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矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』を読んだ。日本はアメリカの属国だという「陰謀論」は、法的にまたは今では公表された文書でわかった「密約」にてらせば、「事実」なのだという。ただ、現在の日本の繁栄も一方では考えねばならないだろう。 (JRF 6600)

JRF 2017年11月18日 (土)

『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(矢部 宏治 著, 講談社現代新書, 2017年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062884399
http://7net.omni7.jp/detail/1106795255

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煽情的なタイトルに警戒してしかるべきで、日本がアメリカの属国だという議論は今さら感もあり、話半分くらいで聞いておこうという気がまずする。しかし、法や密約を明示して行われる議論は説得力があり、「言い過ぎ」はあるだろうが、基本的には事実を語っているのだろうと私は判断した。

JRF2017/11/185217

日米合同委員会というアメリカの軍人と日本の超エリートによる秘密会議が、日本の国会よりも憲法よりも、上位の存在(p.85)として存在しているという。日本は、アメリカのというより米軍の属国なのだ(p.252)。「属国」…「半分主権国家(ハーフ・サヴァラン・ステート)」という言葉をこの本は紹介している。

JRF2017/11/182751

ただ、その委員会が好き勝手に日本人の人権を蹂躙しているかと言えば、そこまでの話は聞こえてこない。その点は注意が必要で、「陰謀論」を信じるとしても冷静な目を持っておかないといけない。日本は戦後、他の国以上に「自由」であったし、最近はかげりが見えるにしろ繁栄してきた。だから、支配されているとしても搾取とは少し違う。もっとも、歴史上、属国とは単に搾取の対象でないというのはこれまでもそうだったのかもしれないが。

JRF2017/11/180211

とはいえ、例えば、以前 Xbox 360 の人気ソフトが他国では戦争ものなのに、日本だけは『アイドルマスター』が人気みたいなことがあった。女性を「アイドル」にするのが男性にとって社会の栄達の道なのであるとすれば、その社会には大きなスキャンダルが隠れている気もしないではない。そのあたり、「搾取」の構図を類推させるものはある。…まぁ、これに関しては完全に「陰謀論」だろうが。

JRF2017/11/180405

……。

基本的には日本の支配構造は朝鮮戦争レジームが残ったものなのだという。新安保改定のときなどは、見ためのいい新体制があったとしても、旧体制 = 新体制 + 密約 という構図で密約の存在が旧来の慣行を引き継がせたのだという。

密約は重要なものが三つのあるという。「裁判権密約」「基地権密約」「指揮権密約」の密約の三つ。

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「裁判権密約」は治外法権が米軍関係者に日本のどこでも適用されるというもの。また、「高度に政治的なものは最高裁は判断しない」という砂川裁判の結果が、米軍支配とともにエリート支配に強い権力を与えているという。

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「基地権密約」は、必要とあらば、米軍は日本のどこにでも基地を作れるというもの。これは北方領土に関してもそうで、ロシアが米軍の基地を北方領土に置かないことを求めても、この密約のためその約束ができず、北方領土の交渉が行き詰まる原因の一つにもなっているらしい。

JRF2017/11/180844

「指揮権密約」は、日本の「軍隊」つまり自衛隊は、アメリカの指揮の下に常に入るというもの。これに順って米軍は日本の自衛隊を海外でも使いたかったが、そこは左派的議論が封じてきたという。ただし、その方向に徐々に向かってはいるが…。

JRF2017/11/186888

>いくら権力者たちが密室で合意しようと、国民が本気で反対すればその実現は難しいこと、けれども大もとの法的構造や合意内容が変わらなければ、少しずつ少しずつその方向へジリジリと進んでいって結局は実現してしまう、というふたつの現実を示しています。<(p.215)

JRF2017/11/189417

この辺はどこまで現実的なのだろう? 日本人の国民感情に悪影響を与えない(p.230)というのは旧安保でも考慮されているようで、だからこそ「秘密」にしている面もあるということだから、まったく日本人のことを無視しているわけではない…アメリカの国内世論を考慮してかもしれないが…というのは言えるのだろう。

JRF2017/11/189747

……。

これらのカラクリの背後には、国際法…特に国連軍をめぐる議論があるという(特に第9章で語られる)が、それについては私は意識していた。

私は、日本のコントロールが強い PKO よりも、基本は国連所属の部隊で、日本がその管理をしている(部隊の派遣に拒否権をもつ)という体裁の国連常備軍を作り、安保理ではなく国連総会の総意の下、活動させてはどうかという構想(妄想)を持っていた。

JRF2017/11/183932

それを考える過程で、国連憲章にあるような「国連軍」が正式にはできなかったことを受けて、それを現実の体制に噛み砕いたとき、「国連軍」のかわりを米軍がつとめるしかなく、「国連軍」が持つべきだった強い権限を、半ば実験的に米軍に持たせたことには一定の合理性はあると私は考えたものだった。

JRF2017/11/189024

その状況を国際政治的に動かすために、国連常備軍や国連総会の重視を私は考えたのだった。しかし、そういう「実験的」な妄想は、リスクも大きく、その辺、小沢一郎なども似た意見(より弱い意見)を持っていたが、実現にはまったく踏み出せなかったことを考えると、現実的ではないのだろう。…そう私は思うようになった。

JRF2017/11/184262

>(…)「アメリカ=国連」「米軍=国連軍」という法的トリックがあるのです。さらにいえば、この法的トリックを受け入れてしまった場合、国連憲章43条が加盟国に義務づけているのは、基地などの「便益(ファシリティーズ)」だけではなく、「兵力(アームド・フォーシズ)」や「援助(アシスタンス)」の提供も同じく義務づけているので、最終的にアメリカは日本に対して、あらゆる軍事的な支援や兵力を提供させて、それを米軍の指揮のもとに使う法的権利を持っていることになります。<(p.244)

JRF2017/11/187231

アメリカだけでなく、ヨーロッパやアジアの国からも軍隊を集めてそこに奉仕するというほうが日本のプライドも傷つかないという判断が私にはあるのだが、どうだろう?

JRF2017/11/187990

……。

日本国憲法の制定過程については「押し付け憲法論」といっていい議論をしている。私は憲法全体については、アメリカがあんな短時間にすべて決めることはできず、田中彰『小国主義』(岩波新書)に書かれているように日本の在野のシモジモの蓄積もあったのだという議論を信じている。が、9条については、大西洋憲章からの流れからできたというのはそうなのだろうとは思う。

JRF2017/11/186439

特にこの本に書かれた部分では、次の旧安保条約・原案(1950年10月27日案) 第14条に私も衝撃を受けた。

JRF2017/11/181048

>(1)「この協定[=旧安保条約]が有効なあいだは、日本政府は陸軍・海軍・空軍は創設しない。ただしそれらの軍隊の兵力や種類、編成、装備など、あらゆる点についてアメリカ政府の助言と同意があり、またその創設計画がアメリカ政府の決定に完全に従う場合はその例外とする」<(p.208)

時間的に日本国憲法の後の話であるが、9条の本質を気付かせる重要な考え方だと思う。

JRF2017/11/188162

『小国主義』はだいぶ前に読んで、上のような感想を持つようになったのだが、2010年以降に再び読んだとき、前と印象が違って、それほど日本の関与は強くないかとも思った。まるで、本が書き換えられたかのような印象だった。

JRF2017/11/180039

「押し付け憲法論」は、実際は日本の在野の関与があったが、それが真実では、改憲に、はずみが付かない。アメリカは実は、自分達に作成の責任があるとされる日本国憲法の日本人による改訂を望んでおり、反感をわざと得るために「押し付け憲法論」が巷間に流布するようにしているのではないかという「陰謀論」を思うことがあるのだが、さすがに考えすぎか?

JRF2017/11/185782

……。

私の政治への関心は、かなり薄れてきている。ブログをはじめたころは新しい憲法草案を独自に作りたいとか考えていたものだが、もうそんな気力はない。

この本を読んで、冷静に怒るべきなのだろうが、あまり怒りは沸いてこない。諦めに似た思いがあるだけだ。今の私に牙はない。

JRF2017/11/188411

上にも書いたように、国連を変えていかねばならぬという思いもあった。しかし、現実は難しいだろうし、変えていけるような「現実」が現れるとすれば、それは世界にとっての不幸なのだろうと予想する。私はそれを望まない。

JRF2017/11/182485

これからの日本社会は主に高齢化で困難が予想される。その状況であえて「独立」する意味はあるのか。または「独立」とは中国への従属を意味するだけではないかとも思う。「国連軍」の現実が「米軍」であったように、「独立」の実質が中国とのコネなのかもしれない。…まぁ、それでいいのかもしれない。歴史の流れにあらがうことは難しいものだから。

…個人にそれを引き戻す…中国語の勉強はしたほうがいいのかな?

JRF2017/11/187912

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