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兼好法師『徒然草』を松尾聡『徒然草全釈』で最後まで読んだ。 (JRF 9123)
JRF 2015年6月13日 (土)
兼好法師の本名は卜部[うらべ]兼好[かねよし]とのこと。私は「吉田[よしだ]兼好[けんこう]」として習った。
読み方としては、まず本文を読み、注を読み、戻ってまた本文を見なが口語訳を読むという感じで読んでいった。
JRF2015/6/134190
……。
第91段では、太歳神(木星)の西門の番神を「赤舌神」というそうで、それに因んだ「赤舌日」というのがあるが、陰陽道では言わない…とかいう。大赤斑を想像させる名前。[cocolog:82346841] で現代だと「アニミズム」に大赤斑に関する信仰が出てきてもおかしくないと書いたが、すでにあったのかな?
JRF2015/6/139836
第93段に、牛を売ろうとした人が、買う人を見つけて売り渡す直前に、牛が死んだことに、無常感にひきつけて何か言おうとしてうまく言えなかった人の話がある。売ろうとして失った分のその対価分は無常に消えゆくのだから、対価があると思えるどんなことも無常なんだ…といったことがその人は知れた。それが、その牛と、その牛を失ったことの価値だったんだ…といったふうなことなんだと思うが…。
JRF2015/6/138731
第98段では、兼好法師が、今私がやってるみたいに、他の人の「一言芳談」の気になったところを書き出している。
第111段では、囲碁・双六(など)を好んで、それに耽[ふけ]って暮らす人は「ダメ人間」みたいな話がある。今だとゲーム狂いがそうか。耳が痛い。
第116段には、最初は、寺院の号の、ついで人名の「キラキラネーム」批判がある。そういうのは昔からあるんだね。
JRF2015/6/138471
第130段は、競争心の害を論難するところだが、「自分が負けて人を喜ばせようと思うなら、いっこう遊びの楽しさはないにちがいない。」というところ耳が痛い。対戦格闘ゲームのネット対戦でほとんどワザと負けるようなことを以前やっていた。もちろん、本気でやっても勝てないから自然そうなったのだが、ハメ技で負けた人が「鬼」となり他の人に報いてハメ殺ししようとするのを脱けて、脱け方を教えるみたいなことができたらステキだな…という思いからそういうことをやっている面もあった。そういうのを思い出した。
JRF2015/6/132219
第136段で、知識を誇ろうとした医師[くすし]が、「しほ」という字はどう書くかでハメられ「土へん」としか応えられなかったことが載っていた。解説では、「塩」は簡略化した字であることを知って難しい字である「鹽(うまくフォントで出せてるか自信がない)」(部首は鹵=しお)を想定して答えねばならなかったとしていたが、これは「潮」の「さんずい」でもいいし、いろいろあるということで、それを差し当たり「つちへん」と解くのは、当時のくすしとしては間違いではないのではないかと思った。
JRF2015/6/136651
第145段に、「桃尻」が出ている。『桃尻語訳 枕草子』とか昔あったが、「桃尻」の意味は、尻のすわりが悪いこと、この段では、馬の鞍に尻のすわりが悪いことだった。第188段にもほぼ同じ意味で「桃尻」の語が出ている。
第152段で、ある和尚が腰が曲がり眉白くなったのを「とふとし」としたのを見て、藤原資朝が年をとったむく犬も「とふとし」だろうと皮肉ったのを書いている。なお、この資朝卿は、1332年に43歳で斬られ死んでいる。
第175段では、酒の話を書いている。まず害悪を述べ、後によいところをめでている。途中、道で吐いたり、年とった法師が小童にちょっかい出してるのを批判している。
JRF2015/6/135912
第188段で、「万事に代へずしては一の大事なるべからず。」とある。「一所懸命」というやつだが、プログラムとかやってた経験からいうと、できることから仕上げていくという態度も大事で、一つの方法だけに拘[こだわ]っていては逆に失敗することもあると考える。ただ、「やってみるほうが早いことがある」(参:[cocolog:74928048])ということから、一所に拘ることも時には必要だとは思うが。
JRF2015/6/135295
第190段では、妻訪[つまど]い婚をよしとする兼好法師の結婚観の表明がある。現代は嫁取り婚なわけだが、今の少子化の時代、妻訪い婚を認めるような行政施策も何かあったほうがいいということはないのかな…そういうほうが「楽」な人はいないのかな…とかチラと思った。
第195段で、かつて高い地位にあった人が狂って、野の地蔵を洗うという話があった。清さにこだわるというところ…逆に糞を塗りつけるようなところ、いずれも、私の病に関連してはあることなので、少し感じるところがあった。
JRF2015/6/132438
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第197段に「定額[ぢやうがく]」という語(「人数が定まっている」低い位の…ぐらいの意味)が出ていた。私は消費税の定額還付という政策(今は原発震災前ほど積極的にはいわないが)支持しているが、それがプレミアム商品券みたいなアイデアに「化けた」(ように私に見える)のは、この昔の「定額」に関するあてつけがあるのかなとチラと思った。
JRF2015/6/133636
最近、ある事情があって冷凍のおかずセットの宅配を使ったのだが、こういうのにもプレミアム商品券が使えたらいいのにと思った。そしたらミーンズテストのいらない[google:フードスタンプ]みたいな効果を出せるのではないかと思った。食料ならなんでもとなると、ふるさと納税みたいな「贅沢品」に使われてしまう。一方で、フードスタンプにはミーンズテストが必要とされかねない。
JRF2015/6/134311
定額還付の目指した「ミーンズテストなし」の「ベーシック」な給付に対応させるには、商品の側でフードスタンプにふさわしいかの認定を受けさせてから、その認定を受けていれば全国どこでも各地方用のプレミアム商品券で宅配品を買うことができるとすればいいのではないかと考えた。
JRF2015/6/139602
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第220段に、「凡そ鐘の声は黄鐘調なるべし。」とある。黄鐘調はイ調、つまりラの音、Aの音で、Aの音が標準なのは今のクラシック界も同じはず。音の世界の伝統はすごいな…と思った。平家物語の「祇園精舎の鐘の音」も黄鐘調。この段には、寒暖により調が狂うので、ある決まった時期の音で調律しているという話も載っていた。
第221段には、「道志」という語が出てくる。私は「道士」を目指せばいいのかな…とちょっと思っていたが、「道志」には厳しい資格の取り決めがあるようで、こりゃダメだと思った。
JRF2015/6/133900
……。
第222段で「亡者の追善には何がいいか」という仏道の問いに、念仏の法然の弟子の乗願房が「南無阿弥陀仏」ではなく「光明真言、宝篋印陀羅尼」と答えて一悶着あったという話がある。
JRF2015/6/138996
《finalvent on Twitter: 6月10日》
https://twitter.com/finalvent/status/608603505356439552
>日本の仏教の事実上の機能は:
1 病気平癒 -- 薬師如来
2 難逃れ -- 観音菩薩
3 死後の救済 -- 阿弥陀如来
<
…とのことだが、そこに定まるのは鎌倉時代だとまだ早かったということか。
JRF2015/6/134059
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第227段で、六時礼賛は、法然上人の弟子の安楽という僧が経文を集めて作って、太秦の善観房という僧が音譜を定めて、声明に作った…とある。が、この本の注にも Wikipedia にもあるように、六時礼賛は、法然が作ったとされている。しかし、兼好の単純な間違いなわけがないと見る向きもあるようだ。
《六時礼讃 - Wikipedia》
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E6%99%82%E7%A4%BC%E8%AE%83
JRF2015/6/131087
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第235段には、主[あるじ]のいない家には、いろんなものが入ってくる。だとすると胸にいろいろ去来する心にも主はいないんじゃないか…という説が見える。
第240段には山城国(今の京都府南部)の「くらぶの山」が出てくる。「クラブの山」だと今だといろんな意味にとれるね。…と最後はダジャレで私の各段紹介はおしまい。
JRF2015/6/138058
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最後まで読んでみて、前回の [cocolog:82616563] で書いたよりも兼好法師はりっぱな人だという思いを強くした。『徒然草』を書いてからも長く生きた人のようで、その点だけでも私は尊敬する。「身分」に私は嫉妬したが、智者であったことも認めざるを得ない。
《吉田兼好 - Wikipedia》
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E5%85%BC%E5%A5%BD
JRF2015/6/132029
この『徒然草全釈』には出てくる人物の没年齢が詳しい。長く生きた人も多く、混乱期という印象を抱いていたので、その点は意外だった。
JRF2015/6/131864
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受信: 2015-06-28 14:26:28 (JST)
前回 [cocolog:82616563] で第82段までは読んでいた。続けて残りを読んだ。
『徒然草全釈』(松尾 聡 著, 清水書院, 1966年 1989年新訂版)
http://www.amazon.co.jp/dp/4389203096
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1100659511
JRF2015/6/136956