cocolog:94524505
デイヴィッド・ライク『交雑する人類』を読んだ。トーテミズムとか神殿売春とか、いろいろあっても、結局は、強いオスが子孫を残してきたということなのだろう。文化的に成功すれば血筋を残せるというのも福祉でしかないんだろうな。 (JRF 9194)
JRF 2023年11月15日 (水)
現在、私は『宗教学雑考集』(仮題)を書いていて、その取材のため直前には、ロビン・ダンバー『宗教の起源』([cocolog:94517420])を読んだ。その過程で最近の古代 DNA による考古学革命に関心を持ち、Amazon でいくつかの場所でオススメされていたこの本をまず読んでみた。
宗教に関する記述はほぼないが、文化の背景にある民族移動が記されており参考になった。
読み終った直後に↓のようなメモを Twitter に書いた。
JRF2023/11/159508
……。
○ 2023-11-14T08:43:20Z
変な夢。いつものごとく地獄の夢だが、今回は私というよりも、女性達が堕胎をしたとか、男が若い女性を食い物にしたとかで、その許しを求められてる感じだった。起きて、それをいうなら、女性にアプローチしない(できなかった)弱者男性の私のふがいなさの責任もあるのではないかと思った。こういう夢を見たのは『宗教の起源』または『交雑する人類』とか読んでる本の影響だとは思う。
JRF2023/11/157808
「レスピューグのヴィーナス」とか土偶とか、それなりの祭祀とかあったんだろうけど、基本は弱者男性対策なんじゃないかな…と思う。古代はもしかすると弱者男性を女性が(娼婦が)相手にすることもあったんだろうけど、確率的にも血筋を残せるのは成功者だけだったんだろう。でも、成功すれば血筋を残せるというのも福祉なんだろうな。基本は、初夜権とか、上司の子だねを受け容れた夫婦の旦那のみ出世するとか、そういうメンドクサイことがかつてはあったんだろうな…。
JRF2023/11/156827
……。
私は妄想的性格なため、この程度のことしか考えられない人間である。この先もこれぐらいの適当さで書いていくことになると思うが、ご容赦願いたい。
この先は、いつものごとく引用しながらコメントしていく。
JRF2023/11/158396
……。
カヴァッリ=スフォルツァの遺伝学に関する野心的な研究があったが、2008年初頭…。
>ジョン・ノヴェンバーと共同研究者らが、ヨーロッパで観察されたような分布の勾配は移住がなくても起こりうることを証明したのだ。次いで彼らは、カヴァッリ=スフォルツァの数学的モデルに従えば、中東からヨーロッパへの農業の拡大は、直感に反して、移住の方向に直交する勾配を生み出すことを示した。実際のデータに見られたような、移住の方向に平行な勾配にならないという。<(p.13)
JRF2023/11/150298
その「人口拡散モデル」は著者らの「古代DNA革命」によって葬り去られた。
私は、DNA による移住の証明については以前、疑問を呈することがあった。
JRF2023/11/158141
[cocolog:94517420]
>>
事実から逆に系統樹を辿ることの問題は、[cocolog:73888324] で>遺伝子の違い、つまり、「距離」からその祖先を決定するのは「グラフ理論的」におかし<いと書いた上で、>考古学資料とか、別の情報を加味することで(進化の)方向が特定できる<。…と書いたことがある。
JRF2023/11/154595
ただ、これが本当に意味のあることを言っていたのか、今では自信がなくなってきた。[cocolog:73888324] で挙げた例が単純過ぎたからだ。単純なものにした適用できない論なのかもしれない。事実から逆に系統樹を辿る分子遺伝学(考古遺伝学・分子人類学)の方法(「遺伝子木」の方法?)は正しいのかもしれない。…と傾きつつある。
<<
JRF2023/11/151209
ただ、私は転向しつつあるとは言え、残った遺伝子の大小から推測されるものとは逆方向の移動の仕方もありうると思う。今後、考古学の発見によって、著者らの推測がやぶられることもありうるのではないか。
JRF2023/11/157047
このずっとあとの章で、インド人について、西のアーリア人が入ってきたことを、インド人学者が、インドからアーリアの方に伝わった可能性があると言ったのを、著者が否定するとか出てくるが、この場合は、著者が正しいかもしれないが、今後、少ないかもしれないがいくつかの例で、著者の推測とは逆の証拠が考古学から得られることもあるのではないかと思う。
JRF2023/11/150077
もちろん、著者はイデオロギー的にそこに固まっているわけではないから、そういう証拠が見つかれば、それを抵抗なく認めるだろうけれども。
JRF2023/11/157118
……。
>「ミトコンドリア・イヴ」(…)最新の推定値は16万年ごろ。<(p.36)
母系を辿れるミトコンドリア DNA は最古が 16万年前。男系を辿れる Y 染色体は、最古が 16〜30万年。ただ、それ以外の遺伝子については、それ以前のことが多い。
《ミトコンドリア・イブ - Wikipedia》
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%96
JRF2023/11/155389
《Y染色体アダム - Wikipedia》
https://ja.wikipedia.org/wiki/Y%E6%9F%93%E8%89%B2%E4%BD%93%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%A0
>現代人にとって、1〜22番染色体のすべてにわたる最新の共通祖先がいたのは、およそ500万年前から100万年前の範囲で、32万年前より後ということはありえないと推定される。<(p.49, 図5)
JRF2023/11/153325
……。
>先祖の人数は世代をさかのぼるごとに2倍になる。だがあなたに一部を提供する DNA の本数は世代ごとに 71 前後しか増えない。つまり、8世代もさかのぼれば、あなたに DNA を伝えていない先祖が何人かいるのはほぼ間違いない。15世代前になると、ある先祖があなたの DNA に直接寄与している可能性はかなり低くなる。<(p.45, 図4)
もちろん、一人の有利な遺伝子が複数の人に伝えられ色濃く残ることもあるのだが。
王家や天皇家の古墳から DNA を得ても、それが現代にまでつながっていることのほうが原理的に珍しい…と。男系の Y染色体についてもそうなのだろうか?
JRF2023/11/156323
……。
>後期旧石器および後期石器時代に起こったヒトの行動と能力の驚くべき進歩の原動力となったと考えられる遺伝子セットは特に謎めいたものではない。現生人類特有の行動を促すのに欠かせない変異はすでに用意されていて、そうした変異はこれまでとは別の多くの組み合わせの頻度が、自然選択のせいで一斉に増加した可能性がある。<(p.57)
遺伝については↓のようなことも私は以前書いた。
JRF2023/11/150163
[cocolog:89358180]
>突然変異により表現形がいきなり有用になるのは私には信じ難い。とても有利だが死産が多い「陽性変異」と、有利さは自己修復に消されてしまいがちで、有利さが出るかどうかが本質的にランダムであるという「陰性変異」があると考えてみた。が、陰性変異の確率を計算するとあまり有望ではない…。<
JRF2023/11/155145
潜性遺伝(劣性遺伝)とかの話ではあるのだが。陰性変異的だったものが、新しい状況で、意味的つながりをもち、有利な組み合わせが「自然選択のせいで一斉に増加」することはありうるのかな…と思う。
JRF2023/11/153462
……。
現生人類とネアンデルタール人との交雑は、非アフリカ人に 2% 程度 DNA に証拠が残っている。アフリカ人にはほぼない。すると、ネアンデルタール人との交雑は、「出アフリカ」後に起きたと考えるべきとなる。
JRF2023/11/155920
>考古学的な証拠だけ見れば、ネアンデルタール人と現生人類との交配はネアンデルタール人が生まれたヨーロッパで起こったと考えるのが自然なように思われる。しかし、そこが果たして、こんにちの人々に痕跡を残すような主たる交配が起こった場所なのだろうか? 遺伝学的データで確定するのは無理だ。遺伝学的データは人々がどうつながり合っているかを教えてくれるが、たとえ徒歩であっても人は一生のうちには何千キロも移動することができる。
JRF2023/11/158636
だから、遺伝学的なパターンは、そのパターンを構成する DNA を持つ人々が住んでいる場所の近くで起こった出来事を反映しているとは限らない。ここ数年の古代 DNA 解析で何か明確になったことがあるとすれば、それはこんにち生きている人々の地理的分布がそのまま、その祖先の住んでいた場所だと考えるのは間違いだということだ。
<(p.83)
JRF2023/11/150348
上で私は「考古学の発見によって、著者らの推測がやぶられることもありうる」としたが、著者にはその覚悟は十分できているようにも読める。もちろん、移動の方向が DNA からわかるという主張を著者が否定しているわけではないが。
JRF2023/11/150088
……。
交雑したにしてはネアンデルタール人の遺伝子が残っているのが少ない。これはなぜか? ロラン・エクスコフィエは、交雑種は生殖能力が弱いことを指摘した。しかし…、
JRF2023/11/158413
>私はこの推論には賛成できない。交雑種の生殖能力が低かったというより、社会的な理由で単に交配が多くなかったという説明のほうが、ぴったりくる。今でも、現代人の多くのグループは文化や宗教、カーストのような社会階層による障壁のせいで、自分たちだけでまとまっていることが多い。現生人類とネアンデルタール人が出会ったときには事情が違ったと考える理由なないのではないだろうか?
しかしエクスコフィエはある重要な点については正しかった。
<(p.87)
JRF2023/11/150783
生殖能力に関連がある部分で自然選択の証拠が見つかったのだという。
JRF2023/11/152104
「自分達でまとまっていること」については、この後、インドのカースト制が実際にかなり、遺伝的まとまりを保持していることが述べられるし、著者のアシュケナージ系ユダヤ人に関しても同様のことが述べられる。
JRF2023/11/159608
ただ、私はデュルケム『宗教生活の原初形態』([cocolog:94474286])を読む中で、トーテミズムが「イメージによる進化」つまり進化論をもとに交配するなかで、乱交が、遺伝的なシャッフルのために行われているのではないか…という論も述べた。まとまるだけでなく、拡散する方向も、古代からあったのではないか。その中で、特定の遺伝子が、中立的な部分も排除されることがあるとすれば、交雑種の生殖能力の低さというのも実際あったのではないか。
JRF2023/11/153815
上で述べた「陽性変異」による出産の異常が起きやすかったとか、あるのかもしれない。それは「イメージによる進化」を強く指向し過ぎて、遺伝的に弱い部分が現生人類にもネアンデルタール人にも強くあったからかもしれない。
JRF2023/11/152366
……。
>集団のサイズが小さいことは、集団の遺伝学的な健康にとってよくない。世代ごとに変異頻度がかなり変動するため、好ましくない変異を減らそうとする自然選択がいくら働いても、一部のそうした変異が集団に広がってしまうからだ。<(p.93)
ときおり進化の「ミッシングリンク」が話題になることが昔あった。今では、考古学の発達でそういう話も聞かなくなってる気もするが。
JRF2023/11/158122
そういう話のとき、私は、集団の個体数が小さくなる +α が進化を促進するのではないかと考えていた。ここの著者の説明はそれに近い。悪い変異が広まり易いという話だが、「良い変異」も広まり易いということではないかと思う。そして、良い変異が環境の適応に好都合なとき、個体数が増え、増えたあとミッシングリンクの途中で紛れ込んだ、「悪い変異」が解消されていくのだろう。
JRF2023/11/150829
……。
ネアンデルタール人とは近い旧人のデニソワ人もかなり長く生き残っていて、現生人類と交配していたらしい。ニューギニア人にその痕跡が強めに残る。
JRF2023/11/158989
>その歯は巨大で、これまでにヒト属で記録されたほぼすべての歯の大きさを超えていた。臼歯が大きいのは、硬い生の植物をたくさん含む食事をとっていたためと考えられる。デニソワ人が発見される前、この大きさの歯を持っていたことが知られている人類で、なおかつわたしたちにいちばん近いのは、主として草食性だったと考えられるアウストラロピテクスだった。<(p.103)
JRF2023/11/153627
島 泰三『親指はなぜ太いのか』([cocolog:94512250])では、アウストラロピテクスなどは骨をあさって食べていたから、臼歯などが発達したとのことだった。島の本は、2003年、この本は 2018年なので、著者がその説を知らないわけがないので、骨食は、欧米ではすでに否定されているのかもしれない。私は長骨のない蛇を重視する神話などから、骨食説にかなり傾いているのだが。
JRF2023/11/158145
……。
>わたしたちが観察したパターンは、デニソワ人が非常に異なる未知の旧人類集団と交配したと考えなければ説明がつかない。<(p.115)
絶滅したらしい未知の集団が特定されるということが、この本の中ではしばしば起こる。すごい。今回の集団を著者は「超旧人類」と名付けている。
JRF2023/11/150858
……。
通常、アフリカが人類の揺りかごで、アフリカで生まれた新しい人類が生まれるたびごとに、「出アフリカ」するモデルが語られることが多い。しかし、ユーラシアも人類の揺りかごたりえる条件はある。
JRF2023/11/157134
>現生人類、ネアンデルタール人、デニソワ人の祖先集団が実はユーラシアに住んでいて、それはアフリカから最初に拡散したホモ・エレクトスの子孫だったという可能性だ。このシナリオでは、その後ユーラシアからアフリカへ戻る移住があって、それが、のちに現生人類に進化する集団の始祖になったと考えられる。この説の魅力はその無駄のなさにある。
JRF2023/11/157819
データを説明するために必要なアフリカとユーラシアの間の大規模な移住が1つ少なくてすむのだ。超旧人類集団と、現生人類・デニソワ人・ネアンデルタール人三者の祖先集団はどちらもユーラシア内で生まれたことになり、さらに2回も出アフリカ移住をする必要がなくなる。アフリカへ1回だけ戻って、現生人類との共通系統をそこで確立すればいい。
<(p.119)
JRF2023/11/155004
ただ、著者らは「ミトコンドリア・イヴ」がアフリカにいたことについてはほぼ否定しないんだよね。
あと、なぜネアンデルタール人の血をアフリカ人は引かないのか? 古代、アフリカ人は性的に強いことを保つ文化でもあったのだろうか。人類はアフリカに戻るたびに、そこから性的な強さを回復してたりしたのだろうか?
JRF2023/11/156657
……。
チャールズ・ダーウィンなどは生物の類縁関係を樹木に例える。「系統樹」が生物にもあるというわけだ。
>ところが現生人類の相互関係を考える場合には、樹木にたとえるのは危険だ。その理由が、ゲノム革命を受けて利用できるようになった大量のデータによって明らかになっている。<(p.129-130)
一度、分かれ、再び出会うような交雑があるからだ。樹木ではなく格子状になるのだという。
JRF2023/11/156786
「世界樹」の神話が世界各地にある。上の樹木の発想が、「世界樹」の話になったのだろうか。私はそうは考えない。それについて、ジャンケンプログラムでわざと負けする私の発想…
JRF2023/11/150921
[cocolog:94474480]
>私は、私のこの発想を「世界樹」的だと思った。なぜ世界樹が世界の創世神話に出てくるかと言えば、それは「思考」が有利な状況を(動物に負け続ける)植物達が作ったと考えることができるからではないかと私は考える。<
JRF2023/11/157230
植物も適者生存しているはずだが、最初に動物のエサになることを選んだ…。もちろん、食われないように細胞壁を強化したのだが、食われるようになってもその方向を捨てなかった。…のは、何か「適者生存」とは根本的に異なる戦略を植物が採ったからではないか…とか私は妄想する。
JRF2023/11/158396
……。
>驚いたことに、サハラ以南のアフリカ人とは共有していない変異部位で、ヨーロッパ人とアメリカ先住民との関係は、ヨーロッパ人と東アジア人との関係より密接であることがわかった。<(p.131)
JRF2023/11/159856
アメリカ先住民をヨーロッパが「侵略」した結果ではなく、そうなる以前にそうだったらしい。ここから、著者らは、ヨーロッパ人とアメリカ先住民の双方に遺伝的寄与をした「古代北ユーラシア人」の存在を予想した。後に、その予想どおりの集団の骨が発見された。それがシベリア南部中央のマリタ遺跡の2万4000年前ごろの骨である。
JRF2023/11/155652
>マリタのゲノム解析で、アメリカ先住民の DNA の約3分の1が古代北ユーラシア人から来ており、残りが東アジア人から来ていることがわかった。ヨーロッパ人が遺伝的に東アジア人よりもアメリカ先住民のほうに近いわけは、この大規模な混じり合いで説明できる。<(p.136)
科学的にはそうなのだろうが、ヨーロッパ人のアメリカ「侵略」を少し正当化するような結果にはモヤモヤする。ただ、著者らもこの点を懸念したらしく、最初、予想が書かれた論文を取り下げたこともあったらしい(p.131)。
JRF2023/11/154557
……。
西ユーラシアでも様々な交雑があった。
JRF2023/11/159430
>こうした非常に異なった集団が融合してこんにちの西ユーラシア人になったことは、青い目に白い肌、金髪という典型的な北ヨーロッパ人の風貌とみなされるものにはっきり表れている。古代 DNA の解析によって、8000年前ごろの西ユーラシアの狩猟採集民は青い目に濃い色の肌、黒っぽい髪という、今では珍しい組み合わせの風貌だったと判明した。ヨーロッパの最初の農耕民のほとんどは、肌の色は明かるかったが髪は暗い色で茶色い目をしていた。つまりヨーロッパ人の明るい肌色は、おもに移住してきた農耕民から来ている。
JRF2023/11/154371
典型的なヨーロッパ人の金髪をもたらした変異の最古の例として知られているのは、シベリア東部のバイカル湖地帯で見つかった1万7000年前の古代北ユーラシア人だ。
<(p.154)
↓のように「実験」的に金髪・碧眼が生じたのかもしれないと私は考えていたが、そうではないということか…。
JRF2023/11/152815
[cocolog:94505557]
>昔から私は「美しい人類」である金髪・碧眼が生じたのに不思議を感じていて、そこには、そういう優生学的な実験があったのではないかという疑いがあった。先史以前にそれがなされていたのが、「洞窟」であるというのは、ありがちな妄想かもしれない。<
JRF2023/11/157526
……。
ナチスドイツは人類学を「悪用」した。そのため、この付近には強い「アレルギー」が残っている。
>縄目文土器文化について述べた後に移住について言及すると、特に大きな警報が鳴り響く。その原因はコッシナとナチが縄目文土器文化を利用して、ゲルマン民族のアイデンティティを構築しようとしたことにある。<(p.173-174)
DNA から見ると、確かに文化と移住は相関していた。ただし、ナチの想定とは違い、東方から広がったのだった。
JRF2023/11/156657
ヤムナヤ文化=ステップの文化が支配していった構図は、吉田敦彦『日本神話の源流』([cocolog:94490727])を読んだときも、非定住文化の定住文化の支配として考えていたが、それが、4500年前とか、そんなに古い話だとは私は想定してなかった。
JRF2023/11/151936
《ヤムナ文化 - Wikipedia》
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%A0%E3%83%8A%E6%96%87%E5%8C%96
>紀元前3600年ごろから紀元前2200年ごろにかけてドナウ川とウラル山脈の間の広大な地域にわたって存在した、銅器時代の文化圏。中心地はウクライナ。(…)ヤムナ文化の人骨からは印欧語族系民族に高頻度なハプログループR1b (Y染色体)が91.5%の高頻度で検出されている。<
JRF2023/11/157611
>ヤムナヤ文化と共に文化の全面的な変容が始まったことは、ステップ地帯を研究する多くの考古学者にとって疑う余地のない事実だ。ステップの土地がいっそう効果的に利用されるようになるのと同時に、恒久的な住居がほぼ完全に姿を消した。ヤムナヤ文化が遺した建造物はほぼすべてが墓、つまりクルガンと呼ばれる巨大な土の塚だ。クルガンには荷車と馬も一緒に埋められている場合があり、彼らの生活にとって馬が重要な存在であったことがしのばれる。車輪と馬が経済活動をあまりにも大きく変えたため、人々はついに村落での生活を捨て、移動しながら暮らすようになった。<(p.168-169)
JRF2023/11/159070
車輪の発明もあった。…と。タロットカードで、キメラ=スフィンクスの戦車が出てくるのを思い出す。
定住文化よりも非定住の文化のほうが先にあったが、しばし定住文化に押されていたところ、馬や車輪などの発明で、非定住文化=彼らの中ではより古い文化が復活したという認識もあったのだろう…と私は思う。
JRF2023/11/153528
……。
ナチスドイツなどのドイツ人…、
>インド=アーリア人の故郷はドイツを含む北ヨーロッパであると考える人たちもいた。また、ヴェーダ神話の特徴を自分たちのものとして取り入れ、『リグ・ヴェーダ』に出てくる言葉に因んで自分たちをアーリア人と呼び、ヒンドゥー教の幸運のシンボルである鉤十字も盗用した。<(p.192)
鉤十字は仏教というよりヒンドゥー教なんだね。
JRF2023/11/157078
……。
不平等が DNA に痕跡を残すこともある。Y染色体とミトコンドリア DNA で見られるパターンにはしばしば食い違いがある。
JRF2023/11/150337
>集団の混じり合いにこうした性的な非対称性(バイアス)が見られるのは、気味が悪いほどよくあるパターンなのだ。アフリカ系アメリカ人を考えてみよう。彼らのゲノムにはヨーロッパ由来 DNA が約20パーセント含まれているが、それは約4対1の比率で男性側から来ている。(…)共通するテーマは、力のある集団の男性が力の弱い集団の女性と交配する傾向があるという事実だ。<(p.208)
最初に「変な夢」で述べたところと関連するところ。ドンファン(ドン・ジョバンニ)とかとフィガロの結婚とかとの関連。
JRF2023/11/150040
……。
インドのカーストの強固さは遺伝病の存在にも現れている。将来的には遺伝子診断などをやれば、いろいろと改善するはずだ。潜性遺伝疾患の根絶に成功した例はすでにある。
>米国やイスラエルの正統派ユダヤ教徒のハイスクールの多くでは、ほぼすべてのティーンエイジャーを対象に、アシュケナージ系ユダヤ人社会によく見られる潜性遺伝病を引き起こす変異の有無を検査していうっ。もし持っているとわかれば、同じ変異を持つティーンエイジャーに引き合わせることは決してない。<(p.222)
JRF2023/11/156177
遺伝子診断については、それを相続税の制度と組み合わせ、ほぼ出生時に強制する提案を私はしている(参: [cocolog:94155291] など)。
JRF2023/11/157599
……。
アメリカ先住民の中には、「最初のアメリカ人」とは別の系統を持つ「集団Y」がアマゾン川流域にいる。これは、もしかすると太平洋を南から渡って来たのではないか…とか私は思うわけだが、著者は基本的には否定している。ただし、ここ以前の記述は、アメリカの強い政治性を指摘していたため、この否定も政治的であることを示唆しているのかもしれない。
JRF2023/11/158862
>こうしたパターンが、アジア人集団の最近の移住では起こりえないことも立証できた。アマゾン川流域の集団は、オーストラリア、ニューギニア、アンダマン諸島の先住民と最も強い親和性を示す(東アジア人を基準として)にもかかわらず、そのうちのどれかと特に密接であるということはなかった。また、ポリネシア人が太平洋を越えてアメリカ大陸に移住したという説も、遺伝学的データとは矛盾する。(p.261)
JRF2023/11/150797
吉田敦彦『日本神話の源流』([cocolog:94490727])で釣り針が失われた釣り竿で海流を見て陸地を探す話をした。
マゼランの世界一周ができたのは、その前に、ポリネシア人が、南アメリカ大陸に到達している実績を元にしているのではないか…とか以前考えたはずで、どこかにメモしたと思ったのだが、見つからない。さつま芋の栽培などからそう考えたと思う。
JRF2023/11/159780
《サツマイモ - Wikipedia》
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%84%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A2
>原産地は中央アメリカのメキシコ中央部からグアテマラにかけてとする説が有力である。紀元前3000年以前から、メキシコ地域で栽培化されていたとみられている。(…)ニュージーランドへは10世紀頃に伝播し、「クマラ」(kumara) の名称で広く消費されている(要出典)。西洋人の来航前に既にポリネシア域内では広く栽培されていた。 <
JRF2023/11/159719
カルタゴなどが、先にアメリカ大陸に到達していて、梅毒を持ち込んだんでは?…という話は [aboutme:114757] でしている。
それよりずっと以前ということになるのだと思う。縄文人との関係などもググると主張があるが、縄文人ではないにせよ、海洋から到着していた者がいたのかもしれない。
海流の変化によっては、到着できることもあったのではないか。
JRF2023/11/155747
ただし、著者は書く…。
>集団Yの祖先はシベリアと北米北部の広大な土地を横切らなければならなかったが、そこには「最初のアメリカ人」の祖先も住んでいた。したがって、集団Yが南米に広がり始めたときには、すでに「最初のアメリカ人」関連の DNA を大量に取り込んでいた可能性が高い。<(p.266)
JRF2023/11/155036
……。
>南アフリカのサン族は、その他のあらゆる現生人類に至る系統が互いに分かれる前に分岐した系統に由来すると一般に考えられている。もしそうなら、サン族はあらゆるアフリカ人とまったく同じ割合で変異を共有していると予想される。ところが、サン族がナイジェリアのヨルバ族のような西アフリカの集団よりも、東アフリカや中央アフリカの狩猟採集民とより多くの変異を共有していることを、わたしの研究室のポントス・スコグルンドが突き止めた。
JRF2023/11/157401
これは西アフリカの集団が、非アフリカ人の分離より早期に分離した集団の1つから DNA を多く受け継いでいるとすれば、説明がつく。ひょっとすると、現代人はすべて、2つの非常に異なる祖先グループの混じり合いでできていて、あらゆる集団が両方から DNA を受け継いでいるものの、西アフリカ人ではそうした混じり合いの影響が最も強く表れているのかもしれない。
JRF2023/11/150123
これらの結果は、現生人類らしい行動の痕跡が考古学的記録にどっと現れ出した約5万年より前に、アフリカで大規模な交雑が起こった可能性を示唆している。この交雑は決してささいな出来事ではなく、非アフリカ人が持つ2パーセントのネアンデルタール人 DNA や、ウォールとハマーがアフリカ人の DNA に発見したゴースト旧人類系統などをもたらしたような出来事とは、比べものにならないほどの規模だった。
JRF2023/11/158849
交雑がほぼ50対50だったため、どちらが旧人類でどちらが現生人類だったとみなすのが適切なのかさえ、明確ではない。ひょっとすると、どちらも現生人類ではなかったか、どちらも旧人類ではなかったとも考えられる。もしかすると、この交雑自体が、現生人類の形成に不可欠だったのかもしれない。2つの集団の生物学的特性が1つにまとまって、結果として新たに形成される集団に有利な組み合わせとなったのかもしれない。
<(p.307)
JRF2023/11/158308
本当のアダム集団とイヴ集団…。どっちがアダムかはわからないが。
いや、むしろ↓かな。
JRF2023/11/158855
[cocolog:90630253]
>もう一つが、人類起源に関する神話で中央アジアあたりのものだったと記憶している。それは、洞窟に男(猿?)が住んでいて、「人」を食う妖怪の女がやってきて、その男女が結婚して人間の祖になったというもの。何かの本で読んだはず。
ネットで、チベットに「観世音菩薩が、神が変化した猿に戒律を授けて、その猿が洞窟で修行していたところ、女魔がやってきてなんだかんだあって妻になり、その子孫から人間が生まれた。」という伝承があるということはわかった。
JRF2023/11/156124
《チベットの人類起源神話 | Eastasian in peninsula. - 楽天ブログ》
https://plaza.rakuten.co.jp/eastasian/diary/200804220000/
<
(ただし直上の URL はもうリンク切れ。)
JRF2023/11/152585
……。
>アフリカについての研究発表というとよく用いられる、住む地域によってまったく異なる顔つきの人々が次々に映し出されるスライドだ。<(p.314)
↓を思い出す。
JRF2023/11/159934
[cocolog:92073987]
>ここで、思い出すのが、アフリカ人の遺伝子プールの大きさである。昔、初代Xboxのゲーム『Tiger Woods PGA Tour 2005』のキャラクターメイキングで、私は、黒人の顔のパーツの豊富さに驚いたことがある。
前は、アマゾン川流域が、薬などで使うための遺伝子プールが豊富でそれが資源として価値を見出そうという話があったりした。それを人間でということになると、アフリカ人の遺伝子プールに注目が行かざるを得ないだろう。
<
JRF2023/11/153751
……。
鎌状赤血球変異。
>この変異を含む DNA 配列が3地域ですべて異なっているという事実から、変異頻度の上昇は驚くべきことにその3つの地域でそれぞれ独立に起こっているとわかった。<
「イメージによる進化」の「形質重畳」を思い出す。
JRF2023/11/150840
《イメージによる進化》
http://jrf.cocolog-nifty.com/religion/2006/06/post.html
>形質重畳 - 必要な形質は、自然変異によって失われないように、くり返し、または、両性的な遺伝形質の重ね合わせが起こる。これにより、遺伝的な淘汰に対抗する。<
JRF2023/11/158447
……。
>アフリカ人はアメリカ先住民よりも旧世界の病気にかかりにくく<(p.325)
人はアフリカに戻って来て交配することは少なかったけど、病気はアフリカに到達して、自然淘汰をもたらしていたということか…。
JRF2023/11/152028
……。
>ピアズ・アンソニーの1973年のSF小説『時に抗う人種(Race Against Time)』は、ヨーロッパの植民地主義によって始まった集団の混じり合いが行き着く先を予想して、ほぼすべての人類が「標準」集団に属すようになった西暦2300年の世界を描いている。その世界では、混血でない人間は「純血種の白人」ペア、「純血種のアフリカ人」ペア、「純血種の中国人」ペアのわずか6人しか残っていない。<(p.326)
私も SF 小説を書いたとき、混血ではなく遺伝子操作の結果、「純血」の人間はいないが、「純血」に近いものがある種崇拝されている様の描写をした。
JRF2023/11/159213
《エアロダイバー 他五篇 - JRF - Amazon Kindleストア》
https://www.amazon.co.jp/dp/B01CEE9CW6
JRF2023/11/150805
……。
>ゲノムの残る不平等のしるし<(p.331)
男性は子供を産まないし、育てることを免除されてきた。そのため…
>権力のある男性は権力のある女性よりも、次世代に大きな影響を与えることができ、わたしたちは遺伝学的なデータからそれを読み取ることができる。<(p.331)
JRF2023/11/159318
その辺があって、パリテとかクォーター制とかを指導層に導入したほうが、世の中、良くなるんじゃないかという直感は、私もこの時代と共有している。ただ、女性が産むこと自体は変わらないので、収入の平均値が男性のほうが高いほうが、結婚は男女ともしやすく女性も望むところなのかな…と思う。もちろん、指導職に就いている男女は少なくとも同一労働・同一賃金ではあるべきだろうとは思うけれども。
JRF2023/11/158642
……。
>東アジア人、ヨーロッパ人、中東人、北アフリカ人については、おおよそ5000年前に生きていた共通男性祖先を持つ多くのスタークラスターが見つかったのだ。
5000年前ごろというのは(…)青銅器時代が始まったころでもあり(…)
<(p.334)
車輪が可能になったのも、金属を車輪の一部に使えるようになって、頑丈で実用的になったからではないか。
JRF2023/11/153518
そして、金属が「非定住者」を支配層に押し上げたとも以前、私は考えたのだった。吉田敦彦『日本神話の源流』([cocolog:94490727])を読んだとき…、
JRF2023/11/159804
[cocolog:94490727]
>
ところで、なぜ非定住者が支配に適していたか? それは金属器の影響ではないか。
武器を使うのを厭わないためというのは理由にならない。農耕民族も守るためには武器を使うからだ。しかし、武器の独占のために金属を独占しようとしたとき、違いが生じる。
金属は、鉱山への道を含む通商路をおさえることが農耕以上に必要になるため、移動がメインの非定住文化を基礎としたほうがよかったのだろう。それがスキュタイが金を神器に使っていた理由の一つでもあろう。
<
JRF2023/11/156469
……。
非アフリカ人のX染色体の遺伝的多様性は予想されるより小さい。それは…
>非アフリカ人の祖先集団が最初に誕生した後、この集団に別のグループの男性から遺伝子流入があったというシナリオなら、説明がつく。男性にはその他の染色体のコピーがそれぞれ2つあるのに対してX染色体のコピーは1つしかないため、他集団の男性の遺伝子がくり返し流入すれば、残りのゲノムに比べて集団のX染色体の遺伝的多様性が減少し、観察されたようなパターンが生ずる。<(p.341)
JRF2023/11/155484
これって神殿売春みたいな制度の存在を示唆しているのではないか。民族に血を取り込み、遺伝的多様性を増す(と考えられていた)ためにやられていたのだろうか?
keyword: 神殿売春
JRF2023/11/155545
……。
現生人類には20万年の歴史がある。その間に、集団の間に遺伝的平均差が生じるのは当然である。知能に関してもそれがありうることから目をそらすべきではない。
>身長や乳児の頭囲に対する自然選択が2000〜3000年の間に起こるなら、認知や行動の特性に同じような平均差があってもおかしくない。たとえ今はまだ、その差異の正体がわからないとしても、砂の中に頭を突っ込んで、差異など見つかるはずがないという振りをするのはよくない。差異があるという現実に対処できるように、科学界や社会はしっかり準備するべきだろう。<(p.362)
JRF2023/11/157959
もちろん、個人差がとても大きいことを認めつつ…である。
昔、猫アレルギーの話をしたとき、たとえ、それがウィルス的なものでも、ウィルスに個性があるのだから、「触ってみてその猫に対しアレルギーがないか確かめるべきだ」みたいなことを私は主張したことがある。
JRF2023/11/152525
……。
短距離走が速い者に、西アフリカ系統の者が多い。
一つは自然選択のせいで、西アフリカ人系統の人の平均的能力が、他より高いという可能性はある。しかし、他の可能性もある。
JRF2023/11/151897
>同じような大きな効果が予想できる別の説明として、西アフリカ人系統の人々の短距離走能力にはより大きな変動幅があって、能力の非常に大きい人も非常に低い人も多いというものがある。実際に、西アフリカ人の遺伝的多様性がヨーロッパ人より約33パーセント高いことを考えると、平均値は同じでもその上下により幅広く能力が分散し、ヨーロッパ人の99.999999パーセンタイルより上に相当する人の比率が100倍になることは十分にありうる。
JRF2023/11/156789
これが西アフリカ人の優れた短距離走能力の本当の原因なのかどうかはともかく、認知能力も含め多くの生物学的特性について、サハラ以南のアフリカ人では、遺伝の影響を受ける能力において極端な値を持つ人の比率が高いと考えられる。
<(p.370-371)
上の『Tiger Woods PGA Tour 2005』に言及したところに書いてたように、遺伝子改変が一般的になれば、アフリカ人の遺伝子プールに注目が行く時代が来るのかもしれない。
JRF2023/11/153325
一方、[cocolog:94226002] で読んだ SF短編小説集『20世紀SF (5) 1980年代 冬のマーケット』(河出文庫, 2001年7月)の「姉妹たち」(グレッグ・ベア)にあったような、デザイナーズ・ベビーの欠陥みたいな話が現実に起こるようになるのかもしれない。
JRF2023/11/155318
……。
>進化生物学上の主要な疑問として、人類の進化は色素形成の場合のように、ゲノムの比較的少数の箇所で変異頻度が大きく変化することによって進行するのが普通なのか、それとも身長の場合のように非常に多くの変異箇所で頻度の小さな変化が起こることによって進行するのが普通なのかというものがある。どちらのタイプの進化がより重要なのかを知ることには大きな意味があるが、1つの時間枠に生きていた人々の解析というツールしか使えない場合、その解明はむずかしい。だが古代 DNA なら、現代のことし研究できないという時間的な制約を克服できる。<(p.393)
JRF2023/11/156063
これは上の「陽性変異」と「陰性変異」の話に似ている。これは「主要な疑問」なんだね。私の「陽性変異」と「陰性変異」のひとことは 2018年5月 だったので、この本の原著が出た後だから、私の書いたことの影響のはずはない。むしろ私が(間接的な)影響を受けたのだろう。
JRF2023/11/158157
……。
>わたしの研究室では古代の人々の骨をすりつぶしているが、その多くは遺体が損なわれることを望んでいなかったのではないか、自分はそのことを十分に考えていなかったと感じている、とわたしがいうと、彼(…ラビ…)はいかにも困惑したようすで、しばらく考える時間がほしいとのことだった。しばらくして戻って来た彼は、先例となる決定や他のラビによる判断がない場合にする助言をしてくれた。それによると、人間の墓はすべて神聖なものだが、理解を深めたり、人々の間の障壁を取り除いたりするのに役立つ可能性がある場合に限って、墓をあばくことも許されるだろうということだった。<(p.399)
JRF2023/11/155409
エリアーデ『世界宗教史 1』を再読([cocolog:94505557])したとき、骨髄食をやめ道具を使って狩りするようになるため骨の埋葬をはじめた、そこから霊の議論が起こってきたのではないか…とした。
古代エジプトでファラオが副葬品とともに葬られるのは、次のような理由があると考えた。
JRF2023/11/151219
[cocolog:94505557]
>死後、軍団として霊界に生きて再び来る期待を生じさせ、死後、霊界で生きる装備を埋葬させる。…そのことにより、埋葬は維持されるようになる。しかし、その信心だけではシステムを維持できない。システムの維持にはそこから利益を得る者が必要である。よって、霊界に生きて再び来る期待を持続させるのは、制度化された「盗掘」により利益を得る宗教者集団ということになるのだろう。
JRF2023/11/158965
骨髄食が問題なので、盗掘により骨があとから散らされても大きな問題ではない。しかし死後の信仰は、骨を散らす泥棒の盗掘よりは宗教者による管理を選好させることになる。特に譲渡性の高い金属器の登場で、このシステムが可能となった。
<
JRF2023/11/154163
そういう意味では、骨がある程度時間がたったあと掘り返されるのは原理的にはさして問題ではないのかもしれない。もちろん、信仰はその後に生じて我々を覆っており、それを無視することが良いこととも思えないが。
JRF2023/11/150062
[cocolog:94517420]
>私は、骨食から霊の理論を導くという形になったが、霊がその前から存在しなかったと言いたいわけではない。そのあたりは、創造論と進化論の議論([cocolog:93369982] など)と同じで、考古学的な真実から見れば、なぜか、霊の理論がそのように登場してきたように読めるようになっているということだ。霊や神はそれ以前から存在しているだろうが、それが人類にわかるようになったのは、考古学的にはここ20万年とかそれぐらいのことでしかない…ということのようだ。
JRF2023/11/154824
神がそうした目的はわからないとしておきたい。目的の一例を挙げれば、それは現代の人類が霊を知らないことへのある種の許しなのかもしれない。
<
骨を科学の発展に役立てるなら、許しもあるのだろう。
JRF2023/11/156821
『交雑する人類 - 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(デイヴィッド・ライク 著, 日向 やよい 訳, NHK出版, 2018年7月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4140817518
https://7net.omni7.jp/detail/1106894282
原著は David Reich『Who we are and how we got here』(2018)。
JRF2023/11/152549