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cocolog:82677905

権丈善一『再分配政策の政治経済学 I -- 日本の社会保障と医療』(第2版)を読んだ。なお、この続編の中の一冊、権丈善一『医療年金問題の考え方』は [cocolog:81686660] ですでに読んでいだ。 (JRF 1840)

JRF 2015年6月16日 (火)

『再分配政策の政治経済学 I -- 日本の社会保障と医療』(権丈 善一 著, 慶応義塾大学出版会, 2001年 2005年第2版)
http://www.amazon.co.jp/dp/4766411676
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1102213915

JRF2015/6/167024

例のごとく、数学はほぼ飛ばしながらなんだけど…。そんなに難しい数学でもなかったように思う。

私は物理の勉強がしたいと [cocolog:82547760] で、量子力学、統計力学、フラクタルなどの「難しい」本を挙げた。でも、私にとって「必要」なのは、この本に載ってるような数学までで、それに関してシミュレーションモデルを作ったり、統計解析の意味をちゃんと理解できるようになるほうがよっぽど大事で、それで十分ではないかとかチラと思った。理論物理に絡んだむつかしいことなんて、役に立てる機会は、どうせ私にはこれから来そうにないんだから。

JRF2015/6/165109

では、例のごとく引用集をチラと。

JRF2015/6/166022

……。

>未組織な有権者内での再分配は、有権者の目にみえて理解が容易な、減税とか有権者への一時金の支給などの単純な政策手段が用いられる傾向をもつであろう。<(p.56)

JRF2015/6/161762

前回 [cocolog:82653950] で「改善策」を示したプレミアム商品券とかね。今、最大与党が組んでる小与党に関して「バカにされる」ような政策の責任を押し付けてる…という面がある、と見る人はいるんだと思う。でもね、昭和のころを思い返すと、そもそもアメリカに対する日本がそんな感じだったように思うんだよね。日本には「バカな政策」の実験場みたいな面があった。…んだけど、それをうまく使って政治目標を達成していく「したたかさ」があった。それは、今の最大与党ができなくなってる芸当のようにも思う。なんでかは知らんけど。

JRF2015/6/164764

……。

p.61 あたりから、「労働集約的財の海外供給者による自発的輸入数量制限」のほうが「労働補助金」に比べて不明瞭で、非効率的なんだけど、不明瞭であるがゆえに理解がされず批判がなされにくいため、選好されてしまう…ということが観察される。

>しかしながら、政策手段の不明瞭さ(命題8)については、未組織な有権者が、政策手段が「簡単明瞭(clear and plane)であることを要求する運動を展開し、不明瞭であるがゆえに不支持とする姿勢を示すようになれば、みずからの主権を拡大する方向に、状況をわずかでも改善することができるのではなかろうかと期待できる。<(p.68)

JRF2015/6/165287

でも、一方、BSE問題のとき、「わかりやすさ」優先を主張すると次のようなリスクがあった。

はてなブックマーク - 《記者の目:BSE全頭検査は税金の無駄=小島正美 - 毎日jp》
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20071002k0000m070174000c.html
jrf:>BSE検査については私は判断保留。違った職責の関係者の関与は安心の再分配に役立つ「かもしれない」。ただ>全頭を検査しても、4頭のうち3頭(B~D)は市場に出荷されている。<ってのは…わかりやすさを優先?<2007/10/05

JRF2015/6/165717

で、「わかりやすさ」優先というのは、テレビでだったかな、医療関係者の口から(または読んだかで)出たことをおぼろげながら覚えている。

「簡単明瞭」を求めるのはそれはそれで副作用が強いような気もする。

JRF2015/6/168587

……。

>「医療サービスのように、いろいろな人にとってのそれの利用可能性が彼らの所得だけに依存するべきでない財・サービスが存在するという見解は、特殊平等主義として知られている。(…)」<(p.101)

>もし、民衆が、終末期医療にはじまり葬儀に終わる過程を〈社会的必需品〉の消費過程とみなしており、それゆえにこれらサービスの〈所得弾力性〉が低くなっているのであれば、統治者にとって、この過程を特殊平等主義的なカテゴリーに組み込むことは望ましいだろう。<(p.104)

JRF2015/6/161649

[cocolog:82346841] で>散骨とかは手続きが難しいらしく、それをキリスト教とかに頼むのはスジ違いで、「墓はいらない」とかが「ちょっと変わったことを頼む」ことになって、「ちょっと変わったこと」にまで対応してるのは、仏教のみがデフォルトといった感じらしいね。<と書き、[cocolog:82413218] で>国教会というものがあれば、私も楽だったのかな…と思う。<と書いた。

JRF2015/6/165830

それが「社会的必需品」と認められ、ベーシックなものが提供されるのは、少し違和感は残るけど、安心感はあるかな。あとから死を知るような少し離れた親族も罪責感を感じずに済むなら、そのほうがいい。

JRF2015/6/169639

……。

>2000年から2025年までの25年間で、日本の人口は約4.7%減少するので、その間、生活水準を維持するための必要成長率は、年率 -0.19% 程度(…)と推計される。<(p.151)

えっ、そうなの?財政を見ず、GDP だけから見ればそうなるんだね…。

よく「2025年」を最近キーワードとして聴くけど、それ以降は何か変わるのかな?

JRF2015/6/164854

>図6の「人口/就業者数」にみるように、就業者1人当たり人口が約2で安定しているということは、1人の就業者が、自分を含めて2人分のパイを生産しつづけることにより、日本の経済を支えてきたということを意味する。<(p.160)

65歳以上の高齢者1人に対して生産年齢人口が何人いるかという数値を出すと、絶望的になるが、「人口/就業者数」で見るとこの先もそれほどでもない…と。少し安心できる見方だが、問題はその意味だよね。65歳を超えても働く人や、子供が働くことが増えるということになるんじゃないのか?

JRF2015/6/160079

……。

>年金に対する不信感は信じ難いほどに一般化しており、この不信感による将来への不安感を原因として、人びとは現在の消費を手控えている側面もあろう。<(p.179)

これは、そうだね…私は特に最近(2014年4月の入院以降)そうなった。ただ、年金というよりは生活保護への転落も含めた不安だけど。

JRF2015/6/163314

……。

>医療・福祉マンパワー部門、その他3K職種において労働不足が生じ、日本がよほどの高失業社会にならないかぎり、これらの部門に労働力はスムーズに供給されないであろう。<(p.182)

そうなのか…やはり…。ロボット化等に期待してたんだけどな…。今、私はそちらの方向に(肉体的に)貢献すべきかも迷ってるんだよね…。原発震災の「後かたづけ」に貢献できたらステキだな…とは思う。そこへの道として3K職種を見ることはできる。

JRF2015/6/169975

……。

>「もしアメリカが[医療費]規制制度を確立することができず、その代わりに、高齢者や経済的に不利な者に対する援助を縮小しつづけるのならば、それは、他に解決策がないからではなく、アメリカ人が必需性の幻想(illusion of necessity)を選択しているからにほかならない」<。(p.198)

この辺はオバマ・ケアで変わったんだろうか?

JRF2015/6/161539

……。

スウェーデンの医療費抑制…

>その手段は、表9にみるように1982年の社会サービス法施行の頃から、病院病床を急激に減らす道を選択し、老人「医療」部門を老人「介護」部門に転換する政策を進めることによるものであった。<(p.218)

JRF2015/6/166588

↓はあってたのかな…?

はてなブックマーク - 《解説委員室ブログ:NHKブログ | 視点・論点 | 視点・論点 「シリーズ格差・医療」》
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/4918.html
jrf:>軽度疾病に関しては「まじめさ」を決め打ち連関を調べる…ってこと?病床を減らす…のも大胆だ。「病床」にカウントされるものが減ってるわけではないの?<2007/10/04

JRF2015/6/168716

直近のニュースもそういうことか?

《病床数を最大20万削減 25年政府目標、30万人を自宅に :日本経済新聞》
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H75_V10C15A6EE8000/
>手厚い医療を必要としていない30万~34万人を自宅や介護施設での治療に切り替える。<

JRF2015/6/167253

私は精神病で長く入院した経験を持つが、「施設」入居は、いろいろ持ち込めなかったりするし、「欲しい物」を持ち込んだり、探したりするのには協力者が必要だったりして、大変なんだよね。だから自宅でできればいいという思いはわかる。でも、「自宅」は何かとお金がかかる一面にあって、私の将来は何がしかの施設に頼るしかない気もする。またはそうなる前に死ぬか。

JRF2015/6/169942

……。

社会保障費が心配だといいながら、その目的税化には反対する。…

>したがって、政府が、政策キャンペーンを行い、投票者に「社会保障」の重要性を説いて、「社会保障」の租税価格弾力性をより一層小さく認識させるキャンペーンを行いつづけるはずなのである。<(p.256)

…ということが理論的に言えるというのがすごいね。

JRF2015/6/165573

……。

目的税は族議員を育て、財政を硬直化させるが…、

>目的税は普通税と比べて財政の硬直化を招きやすいので、これには問題っあるという目的税に対する定型の批判は、社会保障のように、フローの供給に回されるばあいには、あまり当てはまらないということになる。<(p.262-263)

ストックの維持管理という部門が族議員をサポートしているということなんだろうか…?よくわからない。

JRF2015/6/169292

……。

看護学校は奨学金が充実している。その上で…

>初任給をはじめとして高い給与を支払いながら給与費総額を抑制する手立てはあるからである。その手立てとは、看護学校を卒業したての若い看護職員を比較的高い給与で雇用したうえで、早期退職させる労務管理政策を重ね合わせる方法である。そして、看護学校とのつながりをもつ医療機関が、重層化された寡占市場におけるリーダー的役割をにないながら、こうした労務管理政策を採っていることは十分に考えられる。そしてこの時、給与支払体系が相対的に高くなった地域においては、看護職員の再就職先となるフォローワー的医療機関での経営は、相当厳しいものとなる。<(p.315)

JRF2015/6/165009

うーむ。心当たりがあるようなないような…。早期退職者を受け容れられるような上位看護者というのはそれはそれで(管理者としての経験等が必要で)限られるようになってるのかな?

JRF2015/6/165094

……。

著者は、むしろ「医師誘発需要」を肯定していて…、

>おそらく、医師の目からみれば、消費者の医療ニーズがゼロになるのは、死の転帰をとる場合を除いて、普通は考えにくいことなのかもしれない。(…)医療ニーズは潜在的には重層構造をもって無限に存在(…する。…)<(p.356)

…これは悪い意味にとってはダメなんだろうね。人類の可能性とかそういう方向なのだろう…。

JRF2015/6/165982

……。

以上、引用ではうまく印象を伝えられなかったと特に今回は思う。数式は少しあるが、ほとんどは読み物で、読みやすい。中古で安く手に入るので、ある程度の年齢以上の方は、一度、読んでおいたほうがいいかも…と言える書籍ではないか。私はそう思った。少し議論が古い…原発震災前でもある…という点はあるけど、そのあたりは、権丈善一氏の新刊を読めばいいのだろう。高くて私はとても買えないが。orz

JRF2015/6/166953

typo 「お金がかかる一面にあって」→「お金がかかる一面もあって」。

JRF2015/6/163930

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