cocolog:86953876
経済波及効果について考える。政府支出が例えば土木工事を行ったとき、資材やトラックなどの購入につながり、効果が波及する。しかし、マクロ経済的集計を行うとそれらも結局誰かの所得に化ける。それが同じ額の人件費の高い介護などの事業に比べて、果たして経済効果があるものなのかギモンに思った。 (JRF 4875)
JRF 2017年2月28日 (火)
しかし、「波及効果」については別の考え方もできるのではないか。↓では「経済波及効果」に専門的な意味があるようだが、もう少しカジュアルに「波及効果」を考えてみる。
JRF2017/2/286477
《経済波及効果とは》
http://www012.upp.so-net.ne.jp/hakyu/hakyukouka/hakyukouka.htm
>経済波及効果とは、ある産業の生産額や価格(単価)に変化が生じたとき、産業間の取引を通じて他の産業の生産額や価格(単価)に次々と影響を及ぼす効果のことをいい、大きく生産誘発効果と価格波及効果に分けることができます。この効果は、ノーベル経済学賞を受賞したレオンチェフが考案した産業連関表によって算出することができます。 <
JRF2017/2/281000
波及効果は、例えば、土木は、まずトラックなどの資本財を購入せねばならない。また、資材等も買わねばならない。さらに、造ったものは、他の経済を成長させる。…といった具合に進む。介護などは、更新が必要な資本財はほぼ(建物以外に)なく、資材等の額は安く、他の経済に与える影響と言えば、介護サービスで手のあいてる労働者が働けるというぐらいだが、それは他のサービスにも言えることだ。
JRF2017/2/283651
ただ、資本財の購入とかは高いコストがかかる。それだけの効率はどうやって出るのだろう? 資本財や資材の会社が、起業してはつぶれていく過程で、より多くの金融が介入し、経済を大きくするとか考えられるのだろうか?
JRF2017/2/288459
トラックのような高額少量生産と、オムツのような少額大量生産とでは、金融に違いが出るのだろうか? オムツとトラックでは粗利が違う。その差か? 確率的事象についてモデル化できそうな気がする…、高額少量生産はボラティリティを小さくするために多くの会社が必要とかそういう感じ?
JRF2017/2/285048
一定額の支払いとなるよう平均化する…そのためのバッファがどれぐらい必要か…が問題なのだろうか。ただ、景気変動もあるから単純な平均化だけではない。そもそも、ボラティリティの問題だろうから、平均がどうなるかは関係がないかもしれない。
JRF2017/2/287247
コストの上下動の影響は、売上のボラティリティが大きいと吸収しにくい…とかあるだろうか?
JRF2017/2/286218
しかし、この考え方で、どう計算すればいいのか、私には方針が立たない。別の考え方をしてみよう。
JRF2017/2/281168
……。
特に土木などでは、波及効果の途中、土地などの資産を購入し、その分、効果が減るようなことも考えるべきかもしれないが、土木のほうが介護より波及効果があるという仮定のもとに話を進めるので、それは考えないことにする。[cocolog:86808786] では>土地の買収(接収)があり、そこで現金が市場に供給される(要は、あぶく銭が誰かに手に入る)こと<の効果に言及したが、それはここでは考えない。
JRF2017/2/287730
……。
分業の利益があるため、一社でやるより数社でやったほうがいい? 分業を多くする高額少量生産品のほうが、効率が良くなるため、銀行も多く出資する。その分、経済が大きくなる。…と。
JRF2017/2/289659
しかし、分業の理論は普通、比較優位とか相対的な議論でしかない。政府支出に対応する所得を集計したとすれば、一社でやってるのと統計上は変わらない議論ができないといけないのではないだろうか。分業の利益で波及効果が経済効果を生むことは説明できないのではなかろうか。
JRF2017/2/280426
……。
簡単なモデルを作ってみる。もし「波及効果」なるものがあるとすれば、その第一段階で人件費にすべてまわした企業 Aと、第一段階で半分ぐらいは他の資材を買って他は人件費にまわす企業 B1 と、第二段階でその資材を売った企業 B2 が全部人件費にまわす…という二つの経済でも波及効果の違いは観測されるはずである。
JRF2017/2/284394
介護事業のような企業 A は、一年にわたって政府支出 X をもらってそれを全額人件費にまわしたと仮定しよう。土木事業のような企業 B1 は、0.5 X のうちから 0.5 Y を資材購入に回し、一年に二回事業を請け負うとする。土木下請けなのかな? 企業 B2 は一年のうちに Y 売り上げて、それをすべて人件費にまわすとする。
JRF2017/2/284892
国民所得や GDP で集計される付加価値は A の場合、X。B1 と B2 の場合は 2 * (0.5 X - 0.5Y) + Y = X。…と同じ。乗数効果があるとしても両者に差はなくなる。これだけでは議論にならない。
JRF2017/2/280245
ここでちょっと考え方を変更して、すべての企業は売上から一定率を必ず「資本コスト」(あまりいいネーミングではないかもしれないが)として銀行にでも支払っていると考えよう。資本コストに対応する分だけ、投資または借入れを受け容れる。資本コスト、A の場合は (r/(1+r)) * X、B1 の場合も (r/(1+r)) * X、B2 の場合は (r/(1+r)) * Y。先に A と B2 はすべて人件費にまわすと述べたが、そうではなく、人件費と資本コストにまわすと考えなおす。
JRF2017/2/289896
市場(借入)利子率を i とすると、A の場合は (r/(1+r)) * (X / i) だけ投資を受けられる。B1 と B2 の場合は、(r/(1+r)) * ((X + Y)/i) だけ A の場合より大きな投資を受けられる。
JRF2017/2/285196
この資本コストによる投資可能額の差が、経済の大きさの差となって現れる。…ということになる。
JRF2017/2/281889
…しかし、これが「波及効果」の本質なのだろうか? 結局は資本コストをどれだけ負担できるかということでしかない。一定率のしばりを外して資本コストを負担できるようにすれば、「波及効果」のない一社だけでも同じ経済効果を生めることになる。最大は X すべてを資本コストとすることだが、X/i だけ経済は膨らむとしても、政府が全部金利について面倒をみて投資は自由にやらせるということになる。それが許されるのか?…という視点はあるが、複数社にわたって資本コストを支払うのがではどうして許されるのかということになる。
JRF2017/2/287556
しかも、資本コストを売上ではなく粗利にかけるものとしたら、議論は元の木阿弥に戻る。本当に何か言えてるのか心配になる。高額少量生産のような入金がバラバラな企業のほうが少額大量生産の企業より、銀行の世話になる可能性が高い分、資本コストが高くつくということはありうるかもしれない。そういう場合は、粗利で考えた場合でも若干、差はつくかもしれないが、「経済効果」と呼べるほどの大きな差にはならないだろう。
JRF2017/2/280713
……。
考えてみて、基本的には「波及効果」は「乗数効果」よりも謎が多いと感じる。
確率的議論で何か言えたらそれが良かったのだが、そのための実力が私にはなく、「資本コスト」の議論で私は納得した形にせざるを得なかった。上で引用した「レオンチェフが考案した産業連関表」に関する議論を調べたほうがいいのだろうか…。ここを読んでいる奇特な方は上の議論は話半分に受け取って欲しい。
JRF2017/2/281008
……。
追記。
「乗数効果」について再考していて気付いた。上の X について一定率 q だけ一段下の企業に渡すのを無限に繰り返すというのをやると、集計すると X 以上に効果が波及することはあるのではないか…と。
JRF2017/3/44163
X のうち、r/(1+r) を除いた残りの部分から q * X を設定する。(ただし (1-(r/1+r)) * X に q がかかるのではなく、X に q がかかることに注意。)この下一段分 q と資本コスト分 r/(1+r) は重なりがない。すなわち、(1-q) > r/(1+r) であるとする。
JRF2017/3/46467
多段分の資本コストを無限に足し合わせる。
(r/(1+r)) * X + (r/(1+r)) * q * X + (r/(1+r)) * q^2 * X +…
= (r/(1+r)) * (1/(1-q)) * X
JRF2017/3/45496
これが X よりも大きくなりうるかが問題であった。
(r/(1+r)) * (1/(1-q)) * X > X <--> (1-q) < r/(1+r)
これは仮定に反するから、X よりは大きくならない。経済はよく膨らんでも X/i という主張に変わりはない。
…となる。
JRF2017/3/44971
……。
……。
追記。
産業連関表分析を知りたくて↓を読んだ。
『経済効果入門 - 地域活性化・企画立案・政策評価のツール』(小長谷 一之 & 前川 知史 編, 日本評論社, 2012年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4535556601
http://7net.omni7.jp/detail/1106172723
しかし、よくわからなかった。
JRF2017/4/61544
産業連関表分析による経済効果は、直接効果・間接一次効果の他に「乗数効果」であるところの間接二次効果も(可処分所得に対してだが)含める。間接一次効果には、上の土木の例でいえば、トラックなどの購入や資材の購入が含まれるようだが、上で「造ったものは、他の経済を成長させる」という部分、例えば、線路を造ったときに周辺に建物ができ、通勤時間が短縮されるといった部分は、分析には含まれないように読めた。
JRF2017/4/66701
ただ、そうだとしても、最終需要である直接効果以上の効果はあると考えるのだが、もしそれが経済を大きくするなら、その間接一次効果の支出を誰かが行うわけでその裏付けが必要、つまりマクロ経済的または金融的根拠が必要なはず。それはマクロ経済学では投資として現れる部分なのだろうが、それを常に仮定していいのか、それが現実的なのか、よくわからなかった。
JRF2017/4/68601
もしそれが経済を大きくしないなら、支出の連鎖を追っているだけで、それを推定して分析するのにどれほどの意味があるのだろう?…と思った。
JRF2017/4/61131
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ミクロ経済学を学ぶ。私は経済(学)に強い人間だと自負していた。いろいろあって引きこもりでニート(年齢40歳オーバー)だけど、経済のセンスはある人間だと思っていた。何を勘違いしてたんだろう…。... 続きを読む
受信: 2017-04-02 04:02:52 (JST)
「乗数効果」はどうもあやしい。二要素モデルで資金融通を考えていたとき([cocolog:85747644])、融通の式の中で乗数効果で使う要素を使ってしまった。それでは乗数効果が消えてしまうようだった。最近、マクロ経済学を復習して([cocolog:86942001])、そこには当然、乗数効果の話が出てきたのだが、それとの絡みはよくわからない。限界貯蓄性向が上がって乗数効果が薄れているとか、途中で借金返済が入って効果が薄れているなんてことも考えないではないが、それは先に書いた資金融通での疑問に対応してない。
JRF2017/2/287259