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小林信彦『ぼくたちの好きな戦争』を読んだ。「悲惨な戦争」であるに違いないながら、その実相について現代で語られにくくなっている部分について、文化人の興味を引き出しながら教えてくれる小説。確かに「新しい「古典」」なのかもしれない。 (JRF 0769)
JRF 2025年8月10日 (日)
太平洋戦争時の、東京の老舗和菓子店の家族の物語。小資本家といったふうで、文化人として育っている和菓子屋を継いだ長男の家長の大作、戦争中は体制側の批評漫画家として名をなした次男の公次、どさまわりの芸人をやっていた三男の史郎がいて、大作の息子の誠がいる。
JRF2025/8/102629
読んでいる途中の私の「感想」の構想では、プロローグの滑稽な玉砕描写以外は凄惨な場面もなく、文化人が戦争をどう生きたかを描いた小説、途中、独創的な物語中の物語がある小説、戦争の悲惨さとして人間社会によくある「いびり」などを描くのは「火垂るの墓」でもあったこと、最後はそりゃあ敗戦はあるだろうがそこで一波乱あってもヌケヌケと過ごしていくのだろう…といった感想だったのだが、最後の日本が負けるに致るまでの怒涛の物語でガラリと印象が変わった。戦争の「リアル」な光景を文化人に印象づける見事な小説である。三男の史郎が凄惨な戦地を這いずり回って捕虜になるのが、リアルなんだか、なんなんだか。
JRF2025/8/105912
その途中の「感想」の中でしたメモ。ジャワ島が日本本土が窮乏していた中でも物資が豊かであったことが描かれる。それは広く知られていたようだ。石油があったからが大きいようだが。それができたのは、現地人などへの体裁を考慮して無理な接収をしなかったからなのか。それとも単に輸送手段がもうなかったのか。現地で日本人が大きなカオをしていたのも描かれるので、後者なのであろう。
JRF2025/8/100578
「悲惨な戦争」であるに違いないながら、その実相について現代で語られにくくなっている部分について、文化人の興味を引き出しながら教えてくれる小説だと思った。finalvent さんがいうように現代の「新しい古典」なのかもしれない。
JRF2025/8/104953


『ぼくたちの好きな戦争』(小林 信彦 著, 新潮文庫, 1993年11月)
https://www.amazon.co.jp/dp/410115824X
https://7net.omni7.jp/detail/1101156025
元は1986年5月、新潮社より「純文学書下ろし特別作品」というキャッチフレーズで単行本として出たもの。
finalvent『新しい「古典」を読む 2』([cocolog:95565484](2025年8月))で紹介されていて、興味を持って中古で買って読んだ。
JRF2025/8/101161