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竹宮惠子『地球[テラ]へ…』『アンドロメダ・ストーリーズ』を読んだ。Amazon Kindle で安売りされていたので買ったのだが、どうも「無許諾」だったらしく、それが問題になっていた。 (JRF 5215)

JRF 2019年9月23日 (月)

ネタバレぎみに感想を書く。

JRF2019/9/236691

……。

『地球[テラ]へ… (カラーイラスト完全版デジタルエディション)』(竹宮 惠子 著, 三栄, 2018年)
https://www.amazon.co.jp/dp/B073R6HCX9 (Kindle 版 第1巻)
https://7net.omni7.jp/detail/1101230231 (文庫版 第1巻 (カラーイラスト完全版ではない))

JRF2019/9/239038

Wikipedia によると、『月刊マンガ少年』に 1977年1月号から 1980年5月号にかけて連載。1980年にアニメ映画化、2007年にリメイクされたテレビアニメ版がある。

少女マンガを読む習慣のなかった私は、竹宮 惠子 氏の作品を読んだのは今回はじめてだと思う。アニメも見たことがないはず。

JRF2019/9/239721

地球が汚染されるイメージは、『宇宙戦艦ヤマト』にも用いられたモチーフ。ハード SF っぽくないのは、ワープなどがあるからだが、私は自分で書いた小説(↓)のなかでは、1000年単位で恒星間航行を描いていて、私の拙さもあるが、それだとかなり物語が限られてしまった。ESP は、以心伝心が愛の表現で、発達した愛の向こう側という視点もあるのだろうが、これもこのころの SF には多く見られた表現。今ではスマホなどが代わりとなるのかな…。そういった当時としても「ありきたり」な要素をいかに組み合わせ、料理して新規性・物語性を出すかが腕の見せどころなのだろう。

JRF2019/9/237057

《エアロダイバー 他五篇》
https://www.amazon.co.jp/dp/B01CEE9CW6

JRF2019/9/234701

トォニィとその仲間の子供たちに関してその葛藤をもっと描けるだろうと思ったし、テラズ・ナンバー5の破壊については、あっさりしすぎていて、ジョミーの親との関連とかいろいろ描けるだろうと思った。が、それは私の関心がそこにあったというだけで、描かれてないわけでなく、その先を想像できるぐらいに残しておくのもある種のテクニックであり、作品に奥ゆき・深みを与えている部分なのだと思う。

JRF2019/9/232596

フィシスとグランドマザー(コンピュータ)との関係はもっと何かあるのかと思った。あと、キースが最後、自暴自棄的に破壊を選択するのは冷静な彼にそぐわないと思ったが、冷静だったからこその怒りが出ているとも受け取れるのでそれほどおかしくないと言われればそうかとも思う。

JRF2019/9/235692

この点、フィシスとキースが、コンピュータをプログロミングした者たちの原型を留めており、だからこそ遺伝的にミュウを抹殺できなかったし、グランドマザーはフィシスとキースを理想型として産み出そうとヤッキになっていてやっと復活できた彼らにすべてを譲る…というストーリーにもできたのではないかと思われるが、そうすると、二人を事前に重心に据えておく必要がありそれはジェミーの活躍の意味がなくなるし、二人の愛ですべてが決着するというのは少女マンガ的にいかにもありきたりなので避けたのかもしれない。

JRF2019/9/235463

いろいろ言ったものの、間違いなく傑作で、私がもっと若く、感受性の高いころに出会っていれば、もっと違う感想になったと思われる。その点は残念。

JRF2019/9/239447

……。

『アンドロメダ・ストーリーズ』(竹宮 惠子 作画, 光瀬 龍 原作, 三栄, 2018年)
https://www.amazon.co.jp/dp/B073R73QKM (Kindle 版 第1巻)
https://7net.omni7.jp/detail/1101624611 (文庫版 第1巻)

JRF2019/9/237013

Wikipedia によると、『月刊マンガ少年』に 1980年11月号から 1981年5月号および月刊『デュオ』創刊号 1981年10月号から 1982年11月号にかけて連載。1982年に『24時間テレビ 愛は地球を救う』内の特番的枠でテレビアニメ化された。

JRF2019/9/234120

遠い過去のアンドロメダ星系を舞台にした SF。遠い未来の予言ではなく、過去にあった教訓としてちょっと突き離した形で参照できるようにしているのがミソ。機械生命体が出てくるところはアニメ『ゾイド ジェネシス』(2005年)を、機械に完全に取り込まれて「幸せ」に生きる人間という像は映画『マトリックス』(1999年)を思い出した。それらもある種、アンドロメダ・ストーリーズの一つなのかもしれない。

JRF2019/9/232626

主人公がマザコンぎみなこと、王妃であり主人公の母であるリリアの性格造型が、そこはかとなくわがままで、母に対する正負のありがちな幻想よりもリアルなこと…は、女性作家ならではだなと思った。

主人公二人だけでなく、それ以外の人々も宇宙に逃す選択肢もあったように読めたが、結局、その二人も幸せになったとは言いがたい END だったことを考えると、そこまで不義理ではないということか。

JRF2019/9/230729

個人的には、サイボーグ戦士イルがカッコイイと思った。たがみよしひさ『GREY』(1985年)とかアニメ『舞-乙HiME』(2005年)のミユとか、その辺、私のツボなのかも。

JRF2019/9/235768

……。

さて、これらは Amazon Kindle でかなり安く売られたため買ったのだが、買ったあとで、それが竹宮 氏に「無許諾」だという情報が出た。

《竹宮惠子先生、『地球へ…』『アンドロメダ・ストーリーズ』Kindleでの(…)セール販売は出版社独断であることを明かす「先に許諾必要!」 - Togetter》
https://togetter.com/li/1400461

JRF2019/9/237270

竹宮惠子:>驚いて問い合わせたところ、収益モデルに基づいた期間限定プロモーション(5日まで)で売上増計画をベースに展開しているからご安心を…?先に許諾必要! (…) 皆様にご心配かけましたが出版社の独断でセールを実施するのはやはりフライングですので強く抗議して次回からは必ず許諾を取っていただくようお願いいたしました。<

JRF2019/9/238495

古くなって売ってしまった本などを文庫本などで再度買わせる商売からすると、劣化せずいつまでも保持できる電子書籍を、安売りするというのは、これまでにないビジネスモデルを必要とする。

JRF2019/9/232167

同じようなモデルにしたいとすれば、電子書籍ソフトのサービス終了を願うことになる。ただ、それは普通想定しないものだし、そういうのがあるという前提なら、よりスケールしてサービスを終了させない電子書籍サービス会社の努力をもっと認めるべきだという話になり、今回の「無許諾」で文句をいうのはいかがな話かということになる。

JRF2019/9/237260

現状、通常では、電子書籍は相続できないため、電子書籍を子供に読ませて、子供にあらためて買ってもらうというモデルだとすれば、多くの電子書籍の中から特にその書籍のみ注目させることに意味があるとなり、電子書籍ソフトのお気に入りフォルダの機能を充実させることが求められることになるか。

JRF2019/9/234090

ただ、相続には時間がかかり、何代か相続するうちには著作権は切れる。そういう悠長なことはいってられない…というのであれば、電子書籍をすでに持っている者が多いことで、さらに持つ者が増える循環を作り出さねばならないとなる。すると、今回の私のように感想を書くものをいかに優遇するかという話にするか、電子書籍の貸し出しを可能にし、それでアフィリエイトできるようにする…などの話に持っていくべきだと思う。

keyword: 貸出アフィリエイト

JRF2019/9/239181

著作者にそもそも「無許諾」する権利があるか、権利はあっても行使できるか…という話の背後には、出版権などを何年かごとに更新する制度の提案があるのかもしれない…と思う。ただ、更新を前提にすれば、それだけ現在の原稿料などは値下げを求められるだろう。苦しい作家が、それに賛成しうるだろうか? また、出版社が長期の投資をためらい、それが宣伝機会の許容を認めがたくし、例えば同人誌などの否認につながったりしないかという心配も出てくる。

JRF2019/9/239168

ただ、更新の強制を 30年とかにするなら、そこまで長期のことは出版社も考えないだろうし、負の影響は少ないのかなと思う。

で、すぐに法制化しないまでも、まずは実態として、その方向に近づいていくということも考えられる。そう考えると、竹宮 氏の今回の動きは戦略的なものなのかもしれない…と思う。「実態として無許諾する権利がある」としていくべきなのかもしれない。

JRF2019/9/234654

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