« 前のひとこと | トップページ | 次のひとこと »

cocolog:93195641

トマ・ピケティ『21世紀の資本』を読んだ。この本は国際的な累進資本課税(資産課税)を提案する。私の勉強不足を痛感するような読書だったが、学んでも忘れることの多い昨今は、勉強不足感より無力感のほうが大きい。 (JRF 7411)

JRF 2021年12月18日 (土)

『21世紀の資本』(トマ・ピケティ 著, 山形 浩生 & 守岡 桜 & 森本 正史 訳, みすず書房, 2014年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4622078767
https://7net.omni7.jp/detail/1106469850

原著は『LE CAPITAL AU XXI^e SIECLE』(Thomas Piketty, Editions du Seuil, 2013)。

JRF2021/12/180212

この本には注の他に「補遺」があり、それはネットで公開されている。日本語のものは↓から。

《ピケティ『21世紀の資本』オンラインページ》
https://cruel.org/books/piketty/capital21c/index.html

JRF2021/12/185616

私は最近、経済モデルを考えていて([cocolog:93150989])、 r > g に興味を持って読んだ。補遺などにある証明はそれほど難しいものではないが、飛ばして読んだ。

私の勉強不足を痛感するような読書だったが、しかし、学んでも忘れることの多い昨今は、勉強不足感より無力感のほうが大きい。

最終的にはこの本は、国際的な累進資本課税(資産課税)を提案する。銀行データがコンピュター上で最近は取られており、それを国に渡すようなルールがあることから、金融資産についても課税できるというハラがあるようだが、かなり難しいように私は思った。

JRF2021/12/185061

引用しコメントするのがこのブログのスタイルであるが、今回は私には難しかったこともあってコメントは少なく、ほぼ引用のみになっていることも多い。ご容赦願いたい。

JRF2021/12/188819

……。

>歴史分析と、ちょっと広い時間的な視野の助けを借りると、産業革命以来、格差を減らすことができる力というのは世界大戦だけだったことがわかる。<(p.9)

「希望は戦争」という赤木智弘の衝撃的な論考は、月刊誌「論座」2007月1月号…とググるとある。話題になったが、私は読んでいない。

JRF2021/12/189889

ピケティのこの本では、戦争という例外があって「平等」が実現し、60年代や70年代の「成長」はそこからの例外的な「回復」であったことが語られる。80年代のレーガンやサッチャーの保守派の改革は、あってもなくても全体の「成長」には影響しておらず、ただ、「スーパー経営者」の登場を促したといったところらしい。

JRF2021/12/180996

……。

>マルクスの主要な結論は、「無限蓄積の原理」とでも呼べるものだ。つまり、資本が蓄積してますます少数者の手に集中してしまうという必然的な傾向だ。これがマルクスによる資本主義の破滅的な終末予測の基礎となる。資本収益率がだんだん下がってくるか(そうなると蓄積の原動力がなくなり、資本家同士の暴力的な紛争が起こる)、国民所得における資本の比率が無限に上昇するか(そうなると遅かれ早かれ労働者たちが団結して反乱を起こす)。いずれにしても、安定した社会経済的、政治的な均衡はあり得ない。<(p.11)

JRF2021/12/185696

無限蓄積の原理をググると、ピケティに言及するものしかほぼなく、ピケティの造語に近いのだろう。後のページで詳しい言及があるが、その部分は他の方がググって便利なよう、別のページに分けて引用しておいた。→ [cocolog:93195642]

JRF2021/12/189671

……。

>もし人口増加率と生産性上昇率がそこそこ低ければ、蓄積された富はかなりの重要性を持つようになる。特にそれが極端な割合を占めて社会の不安定要因となればなおさらだ。言い換えると、低成長だとマルクス主義的な無限蓄積に対して十分に拮抗できなくなる。<(p.12)

先進国が経験しているような 1.5 % 程度の成長が本来の成長率(それでも昔よりははるかに高い)で、キャッチアップする新興国の成長率が例外であり、そのような低い成長率であれば、従来からの資本を持っているほうが有利になる。…というのがこの本の予言である。

JRF2021/12/189567

……。

>もし資本収益率が長期的に成長率を大きく上回っていれば(これは経済成長率が(…1.5% とか…)低いときには、必ずとは言わないまでも起こりやすい)、富の分配で格差が増大するリスクは大いに高まる。この根本的な不等式を r > g と書こう(r は資本の平均年間収益率で、利潤、配当、利子、賃料などの資本からの収入を、その資本の総価値で割ったものだ。g はその経済の成長率、つまり所得や産出の年間増加率だ)。(…このとき…)相続財産を持つ人々は、資本からの所得のごく一部を貯蓄にするだけで、その資本を経済全体より急速に増やせる。<(p.28-29)

JRF2021/12/180854

g = 1~2% で、r = 4〜5% といったところらしい。ただ、r は税引き前で、税をコントロールすることでこの状況を変えられるかもしれないということ。

JRF2021/12/187518

……。

>今日の世界で富が取る具体的な形を理解するには、現在の先進国で資本ストックが、目下二つのほぼ同額の構成要素から成ることを理解するといいだろう。その二つとは、住宅資本と企業や政府が使う物的資本だ。まとめると、富裕国の市民はそれぞれ2010年に3万ユーロ稼ぎ、18万ユーロの資本を保有しているが、そのうち半分の9万ユーロは住宅で、残り9万は株式、債券、貯蓄、その他の投資だ。この数字は各国ごとにおもしろい変動があるので、第2章で分析しよう。<(p.54)

JRF2021/12/188411

農地ではなく住宅なんだね。住むのにそんなに金がかかってるのはいいことではないように私などは思うのだけど…。

JRF2021/12/185793

……。

>資本主義の第一基本法則 -- α = r × β <(p.56)

α は「国民所得の中で資本からの所得の占める割合」… 30% とか。
r は「資本収益率」… 5% とか。
β は「資本/所得比率 (総資本ストックが国民所得の何年分に相当するか)」… 600% とか。

これは定義のようなもので、常に成り立つ。

JRF2021/12/182149

……。

>歴史的記録を見ると、どうも資本モビリティが富裕国と貧困国の収斂を促進する主要な要因だったようには見えない。最近になって先進国に近づいたアジア諸国は、どれひとつとして巨額の外国投資の恩恵は受けていない。これは日本だろうと韓国だろうと台湾だろうと、もっと最近では中国だろうと同じだ。基本的には、こうした国はすべて、物理資本への投資、それ以上に人的資本に必要な投資を自力でまかなったのだ。人的資本は最新の研究によれば、長期成長の鍵となる。

JRF2021/12/180044

逆に、他国に所有された国は、それが植民地時代だろうと今日のアフリカだろうと、あまり成功していない。その理由として最も顕著なのは、かれらが専門特化した分野は将来の発展の見込みがほとんどない分野だったこと、そして慢性的な政治不安定にさらされていることが挙げられる。

JRF2021/12/185396

そうした不安定性の一部の理由は次のようなものかもしれない。ある国のかなりの部分が外国人に保有されていると、それを自国に収用しろという抑えきれないほどの社会的要求が繰り返し生じるのだ。それに対して他の政治アクターたちは、既存の財産権が無条件で保護されないと投資も開発も不可能だと反論する。これによってその国は、革命政府(これが市民の実際の生活条件改善に成功する場合はかぎられていることが多い)と既存の財産保有者保護に専心する政府(これは次の革命やクーデターの下地になってしまう)との果てしない交替に捕われてしまうのだ。

JRF2021/12/187999

同じ国民コミュニティにおいて、資本所有の格差はそれだけでも受け入れにくいし平和に維持するのも困難だ。国際的には、植民地型の政治支配なしにこれを維持するのはほとんど不可能だ。
<(p.75)

JRF2021/12/182859

武器がどういうところに供給されるかも影響はあるんだろうけど、冷戦が終わってしばらくして、そこまであからさまなのはなくなったということかな?

あと、思い出すのは、リカードゥの「比較優位」論。長沼伸一郎『現代経済学の直観的方法』を読んだとき([cocolog:91960637])と同じ部分を私のひとことから引用しよう。

JRF2021/12/188795

[cocolog:70551613]
>マメ知識:リカードの比較優位における「失業者」は「利子生活者」という意味に近い。(…)設備の革新に優位を持つというのは、設備の生産によって相手の減耗をコントロールできることを意味する。(…)「比較優位」のモデルを資本取引がからむような「通貨高」の議論などにつなげるのは、かなり慎重にやらないと間違う。<

JRF2021/12/186327

>仮にある年に一定の同じ率で減耗が発生するとき、それを貿易はどう処理するかというと、それを「分配」というのはもはやできず、輸入されるべきだったものが輸入されず、むしろ減耗の影響を定期的に押し付ける形になる。それは、需要側から見ると文化(カルチャー)の変化についていけず、消費がされなかったと映ることになる。

それが本国で「失業」=「利子生活者」を生むのは、まぁ、自然だろう。<

JRF2021/12/181825

[cocolog:90768574]
>「資本」すなわち「設備」の革新に「比較優位」があれば、単なる商品的輸出入を通じるものを超えて、競争相手国に打撃を与えることができる。逆にそれで脅して言うことを聞かすのが帝国主義でもあるのだろう。<

JRF2021/12/181500

……。

>発展や国同士の相対的な力を与える影響以外にも、人口増加はまた格差の構造にとって重要な意味を持つ。他の条件が同じなら、人口増加が大きいと格差低下につながりやすい。というのもそれは相続財産の重要性を引き下げるからだ。どの世代も、いわば自力で立ち上がらねばならないのだ。<(p.88)

「父なし子」が不利になるのは相続が不利だからだ…という話を最近した([cocolog:93119911] や [cocolog:93146120])。

それ以前にも少子化すると相続税を取るのが難しくなるみたいな話はしていたように思う。

JRF2021/12/187356

少し先の未来は相続財産の差がかなり大きなものになるのかもしれない。

JRF2021/12/185786

……。

>(…イギリスやフランスが植民地を持っていたころの例を引き…)取引の黒字を出して植民地を併合し、外国資産を蓄積する目的は、まさに貿易赤字を出せる立場に立つことだったのだ。これはしっかり認識しておかねばならない。永遠に貿易黒字を出していても、利益は得られない。モノを所有する利点は、労働なしに消費を続けられること、もしくは、とにかく消費を続けて、自分が生産するより多くを蓄積することなのだ。植民地時代は、これが国際的な規模で当てはまった。<(p.127)

でも、貧乏で貿易赤字よりは、貿易黒字のほうがマシだという議論はあるだろう。

JRF2021/12/183558

……。

>資本主義の第二基本法則 -- β = s / g <(p.173)

β は「資本/所得比率 (総資本ストックが国民所得の何年分に相当するか)」… 600% とか。
s は「貯蓄率」… 12% とか。
g は「成長率」… 2% とか。

これは常に成り立つわけではないが、経済はこれを満たす方向に動くと想定できる。

JRF2021/12/180988

……。

>実際、手持ちのデータを見ると、1970 -- 2010年には資本/所得比率が上昇したという意味では、所得の資本シェアはほとんどの富裕国で増加している(…)。しかしこの増加傾向は過去数十年間、1より大きい代替弾力性のみでなく、労働側の交渉力より資本側の交渉力が高まったことにも対応している。この間、資本のモビリティの増化と、投資の呼び込みに熱心な国家間の競争の激化が見られているのだ。近年はこの二つの効果が相互補強していたらしく、また将来もこの状況は続くかもしれない。

JRF2021/12/181546

いずれにしても資本/所得比率βの着実な増加、そして国民所得の資本シェアαの着実な増加を妨げる自己修正的メカニズムは存在しないことは、ぜひとも指摘しておきたい。
<(p,.230)

JRF2021/12/182592

国際的に法人税の下限を決める取り組みが成功したように最近報じられていたが、>投資の呼び込みに熱心な国家間の競争の激化<は修正されるのだろうか?

JRF2021/12/181908

……。

>現時点では、おそらくこれがこの研究における最も重要な教訓だ。つまり現代技術は、いまだ大量の資本を利用しているということだ。そしてもっと重要なのは、資本は多くの用途があるため、収益をゼロにすることなく莫大な量を蓄積できるという点だ。このような状況下では、労働にとって多少都合のようい方向に技術が変化したとしても、超長期的な資本シェアが減少するとはかぎらない。<(p.232)

JRF2021/12/184495

クズネッツが予想したようにはならない。…人的資本がますます重要になるとは限らない。…ということ。資本の重要性を高めてベーシックインカムへ…なんて夢も語られるがどうなのか…。

JRF2021/12/186176

……。

>世界の所得に占める資本シェアは30パーセント、あるいは40パーセントに達する可能性あある。これは18世紀、19世紀の水準に近く、もっと上昇しかねない。<(p.242)

機械などの資本財を作るための資本が重要というのは比較優位を検討したときの結論として出てきた。人工知能(AI) がそういうものになっていくのだろうか? 「シンギュリティ」とはまた別の話として。

JRF2021/12/183233

……。

>先述の通り、超長期で見ると、技術の変化が資本よりも人間の労働にわずかに有利に働く可能性はあり、そうなれば資本収益率と資本シェアは低下する。だがこの長期的効果の規模には限界があり、逆方向に向かう他の力にかき消されてしまう可能性がある。そうした力としては、ますます洗練された金融仲介システムの構築や、資本をめぐる国際競争などが考えられる。<(p.242)

JRF2021/12/183820

資本から税を取って、ある意味、資本の蓄積を阻害した場合、国際競争などで負け、低レベルな労働で外貨を稼がねばならない…とかならないのだろうか? ベーシックインカム論に似た議論もそこがおそろしい。国際協調でそういうことをなくしていくという議論なのだろうか?

JRF2021/12/184465

……。

>明確にしておくべき点として最後の、そしておそらく最も重要なものは、非常に高い所得と非常に高い給与の増加がまず何よりも「スーパー経営者」の出現によるものだということだ。<(p.313)

JRF2021/12/187456

相続税対策として、自分の子などを経営者に雇いそこに高い給与を出すから、「スーパー経営者」などというものが現れたのではないのか? もちろん、ピケティは相続にずっと言及しているから、そうであればそうと言うはずで、そういうのとは違うということだろうが、上位0.1パーセントならいざ知らず、上位1パーセントならそういう者も少なからずいるのではないのか。

JRF2021/12/184750

ちょっと前「同一労働同一賃金」というのがはやったが、あれは下の階層で非正規と正規の所得差の話で出てきたが、上のほうでは、相続税対策の者と、プロの経営者が少なくとも同等の給与をもらうべきだ…という話でもあったのだろうか?

JRF2021/12/189397

……。

>(…時間選好の理論に基づき…)「完全」な資本市場(資本の各所有者がその経済における最高の限界生産性に等しい利益を受け、誰でも好きなだけその利率で借りられる)の存在に基づいた標準的経済モデルでは、資本収益率 r が成長率 g よりも体系的かつ必然的に高くなる理由は次の通り。

もしも r が g よりも小さいと、将来の所得(そして子孫の所得)が、借金の利率よりも早く上昇することを知った経済主体は無限の裕福さを感じることになり、(r が g よりも高くなるまでは)すぐに消費をするために無制限に借金をしたがることになってしまうからだ。

JRF2021/12/185805

このような極端な形のモデルは完全にもっともらしいとは言えないが、r > g がほとんどの標準的モデルに当てはまることは示せるし、資本市場が効率的になれば、そのもっともらしさはさらに高まる。
<(p.375)

JRF2021/12/186263

借金して子供を増やす…という理屈というならわかるが、そうでないなら、無制限に借金する解釈が難しい。消費を除いた賃金が上昇していくとしても、労働単位の数が増やせるわけではなく、返せない分は複利で増えていく上に新たな借金もするのだろうから。理論的には示せるのかもしれないが…。

JRF2021/12/189532

……。

>私の考えでは、r > g という不等式は、絶対的な論理的必然ではなく、さまざまなメカニズムよって決まる歴史的現実として分析する必要がある。それぞれ相互にほぼ独立した力が重なりあった結果として生じたものなのだ。ひとつには、成長率 g は構造的に低くなりがちだ(いったん人口動態の変化が完結し、国が世界の技術最前線に到達して、イノベーションのペースがかなり遅くなると、通常年間1パーセントを大きく超えることはない)。

JRF2021/12/183242

さらに、資本収益率 r は多くの技術的、心理的、文化的要因に左右され、それらがまとまって約4〜5パーセント(いずれにしても、1パーセントよりは明らかに大きい)という利益率をもたらすようだ。
<(p.376)

JRF2021/12/186073

>こんどは、r > g が富の分配動学にもたらす影響を考えよう。資本収益率が常に際だって成長率よりも高いという事実は、富の不平等な分配を強力に後押ししている。たとえば、g = 1% で r = 5% ならば、富める人は年間資本所得のわずか5分の1を再投資するだけで、資本を平均所得よりも早く増やせる。このような状況下では、無限の不平等スパイラルを回避し、富の格差を一定レベルで安定させる唯一の力は、次のようなものになる。

まず裕福な人の資産が平均所得よりも急速に増大すると、資本/所得比率は無制限に上がり続け、長期的にはそれで資本収益率は低下するというものだ。

JRF2021/12/180780

でもこのメカニズムが働くには数十年がかかるし、19世紀と第一次世界大戦前夜までのイギリスやフランスのように、裕福な人が外国資産も蓄積できるような開放経済ではなおさらだ。原理的にはこのプロセスにもかならず終わりが来るが、(外国資産を持つ人々が地球すべてを所有するようになれば終わりだ)、それにはどう見てもかなりの時間がかかる。
<(p.376)

JRF2021/12/184071

個人の散財などがあって、ミクロには格差が縮まることはあっても、全体としては格差が拡大するしかない。暗い予想であるが、現実はこのセンを辿っている。

JRF2021/12/182573

……。

>言い換えれば、今日富が過去ほど不平等に分配されていない理由は、単に1945年以降まだ十分に時間が経っていないからだ。これが理由のひとつであるのは確かだが、これだけでは十分でない。<(p.387)

>今日では、民間財産全体が過去同様にほぼしっかり繁栄している。それなのに富の集中は以前のような高水準に戻っていない。(…)最も自然かつ重要な説明としては、20世紀の政府が資本と所得に高い税率で課税を始めたことだ。<(p.388)

JRF2021/12/185009

>(…相続税や所得税が20%や30%を超える累進税となった。…)そのような課税の結果、家族資産を平均所得の上昇より早く増やすには、代々続く世代が出費を減らし、貯蓄を増やす(あるいは格別に収益性の高い投資を行う)必要があった。その結果、階層の維持はますますむずかしくなった。逆に底辺から上へと昇るのは、たとえば遺産相続時に現物納税され、政府が競売に出した事業や株を買収することなどにより、容易になった。
<(p.389)

JRF2021/12/188908

植民地経営がダメになることは、簡単な投資機会を減らしたが、ある種の収益性の高い投資を他に残すことになり、かなり上のほうの人々には逆に投資機会を増やすような面があったのかな…と思う。ある種の人々は「格別に収益性の高い投資」が行えたのだろう。

JRF2021/12/182447

……。

>格差の「自然」構造は、どちらかというと経営者より不労所得生活者の優勢を好むようだ。特に低成長で、資本収益率が成長率よりも明らかに高いときは、(少なくとも最も説得的な動学モデルにおいては)富は集中し、資本所得トップが労働所得トップよりもはるかに優勢になるのはほぼ避けがたい。<(p..426)

JRF2021/12/185829

>来るべき世界は、過去の最悪な二つの世界が合体したものになるのかもしれない。それは、能力や生産性という観点から(すでに指摘したように、ほとんど何の事実に基づいた根拠もないまま)正当化されたすさまじい賃金格差と相続財産の非常に大きな格差との両方が存在する世界だ。こうして極端な能力主義によって、スーパー経営者と不労所得生活者の競争が、どちらにも属さない人々を犠牲にして行われることになる。<(p.433)

「スーパー経営者」には夢があるが、しかし、それが資本家の犠牲でなくやはり労働者の犠牲の上でしか成り立たないなら、宝くじみたいなものでしかなく、問題がある…か。

JRF2021/12/189628

……。

>(…バルザックやオースティン…)かれらの小説の一部登場人物たちが贅沢だとしても、これら19世紀の小説家たちは、格差はある程度必要不可欠なものとして世界を描いている。もしも十分に裕福な少数の人々が存在しなければ、誰も生存以外のことに頭がまわらなかっただろうと考えていた。このような格差に対する考えは、少なくともそれを能力主義に起因するものとして描かなかった点では賞賛に値する。ある意味で、この少数の人々は、その他のみんなのために生きるように選ばれた人々であったが、誰もこの少数の人々が、他の人々よりも能力が高いとか高潔だとかいうふりはしていない。

JRF2021/12/188151

それにこの世界では財産がなければ尊厳のある人生が送れないのはまったく明らかだ。学歴や技能があれば、平均の5倍や10倍は稼げるかもしれないが、それ以上はない。現代の能力主義社会、特に米国は敗者に対してずっと厳しい。なぜならその社会は、根底の人々の低い生産性は言うに及ばず、正義、美徳、能力が優れているから自分たちの優位性は正当化されると主張したがるからだ。
<(p.432)

JRF2021/12/185684

>1980年代末にミシェル・ラモンは、米国とフランスの、ニューヨークやパリといった大都市だけでなく、インディアナポリスやクレルモン=フェランといったもっと小さな都市でも、「上流中産階級」を代表する人々を対象に数百の徹底したインタビューを行った。彼女はその人々のキャリア、自分自身のアイデンティティと社会における位置づけをどう見ているか、そして何がかれらを他の社会グループやカテゴリーから分けているのか尋ねた。

JRF2021/12/180388

彼女の研究の主な結果のひとつは、いずれの国においても「教育を受けたエリート」はまず何よりも自分たちが厳格、忍耐、勤勉、努力といった(そして寛容、親切などの)言葉を使って表現した、自分自身の個人的長所と道徳的資質を強調するということだ。オースティンがバルザックの小説のヒーローやヒロインたちは、自分の個人的資質を(本文では名前の挙がらない)使用人たちと比較する必要など決して感じなかった。
<(p.434)

JRF2021/12/186258

メイドがいなくても家電があり、かなり低い所得でも文化的な生活ができるというのはある。でも、十分な給与のため働く道は実質的に閉ざされており、転売とか何か違法に近いことに手を染めねばならない。…というのはやはりおかしい。かといってベーシックインカムは財政的に難し過ぎる。これをスッキリ解決する方法はあるのだろうか?…私が経済モデルを作ることも・経済に関心も持つそれ自体も、それを探りたいというのが大きなところなのだが、答えが見つかる様子はない。

JRF2021/12/184064

……。

>(…資本収益率はより富が大きい者ほど大きい。それに拮抗しるのは成長率なのだが…) それに現在の世界の成長率には人口要素がかなり含まれており、新興経済の富裕層が、急速な勢いで世界の最富裕層の仲間入りを果たしつつある。これは最富裕層の顔ぶれが急速に変わりつつあるという印象をもたらし、一方で富裕国の多くの人たちはこのために圧迫感と、取り残されつつあるという感覚を抱くようになっている。結果として生じる不安が、その他すべての懸念を上回ることもある。

JRF2021/12/180214

だが長い目で見ると、貧困国が富裕国に追いついて世界の成長率が緩やかになった場合、資本収益の格差のほうが、はるかに大きな懸念事項になり得る。長期的には、国内の富の格差は、国家間の富の格差より確実にやっかいだ。
<(p.448)

JRF2021/12/181854

中国の製造業にシェアを奪われる…というだけでなく、中小企業の機能が移転し、そこにあった発明などの機能も失われている様子を見ていると、そう穏やかではいられないが、日本ではそういう時期の最も厳しいものはもう過ぎたのかもしれない。まぁ、トヨタがダメになれば…とかまだ懸念はあるが。

JRF2021/12/185017

そうでなくなったときは資本が大事になる。たとえば海外に持ってる資本が大事になる…ということで、その分配をどうするかだが、ピケティは否定するが、私は保護主義的な方向を模索している。[cocolog:91758418] などでは GPS を利用するなどして知財に絡んで地境で関税を取ったりする方向を考えている。

keyword: 関税

JRF2021/12/187590

……。

>カルロス・スリムとビル・ゲイツの対比(…)。スリムはメキシコの不動産および通信事業の大物で、(…)政府の助けで獲得した独占レントによって富を築いたとしばしば報じられている。(…)ビル・ゲイツは(…)賞賛に値する起業家の見本とされる。

JRF2021/12/187170

(…しかし…)ゲイツの貢献は電子工学とコンピュータ科学の基礎研究に携わった数千人のエンジニアと科学者たちの働きに依存しており、かれらなくしてゲイツのイノベーションはひとつも実現しなかったと私は思う。そうしたエンジニアや科学者たちは科学論文で特許を取得しなかった。つまり、事実に目もくれずにゲイツとスリムを極度に対照的な存在として描くのは、あまり筋が通らないのではないか。
<(p.461-462)

JRF2021/12/185145

ビル・ゲイツに関してはこの本の Amazon 評にも書かれており、[cocolog:93150989] で言及した。

JRF2021/12/187873

……。

>いずれにせよ、すべての不正な利得や不当な財団を法廷で解消するわけにはいかない。あからさますぎず、もっと体系的なやり方でこの問題を扱う道具が、資本課税だ。大まかに言うと、資本収益はしばしば、本当に起業家的な労働(経済発展には絶対不可欠な力)、まったくの運(たまたま適切な時機に、有望な資産をよい価格で買う)、そして明白な窃盗の要素を分かちがたく結びつけたものというのが実情だ。富の蓄積の恣意性は、相続の恣意性よりもっと幅広い現象なのだ。<(p.463)

JRF2021/12/180163

この部分、水商売から税を取るのも一般的な話で、人によっては眉をひそめるかもしれないが、私は特に問題を感じない。

JRF2021/12/183958

……。

>オリガルヒ型の格差拡大とは、富裕国が自国の億万長者に所有されるようになること、もっと一般的には、中国や石油輸出国を含むすべての国が、ますます世界の億万長者や大富豪に所有されることを指す。<(p.480-481)

JRF2021/12/180060

>オリガルヒ的格差拡大は、国際的格差拡大より可能性が高いだけでなく、それと戦うのもはるかに困難だ。通常は互いに競争している国家間での国際的協調が高い水準で求められるためだ。それに資産の分離は、国籍という概念そのものもあいまいにしがちだ。最も裕福な人なら、資金を携えて国籍を変え、もともと属していたコミュニティとのつながりをすべて断つことすらある程度は可能だからだ。この困難を乗り切るには、比較的広い地域レベルで協調して対処するしかない。<(p.482)

JRF2021/12/181729

機械学習などで株式の取引などができるようになってきている。数値だけを見てではなくニュースを機械が見て取引するという方向も可能となりつつある。そういうプログラムによる取引は、人による取引が不正含みであったのと比べ、証拠が残りやすく公正である。(このブログにも以前そのようなことを書いたはずだが忘れた。) それが人間の投資家に勝てるとするなら、情報を集約して判断するだけの資本家の価値は本来下がらねばならない。機械=資本は大事だが、資本家そのものはどうなのか?

JRF2021/12/189215

これに対抗するために、情報を取って秘密にする…たしかにその方向はありうるが、それを国家がして何が悪いのか…となると保護主義に行き付く。そうでないとするとスパイを企業が雇っていくという価値観になる。

これに関し、以前次のようなメモを書いた。

JRF2021/12/181303

○ 2021-11-07T15:13:43Z
>https が必要ってアホか。囲碁とか知らんだろ。侵入できるからこそユーザーのためのセキュリティが介入することもできる。末端でしか侵入できないなら末端に影響するしかない。Firefox と Google の中は今ではスパイだらけだろう。<

JRF2021/12/189368

○ 2021-12-09T08:10:05Z
>Google と Firefox の中はスパイだらけという話。逆にスパイを集めて二重スパイ化して世界をコントロールしようとしているセンもありうる。だからこそ GAFA に投資と注目が集まるのか。

集まったスパイは「正義のスパイ」も多いだろうから、Google などのためにもちゃんと働くのだろうが、究極のところで loyalty がないため、長期的にはおかしなことになるのではないか。

JRF2021/12/185946

これに対抗するのに国家を持ち出すのはそれほど間違ったことなのだろうか?

○ 2021-09-15T21:13:24Z
>国が適格消費者団体となって、そのことについて Microsoft と戦ってくれないものか。ついでに、全画面広告=インタースティシャル広告について Google と戦ってくれないものか。<

JRF2021/12/183410

スパイに似た物として新聞社の問題がある。ネット社会から見て、どう新聞社の記者ネットワークを支えるのかという点。昔は、Amazon が NHK みたいに集金機関を作って、対応させるというのも考えていたが…。(Amazon の「未来像」は配送を行わないことを理想としているフシがあるので、配送機関でなく集金機関を想定。)

ネットから見ると、新聞社の問題は、アーカイブの価値を活かせていないことと、料金を取るために記事を隠すのはしかたがないとしても、払った人間がネットからたどり着きやすいように、同等の記事へのリンクを集めるとかはして欲しいということがある。

JRF2021/12/189749

新聞社を横断するような取り決めが競争法上難しいというなら国が乗り出すべきで、ここも国家の問題なのではないのだろうか? ネットは新自由主義的文脈から出てきているから、国家に頼るのが下手なだけではないか? 国がマスコミを支配したがる…というのも問題ではあるのだが。

JRF2021/12/183928

国の強過ぎる権限を問題にするなら地方分権か…。記事の地域著作権みたいなのを認めて、図書館ごとにアーカイブを管理する。図書館は専門職が必要で、その集約が中央銀行みたいな独立性を持った機関となり、そこが同等の記事へのリンクも管理する。…とかそういう方向だろうか。

keyword: 図書館

JRF2021/12/181560

……。

>果てしない格差スパイラルを避け、蓄積の動学に対するコントロールを再確立するための理想的な手法は、資本に対する世界的な累進課税だ。こうした税金はまた、別の長所も持っている。富を民主的な検分にさらすというものだ。これは銀行システムや国際資本フローをうまく規制するための必要条件だ。資本課税は、私的利害よりも一般的な利害を優先させつつ、経済的な開放性と競争の力は維持する。この理想的な政策の代替案となるかもしれない手段は、ナショナリズムなどのアイデンティティに引きこもる各種の手法だが、こちらには資本課税のような長所はない。<(p.489-490)

JRF2021/12/185979

しかし、国際協調を進めた結果が SDGs で、SDGs のために、かつて差別して者を産児制限するためフェミニズムに資金を出し、表現の自由を侵害する(参: [cocolog:93155097])。それを統一的価値観だというなら、それは私は問題があり過ぎると感じる。EU のような国家の壁のなくしていくことだけが解決でないなら、ナショナリズム的な方向を考えないというのはそれはそれで間違っているのではないか。

JRF2021/12/181865

ナショナリズム的な方向だけが答えだとは決して言わないが、その方向を向いているという疑いだけからすべてを否定するのは間違っていると感じる。

ただ、ナショナリズム的方向がむしろ資本家の望みに沿うものであるとするなら、それをかわすには戦争支持になってしまうのか。…それは避けたい。

JRF2021/12/186957

ただ、コンピュターウィルスとかスパムメールとかを他の国家が統制しないことに対し、その国を責めたい・攻めたいみたいには思ってしまうのは、正直なところで、攻めるかわりに守りを固める方向として、ブロッキングみたなものも私はある程度支持しているが…。

keyword: ブロッキング

JRF2021/12/184973

誰かがやったスパムでブロッキングされて、それで他者の収益が失われればそのブロッキングが過剰でない部分はブロッキングされたプロバイダも一部損害賠償責任を負う…とかあってもいいのかもしれない。

そういう部分的な「争い」はやっていくべきなのかも?…それともこれも保険会社を儲からせるだけになるのか…。ブロッキングという労働のコストは補助金などを出さず資本家などに出させるという話にすればいいのか?…難しいな。

JRF2021/12/186186

……。

スパイの話とブロッキングの話をつなげることもできる。

昔、HTTPS (昔は SSL) について、サーバーのプロバイダからユーザーのプロバイダまでの経路は郵政局のネットを使わねばならない…みたいな規制をすべきだと昔考えたこともあった([cocolog:72609069])。

その経路と違うところの暗号通信については、まるごとブロッキングされても「過剰」ではない…みたいにできるかな。

JRF2021/12/189199

その経路を使わせる利点としてどこからどこへの通信量がわかるから、あとは、どういう通信をしたかは申告させる…ネット税みたいなのをしてもいい。当然、潜入捜査的なものが税務調査には必要になるだろう。その経路を使ったものも使ってないものにも必要だが、その経路を使ったものは忠実義務が課された者の潜入捜査に限られるのに対し、その経路を使わないものは忠実義務のないスパイが使われる…といった感じにして差を出せばよいのではないか。

JRF2021/12/187391

……。

>(…プートミが述べるには…)上流階級は本能的に怠惰を捨て去り、能力主義を発明したということだ。(…)プートミの主張は、本質的な真実を思い出させてくれるという美点を持つ。その真実とは、格差の意味を定義し、勝者の立場を正当化するのがきわめて重要だということであり、これを狙って各種の事実の歪曲が見られるはずだということだ。<(p.507)

JRF2021/12/180207

失なわれたン十年で、日本は沈んだが、しかし、世界の貧困国は成長したからいいのだ。…という。

しかし、日本以外の国は(先進国も)たいてい成長していて、日本がほぼ例外的に失っている。

敗者の正当化もいろいろある。

JRF2021/12/182036

……。

>(…資本課税は所得からの分離が認められるなどしてきている。…)現代の社会国家が存在し続けるためには、その根底にある税制の最小限の累進性を維持するか、少なくともトップ層での逆進性が露骨にならないようにしなければならないのだ。<(p.518)

JRF2021/12/182523

私は、配当・利子などが源泉分離になっているのを申告分離にするよう主張したことがある。源泉分離はした上での申告分離のつもりであった。すべての所得の合算ができない・それを求めると外からの投資がなくなる…という懸念があり、分離課税はしかたがないとしても、その不平等を少しでも緩和したいというのがあった。

JRF2021/12/180565

が、そのような主張が海外との資本をめぐる競争を生み出しているとすれば、申し訳ない気持ちになる。

[cocolog:93150989] では岸田総理の金融所得課税強化を支持する形で、教育目的金融税の提案をしている。

JRF2021/12/189776

……。

スーパー経営者問題には所得税の累進制の緩和が影響しているのではないか…とピケティは述べる。「交渉力」による仮説…。

JRF2021/12/186561

>重役にとって、企業内でかかわってくる他の勢力(…)に大規模報酬(…)が本当に正当化できるものだと説得するのは常にむずかしい。1950年代と1960年代には、英米企業の重役たちはそんな昇給を獲得しようと奮闘する理由などほとんどなかったし、他の関係者たちもそれを受け入れたいとは思わなかった。というのも、その昇給分の80〜90パーセントがどのみちまっすぐ政府に行ってしまうからだ。でも1980年代以後はこの環境が一変してしまった。そして各種の証拠から見て、重役たちはすさまじい努力をしてまで、関係者たちにそうした巨額の昇給を認めるよう説得するようになった。<(p.532-533)

JRF2021/12/185492

>こうした問題について多少なりとも議論を進めるべく、(…)新しいデータベースを活用しようとした。そこで得られた結果によれば、重役報酬高騰は交渉モデルでそこそこうまく説明がつくし(…)、経営生産性の上昇なるものとはほとんど関係ない。

JRF2021/12/183980

(…)

限界税率の変動を見ると、重役報酬が一部の国だけで急増し、他はそうならなかった理由を説明できることもわかった。特に企業規模と金融業界の重要性のちがいだけでは、絶対に観測された事実を説明できない。同様に、高騰する重役報酬が競争欠如によるもので、もっと競争のある市場と企業ガバナンスやコントロールの改善があればその状況を終わらせられるという考えも、非現実的なようだ。私たちの結果から見て、1980年以前に米英で適用されていた抑制的な課税だけが効くようだ。
<(p.534-535)

JRF2021/12/189425

……。

>私が提案する資本税の最も理想的な税率表はどんなもので、そうした税金からどのくらいの歳入が得られるだろうか? この問題に答えようとする前に、提案している税金で既存の税金をすべて置き換えるつもりではないことに留意してほしい。これは現代の社会国家が依存している他の歳入をかなり慎ましく補うものでしかない。(…)資本税の主要な目的は、社会国家の財源をまかなうことではなく、資本主義を規制することなのだ。(…)資本税はまず民主主義的、金融的な透明性を促進しなければならない。誰が世界中でどんな資産を持っているかが明確になる必要がある。<(p.542-543)

JRF2021/12/182873

人を救うために秘密の資金が必要な時代ではもうない…ということなのかな。その辺は死刑の廃止が広まるヨーロッパらしい考え方と言えるかも。ちなみに私は死刑廃止には反対である。端的に言えば、戦争はまだまだ起こりうるから。

keyword: 死刑

JRF2021/12/183307

……。

>今日の世界が直面している大問題 -- 社会国家の未来、新エネルギー源への転換費用、途上国の国家構築など -- について、理性的な論争を行うのはとてもむずかしい。これは世界の富の分布があまりに不透明なままだからだ。

JRF2021/12/189040

一部の人は、世界の億万長者たちのお金は有りあまっている、そいつらに低率の税金をかけるだけで世界のあらゆる問題が解決できると信じている。また別の人は、億万長者なんて実に少数だから、そいつらに重税をかけてもたいした成果はあがらないと考えている。第III部で見た通り、真実はこの両極端の間のどこかにある。(…)いずれにしても、真に民主的な論争は信頼できる統計なくしては始まらないのだ。
<(p.543-544)

JRF2021/12/186805

ただ、フランスで起きたことを思い出すと統計のためのわずかな税率ではじまったことが、「重税」にいつかは変わる。なかなか協力は得られないのではないだろうか。

JRF2021/12/184784

……。

>中央銀行は富そのものを創り出さないことはぜひとも認識してほしい。(…)そのオペレーションは、金融資産と負債を(…作り出し、その…)瞬間にこの両者は完全に相殺される。(…)次に何が起こるかは、この金融政策が実体経済にどう影響するかで決まる。

JRF2021/12/183974

もし中央銀行から出た融資のおかげで、その借り手が苦境を脱して最終的な崩壊を避けられたら(崩壊したら国富は減ってしまいかねない)、状況が安定して融資が返済されたときには、FRB (…つまり中央銀行…)からの融資が国富を増やした(少なくとも減るのを防いだ)と言える。

JRF2021/12/185401

一方、FRB からの融資のおかげで、借り手はどのみち倒産は避けられなかったのにそれが先送りされただけだったり、きちんとした競争相手の台頭を防ぐ結果になるだけだったりしたら(そういうことは起こり得る)、FRB の政策は最終的に国富を減らしたと言える。

どちらの結果も可能だし、あらゆる金融政策は、どちらの可能性もある程度は高める。
<(p.578)

JRF2021/12/182620

リフレ派というのがあったが、財政のあと押しが十分でなかったというのが彼らの反省点になるのか。ただ、輸入に外貨が必要な日本が、財政赤字を多くしてホントにやっていけるのか、私はずっと疑問に思っていた。今もそれは変わらない。

JRF2021/12/185015

新型コロナという災害があって財政赤字をすべての国が積み上げて、他の国はインフレぎみにしているけど、日本は高齢者の貯金を心配してか、その方向には行けない感じ。円安にして今は資金が外に行きにくいようにしているけど、やがて、他の国の通貨が下がったとき、円高になって還流が難しくなるということなのか…円高時の輸入に関税をかけて財政赤字をカバーするとか?…そんなにうまくいくかな?

それとも SDGs ですべての国がさらなる赤字になることを見込んでいるのか…。

JRF2021/12/184930

……。

>(…キプロスの2013年の危機…)この一件が興味深いのは、中央銀行と金融当局の限界をよく示しているからだ。かれらの強みは素早く動けることだ。その弱みは、自分たちが引き起こす再分配の標的をきちんと決める能力がかぎられているということだ。結論としては、累進資本税は永続的な税金として有用なだけだなく、大規模銀行危機の解決における例外的な課税(これはかなり高い税率もあり得る)でも役に立つということだ。<(p.584)

JRF2021/12/188420

東日本大震災でも、国際的なシンジケート団とかが必要と私は思ったが、そういう話は聞かなかったように思う。私が知らないだけであって、だからこそ野田総理の消費税上げの国際公約となったのか…。

その辺はわからないが、現代、そういうのが難しくなってるのかな?

JRF2021/12/185574

……。

>法人税からの税収を、各国内の売り上げや支払賃金に基づいて割り振ればいい。<(p.590)

「外形標準課税」はもうあるね。それに近いものを GAFA に適用できるか…という話かな?

JRF2021/12/187346

……。

>誤解してもらっては困るが、私は別に公的債務が好きなわけではない。すでに述べたように、債務はしばしば貧困者から金持ちに富を再分配するための裏口になってしまう。貯金が慎ましい人々から、政府にお金を貸せる人々に富が流れることになる(一般的に、政府にお金を貸せるような人々は、貸すよりむしろ課税されるべきだ)。20世紀半ば、第二次世界大戦の大規模な公的債務放棄(およびインフレを通じた債務縮小)からこのかた、政府債務と、政府債務の社会再分配への影響については、多くの危険な幻想が現れてきた。こうした幻想は即座に潰す必要がある。<(p.596)

JRF2021/12/180435

財政赤字容認派はこの点をどう考えるのだろう?

日本の場合、国債を持ってるのはゆうちょをはじめ銀行で、そこに国債の債務一部放棄…とか一度限りの富裕税…を働きかけるとか、いつかすることになるのだろうか? それは困難が多そうだが…。

JRF2021/12/180806

……。

>相続を(…相続時に…)重課税するよりは、相続税をもっと少額にする一方で、物件とその収益の価値がだんだん上がるにつれて年次固定資産税、賃料に対する課税、さらには富裕税をかけるほうが効率的だ。<(原注 p.-82)

財政赤字よりは資本税がいいとして、国際的な資本税の導入の戦略としては、相続税を一部犠牲にする…ということなのかな?

JRF2021/12/183899

……。

>国富や国民所得という考え方の長所は、それが国の豊かさについて、GDP 概念よりもバランスのとれた見方を与えてくれるということだ。GDP はある面ではあまりに「生産主義的」なのだ。たとえばもし自然災害が富の相当部分を破壊したら、資本の減価償却が国民所得を引き下げるが、GDP は再建活動のために増える。<(原注 p.-23)

災害があれば(強制的な)減価償却が増える…とそういうシステムなんだね。

JRF2021/12/189194

« 前のひとこと | トップページ | 次のひとこと »