宣伝: 『「シミュレーション仏教」の試み』(JRF 著)。Amazon Kindle で、または、少し高いですが、DRM フリー EPUB を BOOTH で、販売中!
技術系電子本。Python による仏教社会シミュレーション( https://github.com/JRF-2018/simbd )の哲学的解説です。

« 前のひとこと | トップページ | 次のひとこと »

cocolog:92031461

古代医術に関する本を何冊か読んだ。小説のネタにできないかと思って。が、病気に関する専門知識もない私が、得るところは実に少なかった。 (JRF 4590)

JRF 2020年7月 7日 (火)

新たに読んだのは基本、三冊で、一冊は再読。

まず再読なのは↓。

『黄帝内経運気 - 古代中国の気象医学とバイオリズム』(李 建章 編, 身心の古典翻訳同人 訳, ベースボール・マガジン社, 1997年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4583034423

JRF2020/7/78379

『易経』について少し考えることがあって、その流れで読んだ。[cocolog:90630253] や [cocolog:90630253] で↓と書いた。

JRF2020/7/79298

>確か黄帝だったか神農だったか、それ以外の皇帝だったかで、皇帝の健康のために、医療のために、「実験動物」的に人口を増やすといった中国神話があったように記憶していたのだが、ググっても見つからない。記憶違いだったのかもしれない。<

これが書いてないかと目をこらしたが、この本にはそれらしい記述はなかった。

JRF2020/7/75313

医術にも「当たるも八卦・当たらぬも八卦」的側面がある。治療をほどこしても治らないことがあれば、治療をほどこさないでも自然治癒することがある。かりにうまく行かなくても言いくるめるのは、占術と似ていると言えなくもない。古代中国において占術と医術は似ていた。今、占術を学べば、どこまでがプラセボなのかを見通せるようになるだろうか?…とか考えた。

JRF2020/7/78292

……。

医学史をネタとする小説を書きたいとときどき考えることがある。↑の本を読んだついでに、いくつかの古代医学の本を読んでみることにした。

『古い医術について 他八篇』(ヒポクラテス 著, 小川 政恭 訳, 岩波文庫 青, 1963年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4003390113
https://7net.omni7.jp/detail/1100349700

JRF2020/7/73617

浄水設備があまりにも貧弱な古代においては、水がとても大きな要素だったとわかる。また、季節・土地も大事にされている。天文学を大事にしようというのは季節とはまた違うのだろうか、SARS や新型コロナが 3・4月にひどかったことを思い出す。

JRF2020/7/77347

ヒポクラテスは人種は土地によるとしたが、人種は土地に関係ないと我々は知っている。人種も遺伝的という意味で大きな要素であることは現在の知識。

病人に粥を与えるなど、食に関しての説はある。が、具体的な薬草・薬石などの知識はこの本からは得られなかった。

JRF2020/7/79193

ギリシアの神が、そこにあるが触れられず、外からの細菌には負けるかのように、施設に入るときに清浄を求める。それはまるで(弱い)ウィルスみたいだな…と少し思った。宇宙から来たウィルス生命体!?…みたいな SF を少し考えた(思い出した)。

JRF2020/7/73641

……。

『伝統医学の世界』(池上 正治 著, エンタプライズ, 1998年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4782520522
https://7net.omni7.jp/detail/1101487050

JRF2020/7/72380

インドのアーユルヴェーダの基本が書いており、それについて無知な私はこんな簡単な記述でも参考になった。具体的な「薬」も書かれているのは今回読んだ本の中ではこれが唯一。

イスラム圏のユナニ医学に関しては、ヒポクラテス・ガレノスの伝統を継いでいるということ以外は、あまり情報がなかった。

中国医学は、特殊な道教の概念や鍼灸に記述を割いている印象。

JRF2020/7/73399

アーユルヴェーダ・ユナニ医学・漢方の三者が出会ったものとしてチベットの医学に期待を募らせたりもするが、あまり具体的にどういう治療がスゴイという話はない。

ただ、それらを説明した後のエッセイ風の紀行がおもしろい。著者のモンゴルの寺で修業しながら医術をほどこす話や、河口慧海のチベット入りの話(Wikipedia でも似た話は読める・青空文庫にそのものの紀行文があるようだ)とかおもしろかった。

JRF2020/7/70779

……。

『ガレノス - 西洋医学を支配したローマ帝国の医師』(スーザン・P・マターン 著, 澤井 直 訳, 白水社, 2017年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4560095841
https://7net.omni7.jp/detail/1106808284

四体液説の詳しい説明などを期待して読んだが、そういう理論的なものはほとんどなかった。ガレノスの一生に関する伝記に終始している印象。

JRF2020/7/70935

動物の生体解剖を見せものにする一方で、人体に関しては死体の解剖すら(倫理的に)やらない…という落差が激しい。心臓が見えるほどの(人間の)開胸手術を(当然麻酔なしで)して、その者が長く生きたらしいという話を読んで、多数の犠牲となった動物達も浮かばれる気がした。

ガレノスは哲学者でもあり、モラルが高い人物ということになる。もちろん、時代だから奴隷は使っているが、奴隷への暴力があたり前の時代に、奴隷でも平等に治療している。

JRF2020/7/71015

いくつか部分的なことについて。

古代では、生の果物などをあまり食べず(ドライフルーツが主)、ガレノスが若気の至りで食べたら腹を壊したというのは意外なところだった。(p.73)

接吻で感染する性感染症の記述があり(p.131)、風土性の梅毒を疑う現代の声を載せている。[aboutme:114757] で私は、「鼻が落ちる」性病と彫像の鼻を落とす中東の文化を鑑みて、イスラム以前の梅毒の存在を疑っている。古代は「性病」がないということはなかったのだろう。

JRF2020/7/71126

>ガレノスの考える造物主は、質の劣る材料(精液と月経血)しか使えないという制限を受けており、作り出した結果物の不完全さはそのせい<(p.181)…というのは、おもしろい説明だと思う。私なんかは、機械と比較して生物はわけのわからない構造をしていると思いがちだが、解剖にたけていたガレノスはむしろ生物の精緻さを認めていた。その上で、不完全なところがあるとすれば、それは材料のせいだろう…と。

JRF2020/7/73958

生物が子をなさねばらなないこと、精子と卵子をなぜ使わねばならないかは神秘として、それらで最高の結果が出せるように「設計」されており、人間各々が最善の結果である。…と。

JRF2020/7/75944

……。

…といろいろ読んでみたのだが、正直、病気に関する専門知識もない私が、得るところは実に少なかった。小説のネタには簡単にはならない感じ。

JRF2020/7/79030

« 前のひとこと | トップページ | 次のひとこと »