« 前のひとこと | トップページ | 次のひとこと »

cocolog:94062278

シン=トゥン・ヤウ 他『見えざる宇宙のかたち』を読んだ。超ひも理論に使われるカラビ=ヤウ空間の解説(?)。数学用語が頻出してとても難しかった。結局のところカラビ=ヤウ空間とは何なのか私にはわからなかった orz。 (JRF 7984)

JRF 2023年3月 6日 (月)

『見えざる宇宙のかたち - ひも理論に秘められた次元の幾何学』(シン=トゥン・ヤウ & スティーヴ・ネイディス 著, 水谷 淳 訳, 岩波書店, 2012年3月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4000060430
https://7net.omni7.jp/detail/1106141832

原著は『The Shape of Inner Space - String Theory and the Geometry of the Universe's Hidden Dimensions』(2010)。

JRF2023/3/67290

(超)ひも理論に興味を持っていくつか本を読んでおり(『エレガントな宇宙』 [cocolog:93955467], 『ブラックホール戦争』 [cocolog:93831542] など)、特にカラビ=ヤウ空間に興味を持って、この本を手に取った。

この本の最初のほうを読んでいて…、距離または計量を定義することで、空間が定義でき、幾何学ができるという。しかし、距離が近傍だけとか必ずしも定義できてない場合はどうなるのだろう…とかは思った。

JRF2023/3/66294

また、これは前からなのだが、「色」は例えば、次元を構成できないのはなぜなのかとか思った。確かに、色の中では運動はないが、「エネルギー」は持ちうるし、細かく見れば、色はなく構造だというかもしれないが、それ以上細かくは見れないというのは、超ひももそうなのではないか…とか考える。

そのあたりの基本的なところで私はつまづき、結局、本書を十分味わえなかった。

JRF2023/3/64777

また、本書は数学的概念を言葉と図で表してくれているが、それが難しく、ちゃんとした定義でないから余計難しいというのもあるかもしれないが、雰囲気だけでも伝えようとしてくれているはずなのに、私には伝わらなかった。私の理解力不足を恥じ入るのみである。

JRF2023/3/63264

……。

ヤウは、幾何学について最初の「仕事」をなしとげたあと、さらに名を上げる方法を探していた。

JRF2023/3/60434

>その答えは、わたしが受講してている非線形偏微分方程式の科目にあると気づいた。担当教授のチャールズ・モーリーにはとてもいい印象を抱いていた。決して最先端とは言えない分野に関するその講義はとても厳しく、モーリー本人が書いた教科書を使っていたが、それは読みこなすのがとても難しかった。すぐに私を除いて全員出席しなくなり、多くの学生はカンボジアの爆撃に対する抗議活動に出ていった。それでもモーリーは講義を続け、教室に学生が一人しかいなくても、準備に相当な努力を割いていたようだった。<(p.48-49)

JRF2023/3/69123

私の大学(院)時代、研究室の招聘した外国人教師の講義があった。それを思い出す。その講義は数回だったが、出席しているのは、同じ研究室の3人(2人は先輩)だった。当然、英語による授業なのだが、私はまったくわからず、わからないのにフンフンと相槌を打っていた。それでもその教師は真剣に授業を続けていた。その精神力はスゴイと今になって思う。

JRF2023/3/62940

そこでまったく自分が歯が立たなかったことを反省し、研究者を早々に諦めていればよかった。(今も諦めきれていない orz。) 何を血迷ったか、私は、研究にこだわり、最後は発狂することになる。

JRF2023/3/61340

……。

ケーラー多様体についてはわかった気にさせてくれる。p.99 ぐらいに説明があるのだが、計量が定義されている空間で、J 変換と平行移動が可換であるものをいうようだ。

そしてカラビ予想(ヤウが証明したもの)は、次のようになる。

JRF2023/3/61751

>「消滅する第一チャーン類をもつコンパクトなケーラー多様体では、リッチ平坦な計量が許される」<(p.109)

この証明により…

>物質が存在しない場合にアインシュタイン方程式を満たす風変わりな多次元の形状(いまではカラビ=ヤウ空間と呼ばれている)が、数多く存在することが確かめられたのだ。<(p.128)

JRF2023/3/60075

なお、リッチ平坦とは、

>リッチ平坦な多様体とは、取り上げたすべてのベクトルについて、そのベクトルを含む個々の接平面の断面曲率はゼロでないかもしれないが、すべての接平面の断面曲率の平均はゼロになるという意味だ。<(p.107)

[wikipedia:カラビ・ヤウ多様体] には、>リッチ曲率がゼロである多様体をリッチ平坦な多様体と言う。アインシュタイン多様体の特別な例となる。物理的には宇宙定数がゼロとなることを意味する。<…とある。

JRF2023/3/63300

「チャーン類」は、二つの多様体をおおざっっぱに区別するためのものらしいが、私にはよくわからなかった。

JRF2023/3/68100

……。

ひも理論は基本的に10次元だが、それらを統合するM理論は11次元である。カラビ=ヤウ空間は偶数次元でないといけないから、10次元はうまく扱えるが、11次元はうまく扱えない。

>現実的な問題として物理学者はこれまで、私たちの四次元世界の物理を説明する際に、11次元的見方でなく10次元的見方から出発した方がより成功している。研究者たちは、11次元から直接四次元に落とすために G2 多様体と呼ばれる七次元多様体の上にコンパクト化しようとしている(…)。<(p.161)

JRF2023/3/62529

結局は、10次元に落として考えるから、カラビ=ヤウ空間は必要になる、カラビ=ヤウに落とさないと考えるのは難しい…ということらしい。また、それとは別に、コンパクト化されるのを8次元にする方向も探られているようだ(p.347)。

JRF2023/3/60150

……。

通常は数学の成果が物理に取り入れられる。その逆はなかなか起きないようだが、起きることもある。ひも理論における、ミラー対称性はそのような例だったらしい。それにより…

JRF2023/3/60147

>私は、物理学者の直観もそれなりに重要であるはずだと考えるようになった。たとえ、ひも理論が仮定しているとおりに自然は動いていなかったとしても、数学者には解けなかった昔からの問題をひも理論は解決してくれたのだから、そこには何か真理があるに違いない。それから何年も経った今でも、もしひも理論がなかったら、カンデラスのような公式に独自にたどり着く方法を想像するのは難しい。<(p.187)

JRF2023/3/61779

……。

コニフォールド転移などでは非ケーラー多様体が出てくる。もしかするとカラビ=ヤウ多様体は、美し過ぎ、それは天体の運行を楕円でなくすべて円で表そうとすることに近いのかもしれない(p.266)。しかし…

>ジョー・ポルチンスキーは次のように言う。「過去20年で非ケーラー多様体を含め、ひも理論の解がさらにたくさん発見されてきた。しかし、もっとも単純な最初の解 -- カラビ=ヤウ多様体 -- がいまでももっとも自然に近いように思える」。<(p.271)

JRF2023/3/68796

……。

>宇宙ひもは、その仮定されている密度の大きさによって周囲にかなりの重力的影響を及ぼすはずであり、そのため検出可能であるに違いない。たとえば、地球と別の銀河とのあいだにひもが走っていれば、その銀河からやってくる光はひもを対称的に回り込み、天空に互いに接近した二つのまったく同じ像を生じさせるだろう。<(p.295)

JRF2023/3/61492

この本とは関係ないのだが、私はトシとるとともに乱視がヒドくなってきていて、星や月が二重・三重に見える。なんというか、目に丸太(マタイ 7:5)でもあるのかと思っていたが、宇宙ひもなのかもしれない!…ってそんなことはない。

JRF2023/3/65124

……。

>私は数学者という立場でしか(説得力のある形で)言うことはできないが、カラビ=ヤウ空間はまだ完全には理解されていないと思う。また、そのような空間に関していつかすべての事柄を知ることができるのかについても、私は懐疑的だ。その一つの理由として、一次元カラビ=ヤウである楕円曲線 -- 少なくともいくつかの項が三次である三次方程式の解 -- は、数学において謎めいた存在だということがある。数学者は何世紀ものあいだ、三次方程式に夢中になってきた。<(p.349)

楕円曲線がカラビ=ヤウなのか、それで少しはイメージが…つかないよな、やっぱり。orz

JRF2023/3/66847

« 前のひとこと | トップページ | 次のひとこと »