cocolog:87456136
百田尚樹『海賊とよばれた男』を読んだ。民族企業の熱い物語。出光興産にまつわる実話をもとにしているらしいが、私は事実を知らないためどこまでが物語かわからなかった。が、おもしろかった。 (JRF 1601)
JRF 2017年5月24日 (水)
……。
右翼的言説で知られている作者の本。この本も日本人の誇りにうったえるものだが、敗戦の鬱屈を糊塗するでもなく、右翼臭が鼻につくといったことはない。アメリカへの鬱屈が見える場所もあるが、変に偏った主張があるわけでもないと私は読んだ。一方で、戦時の日本を翼賛せず、「体制」には冷ややかな目もあるのかな…と思う。
JRF2017/5/249451
人物の伝記で、しかも小説ということにしているから、その人物に有利なように状況を再構成している面は多々あるのだろうと思う。それでもこの物語が大筋で事実をもとにしているというのは驚きの面がある。NHK で昔『プロジェクト X』という番組があったが、それをスケールアップしたかのようなおもしろさ、熱さがあった。
JRF2017/5/249437
ただ、上巻に比べて、下巻の日章丸事件の記述は、ドラマ性が薄いかな…と思った。小説であることを活かし切れてないように思った。でも、それを求めると二巻で終るような話にはできず、事実からも大きく放れるというマイナスが出るかもしれず、これぐらいでちょうど良いのかもしれない。賞をとってるぐらいなので、作者はそのあたりの加減のしかたもうまかったということだろう。
JRF2017/5/243897
出光興産がモデルとなっていて、出光佐三が国岡鐡造という名前となっているなど名前が変わっているが、実名で出てる人物もいるようだ。出光興産がどこまで「民族企業」としてふるまったかは私は知らない。ただ、昔の企業は今に比べてポリシーみたいなのを濃く持っていることはあったように思う。そういうポリシーは今だと「ブラック企業」やヤクザ企業とみなされかねない面もあるし。
JRF2017/5/240739
グローバル化の弊害(の潜在的可能性)というのはあって、効率を少し犠牲にしても民族企業を守るという考え方は(40歳オーバーの)ニートの私は嫌いではない。関連しているかどうかはわからないが、「比較優位」については [cocolog:70551613] で書いた。
JRF2017/5/248193
……。
人は国家のために殉ずることもあれば、国家を超えて生きのびることも必要であることがある。国家そのものではなく自由のために殉ずるところから、国家に殉ずる生き方を選ぶこともある。
JRF2017/5/241123
富と権力のないところに多くの人々はいて、理性や人権という「高尚」なものが普段は問題にならないところに暮らしている。理性や人権のために空けた穴は、犯罪者やその予備群が使っているように見えることがしばしばあるが、いざというときのために空けておかねばならない。穴をいつか必要だと思って作る者と日常において使う者は違う…というのはどこかに書いたはずだが、忘れてしまった。最近、共謀罪の議論を見て、そういうことを思い出したりもした。
JRF2017/5/247091
エネルギーが人を支配して、策謀があるがゆえに監視がなされていて、それは国家のレベルを超えたところにあったのだけれど、国家もその監視の成果を使うべきではないか、それを使いやすくすべきではないか…という議論はあるのかもしれない。が、私は国家がその機能を担うのはやりすぎのような気がする(参: [cocolog:86989717])。
JRF2017/5/245795
穴があるからテロが起きるのではなく、下々から見て風通しの穴があまりにもないから空けようとしてテロという現象が起きてる面もあるのではないか。上の本でイランの石油が禁輸されたようなことがどこかで起こってないか。共謀罪よりは(国際)資本の罪に対する罰、結果責任刑([cocolog:71708993])のようなもののほうを先に整備すべきではなかったかと私は思う。
JRF2017/5/246588
…とりとめのない話をしてしまった。政治についてはずいぶんうとい私だけど、そうはいっても、もやもやするものはある。他の人にどう見えるかはわからないけど、私の中では、私は左巻きだしね。
JRF2017/5/248730
……。
あ、でも慰安婦像の議論に関しては、右寄りかな。ヘイトスピーチの禁止が表現の自由の観点からあまりいいことでないと考えるのも右寄りになっちゃうのかな?
JRF2017/5/245289
慰安婦像についてのみ言及すると、詳しくは知らないので印象論になってしまうけど、たとえ加害者であっても名誉は守られるべきで、「第三国」と見られるところに像を立てて過去の戦争被害を訴えたり、大使館や総領事館の前に像を置いたりするのは、いくらなんでも名誉の侵害ではないかと私は思う。コーランの名誉が外国旗の名誉と同じく第三国(日本)でも保護されるべきように、第三国で侮蔑を加えるというのはよろしくないように思う。
JRF2017/5/249382
ただ、他の国で裁判を起こして日本側が負けたりするぐらいだから、そう単純な構図でもないのかもしれないが。「単純な構図でない」…メタに、別の国による日本と韓国の離間策とか? まぁ、それにしても韓国側の国民的支持がある話だからね…。
JRF2017/5/247654
この像の問題は、私が気にしたのは最近だけど、Wikipedia を見るともうちょっと前からの話なんだね…。
《慰安婦像 - Wikipedia》
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%85%B0%E5%AE%89%E5%A9%A6%E5%83%8F
JRF2017/5/241110
一方で、2012年に東京都美術館が慰安婦像のレプリカが撤去されたというのは、日本側の過剰反応のように思うなぁ…。撤去すべきではなかったように思う。ただ、これも詳しくはよくわからない。「撤去」までが芸術活動の範囲にあった可能性もあるからね…。
JRF2017/5/244444
……。
…上の本とは関係ない話だね。まぁ、いつかどこかで言いたいと思ってきたことをちょっと書いてみたしだい。私もトシとって、右旋回してるってことなのかなぁ…。
JRF2017/5/242191
typo 「放れる」→「離れる」。
修正 「驚きの面がある。」→「驚く。」。
JRF2017/5/240521
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右翼的言論人と目される百田尚樹氏の講演が中止されたニュース。私の第一印象は、左翼による脅迫ではなく、ネット右翼がサヨクをかたってサヨクの印象を悪いものにしようとしたのではないかというものだった…。成立してしまった共謀罪との絡みも考える…。... 続きを読む
受信: 2017-06-28 19:13:41 (JST)
宮部みゆき『理由』を読んだ。バブル経済後の現代社会の一面を織り込んだ犯罪小説。直木賞受賞作品。父に借りた。探偵小説のような謎解きはないが、ノンフィクション風の群像劇がおもしろかった。... 続きを読む
受信: 2017-06-28 19:14:01 (JST)
『海賊とよばれた男』(百田 尚樹 著, 講談社, 2012年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062175649 (単行本・上)
http://7net.omni7.jp/detail/1106424538 (文庫・上)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062175657 (単行本・下)
http://7net.omni7.jp/detail/1106424539 (文庫・下)
JRF2017/5/242403