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劉慈欣『三体』を読んだ。SF。三部作の一作目。次元を高度に操れるほどの異星人の文明なら、太陽を動かすこともできるのではないかと思った。さらに高度な文明に監視されてるということなのか…。 (JRF 2547)
JRF 2023年9月 9日 (土)
葉文潔(女性物理学者)は太陽の研究から独自に得た銀河系に放送する技術を使って、メッセージを送るのを試したところ、「これに応答するな」という返信を受信してしまう。しかし、彼女は、絶望の人生から人類の粛清を望み、それに返信する。
JRF2023/9/93645
別の主人公、汪淼(男性研究者)はナノテクノロジーを研究していたが、写真へのカウントダウン文字列、網膜へのカウントダウン文字列、宇宙背景放射のウィンク…という奇跡を見せられ、科学的追及をやめるよう促される。それは他の科学者にも起こっており、それで自殺する科学者も多かったのだった。やがて、それが異星人が起こしたものであることが明らかになる。
JRF2023/9/95790
異星人はそれほどの「奇跡」を行えるものとして、圧倒的科学力があるように見えるが、確かに圧倒的だが、まだ地球への影響は、電波と陽子二個分でしかない。ただ、コンピュータゲームを通じ、人類に宗教的に支持を広げている。最初はコンピュータゲームの描写を通じ、また、後半では異星人側のドラマを通じ、彼らの考え方が示される。
JRF2023/9/92039
そして陽子二個分というのがクセモノで、それは11次元を折り畳んだもので、陽子一個が知性を持ち、物理学の粒子加速器の実験を妨害して基礎科学の発展を直接的にはばみ、さきの汪淼への奇跡などのようなものを見せて、間接的に科学者の心理をゆさぶるのだった。
そういったカラクリを人類が知ったところでこの本は終る。
JRF2023/9/91222
……。
読んだことを前提に物語の一つの可能性としては、エヴァンズが実際には交信に成功してないのに、人類を操るために交信したふりをしていた・妄想していた…とかありえたのかな…と思った。28ギガのデータも、一部は本物で、しかし、エヴァンズらが受信したのではなく、他が受信していて、それを真贋おりまぜて渡したとかあったらおもしろいかな…と思った。ただ、これだと「奇跡」がなぜ起きたのかが説明しづらい。
JRF2023/9/97943
物語の展開がこの先どうなるかわからないが、異星人側も、第3の世界…これは同じ宇宙ですらないかもしれない…から監視されているのはありうるのかな…と思った。何度も文明の喪失を経験して、しかし、そこから復活できているのは、彼らの身体的特徴がいかに特殊なものでも、偶然の要素が強過ぎ、そこに他者の介入がありうるのでは…と私は感じた。
JRF2023/9/98419
三体問題が解けるかどうか、三つの太陽=恒星がある異星人にはそれが重要ということだったが、異星人の科学力は、次元をほぼ自在に操れるほどのものなので、太陽を動かせばいいのではないかと私は思った。そして、まだ、もっとも近い我らが太陽系に船を向けてないのも意外に思った。太陽を動かしたら、監視者に見つかるとかあるんだろうか? または、我々の太陽系を探索するのを監視者が妨害していたとかあるんだろうか?
JRF2023/9/93921
……。
本の途中まで、「三体」(異星)人の歴史を読んで、自然法則が創られていっているという昔の私の妄想を思い出していた。科学者の「発見」は、自然法則を固定していっているようなものだという妄想である。「危機が起こると、物理法則が発明され、それまでの真実が否定されながら、世界が再構成されることになる。そのごとに元素が増えていく。」…みたいなことを考えていた。ネットのどこかに書いたと思っていたが見つからない…。似たことは↓にある。
JRF2023/9/98963
《『創世記』ひろい読み - バベルの塔 - JRF の私見:宗教と動機付け》
http://jrf.cocolog-nifty.com/religion/2006/02/post_13.html
>今の我々はどれだけ高い塔を建てても「天に届く」ようなことはないことを知っている。なぜ神は、バベルの塔の建設を阻止したのか。(…)その時代には不可能ではなく、神は言葉を乱せば十分目的を達せられたのでそうしたが、後になって、別の理由から地球を丸く整え、「天に届く」ことはなくなった。<
JRF2023/9/95817
……。
「陽子二個」に世界が入りうるというのは、私は私のクーパーペアに関する妄想を思い出した。
JRF2023/9/98866
[cocolog:93831542]
>私の統合失調症の長い発作において、情報を入れ銀紙をまるめたボールと、他のボール風のオブジェクト2つをとって、それが星を現し、それが冷たくなった誰もいない宇宙をさまようというイメージを持った。それが実は原子であったりクーパーペアであったりするのかもしれない。そのものでなかったとしても、原子などはその反映・記念なのだ。…と考えた。(まぁ、結局そのボール類はゴミ箱に捨てるのだが。…と思う。)<
JRF2023/9/92432
星ではなく宇宙・世界が入りうるというのがこの本の「壮大」なところだが。
JRF2023/9/95808
……。
>人類の無知は、進化の上では欠陥なのか、それとも利点なのか。<(p.95)
これはこの本の意味ではなく受け止めた。進化に致る以前、巨大な一つの生物が誕生し、しかし、それでは痛みが全域に及ぶのでわかれた。テレパシーで共有しないように、能力が欠落したままでいるように、しかし、それで、やがて、携帯電話やロケットなども作り出せるように構想して、生物はいったん愚かになり別れていったのではないか。…という妄想も以前した。これもどこかに書いたように思うが見つからない。
JRF2023/9/98793
……。
>(…エヴァンズと葉文潔の会話…)
「種の共産主義。ぼくが発明したイデオロギーだ。宗教と言ってもいい。核になる信仰は、地球上のすべての種はもともと平等だということだ」
「それはただの理想でしょう。現実的じゃない。小麦や米だってひとつの生物種だけど、人類が生存するには、そんな平等は実現不可能よ」
JRF2023/9/92480
「遠い過去には、領主は奴隷に対して同じように考えていただろうね。それに、テクノロジーと進歩を忘れちゃいけない。いつか、人類が食料を合成できるようになる日が来る。そのずっと前から、インデオロギー的にも、理論的にも、きちんと準備しておく必要がある。実際、種の共産主義は、人権宣言の自然な延長と言える。フランス革命から200年も経つのに、われわれはまだ、そこから一歩たりとも踏み出せていない。このからも、人類という種のエゴと虚偽がわかる」
<(p.339)
JRF2023/9/97039
ヴィーガンや人工肉などの話題を思い出す。人工肉はまだ実用的ではないが…。
JRF2023/9/97320
『三体』(劉 慈欣 著, 立原 透耶 監修, 大森 望 & 光吉 さくら & ワン チャイ 訳, 早川書房, 2019年4月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4152098708
https://7net.omni7.jp/detail/1106990294
原著は、2006年に重慶出版から出た。
異星人とのコンタクトものに属するのだが、いまだ異星人が到達しないところでこの一作目は終る。
ここからはネタバレになる。
JRF2023/9/99247