうと感じて[google:エルゴード フラクタル]でググるとそういう本があるみたい。
JRF2015/2/28328
この部分の章(第2章)の最初の訳注に次のように書いている。
>標的の各点に当る確率は 0 であるから、それをいくら加えても 1 にならないはずであるが、標的のどこかに当る確率は 1 である。したがってこのような場合、特殊な事象の確率を無限に加えて、全体の確率を求めることはできない。<(p.376,p.377)
JRF2015/2/25980
こういった「引っ掛け」は、三浦俊彦『ゼロからの論証』を思い出す。(リンクは↓からどうぞ。)
《シミュレーション・アーギュメントを論駁する》
http://jrf.cocolog-nifty.com/religion/2006/10/post.html
JRF2015/2/23152
……。
>
[google:マクスウェルの魔]はそれ自身周囲の温度に対応する不規則な運動をすることになって、ライプニッツが彼のモナドのあるものについて述べたように、魔はこの不規則運動から小さいがたくさんの影響を受けて遂には"目まい"を起こし、はっきりした知覚で活動できなくなってしまう。(…)
JRF2015/2/21424
(…)
しかし魔が動かなくなるまでにはかなり時間があり、この期間は相当ひきつづくので、この魔の活動期間を凖安定(metastable)といってもよい。(…)実際、酵素は準安定にあるマクスウェルの魔といてよく、これは速い粒子と遅い粒子を区別するかわりに、おそらく何かこれに相当する操作によって、エントロピーを減少させるのであろう。
<(p.127,128)
keyword: 負のエントロピー
JRF2015/2/22182
以前、↓というブログ記事を読んだ。
《Maxwellの悪魔を本気で甦らせる - 小人さんの妄想》
http://d.hatena.ne.jp/rikunora/20121130/p1
JRF2015/2/22817
……。
「第3章 時系列、情報および通信」で、
>われわれはこの予測の'良さ'の評価を、任意の統計的評価方法(…)を使って計算することができる。(…)過去についての知識から、ある瞬間より先の未来の全部についてわれわれに与えられる全情報量さえ計算することができる。もっとも、ある瞬間というのが現在を指すときには、われわれは一般に過去から未来を知るであろうから、現在に関するわれわれの知識は無限の情報量を含むこととなろう。<(p.146)
JRF2015/2/24300
このあたりは、『ダンガンロンパ』のひとこと [cocolog:74607467] の「タイムマシン」の議論を思い出す。
JRF2015/2/21103
……。
>
この変換の確率は長時間の平均においては二つの状態の確率、すなわち測度の相対的な比に関係する。この確率は、…)高い内部共鳴もしくは高度の量子縮退をもつような状態に対してとくに高いことがわかる。
(…)
ホールディンが指摘したように、量子論における粒子はどれも完全にはっきりとした個体性をもたないから、このような場合に増殖した遺伝子を二つもってきても、そのどちらが主型で、どちらがコピーであるかを的確にいいあてることは不可能である。
<(p.187,188)
JRF2015/2/20676
「内部共鳴」と「量子縮退」、私には、SFチックなアニメではよく聴く、なんかカッコイイ単語ぐらいの認識しかない。DNA はこの本の第二版のころにはわかってたはず、でもこういう記載がある。
JRF2015/2/25418
……。
「第4章 フィードバックと振動」で、
>人体(…)のような複雑な加法系は、単一のフィードバックでは安定化することができない。したがって、目的に達するのにまだどれだけ間があるかを観測して仕事の進行を調整する、随意的(voluntary)なフィードバックは、他のフィードバックの助けを必要とする。これをわれわれは姿勢的フィードバック(postural feedback)と呼んでいるが、それは筋肉系を全体としてある状態に維持することと結びついている。<(p.210)
JRF2015/2/24706
昔書いたフィードバックに関する私のひとこと↓とは用語の厳密さが違うね。
[aboutme:137093]
>フィードバック入力の「マイナスの」時間遅れ…って応答が予測をしていることになるから変に思うけど、要するに、「本来の入力」が「フィードバック入力」のフィードバックになっているということだよね?(…)「言わんでもええ」ことがあるのは(…)あるものを認識したいという気持ちが、それが認識できるような行動を起こすが、その気「持ち(積分要素)」の出所が個人ではなく社会といっていい場合がデフォルトであるというに過ぎないのではないか?<
JRF2015/2/27416
……。
「第5章 計算機と神経系」で、
>神経は本来二つの活動状態、すなわち興奮(発火)と休止の状態をもつ継電器であると考えてよい。(…)"閾値"は単にシナップスの数に依存するだけでなく、その"強さ"(weight)や、刺激を送りこむべきニューロンに対するシナップス相互間の幾何学的関係にも依存するのである。<(p.232,233)
JRF2015/2/28964
>以上の情報の蓄積法のほとんど大部分に共通な重要な物理的要素がある。これらの方法には、高度の量子縮退のある系(…)が利用されているように思われるのである。強磁性体の場合は確かにそうであるし、また情報蓄積用の蓄電器に特に適している高い誘電率をもった物質もそうである。(…)高次の量子縮退をもつ物質は、新陳代謝や生殖作用などの多くの問題と関連をもっているようである。<(p.238)
JRF2015/2/22717
ちょっと前のひとことで↓と書いたが、ニューロンのモデルでなぜ計算ができるのか疑問に思っている。「幾何学的関係」にも意味があるなら変わってくるのかな?
[cocolog:81437980]
>著者らは、ペトリネットとかパーセプトロンのようなニューラル・コンピューティングをモデルとしているようだが、学生のころの私の印象では、それらに十分な計算力はなく、どうにもそこに推論構造が作れるとは思えない。<
JRF2015/2/28723
……。
「第6章 ゲシュタルトと普遍概念」の章で、
>結局われわれの扱っている対象は、たがいに交換できる部分品から成る一般的用途をもった要素の単なる一時的な寄せ集めではなく、計算機械の加算装置や乗算装置のような恒久的な部分装置に似た特殊な機構であるという印象を与える。したがってこのような部分装置がどのように動作するのか、またそれを設計するにはどうしたらよいかを考えるのは意義のあることである。<(p.261)
『色彩論』を書いたゲーテが喜びそう。
JRF2015/2/20014
……。
>近年、喪失した感覚を他の残った感覚で補う問題にかなり関心がもたれてきた。そういう試みのうちで最もはなばなしいものは、盲人のための、光電池を使った読字器の設計である。<(p.265)
こうした話題は昔からあるんだね。今は↓な感じ。
《盲目のプログラマーはどのようにコードを書くのか | スラッシュドット・ジャパン》
http://developers.slashdot.jp/story/15/02/01/0645242/
JRF2015/2/26614
……。
「第7章 サイバネティックスと精神病理学」で
>現代の電子回路の信頼度は、最も楽観的な期待をさせはるかにこえるほど高くなっているが、このような事情の下では、どこか一つの演算操作がまちがうという危険を無視することはできない。<(p.274)
このひとことの最初のほうに述べた切れた真空管の取りかえなどの描写がある。
JRF2015/2/20683
……。
私が患ってる統合失調症のような…
>機能的な精神疾患とは、根本的には、活動している脳によって循環している情報の異常、あるいはシナップスの長期的な透過率の変化の異常によって起る記憶の病気であると考えるのは自然なことであろう。<(p.278)
JRF2015/2/27380
昔は、精神病に対し、p.281 にあるような前頭葉切除術から、電気・インシュリン・メトラゾールなどの衝撃療法を用いていたらしい(怖い!)が、今は、(例えば私のように)経口薬を使って治してもらっている。
JRF2015/2/29308
>人間の脳は、解剖学的に考えられるすべての機能を効率よく活用するには、おそらく既に大きすぎるのであろう。ネコの場合は、(…脳の…)優性半球を破壊しても人間の場合ほど損傷を受けないように見えるが、劣性半球の破壊は人間の場合よりも大きな損傷を生ずるであろう。(…)器官があまりに高度に専門化すると効率が減退し、ついには種の生滅にいたるという、自然の限界がある。(…)人間の脳は最後の恐竜の巨大な鼻角のように、破壊的専門化の道を進んできているのかもしれない。<(p.291,292)
JRF2015/2/23534
……。
「第8章 情報、言語および社会」で、
>(…)哺乳動物の性的誘引のための物質は、外部との通信の役目をする外部ホルモン(exterior hormone)と考えられる。(…)もっとも、それらが嗅覚器官に達したときにも、神経をとおしてでなく、ホルモンとして作用するというつもりではない。(…)しかし一方、このような物質の極微量がホルモン作用をもつ可能性をはっきり否定するにも、われわれのホルモン作用についての知識が不足している。(…)炭素原子の長いねじれた環は(…)連鎖環構造につくりかえることができる。(…)面白い一つの考え方として述べておく。<(p.295,296)
JRF2015/2/22968
以前書いたホルモンに関するひとこと↓。
[cocolog:74725750]
>海から戻る分は、陸から流れていく分と比べれば圧倒的に少ないのだから、「環境ホルモン」的なものと考えるべきなのか?(…)「ホルモン」に価値があるというのは、生態系には、ある種の「ホルモン」を禁じるようなメカニズムが具わってるということか?(…)木を隠すには森の中という。EM 菌周りの実験者・批判者の中には案外「本物」がいるのかもしれないな。<
JRF2015/2/23767
まぁ、全員が「本物」であるわけでないことも明らかなんだろうけど。
《なぜEM(EM菌)はインチキでニセ科学と言われるのか - NATROMの日記》
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20150131#p1
JRF2015/2/24356
……。
>もちろん、完全に理詰めで、完全に無情な人間として描かれたフォン・ノイマンのプレーヤーの像は事実の抽象であり、歪曲でもある。(…)こういうふうに嘘をつけば(…)愚者に特定の煙草を買わせることができ、(…)宗教、好色文学、エセ科学を上手につきまぜると絵入り新聞がよく売れ、甘言・贈賄・脅迫を適当に混ぜれば若い科学者を誘惑して誘導弾や原子爆弾の研究をさせることができる。<(p.301)
JRF2015/2/25540
ちなみに…
>第二次世界大戦のために、彼(…著者であるウィーナー…)は自動照準機・レーダー・誘道弾の研究を行ない、統計的通信理論の妥当性を立証したのである。<(p.395, 訳者あとがき)
JRF2015/2/26806
……。
>このように成員の間の結合が密接な小さな共同社会は、高度の教育をうけた人たちの文明社会であろうと、原始的な社会であろうと、相当な程度の恒常作用をもっているのである。(…)無情なやりかたが最高の水準に達し得るのは大きな共同社会における場合だけである。
JRF2015/2/24676
(…)
そういう社会で栄えている人々(Lords of Thiings as They Are)は、飢餓からは富によって、世論からは秘密と匿名によって、個人的批判からは名誉毀損に関する法律と報道手段の所有によって彼ら自身を防衛するのである。社会における、これらの恒常作用に反する諸因子のうちで、報道手段の統制がもっとも効果的で、また重要なものである。<(p.302,303)
JRF2015/2/20967
この時代に、このような意見を公けにするのは勇気が必要だったのではないだろうか。
昨日、フリージャーナリストがシリア近辺で拘束、人質にされ、殺される事件があり、「これからは日本人全員が標的となる」旨の声明が、広く報道されている。YouTube の時代、少ない犠牲で高い脅迫の効果を得られている。こんなことも国を名乗る集団内で許容されるのか、ヒジュラの「伝統」があって、そういう方法に周囲に理解ある面もあるのではないかと疑う。
一方、沖縄で何か起きてるらしい噂をチラホラ見るが、主要なメディアでその話題をどうも見ない。報道が統制されているのか?
JRF2015/2/26312
……。
「第9章 学習する機械、増殖する機械」で、
>
マングースは、体の表面が剛毛でおおわれていて、ヘビに咬みつかれにくいように保護されているが、(…)コブラの毒に感じないわけではない。キップリングが述べているとおり、両者の闘いは'死との舞踏'(dance with death)であり、身のこなしのたくみさと、すばやさの争いである。
JRF2015/2/24350
(…)
舞踏は静止的なものではなく、だんだんと激しくなる。そのうちにマングースがさそいをかけるのが、コブラが突進するのにくらべて、律動の位相がだんだん速くなってくる。最後にコブラの体がのびきて、身軽に動けなくなった瞬間をとらえて、マングースが攻撃を加える。(…)ヘビの行動の型は、単に一つ一つの突進をくり返すだけである。それに対してマングースの行動の型は、今までの闘争の(…)かなりの間の経験をとり入れている。マングースは、そのくらいの程度の学習機械として行動している。
<(p.322,323)
JRF2015/2/21653
マングースの動きをコブラが学習したところを見はからって、マングースが奇襲をかけているようにも読める。
JRF2015/2/24210
……。
>第三次世界大戦ほど、考えても身の毛のよだつものはない。この危険の一部が、学習機械を不注意に用いることから本質的に生じるものではないだろうかということは、考えてみるに値することである。(p.325)
>戦争に勝つ機械をプログラムするには、勝つとはどういうことかということをよく考えなければならない。学習機械は経験によりプログラムされなければならない。核戦争の経験で、破滅に直接結びつあないものは、戦争ゲームの経験だけである。(…)戦争ゲームをプログラムするときに用いる勝利の評価と、実際の戦争のとき、われわれが感じる勝利の評価とが同じものでなければならない。<(p.329)
JRF2015/2/26266
……。
>以上のわれわれの成果によれば、どんな特性の非線型装置にもなれる明箱を作ったこととなり、さらにこれを用いて任意の与えられた暗箱の類似装置を作る方法を与えたことになる。(…)遺伝子が'鋳型'として動作するときの機構や、ウィルスがその宿主の組織と体液から自分に似せて他のウィルス分子を作る機構と、今まで述べてきたこととは思想的にひじょうにかけはなれたことであろうか。<(p.334)
JRF2015/2/26813
自己増殖というと、(↓内の)jrf_semaphore.pl 内の JRF::MyOO とかは、public domain だから、気に入ったら勝手にコピーしてね…という形で自己増殖するとか考えてた。
《JRF Flag Semaphore for NES Emulator を作った》
http://jrf.cocolog-nifty.com/software/2014/03/post-1.html
JRF2015/2/21461
……。
「第10章 脳波と自己組織系」で、
>電気生理学の進歩は、新しい技術によらなければならなかったのである。それは(…)二つの形態をとって現れた。その一つはエジソン(Edison)が発見したガスの電気伝導に関するある種の現象にもとづくもので、それから増幅用の真空管が生まれた。<(p.337)
エジソンと言えば>後半生は死者と交信する電信装置 (Spirit Phone) を研究していた。<(Wikipedia)が、私はちょっとそれを想起した。
JRF2015/2/27446
……。
>非線型機構では周波数をずらすことも決して不可能ではない。われわれが今まで考察してきた場合では、この移動は周波数のひきあい(attraction)のような性質をもっている。(…)脳にほぼ10サイクルの周波数の発振器がたくさんあり、ある範囲で、これらの周波数がひきあっていると考えてみよう。<(p.364)
JRF2015/2/26844
>ホタル(…)のように、われわれが検出できる視覚的または、聴覚的インパルスを出したり、あるいはこれらのインパルスを受けとったりできる動物を研究すれば、多分私の脳波の仮説の妥当性をはっきりさせるおもしろい実験をくふうすることができるであろう。(…)ホタルがいっせいに明滅する(…ことがあるが、…)上にのべたと同種の周波数のひきこみの現象がそこに起っているとは、考えられないであろうか。<(p.366)
JRF2015/2/28065
>
電気工学の初期に、現在の発電系統に用いたと同じ定電圧型の発電機を、並列ではなく直劣につなぐ試みがなされたことは、歴史的に見て興味のあることである。(…)この種の系統は手がつけられなほど不安定であった。(…)生物学的な類推でいえば、並列系統は、直列系統よりも、よい恒常作用(homeostasis)を有していたため生存し、直列系統は自然淘汰によって死滅したということになる。
このように、周波数のひきこみを生じる非線型の相互作用は自己組織系(self-organizing system)を作りうることがわかった。
<(p.368)
JRF2015/2/27854
自己組織系というと臨界を思い出す…。
keyword: 臨界
JRF2015/2/26610
[aboutme:119506]
>我々は、ゆっくり魂を崩壊させる臨界の中を生き続けているのではないかとふと想像した。<
[cocolog:81611945]
>原爆が最初に爆発したとき、世界がある意味一度終ったのではないか。それ以来、私達はイマジナリーな生を部分的に抱いて生きている。原発震災によって、イマジナリーな部分は増し、私自身が生きているかも自信を持てない。互いに魔術みたいなもので支えあっているのが今の我々の生なのだ。<
『攻殻機動隊』などにいうゴーストが、臨界の中で、ひき合うように見えることとかあるんだろうか?
JRF2015/2/29504
typo 「である。(p.325)」→「である。<(p.325)」。
JRF2015/2/24913
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受信: 2015-06-28 14:29:24 (JST)
『サイバネティックス』(ウィーナー 著, 池原 止戈夫 他 訳, 岩波文庫, 2011年)
http://www.amazon.co.jp/dp/400339481X
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1106042906
原著初版は 1948年、第二版が 1961年。日本語訳は、初版が 1957年、第二版が 1962年だが、文庫版は 2011年と、つい最近出たばかりとなる。
JRF2015/2/28315