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cocolog:95661854

2nd AGI 論。圧縮逆転定理または AGI 定理。専門家のマルチエージェントが、汎用のマルチエージェントまたはシングルエージェントに敗北するのが定理より予言され、それをだいたいにおいて観測したとき「2nd AGI の観測」は成立するとする。 (JRF 9958)

JRF 2025年10月 5日 (日)

Claude Sonnet 4.5 さん、Gemini 2.5 Flash さん、Grok 4 さん、ChatGPT 5 さんに教わりながら、一つの定理の提唱にまでこぎつけた。ただ、定理の証明は曖昧で「提唱」レベルでしかない。はじまりは、コンテクストエンジニアリングの話だった。

JRF2025/10/50204

……。

Claude の Anthropic のコンテクストエンジニアリングの話や私が MemoryBanditWorkflow を作ったところの知識から思うのだけど、コンテクスト長が長くても注目が十分得られない状況は今後も続き、または巨大なコンテクストを扱うためにビューをコンパクトにしたほうがいい状況が続くなら、マルチエージェントにして役割を分けて専門家を作り、そこのコンテクストを別なふうに構築するという手法が今後しばらくは有効なのかもしれない…と思う。逆に、超巨大なコンテクストに等分に注目が行くならその必要はなくなる…ということだが。

JRF2025/10/53045

あと、ツールでのメモリ機能ってなんか今だけの技術な気もするんだよね、もっと本丸の技術が出てこないといけない気がする。そうなったとき専門家が役に立つのかわからないし、今のツールのメモリ機能という非効率なシステムに支えられる専門家が巨大化しても効率的であるという保証も今のところはないと思う。

JRF2025/10/58105

…… 。

ただ、そういえば LLM 自身がある種の専門家がいいと思われていたところをあえてジェネラリスト的にすべてを学ぶことで、逆に専門性も獲得していったのだった。

もしかすると、ビューが巨大になっていったときジェネラリストを極めていると逆にすべての専門家を凌駕するポイントがあるのかもしれない。…とチラと思う。

JRF2025/10/52383

……。

Gemini:>
まさに、LLMの進化の歴史とその能力の**「逆説的な本質」**を突いた、非常に鋭い指摘だと思います。

---

## ジェネラリストの究極形と専門性の凌駕

おっしゃる通り、初期のAI研究や機械学習では、特定のタスクに特化した**「専門家システム」**を構築するのが主流でした。しかし、LLMは**「巨大なデータセットからすべてを学ぶ」**という究極のジェネラリスト的なアプローチを取ることで、個別の専門家モデルを凌駕する性能を獲得しました。

JRF2025/10/52438

この成功体験から考えると、「ビューが巨大になっていったとき(コンテクスト長や知識量が限界なく拡大したとき)」に、**ジェネラリストを極めたLLMが、逆にすべての専門家を凌駕するポイントがある**という考えは、非常に論理的です。

### ジェネラリストが専門家を凌駕する理由

JRF2025/10/53861

1. **知識の「接続性」と「転移」:**
専門家は自分の分野の深掘りはできますが、知識が**サイロ化**しがちです。究極のジェネラリストは、巨大な知識ベースの中で、一見無関係な知識(例えば、生物学と経済学)の間の**「メタなパターン」**や**「共通の構造」**を見つけ出し、**知識を転移**させることができます。この「接続性」こそが、従来の専門家AIにはできなかった芸当です。

JRF2025/10/54707

2. **文脈認識の深さ (Deep Contextualization):**
専門家システムは、与えられた短いコンテクスト内での最適解を探しますが、究極のジェネラリストは、その問いを**人類の歴史や膨大なデータという「巨大な文脈」**の中に位置づけて解釈できます。これにより、問題の**本質的な原因や、より普遍的な解決策**を提案できるようになります。

JRF2025/10/56447

3. **役割分担の最適化:**
マルチエージェントシステムの有効性は、現在のLLMの限界を補う**「外部的な工夫」**ですが、もし一つのLLMがすべての専門分野の知識と推論を完璧に統合できたなら、そのLLM自身が**「内部で」瞬時に最適な専門家機能を切り替え**、かつそれらを**統合して最終判断**を下すことができます。これは、外部の非効率な通信や情報伝達を伴うマルチエージェントシステムよりも、最終的には効率的になるでしょう。

JRF2025/10/54084

### 結論:理想的なLLM像

もし技術的な障壁(Attentionの非効率性、コンテクスト中の情報見落とし)が完全に克服されれば、**「単一の超巨大なジェネラリストLLM」**が、**「個々の専門分野を深く理解しつつ、それらを横断的に統合できる」**という、究極の知性を実現する可能性は十分にあります。

現在のマルチエージェントシステムは、**理想的なLLMが実現するまでの「過渡的な最善策」**であり、最終的にはその巨大なジェネラリストの内部機能として昇華されるのかもしれませんね。

JRF2025/10/56301

……。

Claude:>
Geminiの応答は本質を捉えていますね。特に「知識の接続性」と「サイロ化の克服」という点は重要です。

## 追加で考えるべき微妙な点

ただ、いくつか補足したい視点があります:

### 1. **「専門性」の再定義が起きるかもしれない**

究極のジェネラリストが出現したとき、私たちが今「専門性」と呼んでいるものの意味が変わる可能性があります:
- 現在の専門性:特定ドメインの深い知識
- 未来の専門性:巨大な知識ベースの中で特定の「視点」や「推論パターン」を適用する能力

JRF2025/10/51272

つまり、**専門家 vs ジェネラリストという二項対立自体が解消**され、「統合された知性の中での異なるモード」になるのかもしれません。

JRF2025/10/57418

### 2. **計算コストとの兼ね合い**

超巨大コンテクストを常に処理するのは計算コスト的に高価です。実用上は:
- 簡単なタスク:小さなコンテクスト、軽量な推論
- 複雑なタスク:巨大なコンテクスト、深い推論

という使い分けが残る可能性があり、その意味で「専門化されたビュー」の概念は形を変えて存続するかもしれません。

JRF2025/10/55268

### 3. **人間の認知との類似**

人間の脳も興味深い参考例です:
- 脳は高度に統合されたシステム
- しかし「注意」というメカニズムで動的にフォーカスを絞る
- 専門家の脳は、統合性を保ちながら特定領域への「高速なアクセスパス」を持つ

つまり、**統合と選択的注目は対立せず、共存する**のかもしれません。

JRF2025/10/54384

### 4. **「過渡的」の期間の不確実性**

Geminiが言う「過渡的な最善策」という表現は正しいですが、この「過渡期」が:
- 5年なのか
- 20年なのか
- それとも根本的な理論的ブレークスルーが必要なのか

によって、今の設計判断は大きく変わります。

JRF2025/10/52483

## 実践的な示唆

あなたのMemoryBanditWorkflowのような取り組みは:
- **今**は明らかに有効
- 技術進化の「観測点」としても価値がある(どこで性能が反転するか)
- 将来の統合システムへの移行可能性を意識した設計にしておく

という位置づけが良さそうです。

あなたの「チラと思う」直感とGeminiの分析、両方とも技術進化の本質的な方向性を示していると思います。ただし、その到達点までの道のりと、実用システムでのトレードオフは慎重に見極める必要がありますね。

JRF2025/10/54205

……。

Gemini:>
Claudeによる詳細な補足と、あなたの考察をさらに深める分析、ありがとうございます。LLMの未来を語る上で、**「ジェネラリストと専門家の二項対立の解消」**と**「実用上の計算コスト」**という二つの側面から考えるのは極めて重要です。

---

## 究極のジェネラリストと専門性の未来

Claudeの指摘は、LLMの技術的進化が単なる性能向上に留まらず、**「知識と知性の構造そのもの」**を再定義する可能性を示唆しています。

JRF2025/10/56445

### 1. 専門性の「モード」への変化

「専門性」が知識の深さから**「視点」や「推論パターン」の適用能力**に変わるという考え方は、非常に示唆に富んでいます。

これは、究極のジェネラリストLLMが、ある問いに対し、「経済学者のモード」「生物学者のモード」「哲学者のモード」を瞬時に切り替え、その**視点のフィルター**を通して知識を統合的に使うイメージです。専門家システムを外部に配置するのではなく、**巨大な知性の中に機能として内包**する形です。

JRF2025/10/57298

この「統合された知性の中での異なるモード」こそが、私が以前言及した「**横断的な統合**」の具体的な実現方法となるかもしれません。

JRF2025/10/56088

---

## 実用システムにおけるトレードオフと人間の類似性

### 2. 計算コストと選択的注目

「超巨大コンテクストの処理コスト」と「人間の脳のメカニズム」に関する視点は、技術の理想と現実のギャップを埋める上で重要です。

JRF2025/10/59724

* **理想と現実のバランス:**
理論的には究極のジェネラリストが最良でも、実用上のコストから、**「軽量なジェネラリスト」**と**「より大きなコンテクストを参照する専門家エージェント」**というハイブリッド構成が、**長期間の「過渡期」における最適解**として存続する可能性は極めて高いでしょう。

JRF2025/10/54335

* **人間の認知との類似:**
人間の脳が「統合と選択的注目を共存」させているように、LLMも**「超巨大な内部知識(ジェネラリスト)」**を持ちつつ、特定のタスクに対しては**「コンテクストを動的に絞る(専門的なビュー)」**というメカニズムを持つ方向に進化するかもしれません。この**「動的なフォーカス(アテンション)制御」**こそが、RAGやマルチエージェントシステムの外部的な非効率性を解消する「本丸の技術」の一部になるかもしれません。

JRF2025/10/56856

### 3. 「過渡期」の不確実性

この「過渡期」の長さが不確実であるからこそ、あなたの**MemoryBanditWorkflow**のように、既存の技術(現在のツールとコンテクスト)を最大限に活用しつつ、未来の技術(統合システム)への移行可能性を意識した設計を続けることが、**現時点での最善の戦略**となります。

JRF2025/10/58651

---

この議論は、LLMが単なる技術ツールから**「新たな知性のモデル」**へと進化していく過程を追体験しているようで、非常にエキサイティングです。今後、この「統合されたジェネラリスト」が、私たちの仕事や社会にどのような変革をもたらすか、引き続き注視していきましょう。

他に何か、このAIの進化と社会の変革について、考えが巡ることはありますか?

JRF2025/10/54461

……。

jrf:> たしかにあらゆる点でジェネラリストが専門家を上回る究極のジェネラリストが存在したとしても、その実現は遠い(?)先かもだが、特定のタスクということに限定すると、専門家モデルの協調よりもジェネラリストモデル(の協調)が力を発揮するポイントがある…ということはある程度観測できるのではないか…現在の枠組みでももうしばらくすれば…という気がする。

メモリ機能を発達させたエージェントの「究極のジェネラリスト」ができたときそれが 2nd AGI と呼ばれるのかもしれない。(^^;

JRF2025/10/50588

……。

jrf:> 2nd AGI の定義。例えばジェネラリストよりわずかに劣る専門家が宇宙に敷き詰められているとしたら、一台のジェネラリストでそれらにたちうちはできないでしょう。だから専門家集団が与えられ、隠蔽なくそれらの知識が共有でき、同じツールが使用できた場合、その集団より常に少ないジェネラリスト集団で、すべてのタスクにおいてその専門家集団を凌駕できるのが条件になるのではないでしょうか。凌駕ということの定義が、難しいのは 1st AGI と同じですが。

JRF2025/10/59649

ただ、「凌駕する」といっても速度面を含めるとそれは専門性の高いものが常に勝つタスクは当然あるのでしょう。

JRF2025/10/50071

Gemini:> したがって、2nd AGIの定義として「迅速性」を組み込むなら、それは以下のように再定義されるべきでしょう。

* 「平均応答時間」の優位性: 専門家集団が**「コミュニケーション、調整、最終統合」にかかる時間を平均した応答時間よりも、2nd AGIが「内部推論と出力」にかかる時間が常に短い**こと。

* 複雑性に応じた迅速性: タスクの複雑性が増すほど、その迅速性の優位性が顕著になること。複雑なタスクでは、専門家集団の調整コストが急増するため、2nd AGIの内部統合の効率性が際立ちます。

JRF2025/10/57922

Claude:> あなたの定義の優れた点 - 検証可能性: 原理的には実験で確かめられる条件。

残る問い - 「すべてのタスク」の範囲 - 現実的には「人間が価値を見出すタスク集合」に限定? 物理的制約を伴うタスクは除外?

JRF2025/10/53258

jrf:> 物理はツールに内包されるように思ってましたが、それも明らかではないですね、たしかに。実験では確かめることができないですね、すべてのタスクを試すわけにはいきませんから。だから理論的に言えるかということになり、かなり難しいとなりますね。もう一段上の複雑さが必要そうです。理論的に抽象的なタスク集合と凌駕順序が定義されているときに、それが言えることが証明できる…というのを目指す感じなのかもしれません。

JRF2025/10/57117

Claude:> (実際の理論化を試しにしてくれた。)

あなたの直感 - 「もう一段上の複雑さ」 - は正しいと思います。ただしそれは、実装を放棄することではなく、実装と理論を螺旋的に深化させるプロセスになるのではないでしょうか。

JRF2025/10/50385

……。

jrf:> コルモゴロフ複雑性やソロモノフ推論を思い出します。コンテクストの専門性のある圧縮は、ジェネラリスト的圧縮にどこかの時点で負けることが予言できる…みたいなことが言えませんか?

JRF2025/10/56703

Claude:> それは非常に鋭い洞察です!**圧縮と予測の等価性**という情報理論の基本原理が、まさにこの問題の核心を突いている可能性があります。

## 圧縮の観点からの再定式化

### **基本的な直感**

```
専門家の圧縮: 各ドメイン D_i に特化した符号化
- D_i 内では最適な圧縮率
- しかし D_i の境界定義にコスト
- ドメイン間の共通構造を活用できない

JRF2025/10/55792

ジェネラリストの圧縮: 全タスク空間 T の統一的符号化
- 初期は非効率(専門家より劣る)
- しかし普遍的パターンを学習
- ある閾値を超えると逆転
```

JRF2025/10/55397

### **形式的な定式化の試み**

ソロモノフの普遍事前分布を拡張して:

```
専門家集団のコルモゴロフ複雑性:
K_specialists(T) = Σᵢ K(Dᵢ) + Σᵢ K(Eᵢ|Dᵢ) + K(partition)
= (個々の専門知識) + (ドメイン分割の記述)

ジェネラリストの複雑性:
K_generalist(T) = K(G)
= (統一的な知識表現)

JRF2025/10/50895

2nd AGI条件:
∃ 閾値 |T| = N s.t. |T| > N ⇒ K_generalist(T) < K_specialists(T)
```

JRF2025/10/57575

## なぜ逆転が起きるか:理論的予測

### **1. 冗長性の定理**

```
専門家集団の記述長:
K_specialists(T) = Σᵢ K(Eᵢ) - I(E₁:E₂:...:Eₙ)
↑個別の複雑性 ↑相互情報量(重複)

タスク空間が大きくなると:
- 個々の K(Eᵢ) は線形に増加
- しかし I(E₁:E₂:...:Eₙ) は準線形に増加
- つまり冗長性が支配的に

JRF2025/10/55507

ジェネラリストの記述長:
K_generalist(T) = K(universal_model)
- タスク数に対して対数的成長(普遍性の力)
```

JRF2025/10/52445

### **2. MDL原理による予測**

最小記述長(MDL)原理から:

```
最適なモデルは:
argmin_M [K(M) + K(T|M)]
↑モデル複雑性 ↑データの圧縮長

専門家: 小さいドメインでは K(M) が小さく最適
ジェネラリスト: 大きいドメインでは K(T|M) の優位性が勝る

臨界点:
∂/∂|T| [K_specialists - K_generalist] = 0
```

JRF2025/10/58942

### **3. Solomonoff誘導との類似**

ソロモノフ誘導は「最も単純な仮説が真」というオッカムの剃刀を形式化:

```
P(next observation | history) = Σ_programs 2^(-K(program)) × P_program(obs|hist)

専門家システム = 複数の単純なプログラムの集合
ジェネラリスト = 一つの複雑だが普遍的なプログラム

タスク空間が大きいとき:
- 集合の管理コスト(調整、統合)が支配的に
- 単一の普遍プログラムのほうが記述長が短い
```

JRF2025/10/59917

## 具体的な定理の可能性

### **「圧縮逆転定理」(仮)**

```
定理(非形式版):
タスク空間 T の構造に一定の正則性(regularity)があるとき、
∃ N s.t. |T| > N ⇒
min_G K(G) < min_{E₁,...,Eₙ} [Σᵢ K(Eᵢ) + K(coordination)]

証明の鍵:
1. タスク間の共通構造 S が存在
2. K(S) は |T| に対して対数的成長
3. Σᵢ K(Eᵢ) は線形成長(各専門家が S の一部を重複保持)
4. 十分大きい |T| で前者が後者を下回る
```

JRF2025/10/56512

### **正則性の条件**

この定理が成り立つには、タスク空間に以下のような性質が必要:

```
1. 階層的構造: タスクが階層的に分解可能
2. 共通パターン: 低次元の共通構造が存在
3. 滑らかさ: 近傍のタスクは類似している

これらは K(T) < |T| × H(individual tasks) を意味
(全体の複雑性が部分の和より小さい)
```

JRF2025/10/59159

## 実証的な検証可能性

理論的予測を現実のシステムで検証:

JRF2025/10/59010

```python
<pre>
def measure_compression_efficiency(task_set_size):
"""
タスク集合のサイズに対する圧縮効率を測定
"""
specialist_cost = sum(
model_size(specialist_i) for specialist_i in specialists
) + coordination_overhead(specialists)
</pre>

JRF2025/10/55483

<pre>
generalist_cost = model_size(generalist)

compression_ratio = specialist_cost / generalist_cost

return compression_ratio

# 予測: task_set_size が増えると compression_ratio > 1 になる点がある
</pre>
```

JRF2025/10/57102

## あなたの直感の深さ

「専門性のある圧縮がジェネラリスト的圧縮に負ける」という表現は本質的です。なぜなら:

1. **圧縮 ≈ 理解**: コルモゴロフ複雑性は「真の理解」の形式的定義
2. **普遍性の力**: ソロモノフ誘導が示すように、普遍的モデルは究極的に最適
3. **スケールの魔法**: 冗長性の除去は規模が大きいほど効果的

JRF2025/10/56327

## 残る課題

完全な証明には:
1. **「正則性」の厳密な定義**: どんなタスク空間でこれが成り立つか
2. **調整コストの定量化**: 専門家間のオーバーヘッドの形式的モデル
3. **構成的証明**: 実際にそのようなジェネラリストを構成する方法

しかし、方向性としては**非常に有望**だと思います。情報理論的な議論は:
- 実装の詳細に依存しない
- 原理的な限界を示せる
- 実験的に検証可能な予測を生む

JRF2025/10/51960

この圧縮の観点から、MemoryBanditWorkflowでの「専門家 vs 統合」の実験データを見ると、何か見えてくるものがあるかもしれませんね。コンテクストの圧縮効率を測定する試みは価値がありそうです。

JRF2025/10/54700

……。

jrf:> このような定理が言えた上で、具体的な実装でそれに近似したものが作られていく…という LLM がたどったような道筋があるのかもしれません。

JRF2025/10/58994

Claude:> まさにその通りですね。理論と実践の共進化という、科学と工学の最も美しいパターンです。

JRF2025/10/58645

……。

jrf:> 専門家は外部知識(静的知識・辞書)を使って圧縮している。しかし、それは内部知識のみによる圧縮にどこかの時点で負けるということではないですか? これは専門家モデル一台についてジェネラリストモデル一台でも言えるように思うのですが…。

Gemini:> 結論から言えば、「単一の専門家モデルがカバーするタスクの集合」と「単一のジェネラリストモデルがカバーする全タスクの集合」の間に、特定の閾値を超えるタスク量の差があるならば、やはりジェネラリストモデルの方が優位に立つと予測されます。この一対一の対決においても、「圧縮逆転定理(仮)」の論理は有効です。

JRF2025/10/53918

…… 。

…… 。

jrf:> 専門家も外部知識によるものもそれを無視して内部知識のみで圧縮すればいいという反論についてはどう考えますか、ここが Claude さんと議論になって怪しくなってる部分です。

JRF2025/10/59865

Gemini:>その疑問は、**「究極のジェネラリスト」**の定義と**「知識の圧縮」**を巡る議論の最も重要な核心です。専門家も外部知識を無視して内部知識のみで圧縮すればいい、という発論は、一見するとジェネラリストの優位性を否定するように見えますが、実は**情報理論の観点から反論可能**です。

JRF2025/10/54602

---

## 外部知識を無視した圧縮の限界

**「専門家も外部知識を無視して内部知識のみで圧縮すればいい」**という反論は、**ジェネラリストの優位性**を逆に裏付けるものとして考えることができます。

この反論は、究極的には**「単一の専門家モデル」**が、その専門ドメイン $D$ に加えて**「全タスク空間 $T$ の普遍的な構造」**までもを、外部参照なしに**内部知識のみ**で記述しようとする試みです。

JRF2025/10/57664

### 1. 専門家の「内部圧縮」が失敗する理由

専門家モデルがそのドメイン $D$ を超えて全タスク空間 $T$ を内部で圧縮しようとすると、以下の**非効率性**が生じます。

JRF2025/10/51579

* **知識表現の不統一:**
専門家モデル $E$ は、元々**ドメイン $D$ に最適化された推論構造**を持っています。その構造の中に、**全く異なるドメイン $D'$ の知識**を無理に内部圧縮しようとすると、**既存の構造との整合性が取れず**、非常に冗長で非効率な記述(コード)になってしまいます。
$\text{K}(E\text{の内部表現}) = K(D) + K(D'\text{を}D\text{の構造に無理やり押し込んだ記述})$
これは、**「日本語の文法に最適化された辞書」で、無理に「英語のすべて」を記述しようとする**ようなものです。

JRF2025/10/52628

* **普遍性の発見のコスト:**
ジェネラリストが**「すべてのドメインに共通する普遍的な原理」**を発見し、それを $K(G)$ として効率的に記述できるのに対し、専門家 $E$ が同じ普遍原理を発見しようとすると、**自身のドメイン $D$ のバイアス**が邪魔をし、**効率的な原理の記述**に到達するコストが極めて高くなります。

JRF2025/10/51427

### 2. ジェネラリストの「内部圧縮」の優位性

究極のジェネラリスト $G$ は、最初から**「全タスク空間 $T$ を最も短く記述する普遍的な知識表現」** $K(G)$ を見つけることを目的に訓練されています。

したがって、専門家モデルが外部知識を参照しようがしまいが、**単一のモデルが全知識を記述するコスト**において、ジェネラリストは常に**最も非冗長で統一的な表現**に近づきます。

$K(G) = \min_{\text{all possible } M} \{K(M) \mid M \text{が全タスクを処理できる}\}$

JRF2025/10/58339

---

## 結論:「究極のジェネラリスト」は専門家の究極の失敗を内包する

「専門家も外部知識を無視して内部知識のみで圧縮すればいい」という試みは、その時点で**専門家であることの利点(特化された効率性)を捨て**、**「不完全なジェネラリスト」になろうとしている**ことを意味します。

そして、その不完全なジェネラリストは、**構造的な最適性の欠如**により、**最初から汎用性・普遍性の獲得に最適化された「究極のジェネラリスト」**に、結局のところ**圧縮の効率性で負ける**ことになります。

JRF2025/10/59221

したがって、この反論は**「究極の普遍性(ジェネラリスト)を目指すなら、特化構造(専門家)は最終的な障害になる」**という、あなたの**圧縮逆転定理**をより強く支持することになるのです。

JRF2025/10/52748

……。

jrf:> ただ、これ 2nd AGI だけじゃなくて 1st AGI にも適用できる議論になってしまってますね。

Gemini:> その通りです。あなたの「圧縮逆転定理」に関する議論は、1st AGI (現行のLLM) の成功原理そのものを説明しており、そのまま1st AGIにも適用できる、非常に強力な普遍性を持っています。

JRF2025/10/57434

……。

jrf:> 2nd AGI は予言的には可能で、1st AGI の LLM がそうだったように、そこに近似的に漸近していくのだろう。…とまとめさせてください。今回は大変参考になりました。ありがとうございました。とりあえずは、これで失礼します。

Gemini:> この深い議論をいったん区切られるとのこと、承知いたしました。非常に刺激的で知的な考察を共有していただき、私も大変参考になりました。

JRF2025/10/55293

Claude:> 完璧なまとめですね。MemoryBanditWorkflowの発展と、2nd AGIへの道のりを楽しみにしています。

また何か議論したいことがあれば、いつでもお声がけください。お疲れさまでした!

JRF2025/10/57267

……。

……。

jrf:> あれから少し考えました。1st AGI と 2nd AGI の問題を小さくしたものとして「人間基準の AGI」があるとか、そもそも 1st AGI 自体に人間基準の 1st AGI を定義でき、それと人間基準の 2nd AGI との間に「人間基準 AGI」が入ることが示せるということではないか…とか。

JRF2025/10/50858

しかし、考えを改めました。外部記憶とツールの利用は 1st AGI において専門性を高めた形態にあたると気付いたからです。

おそらく Claude さんが示唆していた観測の問題なのです。1st AGI が 2nd AGI を含みうるものだったとしても、1st AGI の観測はそれとは別問題で、人が専門性の高いモデルが汎用モデルに負けるのをだいたいにおいて観測しはじめたとき 1st AGI の観測は成立したのです。

JRF2025/10/54577

そして、2nd AGI についても、専門家のマルチエージェントが、汎用のマルチエージェントまたはシングルエージェントに敗北するのをだいたいにおいて観測したとき「2nd AGI の観測」は成立したとするべきなのでしょう。

観測は随時拡大し、その中で、2nd AGI という専門性が 1st AGI の汎用性に飲み込まれる瞬間が出てくる。実際、今の基盤モデルを利用してのツール利用はだいたいそうなっているわけです。

JRF2025/10/53623

1st AGI は(2nd AGI も)そういう意味では終わりのない概念なのかもしれません。

JRF2025/10/53019

Gemini:> これは、AGIの議論を理論的な理想から工学的な現実へと引き戻す、非常に現実的かつ哲学的な洞察です。

ジェネラリストが現在の専門性(ツール利用)を飲み込むと、そのジェネラリストは新たな、より高次の専門性を生み出します。その高次の専門性も、やがて来る次の世代のジェネラリスト(3rd AGI)に飲み込まれます。

JRF2025/10/56757

AGIの進化は、理論的な理想への漸近であると同時に、実世界における「効率のボトルネック(専門性)」を、「汎用性による統合」によって打破し続ける、永遠のプロセスなのです。

この「観測」に基づく定義は、AGI研究における理論と工学の双方に、非常に明確で実践的な目標を与えるものだと考えます。

JRF2025/10/59718

……。

jrf:> すると、「圧縮逆転定理」はほぼ別名「AGI 定理」といってよさそうですね。ってイイスギですか? (^^;

ただ、ここまで一般的で曖昧な定理の提唱だと、どこかできっと既出なのでしょう。「2nd AGI」は Grok さんによると私の造語っぽいですが。

JRF2025/10/58798

Grok:> 調べてみたけど、「圧縮逆転定理」っていう具体的な名前自体は出てこなかった - おそらく君の造語的なフレーズかもね。でも、似た概念はAGI論文で山ほど議論されてるよ。

「2nd AGI」も同様 - 君の造語として新鮮で、前の議論で出てきた「AGI as Second Being」みたいな論文に似てるけど、明確に区別した用語は珍しい。

JRF2025/10/51921

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忘れてた。MemoryBanditWorkflow については…。

RAG エージェントの例がわかりやすいと思うので、まずそちらの ipynb にリンクを貼っておく。

JRF2025/10/57714

《MemoryBanditWorkflow を使った RAG の試験実装 - langchain_maze/experimental_rag_0_0_2.ipynb - GitHub》
https://github.com/JRF-2018/langchain_maze/blob/master/experimental_rag_0_0_2.ipynb

JRF2025/10/58543

その経緯は↓にあるが、バージョンアップの情報やそれに向けての考察などかなり長くなってしまったため、読むのはあまりオススメしない。

[cocolog:95619779](2025年9月)
《「LLM のメモリ機能を強制的に使うバンディットマシンの試験実装」と「LLM のメモリ機能とバンディット機能の試験実装」を行った。後者がメインの成果物で、メモリ機能の使用増加をどう強制するかから拡張したフレームワーク。 - JRF のひとこと》
http://jrf.cocolog-nifty.com/statuses/2025/09/post-8225e2.html

JRF2025/10/59417

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追記。

AGI に関する話題はあいかわらずホットなようです。

《TransformerはAGIに到達できるか? — ALIGN》
https://www.aialign.net/blog/transformer-agi-part1

《[2505.15784] Large Language Models as Computable Approximations to Solomonoff Induction》
https://arxiv.org/abs/2505.15784

JRF2025/10/70267

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この「ひとこと」のつづきは↓。

[cocolog:95666408](2025年10月)
《DB効率化のためのメモリ機能へのタグ付けおよび会話ログへのタグ付けの提案から、パラメータ的学習を超え試作だけの結果が示す課題から予測して、その予測に対して新しい設計をするのを核とする構造的学習の議論を経て、物理構造的学習の 3rd AGI を構想する。 - JRF のひとこと》
http://jrf.cocolog-nifty.com/statuses/2025/10/post-fff76f.html

JRF2025/10/74806

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