cocolog:93994224
『法学セミナー 2023年2月号 特集 メタバースがやってくる!』を読んだ。いろいろ大変参考になった。アバターの缶バッジを私は売ることにしたが、それに肖像権があるといわれると、私には違和感がある。不正競争防止法ぐらい…というのはそうかな…と思う。 (JRF 3062)
JRF 2023年1月29日 (日)
……。
ゲームのプレイヤーが「労働者」になる。そのとき、ゲームサービス提供者は、「使用者」…労働者を雇っているとみなされ、相応の義務が生じることになる。…という。
>AI のための電力供給も、データ供給も、どちらもフィジカルに手足を動かしていないので、ジョン・ロック的な labor 概念とはかなり異なってきます。ただ、これを labor ととらえることで、「何もしない者」への保護義務が「使用者」としてのメタバース運営者などに課され、国家の社会保障負担が減るという可能性も出てきます。<(p.11)
JRF2023/1/295484
「保護義務」というのが通常の使用者にはあるんだね。この雑誌にはこのあと、保護責任者遺棄の議論が載っている。保護が受けられるというのはうらやましいと思う。それがメタバースに属すだけで得られるなら、なんとうれしいことか。ただ、属すことの容易さを考えると、それほど大きな保護は期待できないのかもしれないが。
JRF2023/1/297237
……。
今の「インターネット」こと WWW の前には Xanadu という構想があった。Ted Nelson が唱えたのが Xanadu、WWW は Tim Berners-Lee のビジョンとされる。
JRF2023/1/292387
>結果として、リンクから生じる微小な価値を集計し現実の我々の生存を支える金銭へと変換する仕組みとしてのマイクロペイメントを作り上げることができなかったために Xanadu は挫折し、その問題を無視して善意の相互協力や名誉経済 -- 情報発信が社会的に評価されることが「報酬」として機能するようなシステムへと押し付けることによって成功したのが WWW であったという表現は、皮肉ではあるが正しいものだろう。<(p.21-22)
かつて、はてな には、はてなブックマークポイントというのがあり、マイクロペイメントの実現が目指されていたと思う。私はそれをやや積極的に使おうとしていた。
JRF2023/1/290533
《はてなブックマークについての私のポリシー - JRF の私見:雑記》
http://jrf.cocolog-nifty.com/column/2006/04/post_1.html
《はてなブックマークポイントを使い続けてみての雑感 - JRF の私見:雑記》
http://jrf.cocolog-nifty.com/column/2007/04/post_1.html
《重要な更新情報: 受け取ったはてなポイントの分配を行います - JRF の私見:雑記》
http://jrf.cocolog-nifty.com/column/2011/03/post.html
JRF2023/1/291588
しかし、そのサービスは終了となってしまった。マネーロンダリングの懸念など、金融行政的に受け容れられなかったのかもしれない。
JRF2023/1/295286
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アバターに肖像権があるといわれると、私には違和感がある。私が使っているアバターは VRoid Studio で作っていて、それは(パラメータの完全一致は難しいが)似たものを簡単に作ることができる。それに独占的権利があるというのは、ありえない気がする。
>人の氏名や商人の商号は、不正競争防止法3条1項1号(混同惹起)および2号(著名表示冒用)における「商品等表示」に該当し得る。そのほか、キャラクター等の外見についても、「商品等表示」として保護される場合がある。<(p.30)
JRF2023/1/296682
私はアバターの缶バッジを売ることにした(↓)。それとまったく同じ物を売る場合は、やはり不正競争防止法で制限されるのが適当だと私は思う。著作権や肖像権で…というのは違和感がある。ただし、この缶バッジ、キワドイ面もある。
《ジルパ 活動開始記念 缶バッジ - ジルパのおみせ - BOOTH》
https://j-rockford.booth.pm/items/4484987
JRF2023/1/296364
というのは、このアバターの写真は、Cluster の「バーチャル大阪」というワールドで撮った写真で、そこには岡本太郎の「太陽の塔」のレプリカが映り込んでいる。しかもその写真では、私のアバターは Cluster 初心者であることを示すために初心者マークを付けて映っている。缶バッジにした部分には「太陽の塔」はほとんど映っておらず、初心者マークも見えなくなっている。
この点、バーチャルな建物の権利や、錯誤などはどうなるかという問題がある。
JRF2023/1/295206
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通常、実用物には、意匠権などがある反面、著作権が認められにくかった。…
>しかし、実用品を模したデジタルオブジェクトに容易に著作物性を認めると、メタバース上でデジタルオブジェクトを作成しておけば、後に現実世界で「同じデザインの実用品の製造・販売を意匠登録しないまま著作権に基づき禁止できてしまう」点を懸念する見解もある。また、そもそも創作的表現であれば実用品のデザインも著作物性を肯定すべきで、仮想空間も現実空間も同じ基準で判断するのが妥当と指摘するものもある。<(p.50)
JRF2023/1/293457
この点、JASRAC のメタバース利用に関する声明に似た部分があると思う。メタバースのコンサートが、「実演」ではなく、ネットだからすべて公衆送信にあたる…というもの。
《メタバースでの音楽利用について - JASRAC》
https://www.jasrac.or.jp/news/22/221226.html
それはちょっと違うんじゃないか…という気が私はする。
JRF2023/1/299268
Cluster などは、包括契約をしていて大丈夫といい、おそらく、JASRAC は学校などでの無料の実演についても、その方向に行って欲しいと思っているのではないか。
そこはむしろ、メタバースを現実に近付ける方向で JASRAC などの権利制限をしていく必要があるように思う。
そのためには実用物のデジタルオブジェクトを作る者にそれはそれで正当な報酬が払われるような仕組みが必要なのだろうが。公共事業としてやるとか?
JRF2023/1/290254
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メタバースから離れるが、私の電子書籍の商売について、考えるべきことがあったので…。
>財産権の取得には、対抗要件があることが通例である(177条、178条、467条 等)。その場合には、売主は、買主のために対抗要件を備えさせる義務を負う (560条)。<(p.88)
私は電子書籍を中古権利譲渡可にして売っている。しかし、電子ファイルの権利譲渡は、コピーが自由にできるため難しい。NFT などがあるため、私はできるんじゃないかと思っているのだが、譲渡の要件…対抗要件等をどう備えさせるかは私も十分に考えていない。
JRF2023/1/296828
[cocolog:93976873]
>○ 2023-01-27T03:51:01Z
jrf> 私は、BOOTH の電子書籍など、(中古権利)譲渡可としているが、譲渡の際は主に購入者が、商品名、元の注文日時、元の注文番号、現取引日時と購入の事実は最低限、しかるべき方法で公示すべきだろう。「しかるべき方法」はわからないが NFT がらみとか?
<
JRF2023/1/295338
また、こういうものがあればいいのでは…というものについては Amazon の領収書に関するアイデアが BOOTH にも適用できるだろう。
[cocolog:93848979]
>メモ付き購入履歴(領収書)の URL を送れば SSL で他者が読めるという機能が欲しい。<
>買った物に(購入履歴に)当人だけが読めるメモを付けれるようにして、相続した人はそれを読めるとかあってもいいのでは?<
JRF2023/1/292522
……。
あと、p.136-137 に、あいちトリエンナーレ 2019 表現の不自由展の裁判の結果などが載っていて、私は参考になった。
JRF2023/1/290910
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今回の雑誌の号はいろいろ大変参考になった。買ってよかった。
JRF2023/1/298879
『法学セミナー 2023年2月号 特集 メタバースがやってくる!』(日本評論社, 2023年1月)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00AO7G76A
https://7net.omni7.jp/detail/1240724382
最近、cluster.mu や VRChat という「メタバース」に私がはまっていて、それで関心を持って、この雑誌を買った。
何点か、拾って引用する。
JRF2023/1/298075