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三浦しをん『舟を編む』を読んだ。『プロジェクトX』風のドキュメンタリータッチの「辞書編纂」の物語に、恋愛小説風の味付けをして読者の層を広げる工夫をして、見事成功している小説…といったところか。 (JRF 7505)

JRF 2017年8月28日 (月)

『舟を編む』(三浦 しをん 著, 光文社, 2011年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334927769
http://7net.omni7.jp/detail/1106071751

上は中古が求めやすい価格の単行本にリンクした。文庫版も出ている。

JRF2017/8/280436

2013年に映画になり、2016年にアニメ化された。アニメになったとき、坂本真綾が声をあてるというので興味を持ったが、アニメの開始時期が他とずれていたこともあって 1話を見逃し、2話か3話を見たのだが、女性向けを思わせるドラマ風のタッチでアニメらしい奇抜さが見あたらず、1話を見れなかったこともあって、その後は見なかった。

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今回、父の蔵書を読む流れ(前回は東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』[cocolog:87754205])で、見つけやすい位置にあって「本屋大賞」の帯に惹かれたこと、アニメでは良い印象がなかったが、しかしアニメ化はされたことに関心を抱いて、父の蔵書のこの本を借りた。見つけやすい位置にあったのは、別の人に最近借して返ってきたかららしい。

JRF2017/8/280670

仕事にがんばる人々の姿を描いた『プロジェクトX』という NHK の番組が10年前ぐらいに放送されていた。私はドラマは見ない人なので、その番組を見ることはほとんどなかったが、そのフォーマットは同時代を生きた者として多少知っている。こういうとジェンダー的に怒られるかもしれないが、正直、男くさい番組だった。

JRF2017/8/280006

辞書編纂という事業について『プロジェクトX』風に描くのは「古い」と思われたのか、広がりがないと考えられたのかはわからないが、この本では、そこに恋愛小説的要素を加味することで、読者層が広がるように工夫されていた。広い読者を得るために、推理小説や恋愛小説、珍しくはグルメや紀行文をベースにして、他のことを語るというのは常套手段で、もう少し若い層を相手にするなら、バトルやラブコメを使うところ。それ自体は非難すべきところではない。

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ただ、恋愛要素が苦手な私は、前半、思いもかけずに襲ってきたその要素に気分をそがれて何度か読むのを中断された。後半は、恋愛要素は弱めになったので、すっと読めた。恋愛要素といっても三角関係のもつれとかそういうことはないので、悶絶するようなことはなかったのだが。

JRF2017/8/286382

辞書編纂は苦労が多いが地味な作業が淡々と続くものだろう。それもこの小説では一気の時間経過で表現されていたように思うが、ややアッサリめに描かれていたと思う。そこも『プロジェクトX』のクドさと違いが出ていて、全体として読み易さにつながっていたと思う。恋愛話も薄め、苦労話も薄めなのに、本作がヒットしたということは、印象は薄めにならなかったということだろう。

JRF2017/8/282652

私はこの本に書かれている苦労は知らない、この先も知れそうにない、…ので、登場人物達の生き方を少し羨やましいと思うところはあるが、共感はあまりできなかった。

JRF2017/8/283456

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