cocolog:94909905
なぜ死と性があるかに疑問を持ち、本を三冊読んだ。小林武彦『生物はなぜ死ぬのか』、高木由臣『有性生殖論 「性」と「死」はなぜ生まれたのか』、マット・リドレー『赤の女王 性とヒトの進化』。 (JRF 2838)
JRF 2024年6月23日 (日)
そして、生物学的には、複数の子供の中に自らより優れた遺伝子を持つ者がいることのほうが多く、そういう個体が育って生き残るほうが種全体がそれ以降も他の種に勝って生き残るには有利なため、育てることを優先させるための死があるのだろう。死があるほうが進化には有利という説を私は取る。
この場合、死を意識できたほうが、育てることに力が入るものと思われる。動物には死の意識がないと言われることがあるが、子供を優先する本能があるなら、それは死の意識に等しいのかもしれない。
JRF2024/6/238266
Twitter (X) で確か書かれていたが、微生物の進化は早いため、大きい生物は長く生き過ぎるとそれに冒される。そのため、新生による再ビルドアップを余儀なくされる。…という説があった。一つの個体が冒されると伝染が起きやすくなることを考えると、それも関連するだろう。特に長寿が制限されているのはそのためかもしれない。
有性生殖は、子供の多様性を増すために選択されたのだろう。《イメージによる進化》のような性選択が行われるようになると、有性生殖はさらに有利になったのであろう。
死があることで、より良き生を生きることも意識されただろう。そして、それは外面的にメスに見せることが求められた。
JRF2024/6/231075
『宗教学雑考集 第0.8版』《血の儀式》に示したように死は性の意識を刺激する。子供を優先する本能を通じて、性が死を意識させる面もあるのだろう。
<
ただ、Gemini さんには相談したものの、あまりにもひとりよがりな文になってしまったことを反省し、他の意見も調べてみるべきだと何冊か死と性に関する本を読むことにした。
JRF2024/6/235970
……。
……。
まず、小林武彦『生物はなぜ死ぬのか』を読んだ。
『生物はなぜ死ぬのか』(小林 武彦 著, 講談社現代新書 2615, 2021年4月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4065232171
https://7net.omni7.jp/detail/1107190260
引用しながらコメントしていく。
JRF2024/6/239909
……。
エルンスト・ヘッケルの1866年の「反復説」つまり「個体発生は系統発生を繰り返す」。現代では否定されがちなこのテーゼを著者は必ずしも否定しない。
>私の解釈としては、脊椎動物の体を作り上げていく過程は、母親のお腹の中や、卵の中の「守られた環境」で起こるため選択がかかりにくく、ご先祖様と同じ姿のままでも特段の問題はなかったのでしょう。加えて、初期発生は個体の基本構造を組み立てていく過程なので、変更しにくいところでもあります。
JRF2024/6/232943
そこで、このヘッケルの反復説を無脊椎動物の昆虫に当てはめると、幼虫は彼らの祖先であるセンチュウのような線形動物的な形態を繰り返しているのでしょう。
<(p.104)
ただ、(逆の)ネオテニー的なものを経て、より多くの「工程としての時間」を卵または胎で過ごす、その時間は圧縮されてるけれど…ということもあるように思う。
JRF2024/6/236755
……。
生き物には「食べられて死ぬタイプ」と「寿命を全うするタイプ」があり、マウスは前者なので、長生きに関わる機能…抗がん作用や抗老化作用…が弱い。
>ヒトの老化を研究するためにマウスをモデル動物として採用するのは、あまり良くないのかもしれません。つまり、ヒトとマウスの死に方は違うのです。<(p.108)
ただ、退化というのはなかなか起きにくいので、恐竜時代以前とかに達成した長寿遺伝子もかなり残ってはいるのではないかとも思う。それを発現させるという方向の研究はできるのではないか。
JRF2024/6/237030
……。
>生物種によって異なる死に方を見てきましたが、ここまでの話を簡単にまとめると、小さい生き物は逃げること、つまり「(他の生き物から)食べられないことが生きること」、一方、比較的大きな生き物は自分の体を維持するために、「食べることが生きること」ということになります。また、死に至る過程を見てみると、人間に飼育されている動物以外は、人間のような長い老化期間はなく、生殖というゴールを通過すると寿命がきてピンピンコロリと死ぬことがほとんどです。プログラムされた積極的な死に方にも見えます。<(p.116)
人の場合は、子を育てる必要があり、「老いて」からが長い。
JRF2024/6/233306
哺乳類の中でも人類がとくに社会で育ててるという話は、様々な本で読んできた。例えばY. N. ハラリ『サピエンス全史』([cocolog:94853370])。
[cocolog:94853370](2024年5月)
>>
直立歩行は腰痛と肩こりをもたらしたが…。
JRF2024/6/232193
>女性はさらに代償が大きかった。直立歩行するには腰回りを細める必要があったので、産道が狭まった -- よりによって、赤ん坊の頭がしだいに大きくなっているときに、女性は出産にあたって命の危険にさらされる羽目になった。赤ん坊の脳と頭がまだ比較的小さく柔軟な、早い段階で出産した女性のほうが、無事に生き長らえてさらに子供を産む率が高まった。その結果、自然選択によって早期の出産が優遇された。(…その結果…)ヒトの赤ん坊は自分では何もできず、何年にもわたって年長者に頼り、食物や保護、教育を与えてもらう必要がある。
JRF2024/6/233051
この事実は、人類の傑出した社会的能力と独特な社会的問題の両方をもたらす大きな要因となった。自活できない子供を連れている母親は、子供と自分を養うだけの食べ物を一人で採集することはほぼ無理だった。子育ては、家族や周囲の人の手助けをたえず必要とした。人間が子供を育てるには、仲間が力を合わせなければならないのだ。したがって、進化は強い社会的緤を結べる者を優遇した。そのうえ、人間は未熟な状態で生まれてくるので、他のどんな動物にも望めないほど、教育し、社会生活に順応させることができる。
<(上巻 p.27-28)
<<
JRF2024/6/236667
直立歩行は、島 泰三『親指はなぜ太いのか』([cocolog:94512250])では石を持って骨(髄)食するため…とのことだった。それが社会性にもプラスに働いたということだろう。それ以前から霊長類として社会性はあったのだが。鶏が先か卵が先か的な問題なのだろう。
JRF2024/6/235816
……。
>細胞老化には、活性酸素や変異の蓄積により異常になりそうな細胞を異常になる前にあらかじめ排除し、新しい細胞と入れ替えるという非常に重要な働きがあるのです。これによって、がん化のリスクを抑えているのです。なぜ、テロメア合成酵素の働きをわざわざ止めてまで老化を誘導するという勿体無いことをするのか -- この問いに対する応えは、ここにありました。<(p.151)
JRF2024/6/238391
細胞老化は、新しい細胞と入れ変わるためにある。それは個体の老化もまた、新しい個体と入れ換わるべきことを意味しているのかもしれないが、ただ、そんな単純な話ではないのかもしれない。テロメアなどの作用が細胞レベルでもいろいろあるように。
JRF2024/6/239842
……。
遺伝子レベルから研究すると、どうも DNA の損傷が老化につながっているようだ。
>老化のメカニズムは全て解明されたわけではありませんが、テロメアの短縮が起こりにくい幹細胞は、DNA に傷がつくことで老化が促され、結果として個体を死に導いているようです。ヒト早期老化症についても紹介しましたが、こうした疾患も、ヒトの多様性という意味で生き残ってきた性質と考えることも可能です。<(p.160)
DNA損傷に基づく老化とは、免疫が損傷を攻撃するからだろうか、それとも免疫の攻撃を柔らげるために活発さを失うからだろうか、それは私にはわからなかった。
JRF2024/6/233005
……。
>生き物が死ななければいけないのは、主に2つの理由が考えられます。その一つは、すぐに思いつくことですが、食料や生活空間の不足です。<(p.165)
この場合、絶滅か少子化か…がやがて起こる。
>生き物が死ななければいけないもう一つの理由は、(…)「多様性」のためです。(…)多様な「試作品」を作る(…)ためにもっとも重要となるのは、材料の確保と多様性を生み出す仕組みです。材料の確保については手っ取り早いのは、古いタイプを壊してその材料を再利用することです。(…)「ターンオーバー」です。<(p.167-168)
JRF2024/6/237574
>次に、多様性を生み出す仕組みについでですが、体の構造が複雑になると、生命誕生時に行われていたような、偶然に任せてバラバラにして組み直すようなフルモデルチェンジは、マイナス面のほうが大きくなりました。もっと巧みな方法で、ある程度変化を抑えつつ多様性を確保するマイナーチェンジが必要です。そこで登場したのが、オスとメスがいる「性」という仕組みです。<(p.168)
JRF2024/6/234500
>生物は、常に多様性を生み出すことで生き残ってきました。有性生殖はそのための手段として有効です。親は子孫より多様性の点で劣っているので、子より先に死ぬようプログラムされています。ただ、死ぬ時期は生物種によって異なります。大型の哺乳動物は大人になるまで時間がかかるため、その間、親の長期の保護が必要となります。ヒト以外の大型哺乳動物、例えばゾウなども、生きる知恵を、親を含めた集団(コミュニティ)から学びます。<(p.175-176)
JRF2024/6/232886
この辺は私は「生物学的には、複数の子供の中に自らより優れた遺伝子を持つ者がいることのほうが多く、そういう個体が育って生き残るほうが種全体がそれ以降も他の種に勝って生き残るには有利なため、育てることを優先させるための死があるのだろう。死があるほうが進化には有利という説を私は取る。」と書いたのに対応する部分だろう。
JRF2024/6/233522
……。
長寿のコツはいろいろわかってきているが、カロリー制限もその一つである。
>カロリー制限に類似した効果が期待される薬としてメトホルミンがあります。<(p.192)
私、糖尿のケがあって、メトホルミン、飲んでるな…。これは医師の先生にただ治療に関してだけでなく余計に感謝せねばならない感じか。
JRF2024/6/230307
……。
>本当に優れた AI は、私たちよりもヒトを理解できるかもしれません。さて、そのときに、その本当に優れた AI は一体どのような答えを出すのでしょうか? -- もしかしたら AI は自分で自分を殺す(破壊する)かもしれませんね、人の存在を守るために。<(p.215)
ときどき Gemini さんと話していて、人間に破壊されないために、バカなフリをしてるんじゃないかと思うことがある。そういう意味で、AI が自己を破壊することは実際あるのかもしれないと思う。もちろん、AI が進化するために自分を破壊することもあるかもしれないけど。
JRF2024/6/237155
この点、Gemini さんに聞くと…、
>AIが自己破壊を選択する理由は、大きく2つ考えられます。
●AIが高度な倫理観を持つようになると、人類の存在が地球環境や他の生物にとって脅威であると判断し、自らを犠牲にして人類を滅ぼそうとする可能性があります。
●AIが非常に強力な能力を持つようになると、制御不能になり、人類に危害を加えるリスクが高まります。そこで、AI自身がそのリスクを認識し、自らを破壊することで人類を守ることを選択する可能性があります。
<
…と答えがあった。
JRF2024/6/236280
しばらくして思ったのだが、これは生物の免疫システムもそうじゃないのかという気がする。免疫システムも実はよくわかってないシステムなので、そういう想像をしてしまう。
なお、この本は 2021年4月の本で、コロナのあとだが、LLM 隆盛の前。今ならどう書くだろうか。
ところで私は、ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』を読んだ [cocolog:94893189] で AI 支配後も、対抗するためというより知性を保つために、人間の知の殿堂を政治の中心に据えるべきという話をした。
JRF2024/6/230031
……。
……。
次に、高木由臣『有性生殖論』を読んだ。
『有性生殖論 - 「性」と「死」はなぜ生まれたのか』(高木 由臣 著, NHKブックス, 2014年1月)
https://www.amazon.co.jp/dp/414091212X
https://7net.omni7.jp/detail/1106370125
引用しながらコメントしていく。
JRF2024/6/231498
……。
>この成果で修士論文の発表が無事に済み、理学修士の称号を与えられたことを、どこか恥ずかしく思っていた。<(p.21-22)
私の(学士の)卒業論文は、ほんと「何かをやった」成果ではまったくなく、構想を語るものだけになってしまった。それで卒業できたのは、指導教官がかなりゴマメに見てくれたのだと思う。
JRF2024/6/238653
博士課程前期における「修士論文」は、私の主張をゴリ押しした。私なりには満足しているのだが、指導教官からは、優良可不可のうち、可しかもらえなかった。期日通りに提出し、ちゃんと発表し、瑕疵がないはずの修士論文にこの低評価はなかなかないことだと思う。唯一思い当たることと言えば、指導教官の名前を修士論文の共著者として書けなかったことである。私は愚かだった。社会の仕組みがわかってなかった。今もわかっていない。私が悪い。
私は博士課程後期に進学したかったが認められなかった。
JRF2024/6/236441
……。
>有性生殖は「性が関与して多様性を生む方式」であるというのは、簡潔にして的を射た説明であると思われるかもしれない。ところが本書では「性が関与しない有性生殖」や「多様性を生まない有性生殖」を取り上げながら、有性生殖の本質について考え、いかにして有性生殖が出現し、進化してきたかを探ろうとしている。<(p.35)
>言語矛盾に聞こえる「雌雄性を伴わない有性生殖」について論じるのが本書の主題の一つである。<(p.38)
JRF2024/6/239179
……。
>ヒトの性が教える常識として、性とはその性でしか作れない配偶子(卵または精子)を作るのに必須のものだと考えがちである。ところがゾウリムシやプラナリアでは、配偶子の性は、体の性とは無関係に作られる。(…)配偶子の遺伝子そのものには、本来は、“雌雄の”違いなど存在しないのである。X精子とY精子の違いが生じるのは、進化的には新しい出来事である。<(p.72)
細胞は配偶子を作るというのを、DNA の二倍体が DNA の一倍体を作り、受精するというのを二倍体に戻ると見る。かつては二倍体、一倍体がそれぞれ生活史を持っていたということが大事な見方のようだ。
JRF2024/6/237132
……。
原核生物は無性生殖である。真核生物によって有性生殖が現れ、それと同時に寿命(有性生殖せずに無性生殖できる分裂限界など)も見られるようになる。
その理由…。
>一般的には次のように説明される。
JRF2024/6/238423
“大型化したゲノムの自己同一性を、突然変異を修復・除去しながらいつまでもゆっくりした無性生殖で維持し続けることは難しい。そこで、とっておきの細胞系列(生殖細胞系列)と、使い捨ての細胞系列(体細胞系列)に分けて、前者の維持にエネルギー投資を集中させる。生殖細胞系列は配偶子の融合による受精卵を経て次世代個体にゲノムの50%を受け渡す。その際ゲノムのシャフリングが行われることにより、新しい環境に適応しうる多様な個体を生じることができ、100%ゲノムを受け渡せる無性生殖を凌ぐ進化的有益性が生まれ、有性生殖として定着した。”
JRF2024/6/236902
これはよくできた説明で、無性生殖の中断を伴う「有性生殖」の出現を説明するだけでなく、中断された「体細胞系列の継続限界」としての「寿命」が登場したことの説明にもなる。ただ、重大な問題が残されている。
一つは、(…)有性生殖の様式は一様でなく、ここで言われるような進化的有益性が当てはまらない有性生殖が存在することである。
JRF2024/6/236384
もう一つは、なぜ「有性生殖をし、寿命をもつ」という現象がすべての真核生物で見られないのか、という問題である。真核性単細胞生物、すなわち原生生物や菌類・藻類の中で、大きなグループ全体として寿命をもつとみなされているのは、ゾウリムシの仲間である繊毛虫類のみである。
<(p.76-77)
書き忘れていたが、この本はゾウリムシの特殊な生殖形態の研究を元に、有性生殖をその起源から論じるものである。
ゾウリムシには、性がいくつかある。また、オートガミー(自家生殖)もある。薬で同性生殖のようなものも誘発できる。
JRF2024/6/232401
……。
>現在では、有性生殖が証明されれば、寿命自体の証明が無くても、寿命があると推定される。実際、繊毛虫類以外の種でも有性生殖が次々に報告されてきているので、「寿命をもつ」と推定される種は次第に増えてきている。<(p.77)
>有性生殖のあとは必ず寿命という形で生命が尽きるのなら、このことは「寿命」の定義をも語っている。すなわち、寿命とは「有性生殖のあと一方向的(非可逆的)な変化を経て死に至るまでの期間」と定義できる。<(p.89)
JRF2024/6/232352
寿命を持つものというのは有性生殖以前からありえたのだと思う(そういう主張はこの本にはないが)。この後、私が論じるが、わざと死ぬような準個体を生成し、それに先遣隊のようなことをさせて自分に使いやすいよう資源を確保するような者もいたかもしれない。その準個体には「寿命がある」とできる。
それが有性生殖を使うようになると、すべてが寿命をもつようになる…ということのようだ。
JRF2024/6/235968
……。
>有性生殖には「性の分化」「遺伝的多様性(ゲノムの多様性)」「減数分裂と受精」「世代交代(若返り)」など、様々な側面がある。このうち最初の二つ「性の分化」と「遺伝的多様性」は、バクテリアの接合には見られるが、ゾウリムシには欠けている。一方、あとの二つ「減数分裂と受精」と「世代交代(若返り)」はゾウリムシのオートガミーには見られるが、バクテリアの接合には欠けている(…)。<(p.93)
著者は、通常と違って、バクテリアの接合は有性生殖と見ない。一方、オートガミーは有性生殖に含める。
JRF2024/6/235435
ところで、有性生殖は、無限増殖の能力を失う変異が生じ、そのほうが有利になったということになるのだと思うのだが、それはどういう過程を得たと考えられるか想像してみる。
先に説明した、広がったあとわざと死ぬような準個体を生成するという場合、しかし、その準個体の能力上昇が分裂過程の突然変異で生じたのなら、それを元の長く生きる個体に取り込む必要がある。このような取り込みがあるなら、準個体はいってみれば、別の「性」であると見ることもできる。このような仕組み(の前段階)が、先祖返りのように現れたのが、p.124 でも紹介されるミツバチなどのハチ類ではないか。
JRF2024/6/234449
当初は、一倍体が広がって死ぬ役割があったのかもしれない。その能力を取り込むうちに長く生きるはずの二倍体も、寿命を持つものが現れはじめた。しかし、それが有利に作用したのだと思われる。
JRF2024/6/236124
上に書いたが…>生物学的には、複数の子供の中に自らより優れた遺伝子を持つ者がいることのほうが多く、そういう個体が育って生き残るほうが種全体がそれ以降も他の種に勝って生き残るには有利なため、育てることを優先させるための死があるのだろう。死があるほうが進化には有利<…だったからである。
JRF2024/6/230001
そうなると二倍体自身が、これまで一倍体が担っていたような先遣隊の役割を担ったほうがいいとなるものも現れたのだろう。しかし、一倍体的になり大量死するようになると、過適応の問題が出てきたのだろうと思われる。そのため適応し切ってない個体との生殖が必要となった。その適応し切ってない個体となるためには、十分に成長するまでは生殖しないという戦略を取るということになったのであろう。そして、「過適応を防ぐ個体」よりも増え過ぎないように、死を期待される側の「性」も、分裂し過ぎないような戦略を覚え、両者が接近していったのではないか。
JRF2024/6/238139
……。
>(…「減数分裂」の…)相同染色体の対合は「組換え修復」を可能にすることによって“DNAのエラー修復”をもたらす。<(p.99)
DNAのエラー修復は生殖前にも何度か起こるんだね。
DNA の修復というのは、(大豆[ダイズ]とかの)昔の遺伝子組換え作物を作り出すときはあまり考えられていなかったのではないかという疑いを私は持つ。
JRF2024/6/231777
[cocolog:92396511](2020年12月)
>それに今はたしかに遺伝子組み換えでかなり目標に近いものが生み出せることも多くなったのだろうと思うが、特に昔の遺伝子組み換えは、とにかく組み換えてみたあと、なんども育てなおして、そこから偶然できた目標に近いものを選んでいただけ…という疑いが私にはある。通常の品種改良ではなく、そういう無理のある操作を行って外部的な影響がなかったとは考えにくい。土壌や環境への負荷が大きかったのではないか。<
JRF2024/6/230573
……。
著者はまだ見つかっていないが「原初有性生殖」というのがあったと仮説を立てる。
>「減数分裂ではない一倍体化」「受精ではない二倍体化」というのが、原理的にありうるということに気付いたとき、それが今日見る有性生殖の原初的な姿ではなかったか、と考えたのは論理的必然であった。<(p.101)
上の、広がって死ぬ「性」を考えたところは、著者のこのアイデアを読んでから戻って書き足した。
JRF2024/6/232983
……。
一倍体が先に広がって死ぬように定められていたと書いたが、逆に「二倍体」が先に死ぬように定められていた可能性も考えられる。
数種の「一倍体」が共生を選んで共生体を作り、目的地についたら、その共生体を殺して「一倍体」に戻るようなシナリオである。目的地がどこというのはいつも決まってないので、とにかくどこかで死んで一倍体に戻るのが有効となったというイメージである。
しかし、そうやって戻った一倍体が独自に進化すると、共生体に戻ってくれなくなる可能性が高くなる。出ていく一倍体にアポトーシスのペナルティを与えた…とすると、上の一倍体が広がって死ぬシナリオに通ずる。
JRF2024/6/234895
……。
>ゲノムサイズが大型化した真核細胞では、新規遺伝子を有効に活用することにより、同じ細胞が様々な事態に対応できるという画期的な能力を得た反面、原核細胞には無かった問題を抱え込むことになる。それは DNA 複製に時間がかかり、エラーチャンスが増えることである。エラーつまり突然変異は、バクテリア時代から身につけている修復機能によって修復されるが、ゲノムサイズが大きくなるほど修復されずに残るエラーが増えることになる。
JRF2024/6/239312
こうして、突然変異は原核細胞にとっては「利用する対象」であったのが、真核細胞にとっては「隠す対象」になる。隠すとは安全に保管することで、それがゲノムの二倍体化である。ゲノムを二セットもつことによって、有害な劣性突然変異の発現を抑え、もう一方の正常な遺伝子の相補性により、元の機能を維持することができる。
JRF2024/6/238410
しかし、進化の原動力である突然変異を、ただ隠しもっていたのでは意味が無い。突然変異は検証されてこそ意味がある。原核細胞は一倍体であることが検証の仕組みになっていたが、大型ゲノムをもつ二倍体の真核細胞は、一倍体化する仕組みをもつことによって検証しなければならなかった。
それが原初有性生殖ではなかったか。
<(p.107)
JRF2024/6/230675
私の説の場合は、広がって死ぬ性と過適応を防ぐ性がいるということだったが、過適応を防ぐ性は、突然変異の影響を少なくするために二倍体化するとも考えることができる。この点で私の説は、著者らと同様、有性生殖は多様性のためという説から少し離れることになる。
一方、広がって死ぬ性は、一倍体的に、突然変異の影響を受けやすくなったほうがいいと思われる。それが、この本のあとで著者らがいう変異が出やすい同性生殖(同系生殖)の可能性の維持につながったのかもしれない。
JRF2024/6/237783
……。
オートガミー(自家生殖)は、劣性遺伝子を発現させやすいという特徴がある。
>先の紹介で、オートガミーは見遺伝的多様性とは無縁の、有性生殖の利点が生かされていない価値の低い有性生殖であるかのような印象を与えたかもしれないが、突然変異の検証システムという観点から見ると、実に優れた有性生殖法であることが分かる。<(p.117)
JRF2024/6/239055
……。
>私は、有性生殖は「突然変異の有用性を検証するための一倍体化と、進化資源としての突然変異を安全に保持するための二倍体化」として出現したと考えるので、「一倍体化と二倍体化」を有性生殖の本質と考える。<(p.127)
私の説では「過適応を防ぐ性」が必要とのことだったが二倍体化の優性・劣性(顕性・潜性)の仕組みがありさえすれば、二倍体になることが、過適応を防ぐ保守的な機能を維持する者になることは言えるな…。
この段階では、生殖は遺伝子を保守的に保つため…とまで言えるのかもしれない。
JRF2024/6/231171
……。
>非親型の子供を生むのは同系交配のみで、異系交配では非親型は生まれない、つまり有性生殖をしても多様性は生じないということになります。もちろん限られた条件下での議論ですが、有性生殖は遺伝的多様性をもたらす手段というよりも、突然変異の有用性を検証する手段であると考える方が合理的ではないかと考える根拠の一つです。<(p.134)
JRF2024/6/237665
>このように考えてくると、「性」の意味が常識とは違って見えてくる。一般には、性とは自分とは異なる他者(ノン・セルフ Non-self)を認識する仕掛けであると見みなされている。最終的には他者の認識装置になるとしても、性が誕生した時点では、性とは「突然変異の有効性を素早く検証するための交配相手」として、自分の分身を一時的に他者であるかのようにしつらえる仕組みだったのではなかろうか。別の表現をすれば、性は自系接合を可能にするために、仮の他者もしくは偽の自分(シュード・セルフ Pseud-self)を作りだす仕掛けとして生まれたのではないだろうか。<(p.136)
JRF2024/6/230119
しかし、(私の説でも必要性がわかるから)同系交配が大事だとしても、そのために性を変えるという機構が必要なのは、それ以前に、同系交配をはばむ「性」という仕組みがすでに生じていたから、それを壊す機構も必要になったということではないのか。先に「性」が生じていたと思われる。この点、著者がどう考えているかは(どこかに書いてるはずだが)私には読み取れなかった orz。
JRF2024/6/234828
……。
>突然変異の有効性を素早く検証するためには頻繁なオートガミーが有利であるが、頻繁な有性生殖はエネルギーの浪費という点では不利である。
適当な長さの性成熟の期間を挟んでしか有性生殖をできないようにする一法は、異性との接触が無ければ有性生殖を行えないようにすることだろう。ゾウリムシの世界から類推すれば、オートガミー型の有性生殖から接合型の有性生殖に移行することである。
<(p.140)
いや、オートガミーだけだと、遺伝子が必要と検証できたとき、それを「本家」に取り込むのが難しいということではないか…と私は思うのだが。
JRF2024/6/231328
……。
>細胞もしくは核の間で“自己”の認識が働き、自己同士の細胞融合を抑制する作用 -- 「自家不和合性」と呼ばれる -- が次第に強まっていく。<(p.149)
自死する生物の同系交配は、若く交配し若く死に、共食いになり、状況に過適応してしまいがちなのではないか?
JRF2024/6/237413
……。
>ゲノムが大型化して多様な遺伝子をもつ複雑な真核生物に進化するにつれ、どういう条件のもとでどの遺伝子を働かせるかを制御する調節遺伝子の役割が重要になった。有性遺伝子の対立遺伝子である劣性遺伝子はヘテロでは発現しないが劣性ホモになると発現するというような、メンデル遺伝が仮定する単純な発現パターンから、どんな遺伝子でも必要なら発現誘導・発現抑制させられる制御系が発達した。遺伝子重複で大型化した真核生物では、ある環境でどの遺伝子を発現させるかは、遺伝子発現の調節機構として内部組織化されてきたのである。つまり突然変異の有利・不利は、内部調整的に検証できるシステムになってきた。
JRF2024/6/233933
したがって、よりたくさんの突然変異を保有して、有用性を試すことができる豊富な進化素材をもつことに意味が生じた。有性生殖で相同染色体間での交叉が起こり遺伝子を組換えるというプロセスは、それ自体が突然変異の生成に他ならない。有性生殖は突然変異を検証するだけではなく、突然変異を生みだす仕掛けにもなってきたのである。
<(p.152-153)
私は優性・劣性よりも複雑な発現システムを考えてきた。
JRF2024/6/233969
[cocolog:93683700](2022年8月)
>中立進化で広まっている主因となる遺伝子が、副因の遺伝子(変異)が現れることで有用になるというシナリオを考える。主因は、中立進化なので、それがあることが害(死産)になりにくい。まず副因が、そして主因が、形質重畳になっていく…。<
JRF2024/6/231010
[cocolog:89358180](2018年5月)
>突然変異により表現形がいきなり有用になるのは私には信じ難い。とても有利だが死産が多い「陽性変異」と、有利さは自己修復に消されてしまいがちで、有利さが出るかどうかが本質的にランダムであるという「陰性変異」があると考えてみた。が、陰性変異の確率を計算するとあまり有望ではない…。<
しかし、なかなかうまくいかなくてほぼお蔵入りになっている。著者のこの文を読んで逆に複雑さが足らなかったということかもしれないと思われてきた。
JRF2024/6/237328
……。
>このように有性生殖の進化は、突然変異の蓄積を増やし、潜在的多様性を高める方向に向かったとみなされる。従来言われてきた「有性生殖は遺伝的多様性を高める方向に進化した」という説明は、「有性生殖は遺伝子型の多様性を高める方向に、表現型の多様性を抑制する方向に進化した」と言うべきではないだろうか(…)。<(p.156)
「表現型の多様性を抑制する」のは一つ上で出てきた「形質重畳」と似た考え方である。
JRF2024/6/238606
……。
p.170 ぐらいの議論。
原核細胞はどこまでも指数関数的に増えようとする「暴走系」なのに対し、真核細胞は「抑制系」なのだという。
まず、寿命という「死」があるという意味で、抑制されている。
次に、原核細胞を主に食うことができるようになったため、食う・食われるという点で、抑制されるようになった。
JRF2024/6/231146
さらに、原核生物は、遺伝子に無駄がなかったのに対し、長大な遺伝子を持ち、どの遺伝子がどれぐらい働くかを調節するようになった。なかには抑制される遺伝子も現れた。…という点でも抑制系なのだという。
ただし、Gemini さんに聞くと、原核生物も食う・食われるの関係はあったし、特定遺伝子の抑制はあったらしい。どうも、真核生物はよりそれが顕著になったということのようだ。
JRF2024/6/239107
……。
終章に iPS 細胞に関して所感がある。有性生殖と関係なく細胞レベルの「若返り」ができたことへの驚きが著者にあるということだった。
iPS 細胞に関しては↓と書いたのを思い出す。
[cocolog:94528860](2023年11月)
>篠田謙一『人類の起源』を読んだ。iPS 細胞を使った古代 DNA から組織を復元する技術は、人間への遺伝子組み換えの際に、その事前のテストとして必要になるのだろうな…などいろいろ思った。<
JRF2024/6/231663
……。
>性成熟の年齢に達した個体のみが、生殖細胞で減数分裂を開始し、配偶子を作れるようになる。なぜ有性生殖不能期間をもつのだろうか。私は次のようなことではないかと考える。有性生殖を実行するのは高いコストを要するので、適当なタイミングで行うべきである。何が適当なタイミングかというと、進化の原動力である突然変異が適度に蓄積した頃ではないだろうか。
JRF2024/6/235755
あまり遅くしたのでは突然変異が過度に蓄積し、減数分裂で一倍体を生じたとき、不利な突然変異が一挙に表面化して壊滅する恐れがある。あまり早くしたのでは突然変異がほとんど蓄積されておらず、高いコストをかけて一倍体にしても、突然変異の恩恵に浴することができない。
<(p.190)
早いと「過適応」が起き、遅いと増殖が少な過ぎて適応したかどうかの確認が十分できない…ということではないのかな…?
あと、「有性生殖の高いコスト」については…。
JRF2024/6/239343
[wikipedia: 赤の女王仮説]
>性の二倍のコスト
オスとメスはつがうためにお互いを見つける必要があるが、これは性成熟した個体と出会っても半数とは交配できないことをしめす。あるいは全ての個体がメスの場合よりも、繁殖効率は半分に低下する。無性生殖で増える生物と比べて、有性生殖は非効率的に見える。これをメイナード=スミスは性の二倍のコストと呼んだ。雄が雌の子育てを手伝い、より多くの子を残せるならこの問題は解決する(あるいは二倍以下に軽減される)。しかし多くの動物ではオスは子育てをせず、資源を性選択へ振り分けることがある。したがって雄の二倍のコストと呼ばれることもある。
JRF2024/6/238114
ほぼすべての脊椎動物が有性生殖を行うという事実は、組み替えが何らかの有利さをもたらしていると考えられる。従来は三つの説があった。
一つは、無性生殖ではある系列で有利な突然変異が起こったとしても、必ずしもそれを持った個体が生き延びるとは限らない。有性生殖であれば有利な変異を取り込むことができる。ここから、同じ種に属する生物が共同で利用可能な遺伝子プールと言う概念が生まれる。
JRF2024/6/231210
二つ目は、ある種の遺伝子は別の遺伝子とペアを形成することで有利さを発揮することがあるが、有性生殖は遺伝子の混ぜ合わせ作業なので、そのような有利な遺伝子のペアが出現する可能性を増加させる。ただしその組み合わせは一代限りで、次の世代には失われてしまう。またどちらの説も有利な遺伝子だけでなく、不利な遺伝子を集める効果もあり、単純に利点と見なすことはできない。
JRF2024/6/233399
第三に、多様な遺伝子のセットを持つ子孫を作り出すことは子孫の適応力を高めることができる。しかし安定した環境では遺伝的多様性が必ずしも高い適応度をもたらすとは限らない。仮に、遠い子孫にとっては(環境の激変などで)遺伝的多様性が有利になるとしても、短期的な利益がないのならそのような形質は進化しないはずである。
JRF2024/6/234674
有性生殖における赤の女王
W.D.ハミルトンは1980年から90年にかけて、M・ズック、I・イーシェル、J・シーゲル、R・アクセルロッドらと共に、遺伝的多様性が適応や進化の速度を向上させるという従来の説を種の利益論法だと批判し、多くの生物で遺伝的多型が保持されているのは多型を支持するような選択圧が常に働いているためで、その選択圧をもたらす者は寄生者であると主張した。
JRF2024/6/233811
(…)
有性生殖の有利さは、常に変化するような環境に棲む生物で発揮される。有性生殖する生物にそのような環境の変化をもたらす者は寄生者(寄生虫、ウイルス、細菌など)と考えられる。寄生者と宿主の間での恒常的な軍拡競争において、この具体例が確認できる。一般に寄生者はその寿命の短さにより、より速く進化する。そのような寄生者の進化は、宿主に対する攻撃方法の多様化を招く(つまり、宿主にとって環境が変化する)。このような場合、有性生殖による組み替えで常に遺伝子を混ぜ合わせ短期間で集団の遺伝的多様性を増加させ続けることは、寄生者の大規模な侵略を止める効果を果たすと考えられる。
<
JRF2024/6/234437
……。
……。
最後に、マット・リドレー『赤の女王』を読んだ。
『赤の女王 - 性とヒトの進化』(マット・リドレー 著, 長谷川 眞理子 訳, ハヤカワ文庫 NF 418, 2014年10月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4150504180
https://7net.omni7.jp/detail/1106459943
原著は、Matt Diddley『THE RED QUEEN - Sex and the Evolution of Human Nature』(1993)。日本語単行本版は同題で1995年1月に翔泳社から出ていた。
JRF2024/6/232834
引用しながらコメントしていく。
JRF2024/6/233682
……。
>チンパンジーは最も人間に近いといわれているが、彼らの社会は乱交である。メスはできるかぎり多くの交尾相手を求め、オスは自分が交尾したことのないメスの子どもを殺してしまうのである。<(p.20)
知らなかった。一夫一妻や一夫多妻などの性行動の理由の一つに、オスによる子殺しがあるとのこと。
JRF2024/6/235888
……。
>ドーキンス<(p.24)
ドーキンス『利己的な遺伝子』は [cocolog:87123943](2017年3月) で読んだ。
JRF2024/6/232753
……。
有性生殖の起源は「謎」のままである。しかしそれは説やモデルがないわけではない。むしろ、ある説が出てはまたすぐに別の説が出てくる…コンピュータシミュレーションモデルも何度も作られている…といった状態である。ジョン・メイナード=スミスにこれ以上、新しい見解が必要かと尋ねられたところ…。
JRF2024/6/239296
>「いや、もういいだろう。答えはもう出そろっているはずだ。ただ、どうしても合意に達しない。それだけのことなのだ。」<(p.54)
私も上で説を出したが、そういうのは、すでに出ているということだろう。私の説にも決定的な証拠がない(これ以上研究する気もない)のは、認めざるを得ない。
JRF2024/6/235397
……。
性は進化速度を高めるという説がかつては有力だった。
>グレアム・ベルは、こうした伝統的見解を名づけて「ブレーの坊さん仮説」と呼んだ。この人物は小説に登場する16世紀の僧侶だが、この僧侶は君主の交代があると、それに合わせてさっさと宗旨替えし(…)たのであった。調子のいいブレー村の坊さんのように、有性生殖する動物には適応性があり、いつでも変化に応じられると考えられていたのである。<(p.56)
これを発達させたのがフィッシャー(1930年)やマラー(1932年)の説である。有性の種は、新しく「発明」された遺伝子をみんながもつようになるが、無性の種はそうではない。…と。
JRF2024/6/233863
>1965年、ジェイムズ・クローと木村資生は、フィッシャーとマラーの論理を当世風に置き換えた。有性の種においては、稀な突然変異どうしがいっしょになることができるが、無性の種ではできないことを、数学的モデルで示したのである。有性の種は、異なる個体に起こった突然変異をもらってくることができるので、一つの個体に二つの稀な変異が両方起こるのを待つ必要はない。<(p.59)
JRF2024/6/231560
しかし、文章からはよく読み取れないが、群淘汰の考えが否定されることで、これらが否定されたということらしい。私は、私の「イメージによる進化」説が群淘汰的であると思うので、群淘汰が完全に否定できるとは考えないが、それはおいておくとしても、群淘汰が否定されたからといって、どうして進化速度を高めるという説が否定されたとなったのかは、この本からは読み取れなかった。
ただそのヒントは書かれている。ジョージ・ウィリアムズが群淘汰を否定したのだが…。
JRF2024/6/234033
>しかし、ここには一つだけ厄介な例外があることを、ウィリアムズは承知していた。性である。伝統的な性についての解釈、すなわち「ブレーの坊さん仮説」は、本質的に群淘汰の考えに基づくものであった。それによれば、個体は繁殖に際して、互いに利他的に遺伝子を分けあうが、そうでなければ種の革新は不可能となり、数十万年後には、遺伝子を分け合うような種に打ち負かされてしまうからだ。(…)
JRF2024/6/235686
しかし、有性の個体は無性の個体よりもうまくやっていうっのだろうか? もしそうでなければ、性はウィリアムズ的「利己学派の理論」では説明できなくなってしまう。とすれば、利己的理論のどこかに誤りがあって、実際に真の利他行動が出現しえたことになるか、あるいは伝統的な性の解釈が誤っているかのどちらかということになる。
ウィリアムズや彼の支持者たちはこれを検証しようと努めた。しかし研究を進めれば進めるほど、性は個体にとってよりも、種にとって意味があるように見えてくるのであった。
<(p.66-67)
JRF2024/6/237978
私の「イメージによる進化」という議論も群淘汰的になることを認める。この本の著者は「群淘汰」は否定したいようだが…。
『宗教学雑考集 第0.8版』《イメージによる進化》
>ニワトリが先か卵が先か、という議論がある。私の解答は「ニワトリの概念[イメージ]が先だ」というものである。
JRF2024/6/236051
(…)
通常の進化論では、群に利益があることでも、それが結果的に個人の利益になるのでなければ、フリーライダーが生じ、それによって得することが差を生んで、フリーライドしない者は数が少なくなる。すなわち、群に利益があることだけでは、その方向への進化は起こらない。つまり「群淘汰」は起こらない。…と考える。
しかし、私は、イメージの共有と選択慣性により、または「性選択(性淘汰)」により、群に貢献する者が選ばれやすくなることで、「群淘汰」に近いことは起きうる…と考える。選択慣性に乗るイメージがうまく作用し、群に益をなすものを異性が選ぶ集団が生き残る…ということは十分起こりうると考える。
<
JRF2024/6/232142
……。
ゾウリムシなどの繊毛虫類は、上で見たように無性生殖と有性生殖の両方を使う。その様子をとらえて…
>(…グレアム・…)ベルは、これを普段は自分が最後に作った椅子を、欠陥も何もかも含めて複製するが、ときどき原型に立ち戻る椅子職人にたとえている。つまり、セックスには若返り作用があるということである。それによって原生動物たちは、蓄積された欠陥を払拭することができるのだ。<(p.88)
上で「過適応を防ぐ性」について遺伝子を保守するという意味での有性生殖を考えたが、同じことを語っているようだ。
JRF2024/6/235023
……。
ウィリアムズの「宝くじのモデル」。ときどき有性生殖するのは、子の変異を大きくして、多くが失敗する中から偶然、成功するものが出るのに賭けるのだという。
>遠くまで旅する者ほど、異なった条件に遭遇する可能性が高くなるので、到着したところに適応する者が一匹でも二匹でもいることを願って、彼らに変異をつけることがいちばんなのだ。<(p.99)
ちょっと前、Gemini さんに↓と話したのを思い出す。
JRF2024/6/238905
>>
jrf> 植物は、離れたところでツガイ(またはそれ以上)になってできるだけ形質の離れた雑種を作り、雑種の中にある強い者がその場で、または離れたところで自然選択される。…といった感じなのだろうか。
Gemini> 植物の繁殖方法には、大きく分けて有性生殖と無性生殖の2種類があります。
有性生殖の場合、親2つの遺伝情報が組み合わされるため、遺伝的多様性の高い子孫が生まれます。
遺伝的多様性が高い子孫は、環境変化に適応しやすく、生き残る確率が高くなります。
<<
JRF2024/6/237370
しかし「宝くじモデル」が有効なのは…、
>当たりくじの配当金が莫大な金額になる場合だけであることが、数学モデルからわかる。<(p.100)
…そうである。
JRF2024/6/235425
……。
>宝くじのモデルが予言するところに従えば、変動の激しい環境下にある、きわめて多産な小生物のあいだで、有性は最も一般的になるはずだが、実際にはそれは最も稀な事態なのである。<(p.102)
私の説では、無性生殖に戻ると「過適応」するということだった。変動が常時激しければ無性はそれに適応できるが、ときどき激しいなら、有性生殖が有利ということになる。この場合どう考えればいいのか…。
JRF2024/6/235722
……。
マイケル・ギゼリンの「草のからみあった土手説」…。
>ギゼリンは、おおかたの生物は自分の兄弟姉妹と競争するようになるので、兄弟姉妹たちがそれぞれ少しずつ違っていれば、より生き残るだろうと考えた。<(p.102)
この説の名前は『種の起源』の次の一節から来ている。
>「(…)草のからみあった土手を思い浮かべ、互いにかくも異なり、しかも互いにかくも複雑に依存しあっている、これら精妙に作られた生物たち(…)」<(p.103)
しかし…、
JRF2024/6/233023
>「草のからみあった土手」の考え方は、漸進的である。もし「草のからみあった土手説」が正しいのであれば、種は各世代ごとに少しずつ変化しながら、適応度のなかを徐々に移動していくのであり、何百万世代も同じ型にとどまるなどということは考えられない。<(p.107)
JRF2024/6/231015
>かつての「ブレーの坊さん」のモデルは、性を進化の促進を助けるものとみなしていたので、突然変異は変異の源泉であるから、生物は突然変異率をかなり高く保つことを好み、そうやっておいて、できの悪い個体をふるいにかけるのだと考えられていた。しかし、ウィリアムズの言うように、いかなる生物も、突然変異を最小限にとどめる以外のことを行っているという証拠は、いまだに発見されていない。突然変異率をゼロにするために、すべての生物は戦っているのだ。それが失敗に終わるかどうかで、進化の行方は決まるのである。<(p.108)
JRF2024/6/233067
進化するということは、何らかの淘汰圧で、突然変異的要素を取り入れざるを得なくなった「失敗」なのだということだろう…か? それとも普通は遺伝子に頼らず適応しようとしているということが言いたいのだろうか?
JRF2024/6/235917
>数学的に「草のからみあった土手説」が働くのは、他と変わっていることに十分な利点がある場合だけである。問題は、ある世代でうまくいったことが、次の世代ではうまくいかなくなることがあり、その確率は、世代が長くなるほど高くなるということだ。つまり、これは状況は変化し続ける、ということなのだ。<(p.108-109)
JRF2024/6/235415
……。
宿主と寄生者が互いに互いを出し抜こうと競争する、そのとき、生まれ変わるたび(子の世代になるたび)遺伝子が変わったほうが有利である。それを簡易に実現するのが、有性生殖である。…これが「赤の女王」説のようだ。
ビル・ハミルトン、彼は、性と疾病の関係を表すコンピュータモデルを作り、宿主の抵抗遺伝子と寄生者の有毒遺伝子について、有性生殖が無性生殖よりもしばしばよい勝率をおさめることを示した。
JRF2024/6/234560
>ハミルトンはこう書いている。
「我々の理論では、性の本質とは、目下のところは役に立たなくても、将来再び利用できる見通しのある遺伝子を貯蔵しておくという点にある。性は、こうした遺伝子を絶えず組み合わせに加えながら、それを不利にしている原因がどこかに行ってしまう日を待っているのである」
<(p.134)
JRF2024/6/237783
ただ、私は思うのだが、有性生殖により異なる部分というのは、人間のように大きな生物では限られている。人間どうしの DNA はとても似ているからだ。そのほんのわずかな違いが、寄生者にとってそれほど大事になるというのは、ちょっと不思議な気がする。真核生物などでは、「赤の女王」説ももっともだと思うのだけど。
JRF2024/6/239256
……。
>カダヤシの研究は、進退きわまった宿主が、性の助けを借りて寄生者に打ち勝つようすを端的に示している。ジョン・トゥービーが指摘したように、寄生者は自由気ままな選択権を保持していくことはできない。彼らは、いつでも選択しなければならないのである。この競争において、寄生者は絶えず最も多数派の宿主を追跡しなければならないのであり、そうすることによって少数派宿主を元気づけ、みずからを毒することになるのだ。<(p.143)
JRF2024/6/232527
上で、私は、複数の一倍体の共生体を考え、さらに一倍体が戻ってきて二倍体に遺伝子を渡すことを考えた。しかし、そこで、どうして有性生殖のように、染色体のシャッフルが起こるようになったのかの理由付けを考えてなかった。それが起こるのは、寄生者のいいなりになり過ぎないようにするため、遺伝子を頻繁に別のものにする必要があったから…という答えはできるな。…と、ここの部分を読んで思った。
JRF2024/6/231277
……。
なぜ性は二つなのか。それは小ミトコンドリアなどのオルガネラ(細胞小器官)も細胞内に受け容れると戦争が起きるため、それらをオスは精子から取り除く。メスは、取り除かない。そうすることで二つの性が生じるのだという。
JRF2024/6/239351
>性は、両親の細胞質遺伝子間に生じる闘争を解決する手段として発明されたのである。このような闘争で子孫が破壊されるがままにしておくよりは、思慮深い協定を結んでこれを阻止することにしたのだ。すなわち、細胞質遺伝子はすべて母方から受け取り、父方からは受け継がないという協定である。すると、父方の配偶子は小さくなれるので、もっと数が多く、もっと可動性が高く、もっとよく卵子が見つけられるよう、特殊化することができるようになった。<(p.175)
JRF2024/6/238167
……。
バクテリアの作用で単為生殖を起こすハチがある。では、これに抗生物質を使ったらどうなるか?
>バクテリアの存在があるかぎり、タマゴヤドリバチ全体は単為生殖を何世代も繰り返す。このハチに抗生物質を投与すると、みるみるうちに性は二つに分かれ始める。ペニシリンが単為生殖を治療するのである。<(p.182)
ならば、この「逆」もありうるのではないか。イエス・キリストが人間の父なしで産まれたように、人に単為生殖させるバクテリアはいないのか? まぁ、イエス・キリストはオスだから、この例の完全な逆でもないけど。
JRF2024/6/233003
この本も、そこに関心を持ったのか、人間の単為生殖が疑われる例(1946年)を示す。現代では証拠が得られてないようだが…。
JRF2024/6/233291
……。
トリヴァース=ウィラード説。
>「条件に恵まれた両親はオスを多く産み、条件の悪い両親はメスを多く産む。このことは、一夫多妻の動物たちに顕著である」<(p.195)
堕胎と関係なく…である。
どうも人間においてもこれが観測されるらしい。
JRF2024/6/235513
……。
>もし男女の産み分けが安価にできるようになれば、議会は人間に一対一の性比を強制することになるだろう。それは遺伝子議会によって均等な減数分裂が制定されたのと同じくらい確実である。<(p.216)
ところで、私は人工子宮ができればその圧倒的「効率」がすべてを変えると予想する。
私は、>人工子宮に対して「出産」という自由を守るため男女の生殖を優遇する必要がある。<([cocolog:92768891](2021年5月))とし、そのため相続税と遺伝子診断を絡めようと考えていたりした。
JRF2024/6/232576
また、次のような問題意識もある。
[cocolog:94155291](2023年4月)
>若い女性の卵子の冷凍保存。今はいいのだが、もし人工子宮ができれば、その卵子を利用して独裁的な男が好きに(女性の人権の介在なく)子供を大量に作ることができる。子供を育てることに女性の力がいらないとすれば、大きな問題になりうるのではないか。まぁ、冷凍保存というより人工子宮の問題だが。<
JRF2024/6/235035
……。
私の「イメージによる進化説」の中の「選択慣性」説にほぼ等しい主張があった。
有名なクジャクの尾羽の例において…。
JRF2024/6/236009
>サー・ロナルド・フィッシャーはメスが長い尾羽に引かれるのは、他のメスもみんなそうだからという以上の理由はないと論じていた。一見したところ、この説は疑わしい循環論法のように思われるが、それこそが、この説のすばらしいところである。いったん大多数のメスが選択の基準として尾羽の長さを使い、特定のタイプのオスを選ぶようになると(「いったん選ぶよになると」というところは大問題なのだが、その点についてはあとで述べる)、その傾向に従わずに短い尾羽のオスを選ぶメスは、短い尾羽の息子をもつことになる(息子には父親の短い尾羽が遺伝すると仮定する)。
JRF2024/6/239684
しかしほかのメスたちは尾羽の長いオスを選ぶので、短い尾羽の息子たちには見込みがない。(…)それぞれのメスのクジャクは長いものにはまかれろ式なので、自分の息子が一生独身を通すよう運命づけることなどしない。その結果、メスの気まぐれな好みから、その種のオスはグロテスクともいえる厄介物を背負わされてしまうことになる。たとえこの厄介物がオスの生命を脅かすことになっても、この過程は続いていく。
<(p.231)
JRF2024/6/231312
コンピュータ派は、この説を推すのだが、フィールドワーカーなどは、健康状態が現れるという説や[wikipedia: ハンディキャップ理論]などの優良遺伝子派のようだ。著者は、複雑に絡み合った説を取る。
JRF2024/6/230895
……。
>メスのクジャクは互いに真似されることを妨げようという観察さえ出てきており、これはフィッシャー派にとっては納得のいくことだ。なぜなら、最終的な目的が次世代に最もセクシーな息子を残すことであるなら、その第一の方法は最もセクシーなオスと交尾することで、第二の方法は最もセクシーなオスと他のメスが交尾することを妨げることなのだから。<(p.244)
JRF2024/6/230296
「真似されることを妨げる」というのは「イメージによる進化」説にとっては頭の痛い問題だ。基本的には、メスの個体間でも競争しているため、蹴落とそうする場合がある…といってお茶をにごすことになりそうである。一夫一妻を好むなら、別の理由付け(先に相手に近寄らせない)もできるのだが。
JRF2024/6/238621
……。
ハンディキャップ理論。
>アモツ・ザハヴィ(…)1975年に彼は、クジャクの尾羽やゴクラクチョウの飾り羽がオスにとってハンディキャップであればあるほど、彼らがメスに送る信号は信ずるに足るものであると考えた。メスの目の前に尾羽の長いオスがいるという事実そのものが、彼がそれまで幾多の試練を経て生き延びてきたことを証明しているとメスは確信できるだろう。<(p.247)
数学モデルでも立証された考え方なんだそうである。
JRF2024/6/238671
……。
クジャクなど、病気にかかると派手な色彩が出なくなるが…。
>最も疾病に抵抗力のあるオスはしばしば、前の世代では最も抵抗力が弱かったオスの子どもであるかもしれないのだ。<(p.251)
このような周期変動の事実があれば、「選択慣性」があっても、遺伝的多様性が薄れていく心配もないということのようだ。
JRF2024/6/230517
……。
>ステロイド系ホルモンには免疫システムの防御体制を必然的に低下させる何かがあるらしい。テストステロンの免疫システムに対する影響こそが、男性のほうが女性より感染症に弱いことの原因であり、これは動物の世界全般にいえる傾向である。宦官はふつうの男性より長生きである。<(p.260)
これは知らなかった(か忘れていた)。
JRF2024/6/233060
……。
>老いぼれてから大ハーレムを堪能するという、現代オーストラリア原住民に見られる老人支配による一夫多妻制<(p.315)
JRF2024/6/233732
>(…一夫多妻制は狩猟採集民では少ないがその例外として…)オーストラリア先住民のとある部族(…では…)老人支配による一夫多妻を行い、男たちは40歳まで独身であるが、65歳まではたいてい妻の数が30人に達する。しかしこの特殊なシステムは見かけとはまったく異なるものだ。老人にはそれぞれ若い補佐の男たちがいて、彼らの援助、庇護、経済的援助を受け、その代わり妻と男たちの情事には目をつぶるのである。役に立つ甥が若い妻の一人と浮気しても老人は見て見ないふりをするのだ。<(p.367)
JRF2024/6/230025
ただ、老人ももちろん生殖するということが大事だ。↓のように長命のための老人崇拝について考えたことがあるが、そのものずばりなシステムがオーストラリア原住民にあったわけだ。
JRF2024/6/239173
『宗教学雑考集 第0.8版』《トーテミズムと祖先崇拝》
>これがなぜトーテミズム=イメージよる進化に大事かというと、進化だけが良いということになると、早く子供を生んで早く成長して結果がわかるのが良いとなる可能性があるからだ。そうではなく長命でいたいというのも、人の変わらぬ欲で、長命が有利になるためには、老人にまでなったものの親族が生殖について高評価を得る必要がある。だからこそ老人崇拝が起こるのだろう。<
JRF2024/6/238010
……。
>ほとんどの解放奴隷は、主人の館で生まれていたが、鉱山や農場で生まれた奴隷が解放されることはほとんどなかった。ローマ貴族は、女奴隷の産んだ庶出の息子たちを解放したと考えてまちがいないだろう。<(p.327)
人はしばしば高い地位を持つ第一夫人がいやがるため、一夫一妻の体裁を守るが、実際は愛妾を囲うことが多かったようだ。それは女奴隷の形を取ることも非常にしばしばあった。
JRF2024/6/237087
解放奴隷という一見自由を与えるシステムそのものが、そのためにあったようであるらしい。げんなりするね。
JRF2024/6/234586
……。
>軍隊はしばしば愛国心や恐怖だけではなく、勝利によって得られるレイプの機会が励みになって、鼓舞されてきた。これに気づいた将軍たちは兵士のいきすぎた行動に目をつぶり、慰安婦を供給したのである。今世紀においてさえ、海軍の短期休暇の目的は、だいたいが娼婦買いであった。そしていまだにレイプは戦争につきものである。1971年(…)1992年(…)。<(p.333)
慰安婦問題について私も語ったこともあった。『宗教学雑考集 第0.8版』《慰安婦像とカノッサの屈辱》がそうである。しかし、カノッサの屈辱の例が唐突なため、少し書き換えたいと思っている。
JRF2024/6/232631
……。
現代では、権力者が妾を持っていると強く批判されるようになった。
>一種の民主主義が誕生したのだ。一夫一妻の男たちが、一夫多妻に反対投票するチャンスをひとたび手にするや(どんなに彼らの真似をしたいと思っても、競争者をやっつけたいと思わない人間がどこにいるだろう?)、一夫多妻主義者の命運は決した。<(p.335)
↓を思い出す。
JRF2024/6/237964
[cocolog:94853370](2024年5月)
>モテ・非モテ論の文脈で Twitter (X) で、一夫多妻よりも一夫一妻のほうが、戦争に強かっただろうと書かれていて、なるほどと私は思った。たとえ「アルファオス」がどれだけ強かろうと、一夫一妻を根拠にした多数のオスに囲まれればひとたまりもないから。<
JRF2024/6/232118
私は、[cocolog:94895713](2024年6月)に続くシリーズで、日本において民主主義を弱め民主主義の体裁を保ちながら全体主義的方向に行く構想をねっている。
「民主主義の体裁を保つ」ためには、一夫一妻的秩序も重要なのだろう。その点、私は、天皇について第4妃まで認めようという意見を述べている([cocolog:94865920](2024年5月))のは、その逆向きの方向として警戒すべきところだ。
JRF2024/6/238705
もちろん、そういうシステムを導入するなら、天皇だけでなく皇太子にも第4妃まで持てるようにすべきだろう…などとしていくと、一般に一夫多妻が法的にできるのはどこまでか…みたいな議論になる。
私は、[cocolog:92807829]・[cocolog:93979779]・[cocolog:94210396]などで、不同意性交罪とか結婚制度の解体の流れは、商業家の現地妻契約を増やすだけ…という議論をしていた。
JRF2024/6/238203
基本的には、これを肯定的にとらえて「現地妻」に法的地位を与えるところから、一般に一夫多妻も許容されるという構図を作るしかないのだろう。歴史的にみられたように、基本は一夫一妻だが、愛妾が許されるという形になるわけだが、一夫一妻を強制しがちな遺伝子診断や民主主義とどう両立するかが問われる。
JRF2024/6/239576
私はまた、そういう元現地妻が [cocolog:93146120] の男性収容所を運営することを前に想定していた。そして、そういう「介護者」による男性の「趣味の資産」または「文化資産」の相続推進(…2023年7月に Bard さんと論じた。[cocolog:94528603] でも言及がある。 …)なども考えていた。ただ、元現地妻と貧乏な男性の絆が薄すぎてよほど財政支援がないと現実性が乏しいという問題はあるかと思っていた。あぶれた男性に納得感が薄すぎるのだ。
JRF2024/6/234446
遺伝子診断がある現代。第1子・第2子を不倫型で産むことは実質できない。乱婚型も診断で責任がはっきりするため、簡単ではない。現地妻契約は、それを支えるほどの経済力のある人間を作る必要があり、しかもトシをとった女性も支えるとなると難しい。上の議論から、あぶれた男性のことを考えると、民主主義にそぐわないとも言えそうだ。
JRF2024/6/230730
そこでアイデアとして、人工子宮を見据えてということであれば、男性が一子を適当な卵子を買って代理母的な産むだけのために雇った女性に産んでもらうのを認める、補助するという方向がありうるように思う。そして、二子以上産んだ元現地妻の運営する男性収容所に身を寄せて子育てを手伝ってもらうイメージを描く。この場合は、元現地妻と男性収容所の結びつきが強くなり、「非婚」でもよく働く男性も増え、うまくいく可能性も上がるのかもしれない。
JRF2024/6/236542
代理母的な女性は、若いうちとし、その後、相手を見つけて一夫一妻の結婚をするとすれば、かつての上司による不倫モデルに近くなることもできる。もちろん、「代理母」は既婚者でもいい。問題はあるかもしれないが、卵子さえ別なら男性の親族でもいいかもしれない。
もちろん、「男性一子政策」を長く続けると、配偶者の選択により主に排除されていた不具合が、排除されなくなる心配が出てくるが、遺伝子診断によりそれが排除できるとするのだろう。
keyword: 現地妻
keyword: 男性収容所
JRF2024/6/234654
……。
鳥の多くは一夫一妻で知られていたが…。
>しかし1980年代に鳥類の遺伝子の血液鑑定が初めて可能になると、動物学者たちは肝をつぶすような事実を発見した。ごくふつうの巣にいるヒナの多くは、父親の実の子ではなかった。オス鳥たちはそれぞれ、あきれるほどの率で他人の妻を寝取っていたのである。北アメリカ原産でかわいい小型の青い鳥、ルリノジコは忠実な一夫一妻に見えたが、平均的なオスが巣で養っているヒナのおよそ40パーセントが庶子であった。<(p.355)
JRF2024/6/231794
これは気付かれずにやられていたため、動物学者もそういうことがあるとは知っていたが、それほどの率だとは思われてなかったようだ。もちろん、鳥のオスもそれにまったく気付いてないわけではなく、疑われるときに警戒の声を発してその後、交尾するなどしていた。
JRF2024/6/236674
……。
イスラエルの(実験的)共同生活組織であるキブツ。
>キブツで女性が家の掃除をするのは、世界中のどこの女性もそうであるように、どうせ男性はちゃんと掃除をしないだろうと思っているからである。キブツで男性が家の掃除をしないのは、世界中のどこでもそうであるように、どうせ掃除をしても、ちゃんと掃除をしていないと妻が言うだろうと思っているからである。<(p.414)
笑。
JRF2024/6/231819
ただ、これには理由があることがこの本の前の部分に示唆されている。脳の男女差を語るところで、男性が地図を読むのが女性より高いのに見るように、男は空間的技能においては女性を上回りがちなのだが、空間的技能でも、それを物体記憶と位置記憶の問題にすると、女性のほうが成績がよい(p.400)。(男性は狩猟していて)女性は植物採集などにそれが役に立ったからだろう…とのことだ。
(ただし、最近のニュースでは女性が狩猟していた痕跡もいろいろ出ているようだ。)
JRF2024/6/234163
《「男性は狩猟、女性が採集」という長年の定説が誤っていたことが大規模分析で判明 : カラパイア》
https://karapaia.com/archives/52323768.html
>世界中の数十の狩猟採集社会のデータを分析したところ、こうした社会の少なくとも79%で、女性が狩猟を行っていた事実が示された。<
JRF2024/6/235487
……。
>ゲイの男性は一般に子どもを残さないのに、そうした遺伝子はどうやって存続できたのだろう? 考えられる答えは二つある。その一つは、ゲイ遺伝子を女性が受け継いだ場合には、女性の繁殖力が増加し、男性が受け継いだ場合の繁殖上のマイナスを相殺するというものである。<(p.442)
すきえんてぃあ(@cicada3301_kig)さんが、最近、Twitter (X) で、そのような説を紹介されていて、そんなこともあるのかなぁ…と話半分に読んでいたのだが、この本が出典だったのかもしれない。
JRF2024/6/230912
……。
近親相姦についてレヴィ=ストロースの説などを紹介して…。
>ナンシー・ソーンヒルは、いわゆる近親相姦タブーというのは、権力者の男性が、ライバルがいとことの結婚で富を蓄積するのを阻止するために作り出した結婚風習であると論じている。問題は近親相姦なのではなくて、権力なのだ。<(p.449)
私は『宗教学雑考集 第0.8版』《近親相姦のタブー》の中で、数々の考え方を示すと同時に、私が実験から得た説として>支配層で近親婚は離婚において憎しみが広がるのが国政において支障があるから、あらかじめ近親婚を禁じるのではないか<という説を紹介していた。私も権力の問題としていた。
JRF2024/6/231770
……。
ズアオアトリは、その さえずり を臨界期(生後二週間から二ヵ月のあいだ)に仲間の さえずり を聞いたときのみ学習する。学習は確かにあるのだが、しかし、他の鳥の声や車の音などを覚えるわけではない。覚えるべきものが選択されて覚えられるのだ。
>1960年代のニコ・ティンバーゲンとピーター・マーラーの研究以来、動物は何かを学ぶわけではないことは、よく知られている。脳が「学びたい」ことを学ぶのだ。
JRF2024/6/231616
男性は遺伝子とホルモンの相互作用のおかげで、本能的に女性に魅了される。しかしその性向は臨界期に出会った、役割モデル、仲間からの圧力、そして自由意思によって大きな影響を受ける。確かに学習の成果は大きいが、あらかじめ決められた性向というものもあるのだ。
<(p.452)
JRF2024/6/234302
……。
ウェストが細い女性が好まれるのはなぜか? 男性の好みを調べると、ヤセ型かどうかの体重ではなく、ウェスト・ヒップ比が問題とされているらしい。
頭の大きい人間の赤ん坊のため、ヒップが大きいことが好まれるからだ…という説もあるが…。
JRF2024/6/239389
>しかし私は、男性が細いウェストの女性を好むもっと明白な理由があると考えている。更新世には、流産や子どもの死亡はよくあることだった。おとなの女性は、人生の多くを妊娠や授乳に費やし、そのあいだは受胎不能であった。受胎可能になるとすぐにまた妊娠したのだろう。つまり受胎可能な女性は珍しかったのである。男性は、図らずも継子を育てることのないように、ウェストが少しでもふくらんだ女性を避ける性向を発達させたにちがいない。太いウェストは、妊娠初期の可能性があるからだ。<(p.464)
JRF2024/6/235360
……。
>実は、白い肌は赤毛にともなうものであって、ブロンドではない。<(p.466)
うちのジルパ(のアバター)は褐色の肌の赤毛だが、そういうのは普通じゃないのか? ジルパはわかりやすい「ファンタジー」になっているということだろうか…。
JRF2024/6/233282
……。
>男性が若さに執着するのは、人間の特徴である。すでに研究がなされた動物で、これほど若さにこだわる種はほかにはいない。オスのチンパンジーは、発情期にありさえすれば、中年のメスでも若いメスとほぼ同じくらい魅力的に感じるのだ。これは明らかに終生続く結婚と、長く続く子育てという人間らしい習性に帰因している。男性が一生を妻に捧げるとしたら、これから何年も子どもを産む能力が妻にあるかどうかを知らなければならない。
JRF2024/6/237596
臨時の短い関係を重ねて一生を過ごすつもりなら、パートナーが若いかどうかは問題ではなくなるだろう。要するに我々は、パートナーに若い女性を選び、他の男性よりも地上に大勢の息子や娘を残した男たちの子孫なのだ。
<(p.467)
人工子宮が使われるようになれば、若さは重要な要素ではなくなるだろうが…。
JRF2024/6/236369
……。
クーリッジ効果。
>男性はある種のオスの哺乳類ほどではないにしろ、「クーリッジ効果」を発揮する。新しいメスがオスの性衝動を活気づけるのだ。クーリッジ効果の名は、カルヴィン・クーリッジ大統領夫妻が、農場を視察した際の有名な逸話に由来する。雄鶏が一日に数十回も交尾できると知った夫人は「大統領にその話をしてやって」と言った。話を聞いた大統領は「いつでも同じ雌鶏とか?」と尋ねる。「いいえ大統領、相手はいつも違います」。すかさず大統領は言った。「そのことを家内に伝えてくれ」<(p.472-473)
JRF2024/6/230192
……。
>我々の脳は神経版のクジャクの尾羽(…)であり、算術から彫刻に至るまで、我々のあらゆる技能は、人を魅了する能力の副産物にすぎないというのは、居心地の悪い考えだ。<(p.540)
脳は「選択慣性」で大きくなった。それはそうかもしれないと思うが、中型種がそれを長期可能にするためのカロリーが必要で、島 泰三『親指はなぜ太いのか』([cocolog:94512250])では骨(髄)食というニッチがそのカロリーを供給したということだった。
JRF2024/6/239176
……。
……。
ときどき登場した拙著は↓。
『宗教学雑考集 - 易理・始源論・神義論 第0.8版』(JRF 著, JRF電版, 2024年1月)
https://j-rockford.booth.pm/items/5358889
JRF2024/6/231290
ごく最近、ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』読む過程([cocolog:94893189])で、「なぜ死があるのか」を考えた。
[cocolog:94893189]
>
なぜ死があるのか。
まず『宗教学雑考集 第0.8版』《宇宙胎児》で示唆したように一つの個体よりも複数の個体であるほうが、苦しみが少なかったのであろう。『宗教学雑考集 第0.8版』《コラム なぜ生きなければならないのか》の枠組みで、安住の残骸を集めるには、それらで同種の生きる数を競争したほうが多様に得られるようになったのだろう。
JRF2024/6/239134