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吉屋信子『花物語』を再読した。物語の完成度はいまひとつと思うこともあったが、雰囲気がすばらしい。 (JRF 6092)

JRF 2016年10月 7日 (金)

『花物語 (全三巻)』(吉屋 信子 著, 中原 淳一 絵, 国書刊行会, 1995年)
https://www.amazon.co.jp/dp/433603690X (上巻)
http://7net.omni7.jp/detail/1101232988 (上巻)

最初 1920年に洛陽堂から単行本が出版されたらしいが、私が手に入れた本は、1939年の実業之日本社から出た本を底本として、1985年に国書刊行会から出た本の 1995年の新装版という位置付けになるらしい。今は、河出書房新社から出ている本が手に入りやすいようだ。

JRF2016/10/74792

直近で『マリア様がみてる』を読んでいて([cocolog:86056369])、百合系少女小説の元租的なこの本を思い出して引っ張り出してきて読んだ。正直、この本を読んだ思い出を美化していた面も認めざるを得ない。

JRF2016/10/76913

上巻の前半部は、すばらしい。匂い立つような文章で、これを文章の美だけ追及した中身のない物語というものがいるとしたら、私はその者にこれぞ文芸であると言い返したい。男女の愛を描かなかいところや、リアリティの追及の甘さみたいなものが、「中身のなさ」を感じさせることもあるかもしれないのだけれど、「美しい感情」を描こうとするという実験は私には価値のあるものに見える。

JRF2016/10/78163

上巻の後半以降は、浪曲調になったり、国家社会主義か共産主義かイデオロギーを感じさせたりして、美文の追及も薄れがちで、文体が一定しない。ただ、「可愛いそうな女の子」や女子同志の愛のせつなさを描くのは共通していて、そこに「美」はかろうじて見出せる。そこに文章の実験的展開がある。

JRF2016/10/77041

……。

この文章のマネは私にはできない。もしかすると吉屋信子自身、最初期の自分の文章をまねることは難しかったのではないか。若き才能の発露を後の実力にするには、並々ならぬ訓練が必要なのかもしれない。若いころの文章を取り戻せない私は、結果的にそれを怠ったのだなぁ…と思った。

JRF2016/10/71735

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