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トールキン『ホビットの冒険』を読んだ。冒険に出るような人間はあとあと白い目で見られるという注意があるところは今のファンタジーにはない部分で、しかしそれでも冒険に行かせるあたり、現実を教えつつ理想も唱える児童文学の配慮を感じた。 (JRF 2160)

JRF 2022年9月13日 (火)

『ホビットの冒険』(J.R.R.トールキン 著, 瀬田 貞二 訳, 岩波少年文庫 058・059, 1979年10月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4001140586 (上)
https://7net.omni7.jp/detail/1101679198 (上)
https://www.amazon.co.jp/dp/4001140594 (下)
https://7net.omni7.jp/detail/1101681222 (下)

JRF2022/9/134627

原著は 1937年だが、本訳の底本は原著の 1951年の第二版。RPG 風ファンタジーの児童文学の名著というかファンタジー RPG の元ネタ的作品。図書館で借りて読んだ。

JRF2022/9/139658

キッカケは、トールキン原作と言われる『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』という映画が、黒人をエルフに登用したのが Twitter で議論を呼んだのに対して、そういえば読んでなかったな…とトールキンの作品に興味を持った。トールキンの作品の中でそこそこ短かめで評価が高いのが『ホビットの冒険』で読んでみることにしたのだった。なお、本作は『ロード・オブ・ザ・リング』の前編的続編として映画にもなっている(未聴)。

JRF2022/9/133077

読んでみると、冒険に出るような人間はあとあと白い目で見られるという注意があるところは今のファンタジーにはない部分で、しかしそれでも冒険に行くことを肯定するあたりが、現実を教えつつ理想も唱える児童文学的配慮を感じた。他にもまだつまづくものの少ない最初のほうで…

JRF2022/9/139401

>わしらなかまでいちばんびんぼうな者にでも、あそぶ金があり、ひとに貸す金があった。また、この上なくふしぎなおもちゃ細工はもちろんのこと、作りたいばかりに美しいものを作るひまも、たっぷりあった。ああ、あんなに手のこんだりっぱな仕掛[しかけ]や細工は、もはやこの世のどこにも見あたらなくなったわい。<(上 p.55)

JRF2022/9/136261

…とか、さらっと現実の仕組みを説明するところは児童向けのよい配慮だと思った。また、竜を殺すのが、主人公その人ではないというのも、多くの人が英雄になれない現実を反映し、しかし、主人公のように活躍できる運は巡ってくることをにおわせるあたりもよい配慮だと思った。欲がからんだ主人公を含む登場人物のあり方やその解決の仕方はあざやかだったと思う。

JRF2022/9/137582

上巻の途中までは主人公はイヤイヤ参加してるだけで展開が重かったが、それ以降は読むのが楽しくなり、一気に読み進めた。最後も、単純なハッピーエンドではなく深みがある物語だと思った。子供のうちにこの作品を読み切ることができた者は幸せだろう。

JRF2022/9/135358

私は、映画は見てないが『力の指輪』での人種の問題はどうとも言えないとする。語りにくい人種問題をファンタジーの形で児童に示すのはトールキンの力量の部分で、それを「だいなしにする」と見て怒る人が出るのもわかる一方、若人に現代的考え方を示すのも重要だというのもわかる。映画『アバター』の変種として黒人が白塗りで出ればさらに話題になったかとも思う。

JRF2022/9/133660

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