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香川登枝緒『私説 おおさか芸能史』と町山智浩『本当はこんな歌』を読んだ。共に私には縁遠い話。前者は、私が幼かった昭和の話だが、もっとドロドロとしたものがあったろうにと思った。後者は、若者が対象だが、トシ取った私はセックス&ドラッグ的な英米文化に憧れる者なぞ今さらいるのかと思った。 (JRF 6107)
JRF 2019年12月 7日 (土)
伝説のテレビ番組『てなもんや三度笠』の作家による昭和の大阪の笑芸を中心にしたエッセイ集。裏話的なものはあるにはあるが、やっと出てきてもストリップ劇場ぐらいで、それ以上のセックス産業…例えば米軍の慰安所とかの関係とかは出てこない。それで何がわかるものか…と思うが、「恨みを伝えない」というのも昭和以前の良識だったのかな…とも思う。
JRF2019/12/75591
『ドリフの8時だよ全員集合』が子供時代にドンピシャだった私は、白黒だった『てなもんや三度笠』はもちろん知ることはない。私が幼かったといううよりまだ存在していなかった昭和の、松竹・歌舞伎などの劇場を中心とした話はまったくピンと来ない。ドロドロとしたものの示唆も実はあるのかもしれないが、そういうものは子供でしかなかった私にはなかなか読み取れるものではない。
JRF2019/12/72607
この本に、チラと浪曲の話が出てきた(p.29ぐらい)。関係ないがそれで思い出したのが、日吉川秋斎の『藪井玄以』がおもしろかったなぁ、ということ。『ブラック・ジャック』は外科医だが、藪井玄以は、昔の医者。シリーズがあるようだが、私は「大阪の巻」しか知らない。あのシリーズ、他のものも聴きたいが、カセットテープしか市場になさそう…。
JRF2019/12/79497
まぁ、それはこの本にはまったく関係ないが…。香川登枝緒は、落語や剣劇を「勉強」してそれを脚本に役立てたように、浪曲などがテレビ番組に陰に陽に活かされている例というのは多いのだろう。日吉川秋斎の『藪井玄以 大阪の巻』の CD には『水戸黄門漫遊記』が入っていたが、それとテレビの『水戸黄門』はどれだけ関係していたのだろう?
JRF2019/12/73378
ミス・ワカナは>北海道から九州までの各地の方言が自由にしゃべれて、英語や中国語の会話もできて、歌もうまいし、踊りなら日舞からタップ・ダンスまで何でもござれ! だった<(p.46)そうだが、今の芸人でそこまで芸達者な人はいるんだろうか。こういうとアレだが、昔の人はすごかったんだなぁ…と思う。
JRF2019/12/76308
著者のようなこういう文人の財布事情が気になる。
>いいかえれば秋田さんの生活は、ドラマや随筆の原稿料や講演料で支えられていたので、それをさいて有望な若手コンビに参考書を買ってあたえたり、飯を食わせて励ましてやるのが、その生涯を一貫した最大の楽しみだったので、それ故にこそ秋田実は「漫才の恩人」だともいえるのである。<(p.80)
文化人の報酬が結構良かったんだろうか?
JRF2019/12/73305
>わたしが今日、芝居について大きな口が叩けるだけの基礎知識が得られたのは、一円以下の低料金で見られた歌舞伎座の菊席、桜席……そして、それよりまだ安かった立見席のおかげなのである。<(p.81)
でも、そもそも小遣いがそれなりにある「ボンボン」だったのではないのか。でも、大阪の街中で育った母もいろいろ鑑賞していたみたいなことはいうしな…。
JRF2019/12/76193
>もしも将来、後進の誰かが「テレビ芸能五十年史」を書かれることがあったとしたら、それに登場する人物像は、おどろくほどの多人数になり、栄枯盛衰がめまぐるしく変転するに違いないのだ。それを思うとテレビ以前の、地に足のついた芸能を、永年見聞することの出来た自分をつくづく幸福だと思う。<(p.250)
私の時代なら、Web 黎明期を知ってその後のカオスを語りつげる…とというが「幸福」なのかなぁ…。
JRF2019/12/75925
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『本当はこんな歌』(町山 智浩 著, アスキー・メディアワークス, 2013年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4048915940
https://7net.omni7.jp/detail/1106290835
JRF2019/12/72841
町山智浩と言えば、今では Twitter で見かけることがしばしばある名であるが、昔からネットでは有名人的。
この本は英米ロック・ポップスに関して、「意外」な歌詞の翻訳をしている。元は Web で連載があったようだ↓。
《本当はこんな歌まとめ》
https://weekly.ascii.jp/sp/song/index.html
JRF2019/12/70895
私は英米ロック・ポップスには疎く、この中でよく知っていた曲は Aerosmith『Walk This Way』だけだった。
歌詞の内容は、セックス、ドラッグ、銃、自殺、中絶、宗教…といった英米文化の負の側面が中心になる。そういった英米文化に憧れる若者に「現実を見せつける」というよりは「これが本当の自由だ」と暗に訴えかけている側面の方が大きいように思う。
JRF2019/12/71594
トシとった私なんかは、セックス&ドラッグ的な英米文化に憧れる者なぞ今さらいるのか、そういうのに憧れを持ったのも我々の世代までなのではないか…と思うのであるが、もしかしたら違うのかもしれない。今の若者も、オタク文化に染まるよりは、英米文化に関心があるほうが、労働者としては幸せな人生が待っているのかもしれない。
JRF2019/12/78973
『私説 おおさか芸能史』(香川 登枝緒 著, 大阪書籍, 1986年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4754890132
https://7net.omni7.jp/detail/1100511347
JRF2019/12/78121