cocolog:95542946
小田垣孝 他『社会物理学』に目を通した。社会のモデル化について、コンピュータ工学者とは、ちょっと違う視点…物理学っぽい視点…があると思った。イジング模型の影響力が強いんだな…と思った。 (JRF 5855)
JRF 2025年7月18日 (金)
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まず、p.5 の「ミルグラムの手紙の実験」については、そこだけ取り出して自分の見解を書いた。
[cocolog:95537108](2025年7月14日)
>ミルグラムの手紙の実験の解釈がおかしい。AI さん達に手伝ってもらって自分でモデルを作って考えた。その実験だけでは通常言われるような「世界中の誰とでも、たった6人介せば繋がれる」みたいなことは言えないと言える。<
JRF2025/7/180888
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>メキシカンウェーブ<(p.55)
スタジアムで人の波を作る「ウェーブ」。メキシカンウェーブと呼ぶそうだ。知らなかった。
JRF2025/7/186579
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p.133 からの第5章、集団の合意・意見の形成を論じるのだが、普通そういうときはコンドルセなどの公共選択の議論が出てくるのが相場なのだが、この本はそうではなく、イジング模型的な臨界現象的な理解になってくるのが興味深い。この本は、最初のほうに左派っぽい主張もあるのだが、ソ連の非民主主義的な合意形成とかの理論を受け継いでるのかな…とちょっと思った。
ちなみにコンドルセのものといわれる「数が多ければ多数決は必ず正しい」という定理を攻撃する意見を [cocolog:92296901](2020年10月) で私は書いている。
JRF2025/7/187072
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「平均場近似」というのがよく使われる(p.109など)のだが、平均的個体みたいなのを見るというものらしいのだが、その計算が、導出方法があまり書かれておらず、なぜそれで良いのかがわからなかった。平均場近似もイジング・モデルとかではよく出てくるようだが。
JRF2025/7/184982
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p.173 からの第6章では SIR モデルなどが語られる。感染症については、↓でいくつか実験した。
《JRF-2018/misc_ipynb: Miscellaneous IPYNBs》
https://github.com/JRF-2018/misc_ipynb
今回の本では…
>例えば会議や授業などで同席した時間が長ければ、病気に感染する確率が高くなる。<(p.198)
JRF2025/7/182264
…みたいなことに拡張ができるとも書かれていたが、今後↓を使って、AI さん達に手伝ってもらってそういうことの実験をしたいと前から計画している。
《JRF-2018/simple_synthetic_population: 仮想合成人口個票の簡易な実装》
https://github.com/JRF-2018/simple_synthetic_population
JRF2025/7/185087
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追記。
社会物理学とはあまり関係ないのだが、公共選択理論につて、たまたま最近目についた私の過去の論考があったので、そこへのリンクも示しておく。
○ 2025-07-20T22:58:18Z
ダウンズの合理的選択理論の反論を以前考えたが、それについて、特にその「相転移」的考えについて、Claude Sonnet 4 さんと Gemini 2.5 Pro さんの数学的・プログラム的支持を得たので共有しておく。
JRF2025/7/214568
《ダウンズの合理的選択理論への反論 - Google Colab》
https://colab.research.google.com/drive/1RJs5Q_Xe-kJNqwq6DvG2QKIT9ygxqcKD
以前の反論については↓。
JRF2025/7/214028
[cocolog:95197210](2024年12月)
http://jrf.cocolog-nifty.com/statuses/2024/12/post-162a52.html
>finalvent さんが紹介されていたダウンズの合理的選択理論の投票行動の期待効用について、私なりの式を考えた。氏は合理的でない無党派層の投票行動が、選挙を予測不能というか操作不能にしている…と見ているが、私は本来の公正な社会に近付いていると見る。<
JRF2025/7/210906
typo 「につて」→「について」。
JRF2025/7/216143
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追記。
↑の私の以前の「ひとこと」では…、
選挙の結果により政策A1と政策A2だけが異なるとする。自分が参加することで似た他の人も参加し A1 が実行される可能性が p1 になるとする。自分が参加しないことで似た他の人も参加しないことで A1 が実行される可能性が p2 になるとする。投票のコストを C とする。自分が参加することでみなが参加してより公正に近づくことの効用を D とする。
JRF2025/7/240992
すると、効用の式は
= (A1 - A2) * (p1 - p2) + (D - C)
…になるという話だった。
JRF2025/7/240293
この p1 - p2 が相転移的に決まるということになるのだが、p1 - p2 の部分は何かの偏微分なのかもという気がする。一瞬の変化だと少なく見積もりすぎて少し論が変になっていて、例えば単位時間の p1 - p2 とすることで値を大きく解釈できるのかもしれない。
JRF2025/7/242287
そういって Gemini さんに聞くと、「単位時間」ではなく外部の影響 h に対し ∂p/∂h が自然だとのことだった。外部の影響で「自分」の投票行動が変わるのであり、その1票分にかかる Δh は可塑的で、むしろその Δh に対し Δp = p1 - p2 が定義でき、∂p/∂h は割と大きめになることがある。…ということだと思う。
JRF2025/7/240127
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ところで、落差のある関数の微分を考えるというのは AI さん達の理論ももともとはそんな感じだった。AI さん達の中身も相転移が元になっているのだろうか? そういえばホップフィールドネットワークはイジング模型に似たモデルだった。
(あと、以前、アテンション(Attention)機構は拡張された微分ではないかとちょっと妄想したこともあった([cocolog:95231673](2025年1月12日))。)
JRF2025/7/244273
それが上によると民主主義の投票行動にもからんでくるという話なんだね…。そして相転移は原子力・核エネルギーにもからんでくる…。
JRF2025/7/241047


『社会物理学 - モデルでひもとく社会の構造とダイナミクス』(小田垣 孝 & 佐野 幸恵 & 山崎 義弘 & 山本 健 著, 共立出版, 2022年10月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4320036190
https://7net.omni7.jp/detail/1107343539
JRF2025/7/185170