cocolog:93063079
河崎一郎『素顔の日本』を読んだ。忌憚ない海外向けの日本文化論で、今でも通じる話もあれば、そこから随分変わったなぁ…という話もある。それも含めて、若い世代であっても読んで損のない本であろう。 (JRF 5729)
JRF 2021年10月12日 (火)
原著は英語で『Japan Unmasked』として出版されたものらしいが出版年は記されていない。Amazon.com には Paperback が 1969年6月のものとして書いてある。日本では問題となった本らしいが、同時にベストセラーでもあったらしい。私の持ってる本は1969年の第十一版である。
キッカケは finalvent 氏の他の人に向けたあからさまな釣り文句だった。
JRF2021/10/128405
《finalvent:Twitter:2021-10-04》
https://twitter.com/finalvent/status/1444806366581825536
>河崎一郎『素顔の日本』という本がある。ベストセラーで、70歳以上の知識人なら記憶に残る本だ。これこそ絶対に復刊されず、闇に葬りたいような本だよ。図書館にもなかなかないよ。絶対にお勧めしないよ。読んじゃだめだよ。<
JRF2021/10/121571
そこまで言われるなら(そして十分安ければ)読まぬわけにはいかない…と買ったのだった。
忌憚ない海外向けの日本文化論で、今でも通じる話もあれば、そこから随分変わったなぁ…という話もある。ただ、変わった話であろうとも、参考にすべきことであり興味深く読める。若い世代であっても読んで損のない本であろうと思われる。
JRF2021/10/123883
……。
以下は雰囲気を伝えるための抜き書き。私の興味に従ったもので、他者の関心になりそうなところを全部抜き書くわけではない。そうであってもここから本に関心を持つことができれば…と思う。
JRF2021/10/129320
……。
マッカーサーの「日本人十二歳説」について。その原因の一つとして…。
>まず第一に平均して日本人は英語が不得手である。そのため、気のきいた会話のやりとりは、所詮、無理な相談となる。また、語学力の不足は、自意識過剰を生み、ますます外国人との折衝をぎこちなくしてしまう。私もこれまでに外国の高官が、日本訪問中に指導層の日本人と面会して、思わず落胆の色を示す場面に数多く接してきた。<(p.12)
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「自意識過剰」が知的な会話をさまたげている。…と。でも、私は古典の教養の違いとかもありそうに思うけどなぁ…。まぁ、今の人の古典の素養の少なさと昔の人の漢文の素養の豊かさなどは比べられないかもだが。
JRF2021/10/127002
……。
>私自身、方々の外国首都を巡り歩いた結果の感想として、東京ほど醜悪で無秩序な首都は他に類がないと思う。反面、東京が急速に近代化の装いをしつつある事実を認めるのに、やぶさかではない。しかし、日本人大多数にとって、東京は世界で最もすばらしい都会であり、訪れる外国人の目を奪うに十分な首府なのだ。こうした考えから、大多数の日本人は、西洋人が日本に対して偏見をもつのは、日本を知らないからであり、いったん、日本を目でたしかめさえすればたちまち“親日家”になるはずだという考えが生じる。
JRF2021/10/127853
(…)
このナイーブで少々独断的な、平均的日本人の信念は、あまりも普遍化し、その結果、毎年多数の外国人が日本へ招待されてくる。しかもそのほとんどの場合は、日本政府あるいは団体、企業か個人によって、費用が負担されているのである。
<(p.14-15)
JRF2021/10/129330
東京は洗練された部分と雑然としたところが隣接しているところに良さがあるのかもしれない。食事など住む人には魅力も多いのだろう。私はより雑然とした大阪府に住んでいるが、雑然としている割に東京ほど物もなく、いいところがわからない。外から見てどうなのかなぁ…と気になる。
JRF2021/10/127993
……。
>今日の日本において、秘密を守ることは、ほとんど不可能に近い。西欧的概念における個人主義不在が、その原因である。極秘情報などの漏洩はしばしば起こる。それは情報をほかっに伝えたいという誘惑にかられやすいからであり、そこには自我の薄弱さがみられる。重要な国家機密の漏洩を規制する、立法措置不在の今日の日本では、だれのためにしろその入手を画策する相手に、極秘情報が洩れぬという保証はない。<(p.23-24)
JRF2021/10/120343
プライバシーは私生児の権利に関係があると私は思っている(昔には [aboutme:76272] にちょっと書いた)。個人主義もそういう人間がどう生きるか、平等に生きるかを考えるところに根があるのではないか。
日本にも私生児がいなかったわけではないが、人種的にごまかしやすいということがあったのではないか。
JRF2021/10/121949
……。
>世界中の人種のなかで、ピグミー族とホッテントットを除けば、おそらく身体的な魅力といった点で最も劣っているのは、日本人であろう。日本人は、いわゆる蒙古系人種に属し、扁平で無表情な上に、高いほお骨と切れ目の顔の持主である。体形は、およそ恰好が悪い。頭部は不均衡に大きく、胴長で短い脚は、曲っている場合が多い。日本人にくらべると、人相学的に非常に近い中国人および韓国人は、どちらかといえば上背があって直立した体形をもっている。<(p.31)
JRF2021/10/122308
著者も示唆するが、正坐に問題があったのではないか。正坐が苦手な恰幅の良い人物などを支配層から排除しがちだったこともあるのでは…と思う。ちなみに私はデブで正坐がほとんどできない。
JRF2021/10/128698
……。
>驚くべき事実は、海外在住の日本人のうち、実に九九パーセントのものが、なんらかの形で本国から生活援助をうけているということである。学生、技術者、事業家、新聞記者、アジア各地におもむいた平和部隊員などの大半が本国から仕送りをうけており、完全に自活するものはわずかである。ひどいのになると、ヨーロッパで日本料理店を経営しているものが、本国の文化団体の助成金をもらっている例もある。<(p.59-60)
この辺は、今は変わったのだろうか? アーティストとかには自活できてる者も多いのだろうが、アーティストのたまごとかなら援助を受けているのが普通か。
JRF2021/10/127637
……。
>(東京の住居・事業地区の…)建造物の大半は二階建てだが、天井が低いので、西洋の一階建てと事実上の高さは同じである。木造建築は、犬小屋をつくる場合と共通性があり、解体あるいは移動も、建設同様に比較的に簡便である。繁華街の容貌が、ほとんど一夜にして変化するさまは驚くばかりである。<(p.100)
「犬小屋」とは辛辣であるが、「兎小屋」とはよく言われたものだから驚かない。
JRF2021/10/127069
……。
>電気冷蔵庫の普及で、日本人の買い物の習慣にも大きな変化が生じるようになった。ついさきごろまで、日本の主婦たちは、台所に貯蔵設備がないので、日に四、五回も買い物にでかけたものである。が、今日では、スーパー・マーケットの登場もあって、日に一度の買い物ですむようになった。<(p.154)
日に何度も買い物に行くものだったとは私は知らなかった。
JRF2021/10/128317
……。
>自国の経済秩序保護を目的とした、自由な政治的動きを維持しながら、各国経済との利害関係に対して、合理的調整を推進することは、日本が長い将来にわたって続けなければならなぬ努力以外のなにものでもない。<(p.147)
日本が得意とした工業も中国に追い拔かれ、日本が求めた「自由貿易」を逆に求められる立場になり、苦しんでいる。ヨーロッパなどの行き方を見れば、何か方法はあるはずだが、その方向に行けてないといったところ。
JRF2021/10/124192
まぁ、苦しむようなそういう時代ももう過ぎたのかな? すでに多くは諦めて退場して、高齢化社会でそれでどうなるかといった感じか。特に優れているわけではないが中国以外の各国並みの技術は維持して、あとは貯めた資産でどれだけまわせるかといったところなのかな?
JRF2021/10/120552
……。
>終戦直後の数年間、日本は戦争中の直接被災国 -- フィリピン、ビルマをはじめ、後になって韓国を含めた -- に対し、賠償協定を結んだ。これら賠償がかなり国庫負担となったことは事実だが、反面、その支払いを通じてアジア諸国交易の突破口が開かれることになった。賠償あるいはそれと関連した形で、日本製品が東南アジア市場に再登場することになったという次第である。<(p.235-236)
JRF2021/10/129005
徴用工問題とかあるが、ヒモつきで日本の企業はむしろ得をしている。だから日本の企業からは取っていい…みたいなリクツもありうるのかな? でもそれなら税金から払った分は返すのが道理。返した上でヒモつきにするとか。…韓国の民間が日本企業から取って(韓国内で使い)、取った分を韓国政府が日本企業に補填するという形にする。直接補填では韓国世論が持たないから、日本政府と共同で基金を設立して利率の違いで実質的には韓国側がそこから出す。…とかになるんだろうか?…いや、私には複雑過ぎてわからないな。
JRF2021/10/126659
『素顔の日本』(河崎 一郎 著, 木村 譲治 訳, 二見書房, 1969年5月)
https://www.amazon.co.jp/dp/B000J9OELS
JRF2021/10/127343