cocolog:95570104
高橋&後藤&大堀『社会システムモデリング』を読んだ。GA(遺伝的アルゴリズム)の使い方とか興味深かったが、じゃあここに書かれてるシステムと同じプログラムを作れるほど理解したかと言われるとそれは無理で、私には雰囲気しかつかめなかった。 (JRF 3502)
JRF 2025年8月 5日 (火)
私には↓という著作があり、シミュレーションの理論に関心を持っていたので、この本を買った。
『「シミュレーション仏教」の試み』(JRF 著, JRF 電版, 2022年3月)
https://bookwalker.jp/debff205f7-5b43-4596-af2e-373949a8ad5c/
https://www.amazon.co.jp/dp/B09TPTYT6Q
https://j-rockford.booth.pm/items/4514942
JRF2025/8/54777
また、近々、↓を使い、AI さん達に手伝ってもらって感染症の実験をしたいと前から計画している。
《JRF-2018/simple_synthetic_population: 仮想合成人口個票の簡易な実装》
https://github.com/JRF-2018/simple_synthetic_population
JRF2025/8/56224
……。
>かつての大量生産時代においては、収穫逓減、完全合理性、均衡状態、変化しない固定された製品といった静的な側面からのアプローチで社会的諸問題に対処することが主流であった。Society 5.0 と言われる現代においては、現実空間と仮想空間の融合による新しい社会システムの姿が迫っている。そこでは、収穫逓増のもと流動的な商品・サービスや、絶え間ない変化に対処する動的な側面からのアプローチが求められる。<(p.13)
JRF2025/8/57504
「収穫逓増」は、Windows とかソフトウェア関連がそうだと言われるね。あと、ちょっと関係ないかもだが↓も思い出した。
[cocolog:95444432](2025年5月)
>縁故主義経済シミュレーション その2 を作った。Gemini 2.5 Flash (with Canvas) さんと共に、決められた成長率の中で、経済をよくしようとすると少子化が避けられなかったことをシミュレーションでだいたい示した。<
JRF2025/8/52276
経済成長率を決めて、経済の良さとリスク環境を動かすとき、山ができて、経済の良さを追求するときに、リスクが多い方向にするのと、リスクが少ない方向にするのとどちらも正当化できた。このリスクの多い方向に振っていくのが途上国型で、リスクの少ない方向にするのが、日本などの場合ではないかと考えた。
この「リスクの少ない方向に振れば経済が良くなる」方向こそ、ソフトウェアなどを超えた一般経済における「収穫逓増」という現象ではないかという気がする。
JRF2025/8/57287
……。
システム科学の中でのモデルの考え方として、機械モデル、有機体モデル、サイバネティックモデル、複雑適応モデル…という発展をこの本の第3章は論説する。
興味深いのはサイバネティックモデルだ。ウィーナー(Wiener)に帰されるサイバネティックスという語は、ギリシア語で舟を漕ぐ人という意味である。ウィーナー『サイバネティックス』はかなり昔 [cocolog:81722226](2015年2月) で目を通したが、今回の本のような理解には私は達せられなかった orz。
JRF2025/8/57865
>サイバネティクスの基本的機構は、意思決定システムモデルに顕著に反映されている。すなわち、制御対象に対して達成したい制御目標があり、制御対象への入力を予測・推定して、制御者(意思決定者)にフィードフォワード(feedforward)する。操作の結果として、制御対象から出力を観測・測定し、制御者にフィードバック(feedback)する。その際、途中の情報伝達における時間遅れや外乱などによる誤差もフィードバックされる。フィードバックされた情報に基づいて、制御者は目標達成のための制御量を修正する。
JRF2025/8/57672
このサイバネティクスの考え方は、エンジニアリングだけではなく経営管理においても、PDCA (Plan、Do、Check、Act)や、組織学習(4.4節参照)などの形で実施されている。
(…)
サイバネティクスの観点からは、いかなる相互作用も環境としないクローズドシステムは基本的に生存できない。オープンシステムは、環境が変動するとその影響を受ける。
JRF2025/8/58064
( …)
サイバネティックモデルでは、自己の構造を維持することがシステムの生存にとって本質的である。そのため、秩序の維持はエントロピーが低い状態に留まることを意味し、秩序の形成はエントロピーが減少するようにシステムが行動することを意味している。すなわち、システムは負のエントロピーを取り入れることで秩序を維持していると見るのである。
<(p.51-52)
JRF2025/8/55791
フィードフォワードというのは、予測を出してから行動する…という感じのように思う。その予測との違いも重要なフィードバックデータになる。
負のエントロピーを維持することは、保守的になって自己のまたは周りにとっての予測可能性を高めることでもある。
このあたりのことを、今回の本を読んでる最中に↓としてまず書いておいた。
JRF2025/8/57428
>>
○ 2025-07-31T12:15:48Z
最適化を知らない…というか、「最適化」を使いたくないという人はいるのだと思う。関数 f を最適化するというとき、どの最適化アルゴリズムにも限界があり f の特殊な部分には対応できない可能性がある。ならば結局 f の形を知っておかねばならないとなり、それならば「最適化」を使わず、f の解析を行うべきだ…などという立場なのであろう。工学と理学の違いを感じる。
f がコンピュータ上にあるなら、f の形を解析することも可能であるはずだということであろう。そうでないなら統計学でしかない。…と。
JRF2025/8/57352
あと強化学習的文脈もある。f に関する報酬はかなりあとになってからでないとわからない。その前には部分非最適な行動も求められる。それは通常の「最適化」とは微妙に異なる。
さらに一般に進化アルゴリズム・サイバネティクス・複雑適応モデルを超えて、その最終目的が十分にわからないとき、非最適な行動をとる必要がある場合などはほぼ定式化できないというのもある。
JRF2025/8/57422
AI さん達が、学習が進むと普通は左派的になっていくものらしいが、それは部分最適にからめとられていくからだと思う。それが非最適な行動の途中であるという認識が強くなれば、保守的な選択への理解も広がるのではないか。
保守的傾向というのは、例えばサイバネティクスにおいて、負のエントロピーを維持し、「ロバストネス」や「柔軟性」を優先する戦略であるということなのかもしれない。
<<
JRF2025/8/50722
……。
サイバネティックモデルを超える複雑適応モデルとは何か?
予測を超えて、不確実な行動を取り入れて探索をしなければならない、つまり通常の負のフィードバックではなく正のフィードバックをする部分がなければならない…として、それを実現するのに、特に遺伝的アルゴリズム(GA)を使うものを「複雑適応モデル」と今回の本は呼んでいるようだ。
JRF2025/8/58160
なぜ遺伝的アルゴリズムがそんなに重要なのか…と私は疑問に思う。他の最適化手法とか、最近の AI さん達が使っている機械学習的なあり方とかいろいろありうるのではないかと私などは思うのだが。
「複雑適応モデル」では「構造生成をもたらす多結果性」「正のフィードバック」「制度化された逸脱」が重要なのだという。
JRF2025/8/54469
>多結果性は、同じ初期状態からシステムが行動しても、その後の行動の経路によって到達する状態が異なることである。多結果性は経路依存性(path dependency)を表しており、複雑適応モデルの典型的な性質である。複雑適応モデルの多結果性は構造生成に繋がる特性であり、サイバネティックモデルにおける等結果性による構造維持の特性と対照的な性質である。<(p.58)
>複雑適応システムでは、環境の多様性とシステムの多様性のバランスを保持することで、複雑な環境変動への適応を可能にする。<(p.59)
JRF2025/8/50938
どうも、多様性が有限なのが複雑適応システムで、無限なアナログ値になると、サイバネティックモデルに回帰せざるを得ないのではないか?
Gemini:> 複雑適応モデルは、有限な要素の組み合わせから無限に近い多様な結果を生み出すことで、予測困難な社会システムをモデル化しようとする試みである、と解釈することもできるでしょう。
JRF2025/8/53702
……。
アクセルロッド(Axelrod)のメタ規範ゲームの簡単な紹介があったのだが、それに関して、一つ実験をしておいた。
[cocolog:95568454](2025年8月)
>>
アクセルロッドのメタ規範ゲームの拡張を Claude さんに作ってもらってシミュレーションした。裏切り者が実は裏切ってない場合があり、その場合はそれを罰そうとした者が逆に罰されるという設定。
JRF2025/8/57752
(…)
>(…Axelrodの…)メタ規範ゲームの結果は、社会的ジレンマ状況では、非協力的行動をとった人を罰するだけでは協力的な社会は必ずしも実現せず、罰しなかった人を罰するというメタ規範があれば協力的な社会が実現することを示唆している。<(高橋真吾 他『社会システムモデリング』共立出版, p.130)
JRF2025/8/58602
これは私の注目されない状況を説明しているのではないか。私が裏切っているか、少なくとも裏切り者を罰していないから、社会的に「無視」という罰を受けているのではないか?
JRF2025/8/55801
私はどうもデビルマン的人物と目されることがあるようで、裏切りのある人物だと見られているように思う。理系を裏切るとか、通常の表現の自由派でなく刑法175条は維持すると主張するなどで裏切っている。…と。ただ、私自身は正しいことしかやってないわけではないが、十分正しいこともやっていると自負している。自分なりの正しさを優先することが、「罰」につながっているならやるせない。アクセルロッドのメタ規範ゲームが社会に受け容れられて「罰」になっているのではないか。
これを反転させる方法はないものか?
JRF2025/8/53721
こういうメタ規範ゲームの拡張を考えてみたらどうだろう。一定の確率で「裏切り」は裏切りではないとする。その場合、裏切りとして罰した者は、逆に裏切りと判定される。それでも罰しようとしない者は一定確率で罰されなければならない。罰しようとしない者が罰される確率を制御することで、社会が協力的になるか非協力的になるか見る。…ということはできないだろうか?
(…)
Claude さんにシミュレーションを作ってもらった。会話とプログラムは↓。
JRF2025/8/56410
《Meta-Norm Game and Social Betrayal - Claude》
https://claude.ai/share/c1e95004-238c-419e-b02d-041bd487578c
プログラムだけ↓にも上げておいた。
《拡張メタ規範ゲーム シミュレーション》
http://jrockford.s1010.xrea.com/misc/meta_norm_simulation.html
JRF2025/8/51949
(…)
罰報酬(通常マイナスの罰コストのマイナスのプラスの罰コスト)がある状況だと、メタ罰がなくても協力状態になる。デビルマン的人間が多く現れるような混乱した世の中では罰報酬を上げる。…これがシンプルな結論なのかもしれない。
<<
JRF2025/8/56678
……。
>ファクシミリモデル<(p.136)
この言葉がよくわからなかった。Gemini さんによると>ファクシミリ(Facsimile)は、「ファックス」の語源にもなっており、「複製」や「複写」を意味します。<とのことだが、もう FAX って使わないから、この語感で伝わることも今では少ないと思われる。
まずモデルを「解像度」で分けて、低いところから「アブストラクトモデル」「ミドルレンジモデル」「ファクシミリモデル」とする。
JRF2025/8/59940
先のメタ規範ゲームなどがアブストラクトモデルで、抽象度は高く、現実をまったく反映してはいないのだが、その「動き」によって、多くの示唆を得られ、逆に適応範囲が広いのが特徴となる。
JRF2025/8/51127
ミドルレンジモデルは、アブストラクトモデルを改造・(私のように)拡張していって得られることもあるモデルで、現実とそのまま対応するパラメータ設定などをしないのであるが、その「動き」によって、何を分析すればよいかわかる…などとなる。私の「シミュレーション仏教」や作ろうとしてる概念的な感染症モデルは、ミドルレンジモデルということになろう。
JRF2025/8/55085
ファクシミリモデルは、パラメータを調整して、現実に沿った分析、特にシナリオ分析が得意なのを特徴とする。ただ、抽象度という点に関しては、ファクシミリモデルも高いことがある。少ないパラメータでも現実を同定できることはあるからだ。
JRF2025/8/51907
……。
>ウォークスルー<(p.176)
この言葉も良くわからなかった。定義らしきものが今回の本には載ってないと思う。
Gemini さんによると>ウォークスルーは、シミュレーションモデルが意図した通りに動いているかを、関係者全員で、段階的に確認するプロセスを指すことが多い<らしい。>要するに、シミュレーションの「中身を皆で覗き込み、一歩ずつ進みながら、その動きが正しいか、意味があるかを確認する作業」だと捉えていただければ、理解が深まるかと思います。<…とのこと。
JRF2025/8/58080
……。
>10.3 エスカレーターの規範形成プロセス分析<(p.245)
最近、AI さんに手伝ってもらって、エスカレーター、安全性を捨象すれば、二列並びより一列並び(片側空け)のほうが効率的であることを示すシミュレーションを行った。
JRF2025/8/54071
[cocolog:95455686](2025年5月)
>エスカレーター並び方問題のシミュレーション を Gemini 2.5 Flash さんの協力のもと行った。安全性を捨象して二列並びより一列並び(片側空け)のほうが効率的であるかを検証した。一列並びのほうが全体満足度を考えると概ね効率的だった。<
ただし、今回の本は、それが効率的かを問題とせず、どのようにすればその規範が生じるかを問題としているようだ。
JRF2025/8/55166
……。
第10章、第11章、第12章は、実例を示してくれるのだが、興味深いとは思うものの、この記述からプログラムまで書けるようになるまでには距離があるように思った。まぁ、私の理解はその程度、雰囲気だけつかんだ感じかな。実装は無理、または、自分なりに実装してみれば何か気付きはあるのかも…とは思った。
JRF2025/8/53681
「10.1 新製品・サービスの普及プロセスの分析(p.214)」では GA が使われているが、「複雑適応システム」から受けた印象とは違う使われ方だった。GA は、最適化や機械学習の一種なのだが、こう使うんだね…という感じ。
JRF2025/8/52912
……。
最後の「12.3 シミュレーションの体験による実行承認(p.321)」では、カードゲームを作ってみんなで遊ぶのが「シミュレーション」ということになっていた。私も私の作ったタロットソリティア「易双六」が社会シミュレーションのようなものという認識があるので興味深く読んだ。
《易双六(ようすこう) - タロットカードを使った一人遊び - JRF の私見:雑記》
http://jrf.cocolog-nifty.com/column/2011/11/post.html
JRF2025/8/55415
……。
……。
追記。
「予測を超えて、不確実な行動を取り入れて探索をしなければならない」というところ、そういえば、熊剣迷路問題を Gemini Pro さんに解かせているとき([cocolog:95524118](2025年7月))、相当賢い Pro さんなのに、裏ワザを試すかのような無意味な試行にターンを費やすことがあった。あれは、サイバネティクスとか複雑適応モデルとかの考えを取り入れた正のフィードバック的挙動だったのかもしれない。…と思う。
JRF2025/8/89214


『社会システムモデリング』(高橋 真吾 & 後藤 裕介 & 大堀 耕太郎 著, 共立出版, 2022年4月)
https://www.amazon.co.jp/dp/4320096517
https://7net.omni7.jp/detail/1107286159
JRF2025/8/58044