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スコット・ロス『スカルラッティ:ソナタ選集』を聴く。ホロヴィッツのピアノの CD が「天上の音楽」なら、このロスのチェンバロの CD は、太陽の降りそそぐ緑のエデンの園だと思った。 (JRF 7715)
JRF 2017年12月26日 (火)
スカルラッティのソナタ集は、ホロヴィッツの CD を以前、聴いていた([aboutme:138834])。ある人いわく「天上の音楽」とか。私は、楽しい音楽だが、残酷さのようなものも感じてしまっていた。ただ、それが、スカルラッティの本質なのか、それともホロヴィッツの演奏によるものかよくわからないでいた。それで気になって、別の CD として評判の高いこの CD を聴き、あらためてホロヴィッツの CD も再聴した。
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ロスのチェンバロを聴いたあと、ホロヴィッツのピアノを聴くと、さすがにピアノは繊細で豊かな表現であることに気付く。そしてとても技巧的で早い部分がある。それでもチェンバロの音色が私は好きで、ロスは学者肌らしいのに素朴というよりは、一本気なのにしゃれっ気があって、ホロヴィッツほどでないにせよ技巧的である。そして、ホロヴィッツの演奏では聴きとれないユーモアのような明るさがあった。「残酷さ」みたいなのは感じられない。
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ロスの演奏はときどき淀む。ためらいのような部分がある。それがチェンバロの表現力の限界を補うものかどうなのかわからないが、人間的な印象を与える。ホロヴィッツの技巧が非人間的な域にまで達していることもあわせて、「天上の音楽」だとすれば、ロスのものは、太陽の降りそそぐ緑のエデンの園のようだと私は思った。
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どちらが良いかとなると難しい。ホロヴィッツの CD は愛聴盤とまではいかなかった。ロスの CD もやはり愛聴盤とまで行くには、ホロヴィッツのピアノのような抒情性が少し足りないように思う。たまに聴くとしたら繊細さのきわだつホロヴィッツのほうを今のところ私は選ぶかな。ロスの演奏が底抜けに明るいということなら、それはそれで別の需要機会もあったのだろうけど。
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Scott Ross『Scarlatti: Sonatas』(録音: Erato 1984年・1985年, 発売: Warner Music Japan 2000年)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00005HIEN
http://www.hmv.co.jp/product/detail/737386
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