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サン=テグジュペリ著 堀口大學 訳『人間の土地』を読んだ。著者自身が郵便飛行士という職で経験したことを描いた冒険記。「砂漠」の情景がロマンティックで、死をかける人々の生きざまが感動的。ただ、訳の日本語が難しく、私はところどころ読みとれなかった。 (JRF 6363)

JRF 2017年5月10日 (水)

『人間の土地』(サン=テグジュペリ 著, 堀口大学 訳, 新潮文庫, 1955年 2012年改版)
https://www.amazon.co.jp/dp/4102122028
http://7net.omni7.jp/detail/1101501409

原著は、1939年。『風立ちぬ』の宮崎駿がカバーを描き、解説を書いている。

JRF2017/5/100862

貝殻が砕けてできた砂漠、雨はもちろん、強い風などもないのだろう、時が止まったかのような空間がある。その白い砂の上にポツポツと黒い石がある。しかもそれは一定の頻度で現れる。…隕石なのだ。…なんとロマンチックな光景だろう。

JRF2017/5/105639

人里はなれたところにたくさんの動物を飼っている姉妹がいて、著者に蛇を「けしかける」。著者は、その姉妹がやがて、特別な何かを錯覚して誰かの嫁になるだろうことを夢想する。軽い切なさが伝わる。

JRF2017/5/102780

著者の職は、郵便飛行機乗りという第一次大戦から第二次大戦までの間に一次的に存在した命がけの職。僚友が雪山で墜落して遭難し、奇跡的に助かる。著者自身も砂漠に墜ちて死線をさまよい奇跡的に助かる。我々は助かった著者の本を読んでいるから助かるのはわかりながら、その極限の状況を追体験する。美化されているのかもしれないが、その生きざまは感動的だ。

JRF2017/5/104046

……。

ただ、日本語の訳が詩人の訳らしく特徴的な訳で、文の切れ目やつながりがわかりにくかったりした。それを日本語の「美文」として評価するむきも、Amazon 評などではあるようだが、私は正直、読みづらかった。もちろん、私がバカな(最近さらにバカになった)だけという可能性も高いのだが。

JRF2017/5/107299

……。

あまりこの本において本質的なところではないが一ヶ所。

JRF2017/5/100173

>人間にあっては、すべてが矛盾だと、人はよく知っている。ある一人に彼がおもじゅまま創作に力をそそぎうるようにと、食う心配をなくしてやると、彼は眠ってしまう。勝利の征服者はやがて軟弱化する、気前のより男に金を持たせると守銭奴になってしまう。人間を幸福にしてやると称する政治上の主義も、ぼくらにとって、はたしてなんの価値があるだろうか、もしあらかじめぼくらが、その主義がどんな種類の人間を幸福にしようとするのかを知らなかったら。<(p.227)

JRF2017/5/108983

ニュースによると、ヨーロッパでベーシックインカムの実験がなされようとしているようだ。私は、(40歳オーバーの)ニートで食事の心配は今はないが、確かに眠ってばかりいる。創作をやってないわけではないが、「プロ」に比ぶべくもない。ベーシックインカムは、うまくいくのだろうか? 著者は名家に生まれたのち、作家をしながら、航空郵便の職につき、第二次大戦で飛行機に乗っておそらく撃墜された。著者のような「プロ」根性にあこがれるが、そのマネは私にはもうできそうにないな…。

JRF2017/5/103453

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