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ラビ・M・トケイヤー『ユダヤ発想の驚異』を読んだ。旧約聖書のはじめの五書すなわちトーラーに関してユダヤ教の伝承と合わせて紹介する本。実は週一回何ページか旧約聖書を読むのを習慣にしているが、はじめて知ることもいくつかあった。 (JRF 9318)

JRF 2021年3月18日 (木)

『ユダヤ発想の驚異』(ラビ・M・トケイヤー 著, 加瀬 英明 訳, 実業之日本社, 1972年)
https://www.amazon.co.jp/dp/B000J9AQQK

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ラビ・マーヴィン・トケイヤーの『ユダヤ・ジョーク集』と『ユダヤ5000年の知恵』は私の愛読書で、2020年11月に『ユダヤ格言集』も読んだときに、見つけたのがこの本。旧約聖書のはじめの五書すなわちトーラーに関してユダヤ教の伝承と合わせて紹介する本である。

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実は週一回何ページか旧約聖書を読むのを習慣にしているが、この本で、はじめて知ることもいくつかあった。

最近は、ちょっとプログラミングにかかりきりで、まともな読書をしていなかった。短い本ではあるが、久々に読書したなぁ…という気分。

いつものように「引用」というか少し抜き書きしていく。

JRF2021/3/186194

……。

ユダヤ人における奇跡はキリスト教における奇跡とは違うという。モーセが海を割ったという話について…、

>では、なぜ紅海が二つの割れたのだろうか。それは100年に一回くらい、非常に暑い日に紅海に起こる現象で、地中海から強風が吹くと、紅海のそれほど深くない部分に、人間が渡れるくらいの時間だけ潮がひくのである。(…) つまり、ユダヤ人にとっての奇跡とは、そういうことがちょうどいいタイミングで起こることだ。旧約聖書の中で科学的に立証できない奇跡は一つもないのである。<(p.18)

JRF2021/3/180052

じゃあ、モーセの神との対話も科学的に説明するかと言えばそうではないだろう。このような科学的解釈は一方でありながら、本当に「キリスト教」的に奇跡が起こった可能性を完全に排除するのもユダヤ人らしくないのではないか。どちらも疑いとして保持し、かといって疑うのが正しいというわけではなく、科学的説明にとりあえず軍配を上げているということではないか。

ここで、特に科学的説明を強く押し出すのは、1972年当時の無神論的な日本の雰囲気に強く影響されてのこともあるだろうと思う。

JRF2021/3/189031

……。

創世記 第9章 ノアがぶどう畑をつくり始めた話ら辺で…

>そこで、ハムが悪いことをしたのに、その子のカナンまでのろわれるとは、いったい何が起こったのだろうとラビたちは考えた。そして、ハムは父親のノアに同性愛行為をしたのではないかと語った。これはあまりにもおそろしいことだから、聖書には書いていない。世の中には、書いていいことと悪いことががあることを、聖書のこの部分は教えている。<(p.63)

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書いてはダメなことがある…というのは、反ポリコレな私としては都合の悪い部分。ただ、醜悪なことが聖書にないかというとそうではないので、ノアの名誉のため、書かなかった…事実が名誉を毀損することがあり、その場合は、書かないことも現代でも許される…という解釈に私は傾きたい。

JRF2021/3/182098

……。

創世記 第12章 アブラハムが妻に妹であると「いつわって」欲しいと述べた部分。なぜ「妹」とするのか…。

>もし妻を妹として入籍すれば、その男はほかの女性と重婚できなくなる。そして、このメソポタミアの法廷では、もし妻が妹として届けられていると、ほかの妻と違って、夫と対等であり、そしてまた夫の財産を継ぐこともできた、その石には書かれている。<(p.76)

JRF2021/3/185999

メソポタミアでは、妻を妹にするのが、妻に対する処遇として最高のものだった。聖書のこの部分には、アブラハムが保身でそうしたと読める部分があるが、それは、後代の補記であろう…と。

相続(税)がらみの部分が謎になっているというのはありそう。[cocolog:72947619] などではソドムとゴモラを相続税・贈与税にからむものと私は解釈したりしている。

JRF2021/3/187427

……。

モーセの子供たちがどうなったのか不明である。現代のラビたちも、子供たちとかかわらない・かかわれないことが多いという…。

>今日でも、ラビの子供たちについては同じようなことがいえる。彼らの父親は、ほかの人に対する時間に追われるあまり、子供たちに対しては全然時間を与えてくれないと、ラビの子供たちは声をそろえて証言する。現実に私自身についてもこのことは枚日起こっている。(…)こういうことは非常によくないことである。<(p.128)

JRF2021/3/186402

Twitter で、研究職などをしてる人が、育児に時間を使うよりも、それは専業の配偶者にまかせるようにしたほうが、社会の損失が少ないみたいな議論があった。そこでは、男女平等というのは、男性が常に育児に参加するという方向でなく、女性が研究し、男性が育児をする…などということがある…という方向にすべきだ。…という議論だったと記憶している。(当該 Tweet を探したが見つからなかった。)

ただ、産むのは女性なわけで、なかなか難しい話だと思う。育児するぐらいの余裕がないところに本当に良い仕事ができるのか…とかもあると思う。

JRF2021/3/187678

……。

申命記 第23章では金利が禁じられている…。

>今日でも世界じゅうのユダヤ人の間で、無利息協会というものがある。もちろん、東京にもある。このお金は、病院代が払えなかったり、家賃が払えなかったり、食事ができなかったりしているユダヤ人に対して、無利息で貸し出され、また取り立ても行なわれない。しかし、商売を広げようとか、投資のためにお金を借りるときは、利息をとることは当然許されると考えられた。この金利はラビたちが決めた。

JRF2021/3/186234

(…)

困っているユダヤ人に無利息でお金を貸すということは、同時にお金を借りなくてもすむような境遇まで、その者を引き上げる努力をするということだ。(…)「魚を一匹やれば一日だけもつが、魚をどうやってとるか教えれば一生生活できる」
<(p.184-185)

JRF2021/3/185815

金利がいつまでも取れる・複利で取れるというのはおかしい…とは思うな。どうやって、経済的にそれを担保するか私にはわからないから。長沼伸一郎『経済数学の直観的方法 確率・統計編』第2章4「教養としてのブラック・ショールズ理論」の議論(参: [cocolog:86465092])とか少し思い出す。

JRF2021/3/181123

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