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cocolog:85384301

Hamel & Prahalad 著『コア・コンピタンス経営』(原著『Competing For The Future』)を読んだ。昔、原著を両親からプレゼントされた。私はこういうのとまったく関係ない人になってしまった。この先、どうすればいいのか…。 (JRF 5671)

JRF 2016年6月18日 (土)

この本は英文の原著を持っていた。

JRF2016/6/187777

『Competing For The Future』(Gary Hamel and C. K. Parahalad 著, Harvard Bussiness Press, 1994)
https://www.amazon.co.jp/dp/0875847161 (1996 版)
https://www.amazon.com/dp/B0042OM8XM

JRF2016/6/187402

この原著は、十年以上(二十年以上?)前に、父と母が、カナダかアメリカかに旅行に行ってきたとき、本屋に山積みされていて、私がこういうのを読むべきだ、となぜか思ったらしく、それでお土産に買って来て、プレゼントされた本。

JRF2016/6/186462

英文の原著を、ずっと読む気になれず、またはそういう暇を持てずにきた。今はやることもなく無為に過ごしていて、親の世話になってばかりのところ、思い出して、この本を引っ張り出してきた。辞書を引きながら、原著をゆっくり読むことにした。

JRF2016/6/183021

……。

最初のほうで、この本のベースとなる主張だと思うが、コストカットしてダウンサイズするよりも、歳入を増やして未来を創れと述べる。それで、ウォールストリート流の「時代遅れの企業をコストカットさせてその分を新しい企業に回す」という方法(戦略)を否定的に見る。

JRF2016/6/181541

(ウォールストリート流のやり方は次のように表現されている。)


What Wall Street says to such companies is, "Go ahead, squeeze the lemon, get the inefficiencies out, but give us the juice (i.e., the dividends). We'll take that juice and give it to companies that are better at making lemonade."
<(p.11)

JRF2016/6/189300

ただ、未来図というのは簡単に描けるものではなく、未発見のものに対して大企業が投資するのはロスが大きい。新しいブドウ酒は新しい皮袋に…というわけで、小さい企業に起業させて新しい分野を探らせ、のちにそれに取り込む…というか取り込まれるのが、(「新自由主義」なのかな?)通常のパターンのように思う。

JRF2016/6/189796

そして、小さい企業が新しい挑戦をするためには、それ以前からある中小企業の技術的サポート等が必要で、そういう環境を国や地域がどう用意するかという視点はありうる。が、大企業がそれをするというのは結局、未発見のものに大企業が投資するのとかわりないことになり、無駄が多いというか、無理があるのだと思う。

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一方で、需要面から見ると、大企業の社員が果たす役割は大きく、大企業が安定的にうるおうことで、中小企業も安定できる。だから、ダウンサイズせずに大企業を新興企業が飲み込めるなら、それに越したことはない。が、ほぼそれはありえない注文になる。

JRF2016/6/189983

日本は、空前の金利安だから、大企業が未発見のものに投資するという方向も試せていると言えるのかもしれないが、これはいつまでも可能なことではないだろう…と私は思う。(現状、車の自動運転とか資本が必要な新発明がいろいろ控えているとはいえ…ね。)中小企業が大部、外に出てしまって、それで基礎体力が落ちているのも、この先、不安なところ。少子化だしね。

JRF2016/6/184462

私は仕事がなくって、空前の金利安なんだから、私に投資して欲しいという思いもないわけではないが、それを返せるか、追加投資なしで会社を維持できるかというと、それは絶望的ということになる。就職できない私は、まぁ、どうにもならない。

JRF2016/6/181542

この本は日本がバブル崩壊したあと数年しかたっってない1994年の本だから、日本がまだ元気があるように書いてあるのが少し悲しい。日本は日本株式会社としてダウンサイズの対象となり、そのジュースを他のアジア企業に与えるという役目になったのか…。そのわりには、国の規模…国の借金の規模は巨大になるばかりだけど。

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日本を構造改革するという路線に私は賛成だった。でも、そのためには非正規な働き方をする者には正規以上に手厚い保護(というか収入)があるべきだった。デフレでそれができなかった…と前は考えていたけど、労働争議の性質を考えると、原理的に無理な話だったのか。

JRF2016/6/187164

そういう状況なら、私みたいな者にも新規参入のチャンスがあったんではないかと思うが、新規参入のチャンスがどこにでもあれば、その者の収入は安く抑えられるのが道理でもある。だから、そういう非正規なものをまず集めて、労働団体という時代ではないから、派遣会社ということになったというのが歴史ということになろう。40歳を過ぎた私はそこにも合流できそうにない。

JRF2016/6/186996

……。

で、原著を最初のほうだけちょろっと読んだ段階で、上のメモを書き出して原著を検索すると、訳書が出ているとあった。せっかく親にプレゼントされた本なのだから原著で読んだほうがいいかという思いもないではなかったが、訳があるならそのほうが楽だ、訳を読んでから原著を読んでもいいし…ということで、訳本を中古で買って読んだ。

JRF2016/6/189032

『コア・コンピタンス経営 - 未来への競争戦略』(G. ハメル and C.K. プラハラード 著, 一條 和生 訳, 日経ビジネス人文庫, 2001年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532190312
http://7net.omni7.jp/detail/1101730698

(なお、1995年にこの文庫版の元となった訳本が出ている。)

JRF2016/6/184541

辞書を引きながら原著を引くのに比べ、読むのが10倍は早い。こりゃ私は原著は読まないわ…。

JRF2016/6/187627

……。

いくつか抜き書きしていく。

JRF2016/6/184522

……。

>単独で未来を創造できる会社は皆無に等しく、誰もが協力相手を必要としている。<(p.58)

JRF2016/6/186112

昔の家電メーカーとか、全部自前でやることで実力がつくという理屈もあったんだろうが、特にコンピュータがどんなものの心蔵部ともなる今の時代は、難しいのかな…と思う。OEM とかの在り方とか考えちゃうよね。

JRF2016/6/181353

高度な知識を持った小売店に近いユーザーが CGM みたいに家電の性能をいじるとかいう未来もありえなくはないんだろうけど、それはやらせず OEM で供給したいという考えが強いのかな。DRM とかも使って。まぁ、たしかに技術者的にはそのほうが平和なんだろうが、エキサイティングではないね。

JRF2016/6/180615

[cocolog:79243465] で>今だと防水コネクタ付けるより電源含め(近接)無線で接続した方が頑健な上に安いのかも。そして初期接続は本体に防水カメラさえ積んでおけばQRでOKと。<という Qi (ワイヤレス給電)みたいなのに着目したことがあったけど、そんなまだるっこしいのじゃなくて、コネクタをもう丸ごと Android 端末にしてしまうみたいな話が今は進行しているんじゃないかって感じる。Android だからいじれる/いじれないみたいな話になるのかな?

JRF2016/6/185198

……。

>(構想を有利に展開する競争において)競合他社にコストのかかる回り道をさせる<(p.79, 図2-3)

JRF2016/6/182490

こわいねー。水素自動車とか電気自動車(EV)とかって昔話題になってたけど今はそれほど聞こえてこないね。これらって「回り道」だったんだろうか。もちろん、石油がダメになったりしたときの代替としてまったく意味がないわけではないけど。電気自動車とか構造が簡単そうだから、すごい可能性を感じたんだけどなぁ。

JRF2016/6/187206

車の自動運転についてもどうなんだろ。今は自動運転なしでもやってけてるわけだから、需要は思うほど強くないかもしれない。実質、車の運転ができない私なんかはできたらいいなと思うけど、値段が高くなるなら縁はないだろうとも思うし…。フリーの自動運転ソフトを各メーカーが使うとかいう形になれば、私にも使う機会が巡ってくるのかな?

JRF2016/6/182684

……。

>一度覚えたことを忘れるのがいかに難しいか、自己流のスウィングを一度覚えたゴルファーに聞いてみるがいい。<(p.98)

40歳を過ぎた私のようなものにチャンスがないのは、こういう面もあるからだよな。我流で固まってしまっている。体力面でももう昔みたいな無理はできないしね…。というか、私の場合、12時間以上睡眠してるんじゃないか…ってところがまず心配なのが、トホホなところ。

JRF2016/6/184416

……。

>このところ、ビジョンの必要性を疑問視する声も耳にする。<(p.118)

私、前はけっこう自分をビジョナリーなんじゃないかと自信に思ってたころがあったんだけど、この本が出た1994年ごろには、そういうのには疑問が呈されていたんだね。知らなかった。でも、きっと正しいよ。自分がビジョナリーだと思う人間が人を導くより、普通の人が酒の場などでビジョンを共有するほうがきっと正しい。(ちなみに酒も私はダメだけど。)

JRF2016/6/187453

……。

>新しいベンチャーを会社の保守的な慣習から守る一方で、新事業チームが会社のコア・コンピタンスをフルに使ってまったく新しいマーケットをつくり出せるようにするという二つのニーズは、性格上ほとんど相反するように思えるかもしれない。しかし、豊かな想像力と、すべての企業力を共に生かしながら、初めは経営陣が「注目するに値しない」と考えるようなビジネスチャンスに全社的に傾倒することこそ、まさに未来をつくり出す能力の神髄なのである。<(p.128)

JRF2016/6/184163

コア・コンピタンスの例として、この本は日本企業のシャープをよく例に出す。ご存知のように 2016年、シャープは買収されて、そこに時代を感じるのだけど、コア・コンピタンスという考え方自体も宙に浮いたものなんじゃないかという印象も抱いてしまう。

JRF2016/6/187661

……。

>戦略をストレッチとしてとらえると、当初の経営資源上のハンディキャップにもかかわらず、日本企業が世界のリーダーとなれた成功の神話の謎が解き明かされる。もしソニーやトヨタ、ヤマハの成功を説明するのが目的なら、日本的経営の特質よりも経営資源のレバレッジについて語るほうが的を射ている。欧米企業が学ぶべき教訓は日本文化ではなく、自社に十分なストレッチがあるかどうか気を配り、経営資源をレバレッジする機会を追求することである。<(p.247)

JRF2016/6/188451

ストレッチとは、夢といまある経営資源の不整合を意図的につくり出す(p.235)ことのようで、経営資源をレバレッジする能力とは、提携を成功させる実績、事業の境界を超えてスキルを移動する能力、競争戦術上の独創的なアプローチなど(p.249)…らしい。

JRF2016/6/182207

……。

>こうした事実があるというのに先駆者となるよりはあとからすばやく追随した方が有利だということを暗黙の了解事項としている企業は多い。この信念は二つの前提に基づいている(…)。第一の前提は、先駆者は本質的にリスキーであるというものである。第二の前提は、先駆者は必ず失敗し、追随者が新市場という栄冠を油断なくかすめとる機会が生まれるというものである。(…)<(p.283-284)

JRF2016/6/189591

私はここを読んでるとき ELDE とか simple_market_0.pl とか先駆者的に作ってみたもののことを思い出していた。その研究を先に進めるようすべきなんだが、なぜか気力がわかない。誰かがやってくれてその成果を私に届けてくれたらいいのに、みたいな風に考えてしまう。先駆者は自己満足してしまうというリスクがあるのではないか?

JRF2016/6/182768

《Exhaustive Lock Dependency Emulator その1 並列処理の総当り》
http://jrf.cocolog-nifty.com/software/2011/06/post-1.html

《外作用的簡易経済シミュレーションのアイデアと Perl による実装》
http://jrf.cocolog-nifty.com/society/2011/01/post.html

JRF2016/6/188708

……。

>革新のためのコストは、半導体や薬品や通信事業のような業界では急上昇しているので、地球的規模で先行する重要性がこれまでになく叫ばれている。<(p.389)

グローバル化は、2016年の今となっては当然になっているんだろう。言語を超えて管理することを考えると、世界共通語のネイティブである英語圏のほうが、グローバルビジネスに向いているように思う。日本企業はその点、苦戦しているのではないかと思うがどうなのだろうか。原著をスラスラと読めず、訳本に逃げた私のような者には想像もできない領域だ。

JRF2016/6/181987

……。

>競争相手の母国市場でシェアを獲得することによって、競争相手が海外市場でしのぎを削る攻撃に回す利益をいくらかでも吸い上げることができるかもしれない。IBMは日本へ早期参入し日本企業と競争しているお陰で、日本の上位コンピューター・メーカーが国内市場で上げた利益をもとにして採算の合わない海外市場でのビジネスを続けようとする力を抑えることができた。<(p.394)

JRF2016/6/185403

日本企業に割と好意的なこの本も、チクッと日本を批判している場所になろうか。トランプ現象を見ても、日本は嫌われているんだろうなぁ…と思う。冷戦があったから受け容れてくれたというのもあるだろうし、後のアジア勢が日本を苦しめるようなことを見越していた面もあったろう。いずれは英米圏にあらゆる支配権が戻る…と。ただ、世界資本はそれを嫌ってる面もあるのかもしれず…でも、日本である必要はなく…日本に未来はあるのかぁ?…といったところ。

JRF2016/6/188539

日本のアメリカに対する当時の主張を日本が履行するように求められたときどうなるかにどれだけ想像力を用いていたか…。

JRF2016/6/187385

……。

>無関連な事業の多角化は1970年代や80年代には大流行だった。(…)だが買収はうまくいっていない。(…)特定の製品や市場に関してコアという言葉が使われている場合、コア・ビジネスの周りに小さく集まっていれば管理職は安心だろうが、成長の見込みはあまり明るくないだろう。(…)コア・コンピタンスは一見かけ離れたところに見える事業の集まりをつなぎ合わせる結合材である。コア・コンピタンスを基盤として多角化を進めるとリスクは小さくなるし、投資も減り、優れた実践例を事業部間で動かす機会も増える。<(p.461-462)

JRF2016/6/180729

事業多角化とコア・ビジネスの中道としてのコア・コンピタンス…が本書のテーマと訳者は見て、訳書のタイトルとなったのだろう。

JRF2016/6/180945

……。

本書

>(…)『コア・コンピタンス経営』の事例の多くが七〇年代、八〇年代に飛躍的な発展を遂げた日本企業から得られており、改めて読者に日本企業の競争優位性の源を教えた(…)。<(p.476)

日本企業の強みって何だったけ…というときに読む本としてこの本は意味があるということらしい。2001年の段階での評価だが、シャープが買収された 2016年ではどうだろう?

JRF2016/6/184318

正直、家電に明るさはない。リオ・オリンピックに期待して、その先の東京オリンピックに期待して、裏切られるのがオチなんじゃないかという気がしてならない。企業は、政治家と違って、そこまで愚かではない(愚かにふるまえない)かもしれないが、他にどんな「未来」を描けるというのか。

JRF2016/6/187117

私は介護ロボットとかロボット技術にかなり期待していた。原発震災の後始末もロボット投入でなんとかなる。日本ならやっちまうんじゃないかと期待していたが、あまり進展を聞かない。

JRF2016/6/185963

この本は、インターネットを中心としたIT革命前夜の本であるにもかかわらず、iPhone や Android などを連想させる携帯情報端末の記述があったりして驚くが、それ以外の「未来」はあまりバラ色になった感じはない。

JRF2016/6/180044

しかし、「アンドロイド」が急成長!…といっても、ロボットの一種ではなく、携帯情報端末の OS の名前に過ぎないというあたり、「未来」ってのは意外感があるよなぁ…。

JRF2016/6/186947

……。

親には申し訳ないが、原著はもう読まないと思う。プレゼントとして大事にしまっておこう。

私のこの先が心配だし、日本の未来も心配だ。何か私がコトを起こして日本の未来に影響できればカッコいいが、どうも変なコトを起こしてマイナスにしか影響できない気がする。それなら何もやらないほうがいい。ああ、本当にこれからどうしていったらいいんだろう…。orz

JRF2016/6/185222

修正 「原著を引く」→「原著を読む」。

JRF2016/6/184501

……。

追記。

ちょっと Twitter で見た意見。気になるというか、このところの日本の状況を鑑みて、そうなんだろうなぁ…と納得するところ。

JRF2016/6/186561

《Twitter: Mikihito Tanaka @J_Steman - 2016年6月15日》
https://twitter.com/J_Steman/status/742939740777943040
>o0( 世界各国の人文社会系縮小の波の中では「いらない知識」と判断されたものが真っ先に捨てられ、専門家が解雇されてるわけだが、「日本語」や「日本研究」が、その筆頭であることは もっと知られて良い。<

JRF2016/6/186493

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