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山田奨治『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』を読んだ。厳しさについては民事での解決のしにくさがあるのかもしれないと思う。私的録音録画補償金については、複雑な思いが私にはある。 (JRF 0702)
JRF 2017年8月 9日 (水)
ずっと読みたいと思っていたが、結局、中古で買うことになった。著作権法まわりは激しく動いているので、もう情報が古くなっているかもしれない。著作権法まわりについては、私は、今もときどきいろいろ考えることがある。でも、本当に「いろいろ」すぎて考えがまとまらず、この「ひとこと」でその考えに言及することも少なくなった。今回のこの本を読んでも、いろいろ考えたが、一くちには言えない。頭がグルグルして、いつものように引用してコメントするみたいな気分になれない。とにかくザッと読んだ感想だけ述べる。
JRF2017/8/90039
……。
「著作権法がなぜこんなに厳しいのか」について、権利者の横暴があるみたいな論旨だが、ちゃんと検挙できた DVD 一枚一枚の損失額は積み上げてもわずかな額に過ぎないので、それを民事で賠償させてもわりに合わないから、罰金を多く課す…みたいな権利者側からの考え方もあるはずで、それを書いてないのはフェアじゃないように思った。
JRF2017/8/97345
その考え方は、権利者が権利を濫用して、使用者の(マッシュアップなどの)権利を妨げていることに関しても、一人一人の損害は小さくても何らかの「罰」で牽制しないといけないというとき、逆に必要となってくるので、そこを無視してはならないと思う。まぁ、とはいえ、現実的に事実上の自民党独裁が続くこの国でそういう反抗が可能になる日は来ないだろうから、そういう夢想的なアイデアで目をくもらせるのはいけないのかもしれないが。
JRF2017/8/93573
……。
「海賊盤が需要をつくる」みたいな論調については、確かにそういう面もなくはないが、その国にも正規にいろいろしようとしている者もいるはずで、そことの公正な競争を考えた場合どうなのか…と私は考えてしまう。
JRF2017/8/98064
……。
私的録音録画補償金の議論について。
《「ケータイ・WEB漫画や小説、ソシャゲ…等の多くは記録・保存されず消え、文化研究に大きな穴が空くかも」識者が懸念。アーカイブ化の必要性も。 - Togetterまとめ》
https://togetter.com/li/1136666
JRF2017/8/96458
本には納本制度があるが、↑で指摘されているように、本以外についてもアーカイブ化のシステムが本来なら必要なはずである。
JRF2017/8/99328
映画なんかはフィルムの保存等が難しかった昔ならいざ知らず、今の時代ならせめて DVD での保存ぐらいは強制してもバチが当たらないように思う。ネトゲについては難しく、全部のソフトではなく、そのプレイを実況したものの保存ということになるかもしれないが、まぁ、場所ごとに変わる映画もそういう扱いなら、保存もはかれると思う。
JRF2017/8/91464
で、そういうことをやりたくないというなら、市民がユーザーが自主的に(中古・同人)市場的に保存することを認めねばならないと思う。DVD にならなかった映画が一作でもあったら、盗撮は無罪にするぐらいの法システムがないとダメだと思う。ゲームで、リリースしてすぐにラストを大っぴらに語っちゃうのは業務妨害にするとしても、ある程度時間が過ぎてユーザーに注意を促した上でラストまでレビューするというのは、「保存」の文脈で許されるべきことのように思う。
JRF2017/8/98289
で、ここで私的録音録画補償金の話になるわけだが、そういう立場からするとコピーはむしろ推奨すべきものであって、補償金をとるよりはむしろ優遇すべきではという話になる。
JRF2017/8/96174
私は以前↓でコピーコントロールがあるような著作物について、それが壊れたりするのに備えるため、国がコピー回避のための装置を持っておくべきでそのために金を積み立てるために私的複製保証制度があるべきだと考えた。一方で、所有してないのに借りて観るような行為に対しては、未所有使用補償金を払っても良いと述べた。
《消費者保護としての私的複製の骨抜き案に反対する》
http://jrf.cocolog-nifty.com/society/2007/11/post_1.html
JRF2017/8/94737
その考え方は今も変わっていない。アニメの放送を見逃してネットを調べると違法アップロードされたらしきものが見つかって、ついそれをストリーム放送で(違法に)観てしまったというとき、そういうことに対して何がしかの補償が必要だというなら、それは仕方ないと思う。そういう合法とメタ情報付けされたものではないストリーム放送に税をかけるというなら、私はアリかなと思う。
JRF2017/8/98450
コピーも、先に書いたようにむしろ推奨すべきことだけど、そこから本来なら見れなかった人が見れるようになることについて補償が必要だというなら、一定程度、税をかけるというのはありだと思う。コピーは推奨・優遇すべきことだが、コピーをするのは限られた者という趨勢だから、そこに担税力を見出すという論理もあるかもしれない。
ただし、それらは「税」だということをはっきりさせ、それにふさわしい手続きを採るべきだと思う。私的録音録画補償金が国家予算としてちゃんとしたプロセスを経るようになることが必要だと思う。そうした上で知的財産課税としてやっていくべきだと私は思う。
JRF2017/8/90780
私的コピーが問題なのではなく(というか推奨すべきで)、未所有使用を補償するのに国家が介入するという方向をとるべきだというのが私の意見ということになるかな。
JRF2017/8/93924
……。
本に書いてることにあまり沿わずに、私が著作権について考えていることを書いた。著作権について、いつかまた、考えることをまとめた記事を書きたいと思う。ただ、それがいつになるのか、今のふぬけた私にできるのか、わからないが…。
JRF2017/8/94944
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『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(山田 奨治 著, 人文書院, 2011年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4409240927
http://7net.omni7.jp/detail/1106082828
JRF2017/8/92251