« 前のひとこと | トップページ | 次のひとこと »

cocolog:93849921

マンデルブロ『フラクタル幾何学』に目を通した。数式はさほど難しくないが意味をとるのに難しい本だった。図を楽しむぐらいしかできない。 (JRF 5291)

JRF 2022年11月15日 (火)

『フラクタル幾何学 上・下』(B・マンデルブロ 著, 広中 平祐 監訳, ちくま学芸文庫, 2011年2月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480093567 (上巻)
https://7net.omni7.jp/detail/1103025498 (上巻)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480093575 (下巻)
https://7net.omni7.jp/detail/1103025499 (下巻)

JRF2022/11/156336

原著は 1977年に出て、1983年の版の訳。訳は 1985年に日経サイエンス社から出ていたのを文庫化したもの。

JRF2022/11/157802

最近、フラクタルに興味を持ったので手に取ったのだが、さすがに数学書で難しく「読んだ」とは言えず「目を通した」ぐらいにしか言えない。数式はさして難しくないのだが、文が「エッセイ」ということだからか、何か著者によう別の論文などを読んでることが前提とされるようになっていたりするようで、意味がつかめないことが多かった。図を楽しむぐらいしかできないが、図の説明も十分でなく難しかった。ただ、これは、日本の学生などの有志が翻訳したそうで、彼らは意味がつかめたのだろう。スゴイと思う。

JRF2022/11/153110

なお、過去、[cocolog:74426831] でマンデルブロ&ハドソン『禁断の市場』を読んでいる。

JRF2022/11/155107

……。

まず上巻について。

JRF2022/11/156184

……。

現実の糸でできたボールは観方によって 0 次元から 1次元の混乱、3次元…と様々な次元に見える。が…。

>数値によって表される結果は対象物の観察者によって決まるという考えは、20世紀物理学の考え方であり、またその実例となっている。

JRF2022/11/154057

このエッセイでとりあげた対象のほとんどは、先ほど考えた糸でできたボールのようなものであり、異なる実効次元を次々と示すことになる。しかし、重要な新しい要素も付け加えられている。きっちり定義された次元と次元に横たわる領域を、そのなかでは D > D_T であるフラクタルの領域として解釈し直すことである。
<(p.46)

量子力学や相対性理論だけでなく、超ひも理論までみすえての発言なのだろうか…。

JRF2022/11/152966

……。

>私は、銀河および星の分布が、フラクタル次元が 0 < D < 3 を満たすような自己相似の領域を含むものであることを主張する。D = 1 であることが期待される理論的理由のいくつかを略記し、同時に、観察された D の値がなぜ D ~ 1.23 であるかという疑問を提起する。<(p.178-179)

宇宙が一様な分布だとすると夜の星空は輝いてみえるはず…らしい。それが D = 1 に近いフラクタル次元だからこそスカスカで黒い背景にまばらな星となっているのだそう。

これが、ひも(超ひもの)の一次元と共通していることに意味はあるのだろうか?

JRF2022/11/159371

……。

質量指数 Q は次元であるとは限らない…。

JRF2022/11/156936

>一般的に言うと、物理学の領域には <M(R)> \propto R^Q の関係を含むものが多くあるが、この公式自体は、Q がフラクタル次元であることを保証するものではないということである。研究者によっては、この Q を実効次元と呼ぶことを提案する向きもあるが、それは無意味なことである。その理由は、Q は D を特徴づけるような他のいかなる特性も持たないからである (例えば、D の和や積は Q に対応することなく意味を持ち得るのである)。また Q を実効次元と見なそうとすると混乱のもととなる可能性があることが明らかになっている。<(p.267)

JRF2022/11/158077

質量とフラクタル次元はそれほど強く結び付かないのか。本当にそうなのだろうか? むしろ間違っているのは質量の物理ということは…ないか、ないな。

JRF2022/11/159506

……。

>血管外の組織のなかのすべての点は、この(…動脈と静脈…)2つの血管系の境界線上にあるということになる。

JRF2022/11/155170

(…)

(…理想化された生物の体という…)この構成物において、静脈と動脈は標準的な領域である。というのは、小さな球(血球)は完全に血管系から取り去ることができるからである。しかし、血管系は全体積の数パーセントを占めているにすぎない。ところが組織では、ようすが非常に異なっている。どんな小さな組織をとってきても、その小さな部分には動脈や静脈が交差して通っている。組織はフラクタル曲面であり、そのトポロジカル次元は2、フラクタル次元は3である。
<(p.322-323)

JRF2022/11/156470

血管がフラクタルなのではなく、むしろ、血管の「間」にある組織がフラクタルなのだという。そんな観方もできるのか。

JRF2022/11/150341

……。

>読者はフラクタルは、自己相似と結びついた概念であるという印象を持ったかも知れない。しかし、決してそのようなことはなく、フラクタルの幾何学は、一般の幾何学での直線に相当するもの、すなわち「線形フラクタル」から始めなければならなかっただけである。<(p.363)

JRF2022/11/159464

これがいまいちわからない。自己反転が出てくるが、意味がつかめない。確率的にフラクタルを拡張することは、むしろそれを期待して読んでいたのだが。(そして、おそらく私の理解力不足で、あまりその役には立たなかった感じなのだが。)

JRF2022/11/154279

……。

次に下巻について。

JRF2022/11/156219

……。

>要約すると、くりこみ群とフラクタルは同じ発想によっているということに疑問の余地はなく、1つのコインの解析的な面と幾何学的な面との関係である。ただ、フラクタルの理論には (g) (…すなわち、増幅または減衰…)に対応する概念はないので、両者は完全に平行な理論であるというわけにはいかない。<(p.188)

くりこみ群との関係についても期待して読んでいたのだが、いまいち、納得できる説明がなかった印象。

JRF2022/11/158180

……。

>価格変動はレヴィの安定分布に支配されているという予想を立てることができる。<(p.207)

私は「シミュレーション仏教」の経済をレヴィ分布と正規分布を組み合わせた乱数から作った。ここでの「レヴィの安定分布」はレヴィ分布とはまた別のようだが…(Wikipedia によるとレヴィ分布はレヴィの安定分布の一つらしい)。

JRF2022/11/151920

『「シミュレーション仏教」の試み』(JRF 著, JRF 電版, 2022年3月11日)
https://www.amazon.co.jp/dp/B09TPTYT6Q

《JRF-2018/simbd: シミュレーション仏教 - Buddhistic Philosophical Computer-Simulation of Society》
https://github.com/JRF-2018/simbd

JRF2022/11/159453

……。

>例えば、経済学のような分野を研究する際には、その「データ」には、おそろしくいろいろなものがまざっているということを忘れてはならない。つまり、データの分布は変動のない本質的な「真の分布」による効果と、変動の大きい「フィルター」による効果とが合成されたものである。私の論文(1963e)では、D < 2 である漸近的にハイパボリックな分布は、この点で大変「頑丈」であること、すなわち多種多様なフィルターを加えても、その漸近的性質は不変であることを述べている。一方、他の分布はすべと言ってよいほど著しくこの頑丈さを欠いている。

JRF2022/11/150115

したがって、ハイパボリックな真の分布は一貫して観察できるわけである。つまり、歪曲された何組かのデータが実は同じ D を持ち、同じ分布をしていると考えられるわけである。しかし、その他の分布に対して、同じ扱いをすると、たいてい「無秩序」な互いに矛盾した結果になってしまう。言いかえると、漸近的にハイパボリックな分布の他には「無秩序」な分布しか存在しないということになる。無秩序な結果は公表されなかったり気づかれなかったりする傾向があるので、漸近的にハイパボリックな分布が多く見られるのは予想されることであり、実際に自然界において優勢な分布なのかどうかはわからない。
<(p.220)

JRF2022/11/153858

菩薩は仏ではないが転生する、つまり次元が大きいが、仏の無限性をもたない。[cocolog:93831542] でもホログラフィック原理によせてそのことを述べた。これは、くりこみにおいて、情報が捨てられることに相当するのではないかと思う。それがフラクタルになると、フラクタル次元が最高次元に相当しない法=分布は統合されたところにおいて消えてしまうというところに現れるのではないか。3次元的に法であっても、それよりも上の次元においては法と考えることはできない、または、上の次元で法であろうとすれば、それ以下の次元の法とは齟齬をきたすことがある…ということではないかと「妄想」する。

JRF2022/11/151392

…と上の引用部分を読んだときに思ったのだが、今読み返してみると、著者は「フラクタル次元が最高次元に相当しない法=分布は統合されたところにおいて消えてしまう」みたいなことは言ってないようす。ちょっと書いてないことを読み込み過ぎたか。

JRF2022/11/159599

……。

>新たな論争には古生物学者も加わり「テウトボクス王」はマストドンであることが判明したのである。<(p.374)

フラクタルに関係ないが、Elon Musk 氏が Twitter を買収してから、避難先として再び Mastodon というミニブログサービスが注目されている。テウトボクス(Teutobochus) は実はマストドン(Mastodon)らしいので、そういう名前が Mastodon サービスにあるかググってみたがなさそうだね…意外。

JRF2022/11/156469

……。

>統計物理学では非整数次元の空間を仮定すると便利なことがわかっている。<(p.480)

あ、そうなんだね、フラクタル次元って、物理で応用があるんだ。前に常温核融合に使えないか…とか妄想してた([cocolog:93624438])けど、そういうのとは別にちゃんとあるんだね。

JRF2022/11/150125

« 前のひとこと | トップページ | 次のひとこと »