cocolog:92244651
中室牧子&津川友介『「原因と結果」の経済学』を読んだ。主に経済学における因果推論の本。縁起論に関する洞察から、因果という考え方に否定的で、さらに統計学を苦手としている私は、眉に唾つけてこの本を読んだが、読み切るとおかしなことは書いてない…という感想になった。 (JRF 3566)
JRF 2020年10月 2日 (金)
相関だけでない因果関係を示すために、>比較可能なグループを作り出し、反事実をもっともらしいデータで置き換える<(p.48)必要があるとし、そのような手法として、ランダム比較試験、ランダムな状況が自然に置きたのを発見する自然実験、「トレンド」を取り除く差の差分析、第3の変数を利用する操作変数法、直線になるべきデータの「ジャンプ」に注目する回帰不連続デザイン、マッチング法(プロペンシティ・スコア・マッチングなど)、回帰分析…と信頼度の優れたものから順に要点を説明する。
JRF2020/10/25281
私はずっと以前に仏教の縁起論に関する洞察から、因果という考え方そのものに否定的な態度を取りがちである。また、統計学を苦手としていて、JAGS をいじったり([cocolog:91888253])、分散分析の独立性の証明でつまずいたりしながらも、そのことは変わっていない。
そういった観点から、眉に唾つけてこの本を読みはじめてみたのであるが、読み切ると、おかしなことは書いてないな…という感想になった。
JRF2020/10/26804
……。
因果を語ることの不可能性は、縁というものが何層も重なり、また遠くから追し出すようになされることがあることにある。縁の海があって、そこに人が起を見出すということでしかない。…みたいに考えていたことがあった。因果を語るときは、因や果が、それ以外の部分がはっきりしているのではなく、むしろランダムであるとして目をつぶるからこそたまたま言えるのだという考え方になる。
JRF2020/10/29113
ただ、事実認識はあるものだから、その認識された事実の間に因も果もあると(たとえば統計的に)できる場合があると言われればそうなのかもしれない。私は、昔ほど縁起論にこだわらない。
JRF2020/10/21901
……。
>一方、2つの変数の関係が疑似相関にすぎない場合は、「まったくの偶然」「交絡因子」「逆の因果関係」のいずれかが存在している。<(p.35)
これは言い過ぎではないか。交絡因子が特定できるとは限らないし、偶然かどうかが判別できないこともあり「まったく」とは言えないこともあろう。「まったくの偶然」「交絡因子」「逆の因果関係」があれば疑似相関がある…と言えるだけではないか。
JRF2020/10/24648
……。
>つまり、タイムマシンが使えれば、「もし広告を出さなかったら」という反事実における売上を知ることができ、広告と売上のあいだに因果関係があるかどうかを確認できる。それだけでなく、広告にどのくらいの効果があったのかも知ることが可能である。<(p.39)
JRF2020/10/24266
そんな簡単な話ではない。広告を出すまでには、様々な作業が存在し、広告だけをやめるということはできない。…とか考えていたら、第5章(p.113から)では、店長のやる気など操作変数が話題となり、私がここで反論しようとしたことの一端はすでに考えられていることを知った。
JRF2020/10/23578
……。
>アハーンらが示した結果は驚くべきものだ。女性取締役比率の上昇は企業価値を低下させる<(p.127)
BLM運動([cocolog:91980310])のときの「グローバル共有メモ」やり、 フリードマン『資本主義と自由』を読んだときの「ひとこと」([cocolog:91758418])で言及することがあったが、社外取締役に「パリテ」のようなものを導入したら良いのではないかという意見を私は持っている。
JRF2020/10/20380
上記研究結果のように、特に短期的には、経営にマイナスになるのは当然だろうと思う。が、社会の上層に平等を持ち込むことは、社会を大きく変えることにつながると思う。長い目で見れば良い社会になるのではないか。
そのコストがある程度はしかたないと私は思う。先進国は支払うべきものだ。
JRF2020/10/28944
……。
>A/Bテスト<(p.160)
ABテストは、される側はムカつくものであることに注意を促したい。
JRF2020/10/22543
はてなブックマーク - 《ABテストとは?ABテストを失敗しない4つのポイント |MAmag.》
https://blog.kairosmarketing.net/mail-marketing/ab-test/
>Amazon毎度の相違点が頭に来る。ABテストって変更してもついてくる者を選抜するストレステストの意味合いも。たまにしか使わない機能を減らすのに混乱が演出され、その実、高度利用者が薦めずに潜在利用者が減るとか。<2020/02/22
JRF2020/10/27525
『「原因と結果」の経済学』(中室 牧子 & 津川 友介 著, ダイアモンド社, 2017年)
https://www.amazon.co.jp/dp/447803947X
https://7net.omni7.jp/detail/1106736733
主に経済学における因果推論の本。
JRF2020/10/21638