cocolog:91315288
ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』を読んだ。アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』ED の『ハレ晴レユカイ』の歌詞「ナゾナゾみたいに地球儀を解き明かしたらみんなでどこまでも行けるね」でいう「解き明かし」を聞かされるているかのような本だった。 (JRF 9393)
JRF 2019年9月15日 (日)
Jared Diamond『GUNS, GERMS, AND STEEL - The Fates of Human Societies』(1997年) の訳。日本語訳は 2000年に単行本が出て、2012年に文庫版が出ている。今回は、単行本を、図書館で借りて読んだ。
↓も読んだが、今回はそちらへの言及はしない。
《ダイアモンド『銃、病原菌、鉄』2005年版追加章について》
https://cruel.org/diamond/whoarethejapanese.html
JRF2019/9/156317
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』ED の『ハレ晴レユカイ』に、「ナゾナゾみたいに地球儀を解き明かしたらみんなでどこまでも行けるね」という歌詞があるが、この本の地球の環境から導き出される人類の「運命」を論じる様は、まさに「地球儀を解き明かし」ている感があった。
この先は、いつものように引用しながら感想を述べたい。
JRF2019/9/154859
……。
>ヨーロッパ人(…の…)死因は、歴史的に見て疫病 (天然痘など) で(…)対して、ニューギニア人は、疫病が発生しうるほど人口が稠密な社会に暮らしていなかった。そのため、ニューギニア人のおもな死因は、むかしから殺人であったり(…した)。(…ニューギニアのような)社会では、頭のいい人間のほうが頭のよくない人間よりも、それらの死因から逃れやすかったといえる。(…)ヨーロッパ社会では(…疫病に対する抵抗力が大事だった。…)頭のいい人間の遺伝子が自然淘汰で残るためのレースは、ニューギニア社会のほうがヨーロッパ社会よりもおそらく過酷だったのである。<(上巻 p.28)
JRF2019/9/152817
文明として優劣がついたとき、勝ったのはヨーロッパ人だが、人種的に優れていたから勝ったとは考えづらい。ニューギニア人と話せば彼らが優秀だとわかるし、上記引用のように自然淘汰の理論から考えるとニューギニア人のほうが遺伝的に頭がよいと考えられる。…ということだった。
JRF2019/9/150606
基本的に人種的にそれほど優劣はないというのは私もそうは思うのだが、進化は性淘汰の役割も大きく、そこを加味したとき、都会で住みやすく子孫を残しやすかったのは、ある種の「頭のよさ」がある者だったのではという疑問はわく。都会的発展を促すような性淘汰というのはあって、それが辺境では技術的進歩を受け容れがたくする方向に作用していることもあるのではないかとも思う。
JRF2019/9/150819
……。
>ネアンデルタール人と同じ時代にアフリカに居住していた人類(…)10万年前頃のアフリカの住民は、骨格の形態ではネアンデルタール人よりも現代人に近かった(…が…)海に近い海浜部の遺跡からも、魚の骨や釣り針などが出土しないことから、魚すら捕まえられなかったと思われる。<(上巻 p.53-54)
JRF2019/9/153049
keyword: 洞窟猿
肌がツルツルの人間は「洞窟猿」だったんじゃないかとか私は考えることがあるが、それと同時に頭には黒い毛が生えていて上が黒、下が白という色づかいはクジラなどに似ているので、海の近くで暮らしていたのではないかと考えることもある。にもかかわらず、「魚すら捕まえられなかった」というのは、その考えに反する事実といえ、意外だ。
JRF2019/9/155376
……。
>南米を経て海上ルートでポリネシアにサツマイモが伝えられたと思われる。<(上巻 p.99)
JRF2019/9/159244
後の記述(上巻 p.221)によると、サツマイモは、スペイン人がフィリピンに持ち込んだものが、その後ポリネシアにもたらされたということらしいが、本当にそうだろうか? 南米からポリネシアに通じることはまったくなかったのだろうか? 欧米人が、自身に都合が良いようその関係を否定しているのではないか…という疑いを少し抱く。まぁ、チリからイースター島へ直接辿り着くのはかなり難しそうなことは認めざるを得ないが、ボルネオ島からマダガスカル島へ行けた者があるのだから、南米から海流に流されてポリネシアに着くことまで不可能ではなさそうに思うのだが…。
JRF2019/9/152762
……。
>カハマルカの惨劇<(上巻 p.101)
1532年、スペインのピサロが、インカ帝国の皇帝アタワルパを捕まえ、虐殺をした光景が当時の手記を元に記されている。正直、胸糞わるい。現代から見れば、こんなヒドイことが許されてたまるか…と思う。
JRF2019/9/158346
ヨーロッパ人が現地人に銃などを売ることのガメツさも腹が立つが、同時にそれが他のヨーロッパ人の横暴を抑えることにもなりうることを考えると複雑な気持ちになる。もちろん、銃を売ると言っても、反撃を受けたりしない範囲・大事な部分で譲らないで済む程度に抑えられているとしても、一枚岩ではない白人などの横暴に対抗できるメリットは大きいと言わざるを得ない。
JRF2019/9/150936
植民地政策を正当化したい集団は、現代では「移動の自由」をうたい、移民の受け容れを求めがちである。しかし、私は、経済的理由で移民「しなければならない」というのは悲劇であり、本来なら、それぞれの自国が発展することでその地で雇用されるほうが幸せであり、そう支援するのが本筋だと思う。生まれた国がたまたま肌に合わないということもあろうが、そういう人がその国に含まれることは、「神の配剤」に近いものであるとも思う。安易に同じ種類の人間だけが集まろうとするのは正しくないと思う。
JRF2019/9/158718
都市「中央」が人や金すべてを吸い上げるのではなく、「地方」に人を残し、「中央」の金を回してでも、「地方」で生きる人が多様にあれるようにしなければいけない。問題があれば移動するのが当然で、そのほうが経済的にも効率的で平等に近づくと考えるのではなく、有限な人間はその土地土地でそれなりの効率性・平等を目指さなければならない。どこかに植民してそこで増えようとするのではなく、人口問題をそれぞれに解決しなければならない。
JRF2019/9/159507
人口減少を受け容れろとほぼ強制された社会に、どうして、他の人口を受け容れる余裕があるというのか。そういう社会のほうが人口が増やしやすいとして来る者は、あちらの社会で果たすべき何かをスルーし、この社会でもスルーするつもりできたことが疑われる。
JRF2019/9/159794
ある社会にない物を求め、それを学び持ち帰ろうとする者をはげますのはホストとなる場合もゲストとなる場合も必要だろう。国を追われた者が一時的に他の国に身を寄せるのもしかたがない。その社会に溶け込むことを求めつつ、帰ることを目指すほうがいいというのは矛盾しているかもしれない。
JRF2019/9/151540
しかし、移動しない者は移動しない者なりに地理的なフロンティアが消失した今の時代はバーチャルにフロンティアを開拓しており、海外の情報も可能なものは集めている。そういう者ならできず海外から来たものならできることがあると考えるのは、ある種のレイシズムではないのか。ある国の情報がその国から来た者にしか知りえないことがあるとしても、そういう情報は、逆に「移動が自由」を求める者には教え難いことであろう。
JRF2019/9/155037
「中央」は「辺境」で起こった問題について一時的な「難民」を受け容れ、彼らが帰れるように元の国にコストをかけるべきだが、同じことを、違う「辺境」にまで求めるのは筋違いだ。
JRF2019/9/159303
帰るあてがあるから情報面で有利にたてるというのは、程度の問題であって、情報の流し方でどちらに有利にしようとしているかで印象が変わる。そのとき「移動が自由」というのであれば、すべての情報をこちらに有利にしなければ信用され得ない。しかし、帰るためであれば、それなりに元の国の操[みさお]をたてることも理解されやすくなるのではないか。帰ることを前提とするからこそ、同じ土地で競争相手とならないからこそ、溶け込める場合もあるものと思う。
JRF2019/9/157137
まぁ、そうはいいつつ時代は巻き戻せるものではない。一方で、GPS でどこでも移動できるようになったが、カメラでどこでも監視できるようにもなった。国内では移動の自由をこの先も認めるにしても、(配送時などの) GPS や地図利用に課税するなどのときは、ここで考えたような考え方も必要になるかもしれない。
JRF2019/9/159740
「地方」で何をやるのかも問題だ。原発もダメになったし…。人工知能で田舎で農業というのは、まだ少し先の話だろうし…。姨捨山ふうに介護施設を地方の特色のあるものにするぐらいか…でも、それでは若者に未来がない。人工知能で農業やっても海外でも同様なシステムが構築されてコストでかなわないとなると、人工知能で農業をやるという大事な技術が育たなくなるおそれがあるから、本当に地域に適した高度な機械化・効率化がされてるなら、保護貿易的にそれを守るというのはこの先必要なことのようにも思う。遺伝子が海外流出することを心配するより、そのほうが生産的な気がするが、どうなることやら…。
JRF2019/9/152952
……。
>征服戦争において馬と同じく重要だったのは、家畜から人間にうつった病原菌の果たした役割である。天然痘(…)などの伝染病は、人間だけが罹患する病原菌によって引き起こされるが、これらの病原菌は動物に感染した病原菌の突然変異種である(…)。家畜を持った人びとは、新しく生まれた病原菌の最初の犠牲者となったものの、時間の経過とともに、これらの病原菌に対する抵抗力をしだいに身につけていった。すでに免疫を有する人びとが、それらの病原菌にまったくさらされたことのなかった人びとと接触したとき、疫病が大流行し、ひどいときには後者の99パーセントが死亡している。<(上巻 p.131)
JRF2019/9/151490
直接的な力の行使とは少し違うが、病原菌がヨーロッパ人などの入植の手助えをすることがたびたびあった。
(大型の)家畜が、病原菌の元となっているというのは蒙を啓[ひら]かれた感じだ。家畜の種類の多さが、免疫の強弱に影響した…と。
鳥インフルエンザで野鳥を殺さないのはなぜか、みたいな議論があったが、もしかすると、新型インフルエンザで多少、人が死んでもそのほうが人類の今後には良いみたいな考え方もあったのかもしれない。
JRF2019/9/153937
……。
>ブドウのなかには、雄しべと雌しべが別々の個体を形成していたものが、突然変異によって、雌雄同体で自家和合性の両性花になったものもある。このような変化によって、初期の農民たちは、植物の繁殖システムがなぜそのように作用するかの理解はできなかったにせよ、見込みがありそうでも子孫が役立たずの突然変異種ではなく、ちゃんと種子をまけば芽を出し、結実する作物を手にすることができたのである。<(上巻 p.178)
JRF2019/9/154645
「自殖性」「自家和合性」が品種改良には大事だった。[cocolog:89358180] で「突然変異」について、有利な突然変異というのがそんな簡単にありうるだろうか?…分子進化の中立説というのもあるが、役に立たない遺伝子の変異がどうやって役に立つようになるか?…ということを考えていた。品種改良では「DNA の突然変異」とは別の意味の mutation が起こっているような気がする。
JRF2019/9/155045
……。
>肥沃な三日月地帯でつぎに栽培化されたのは、紀元前4000年頃に育成されるようになったオリーブ、イチジク、ナツメヤシ、ザクロ、ブドウなどの果樹類である。これらの植物は、穀類や野菜類にくらべると、すぐに収穫できないという欠点があった。それらは早くて三年、ときには10年待たないと収穫にいたらなかった。したがって、成長に時間のかかるこのような果樹類の育成は、すでに定住生活への移行を完了していた人びとだけに可能であったと考えられる。<(上巻 p.181-182)
JRF2019/9/153626
>肥沃な三日月地帯で三番目に育成されるようになったのはリンゴ、ナシ、スモモ、サクランボなどであるが、これらの果樹類は先の(…もの…)にくらべて、栽培化がよりむずかしかった。まず、挿し木で育てることができなかった。種子をまいて育てる方法も、骨折り損になってしまうことが多かった。これらはどんなに素晴らしい種子から発芽したものでも、特性にばらつきがあり、親木のようによい果実を実らせることがほとんどないのである。これらの果樹の場合、優秀な個体と同じ特性を得るには、その個体の枝を接ぎ木しなければならない。
JRF2019/9/157221
(…)
接ぎ木は農耕時代に入ってかなりの時間を経てから中国で編みだされた技術であるが、非常にむずかしいだけでなく、原理自体も意図的に実験を繰り返すことで初めてそれが発見できるというたぐいのものであった。
<(上巻 p.182)
JRF2019/9/158362
>リンゴはユーラシア大陸でいちばん最後に栽培化された主要果樹のひとつでもあった。肥沃三日月地帯やヨーロッパにおいても、大規摸な栽培がおこなわれていた証拠が登場するのは、ユーラシア大陸で食料生産がはじまってから8000年後の古代ギリシア時代に入ってからである。したがって、アメリカ先住民がユーラシア大陸の人びとと同じペースで接ぎ木技術を考案し、習得していれば、北米で植物の栽培化がはじまった紀元前2500年頃から数えて8000年後の西暦5500年頃には野生リンゴが栽培化されているということになる。
JRF2019/9/150583
(…)
つまり、ヨーロッパ人がアメリカ大陸に入植してくる以前に、アメリカ先住民が北米原産のリンゴを栽培化できなかった原因は、先住民の側にあったわけでもなければ、野生のリンゴの側にあったわけでもない。
<(上巻 p. 231-232)
クリについてはどうなのだろう? ドングリについては記述があるが…。
JRF2019/9/157784
……。
>トウモロコシの野生祖先種は(…)雑草のテオシントであろうといわれているが、(…)テオシントの子実は非常に小さかったため、それを栽培化によって親指大にするまでに要した時間ははかり知れない。何世紀、ことによっては何千年(…。)親指大から現在の大きさになるまでには、さらに何千年という時間が必要だったことは明らかである。
JRF2019/9/154502
(…)
つまり小麦や大麦の場合と異なり、トウモロコシの野生祖先種とされるものはすぐに栽培化して食せるようなものではなかった。このちがいによる影響は非常に大きく、ユーラシア大陸と南北アメリカ大陸の社会的・文化的発展の社会的・文化的発展の時間差の要因となったとも考えられる。
<(上巻 p.202-203)
JRF2019/9/153624
小麦や大麦のあった肥沃な三日月地帯は「運」があったということになろう。ただ、先史時代に大きい実を残しておく、良い動物を残しておく…みたいな文化があったとかなかったんだろうかという疑問も残る。もしくは、洪水などのせいで、大きい実のほうが有利だったとかだったんだろうか。
JRF2019/9/154437
……。
>家畜化できている動物はどれも似たものだが、家畜化できていない動物はいずれもそれぞれに家畜化できないものである。<
失敗の理由はいろいろあり、それらに該当しないものだけが成功する。…これを著者は「アンナ・カレーニナの原則」と呼んでいる。
JRF2019/9/150866
>多くの動物は「アンナ・カレーニナの原則」によって、家畜化がうまくいくのに必要とされるすべての条件を満たしていないと判断される(…)。それらの動物は、餌の問題、成長速度の問題、繁殖の問題、気性の問題、パニックになりやすい性格の問題、序列性のある集団を形成しない問題などがあって人間が家畜化できないのである。<(上巻 p.260)
>二十世紀までに家畜化されたのは、たった14種にすぎない。<(上巻 p.236)
飼われることのあったゾウやチーターは含まれない。ペット化と家畜化は違う…という。
JRF2019/9/156587
>飼育と家畜化には大きなちがいがあり、この二つはきちんと区別する必要がある。(…)ゾウは、たんに人間に飼いならされた野性のゾウであって、人間に飼育されながら繁殖したものではない。家畜とは、人間が自分たちの役に立つように、飼育しながら食餌や交配をコントロールし、選抜的に繁殖させて、野生の原種から作りだした動物のことである。つまり、家畜化には、野性種よりも有用になるように、人間によって品種改良されていく過程がふくまれる。<(上巻 p.237-238)
JRF2019/9/157387
……。
>あの壮大なエジプト文明を出現させる原動力となった農業は、もともとエジプトにあった農作物を基礎としていない。スフィンクスやピラミッドは、エジプトで独自に栽培化された作物ではなく、肥沃三日月地帯を起源とする作物を食べたエジプト人によって建設されたのである。<(上巻 p.273)
もちろん、その後のヨーロッパもそうである。ただ、後述のようにエチオピアまで降りると別の展開があったようだ。
JRF2019/9/153064
……。
>食人習慣[カニバリズム]のあったニューギニア高地では、母親が料理していた感染生の脳に触った赤ん坊が指をなめたのがもとで笑い病にかかることもあった。<(上巻 p.293)
JRF2019/9/150694
「笑い病」は「クールー病」ともいう。「笑い男」などが物語に出てくることがあるが、あれは暗にカニバリズムを示唆していたのかな…と思った。が、Wikipedia でその病気を調べてみると、カニバリズムといっても人を襲って食べるというものではなく、死者を悼むために食べるという風習であったようだ。そして、たまたまクロイツフェルト・ヤコブ病らしき死者があったときに、それを食べてしまった者の第二ステージの症状として「突発的な笑い」があったらしい。…というわけで、最初の印象とはかなり違うもののようだった。
JRF2019/9/155616
……。
>ハンセン病や熱帯フランペジア(…)このような感染症は、患者を死に至らしめないので、われわれの体が免疫を作ることもない。<(上巻 p.301-302)
死に至らしめないので(…)免疫を作ることもいない…って本当か? 体にとって害と認識されないということだろうか、こういうのは昔は性淘汰に頼るしかなかったということか? ちょっと納得できない。
JRF2019/9/155119
……。
>南北方向に縦長のアフリカ大陸とアメリカ大陸においては、地形をふくめた自然環境上の障壁が、農作物や家畜の伝播の速度に影響をあたえていた。驚くべきことに、世界の文字の歴史は、地形をふくめた自然環境上の障壁が、人間の発明の伝播にも同様の影響をあたえていたことを示しているのである。<(下巻 p.45-46)
文字は、はじめはエリートのもので、エリートは「国家」の食料生産レベルでないと維持できない。エリートの交流は、いかにもありそうだが、古代にはあまりなかったのかもしれない。
JRF2019/9/157821
……。
>日本人は、効率のよいアルファベットやカナ文字でなく、書くのがたいへんな漢字を優先して使うのも、漢字の社会的ステータスが高いからである。<(下巻 p.60)
いやいやいやいやいや…。わかる人間には漢字のほうが効率がいいからで、漢字カナまじりのほうが、同音異義語の多い日本語は読みやすい。漢字は造語能力も高い。
世界でこれが出版して読まれてるのは日本人にとって後顧の憂いを招くものとも言えるが、この文のおかげで、他の文化に対する記述もこれぐらいの信頼度なのかな…と疑うことができるという点では、日本人にとってありがたい記述と言えるかもしれない。
JRF2019/9/154850
……。
>奴隷制度は、初期の国家の大半が、首長社会よりも大規模に取り入れていた。これは首長社会のほうが倒した敵を情け深く取り扱ったからではない。国家のほうが、労働の分化が進んでいて、奴隷にさせる仕事がたくさんあったからである。食料生産や公共事業がより大規模におこなわれるようになっていたからでえあり、国家間の戦闘のほうが、首長社会同士の戦いよりも大規模で、多くの敵国人を捕虜にできたからである。<(下巻 p.106)
JRF2019/9/158837
「中央」は難民を受け容れる余祐があるというときは、ここと同じ論理ということになるが、難民を奴隷的に扱えばいいということではない。外国人は帰ったりする金がいる分、給料を多めにもらうべきだ…とさえ言える。ただ、給料が良過ぎると帰る気をなくしたりするのは問題かな…とは思う。給料を多くもらっているのを前提として、国・国際機関が強制貯蓄・年金・旅費の共済みたいなのをやったらいいのかな…。
JRF2019/9/156990
……。
>梅毒の起源がアメリカ大陸であったのか、それともユーラシア大陸であったのかについてはいまだに意見が分かれている。また、コロンブスが発見する以前のアメリカ大陸に、人間が罹患する結核菌が存在していたという主張は、私の見解ではまだ証明されていない(…)。<(下巻 p.226)
JRF2019/9/157735
keyword: 梅毒
「鼻が落ちる」性病として梅毒を聴くが、中東の文化として像の鼻を落とすというものがある。そこの関連を考えたとき「梅毒」というのはすでにユーラシア大陸にあったのでは…という疑いが出る。ただ、Wikipedia によるとこの考えは支持されない。
JRF2019/9/150348
インディアンにはタバコを吸う文化がある。喉を焼くようなタバコは、結核と関連がありそうにも思える。タバコは結核を悪化させるとすれば、逆に結核患者を遠ざけるためにタバコを吸うということがなかったか…。
ただ、この本の著者は医師でもあるそうなので、私のような素人考えよりは、確かな情報を持って、上のように言っているはず。
JRF2019/9/155527
……。
>(…アラム語・ヘブライ語・アラビア語の…)セム語族は、アフロ=アジア語ファミリーを構成する六つを超える語族の一つにすぎない。(…)セム語族に族に属する諸語の分布範囲も、主としてアフリカに限定されている(19ある現存言語のうち12がエチオピアだけに分布してる)。<(下巻 p.266)
つまりエチオピア付近からセム語族が来ている可能性がある。
JRF2019/9/150718
>(…アフリカの…)一つのグループの農作物は、エチオピアに野生祖先種が分布しており、おそらくエチオピアだけで栽培されていて、アメリカ人には知られていない。代表的なものは、チャット(、…)エンセーテ(、…)ヌグ(、…)シコクビエ(、…)テフ(、…)コーヒー(…。)エチオピアで栽培化されたコーヒーはアラブ社会で嗜[たしな]まれるようになってから世界じゅうに広がり、現在では、ブラジルやパプアニューギニアといった、エイトピアからはるか彼方の国々の経済を支えている。<(下巻 p.274)
JRF2019/9/151621
>エチオピアで土着種を栽培した人びとが、おそらくアフロ=アジア語の祖語にあたる言語を話していたということであり、肥沃三日月地帯の農作物を北アフリカにもたらしたということである。<(下巻 p.281)
『旧約聖書』の「シバの女王」の伝説を思い出す。「シバの女王」はエチオピアからソロモンに会いに来たという観方がある。
JRF2019/9/152506
シバの女王のエチオピアは、そもそもセム語族としてのつながりを知っていたのかもしれない。…と妄想する。上で、エジプト文明の農業は肥沃三日月地帯のおかげという話をしたが、その返礼として、コーヒーなどを栽培化していたとすればロマンがある。
JRF2019/9/153863
……。
>オーストロネシア人は、インドと東アフリカ経由という、比較的たどりやすいルートでマダガスカル島に達したのではなく、信じがたいことになんらかの方法でインド洋をまっすぐ航海してマダガスカル島に到達し、その後、東アフリカ貿易経路を見つけたのではないかとも考えられる。このように、アフリカ大陸で起こったもっとも驚くべき人文地理上の事例には、依然として謎の部分が残されている。<(下巻 p.284)
インド洋と言えば「レムリア大陸」(または「ムー大陸」)! まぁ、関係ないだろうが。
JRF2019/9/152972
でもタスマニアでいろいろな技術がすたれた(p.75)ように、超文明の(超心理学的)技術があったが、すたれたというのはロマンがあるね。
JRF2019/9/151184
……。
>(…バンツー族による…)鉄の加工は、紀元前1000年を少し過ぎた頃に、サハラ砂漠以南のアフリカではじまっているが、その起源はまだわかっていない。紀元前1000年頃という年代は、近東の鉄加工技術が北アフリカ沿岸のカルタゴに伝わった年代に非常に近い。(…)とはいえ(…)アフリカで独自にはじまったとも考えられる。なお、サハラ以南で鉄を精錬するのに使われていた技術が地中海地方の技術と非常に異っていることも、前記の仮説を支持している(…。)<(下巻 p.286)
JRF2019/9/155457
カルタゴのハンニバルがアルプス越えをしたのは、鉄の市場からローマを占め出そうとしたのも一因ではないかと私は考えていた。ただ、そういう戦略は長続きせず最終的には失敗したのだ…と。
そのとき包囲網をくぐってローマに技術を提供したのが実はカルタゴに恨みを持つサハラ以南のアフリカ人だとすればロマンがある。まぁ、ありえないが、そういうストーリは書きたくなるね。
JRF2019/9/152506
……。
>アフリカ大陸の動物が家畜化の対象外となった最大の理由は何であったのか、なぜアフリカ大陸には哺乳類が多く残ったのか(…。)<(下巻 p.304)
人類発生の地がアフリカであることとこれは関係してないか。人類になつくようなものはすぐに獲物になったため、または敵対者による虐殺の対象となったため、そうでない動物が残ったとか、動物が人類と敵対的になるよう進化したとかないのだろうか?
JRF2019/9/152547
だとすれば、アフリカでの発展がうまくいかなかったのは人という種の因縁・必然であったということになるかもしれない。
JRF2019/9/150360
……。
>中国は(…)15世紀初頭には、大船団をインド洋の先のアフリカ大陸にまで送りだしていた(…)。(…しかし…)政治的に統一されていたために、ただ一つの決定によって、中国全土で船団の派遣が中止されたのである。(…)当時のヨーロッパは政治的に統一されていなかった。(…)コロンブスは三人の君主に断られ、四番目に仕えた君主によって願いがかなえられたのである。もしもヨーロッパ全土が最初の三人の君主のうち一人によって統一支配されていたら、ヨーロッパ人によるアメリカの植民地化はなかったかもしれない。<(下巻 p.309)
JRF2019/9/158869
そして現代、ヨーロッパは EU として統一され、中国は相変わらず統一されたままだが絶好調である。
ヨーロッパが統一されたことで問題が生じているというのは、最近の著作権がらみのニュースを見ると、どうもそうだと私には思えてしまう。
GDPR のせいで、たかがブロガーでしかない私の個人情報をさらさなくならねばならないことに、私は憤りを感じている。末端消費者ネットユーザーが表現者になっていることをわざと忘れているかのような EU は横暴にしか見えない。
JRF2019/9/158285
あれだけ権力を集めているのに、そのくせ、MAD ビデオとかの権利関係を整理するわけでもない。
まぁ、著作権以外のところから見れば、いいところがあるのかもしれないが。
JRF2019/9/153590
……。
>もちろん、こうした環境上の差異を持ちだすのは「環境決定論」であるとお怒りになる歴史学者もいる。環境決定論という言い方には、人間の創造性を無視するような否定的なニュアンスがあるかもしれない。人間は気候や動植物相によってプログラムされたロボットで、すべて受動的にしか行動できないというニュアンスだ。しかし、それはまったくの見当ちがいである。<(下巻 p.302)
JRF2019/9/159797
>アレキサンダー大王は、すでに文字を持ち、食料生産をおこない、鉄で武装していた西ユーラシアの歴史の流れを少しは変えたかもしれない。しかし、オーストラリアが依然として文字や金属器を持たない狩猟採集民の大陸だった時代に、西ユーラシアにすでに文字や食料生産や鉄を持つ国家が存在したという事実は、アレキサンダー大王の業績とはなんの関係もないことである。いずれにせよ、現実の歴史に個人がどのくらいの影響をあたえうるかという疑問に対する答えはまだ出ていない。<(下巻 p.320-321)
JRF2019/9/158281
>私は非常に高い確率で、自分が働くカリフォルニア大学メディカルセンターでこれから生まれる1000人の赤ちゃんのうち、480人以上520人以下が男児であると予測できる。しかし、私は、自分の二人の子供が男児であることは予測できなかった。(…)それと同じように、歴史学者も、1万3000年にわたってそれぞれ独自に発展してきたアメリカ大陸とユーラシア大陸の社会が衝突した結果を必然的にした要因を知ることはできても、1960年の合衆国大統領選の結果は予測できない。<(下巻 p.324-326)
JRF2019/9/156028
大ざっぱだからこそ、確度を持っていえることがある。それは「環境決定論」とはまた違う。環境によって決定されるべき(大ざっぱな)部分はあるが、すべてを環境から予測できるわけではない。…ということだろう。
JRF2019/9/150427
……。
……。
追記。
上で「保護貿易的にそれを守るというのはこの先必要」と述べたことについて。
特定の遺伝子が使われていることを理由にしたり、人工知能や機械の競争条件を整えることを理由にしたりして、関税を導入するときは、遺伝子二次創作著作権料または機械生命特許料を関税から一定の割合で払わなければならないとしたら、政治的に実現可能性が出てくるのではないか。
JRF2019/9/159346
そういうルールによって新しい技術を作る者の農業が護られると同時に新しい技術への投資が促され、成功を継続するフィードバックループが作れるのではないか。遺伝子の流出を心配するよりも、それが外部で使われたほうが、関税を多くとれ、知財料も多く入るようになる。機械生命的技術もオープンにして利用されれば、関税をかける根拠になり、知財料としてキックバックされる。オープンさが評価されるというのは知的財産権法制の本旨で、新しい知財法制として支持されうるのではないか。
JRF2019/9/159857
もちろん、すでにある特許の仕組みをすべて上書きする必要はないし、それを継続したまま徴収し、それを分配すればいい。分配をどうするかが難しいというのは、MAD ビデオと同じ問題が含まれるが、そこを解決することが未来につながると私は思う。
JRF2019/9/154893
keyword: AI ベーシックインカム 税
AI とベーシックインカムの組み合わせみたいなことをしようとすれば、「法人税」にするかどうかは別として資本課税…例えば知的財産課税みたいな考え方が必要になると考えたことがある。上の関税は、ある種の知的財産課税ということになり、そこでの議論につながるかもしれない。
JRF2019/9/157866
『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎 (上・下)』(ジャレド・ダイアモンド 著, 倉骨 彰 訳, 草思社, 2000年)
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JRF2019/9/156116